冊子紹介 「トランスジェンダーのリアル」
「トランスジェンダーのリアル」製作委員会
当事者たちがつくった冊子
実際の姿を知っ
てもらために
冊子の冒頭、「『あなたの性別は何ですか?』そう聞かれたとき、みなさんはどう答えますか。体が男だから男、体が女だから女。世の中にはそう答える人もいれば、違う答えを持つ人もいます。よくわからない、決められない、単純に答えることが難しいと感じる人もいます。
出生時にわりあてられた性別とは異なるジェンダー
・アイデンティティ(自分はどのような性別である/ないという連続した意識のありよう)を持つ人をトランスジェンダーといいます。」というメッセージから始まる。
冊子は、トランスジェンダー(出生時にわりあてられた性別とは、異なるジェンダー・アイデンティティを持つ人)とアライ(ally/LGBTを理解・支援する人)によって着手され、クラウドファンディングで集めた資金で2万部製作し全国の行政や教育機関、NPОなどに無償提供を行ってきた。
すでに「朝日新聞」(トランスジェンダーのリアルを知って 当事者が冊子作り/2021年8月5日)
、「毎日新聞」(トランスジェンダーの「ありきたりの幸せ」当事者が実像伝える冊子/10月31日)、「中日新聞」(トランスジェンダー、リアルな姿知って 差別なくすため当事者が冊子/9月2日)で紹介され、注文が殺到し、在庫がなくなり、増刷中だ。
なぜ紙媒体の冊
子を作ったのか
製作に参加したトランスジェンダーの遠藤まめたさん(一般社団法人にじーず代表)は、インターネットなどによってトランスジェンダーに対する偏見、侮辱、誤解、「恐怖」煽動などが拡散されている状況に対して「当事者の実態を知らない人が、勝手な想像で雑な議論をしている。だけど、その攻撃的な言動が、当事者の生きる場所を奪ってしまう。当事者がどのような生活を送っているのかわからない、といった人が多いのではないか、との考えから、当事者のリアルな姿を知らせる冊子の製作を行うことにしました」(朝日新聞)と述べ、あえて「ツイッターで応酬をしても、建設的にはならない」と判断し紙媒体の冊子にした。
冊子の構成は、①この冊子の使い方/この冊子で使われている用語の解説 ②トランスジェンダー5人のパーソナルストーリー ③みんなの経験(治療、学校、職場) ④トランスジェンダーへのよくある質問と答え ⑤〈座談会〉当事者が語る、トイレのこと ⑥「家族」が語るトランスジェンダーのこと ⑥「シス」からのメッセージ(シスジェンダー/出生時にわりあてられた性別と同じジェンダー・アイデンティティを持つ人。女性の場合にはシス女性、男性の場合にはシス男性) ⑦相談先リスト─となっている。
この「冊子の使い方」の中で「この冊子では当事者の『リアル』を知っていただくため写真を多く使用していますが、カミングアウトをする/しないは、個人の思いや葛藤の中で本人が決めることであり、カミングアウトを希望していない当事者が多くいるという事実も、はじめにお伝えしておきます。移行後の性別で静かに暮らしたいと考えている当事者も少なくありません」と述べ、読者をフォローしている。
メッセージをいか
に受け止めるか
「トランスジェンダー5人のパーソナルストーリー」では、次のような人たちが顔写真と手記を掲載している。
小野アンリさん(ノンバイナリー/男女いずれかいっぽうのみに限定されないジェンダー・アイデンティティを持つ人。Xジェンダーと称されることもある。/LGBTQ+の子ども・若者とサポートするおとなをサポートする任意団体 Proud Futures 共同代表。)
じゅんじゅんさん(性別適合手術後、法的に女性になった)─「私は性別を変えたから幸せになったなんて思いません」とメッセージ。
鈴木げんさん(トランス男性)─「自分を女だと思ったことは一度もありません。卵巣摘出をしていないため僕の戸籍は女性です。自分の大切なことは自分で選びたい」。
野村恒平さん(Xジェンダー)─「ワタシはろう者。日本の手話には男女二元的な表現が多く、LGBTQについて適切に表現できなかったり、手話通訳によってLGBTQの人が傷つけられてしまったりする課題がある」と強調。
川上りささん(トランスジェンダー女性)─「誰でも何かしらのバックグラウンドを持っているのと同じように、私もそんなバックグラウンドを持っているを持つ世間一般に多数存在する中の一人の女性なのだ」。
冊子は言う。5人のメッセージは、「この社会には、トランスジェンダーもすでに一緒に生きている。当事者を属性だけでわかった気にならないで、『個人に出会う』ことを通して、一人ひとりがちがう存在として生まれてきたことの意味を感じてほしい」と。
一緒に解決し
ていける仲間
「当事者が語る、トイレのこと」では、「トランスジェンダーについて、特に先入観や思い込みで語られることの多い『トイレ』のこと」について、「まず当事者たちのリアルな声を聴いてみてほしい」と読者をフォローする。座談会形式で次のような問題提起をしている。
「りさ:防犯の話をすると『トランスが女性用トイレに入ってくると犯罪目的で入ってくる人と見分けがつかなくなる』って主張する人もいるけど、それも違う話だと思う。
まめた:毎日トイレを使うたびに警備員を呼ばれるわけにもいかないから、当事者はトラブルにならないように行動している。トラブルにならずに使えている人まで、女子トイレから追い出そうって話してるみたいに聞こえる。
アンリ:あえて不安を感じるように煽り立てる人もいますよね。
りさ:本当に恐怖している人の声がダシにされているようにしか思えなくて。
まめた:マイノリティって多数派の人が思う以上に社会のことをよく観察している。なにをしたら自分が迫害されるのか、子どもの頃からよくわかっている人も多い」。
「まめた:戸籍を持ってトイレにいくわけじゃないし、性器でわけるべきだという人もいるけど、だれが性器の形状をチェックするんだろう。犯罪者は犯罪者として現行法で処罰できる。トランスジェンダーを見つけ出して追い出すことが犯罪抑止につながるとは思わない」。
さらに様々な視点から「トランスジェンダーとトイレ」について語られているが、最後は「まめた:トランスジェンダーが生きやすくなるには性別にもとづく押し付けや差別をなくしていくこと、フェミニズム的な視点も重要。トイレの防犯の話が出たけど、暴力をふるわれる恐怖は多くのトランスジェンダーも感じているし、既存のトイレが使いにくい障害者や子育て中の人たちもいるはず。一緒に解決していける仲間がほしいですね」とまとめている。
このまめたさんのメッセージが私たちに問われていることだろう。
ぜひ冊子を通して共に語り合う場所を作っていこう。冊子は、そのことを前提にして①学校や職場で感想会②朗読ワークショップの取り組みを提案している。 (Y)
■「トランスジェンダーのリアル」製作チーム/https://twitter.com/tgbooklet
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