ストップ!敵地攻撃 大軍拡! 2022年度防衛予算
反戦・反基地運動で有効な指針を示す
読書案内
発行/大軍拡と基地強化にNO!アクション2021 300円
「大軍拡と基地強化にNO!アクション2021」は、毎年来年度の軍事「概算要求」と「当初予算案」に対する批判を行ない、今回も「2022年度防衛予算批判」としてパンフレット化した。執筆している仲間たちは、有事立法・治安弾圧を許すな!北部実行委員会、立川自衛隊監視テント村、パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会、武器取引反対ネットーワークを通して粘り強く反基地運動を展開している。
各テーマ批判を紹介する前に、日米安保体制下、現在の自衛隊が米軍と共にいかにグローバル戦争を担いきる軍隊として構築され、どのような戦略・戦術を下敷きにしているのかを見ておこう。
日米政府は、1月7日、「日米安全保障協議委員会(2+2)を開催し、以下のような対中国、対北朝鮮共同軍事作戦態勢への踏み込みを具体的に確認している。
「2+2」
での確認
①「日本は『国家安全保障戦略』の見直しで、ミサイルの脅威に対抗する能力(敵基地攻撃能力)を含めて必要なあらゆる選択肢を検討」
②「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」
③「同盟の役割・任務・能力の進化および緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎」
④「かつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ、安定を損なう行動を抑止し、必要であれば対処するために協力」
⑤「地域の平和と安定を損なう東シナ海での中国の活動や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に懸念を表明」
⑥「南西諸島での自衛隊の態勢を強化し、日米の施設の共同使用を増加させる」
日米共同軍事
作戦態勢着々
このような日米共同軍事作戦態勢を政治的に確認する前に、すでに米軍は中国軍との交戦対処に向けた戦争準備として「インサイド・アウト」戦略に着手し、連動して自衛隊の軍事再編は進行していた。
「インサイド・アウト」戦略とは、「第1列島線上での中国軍の海上部隊を撃破し海上封鎖する(制海権の確立)」に向けて、「西太平洋の第1・第2列島線上に分散配置された米軍・同盟軍の海軍部隊と、第1列島戦の島嶼に配置された対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルを装備した地上部隊によって、初期戦闘で中国軍の水上艦艇を無力化し、第1列島線を遮断する」としている。その配置任務を「第1列島線の対艦・対空ミサイル部隊(インサイド部隊)は、陸自と米海兵隊・米陸軍が、第2列島線上(アウトサイド部隊)では米海軍・米空軍が担う+自衛隊」と明記している。
2019年に米国防省のシンクタンク「戦略予算評価センター」が提言し、トランプ政権下で採用され、バイデン政権でも継承され、「インサイド・アウト」戦略にもとづいて「台湾有事」における日米共同作戦計画の策定作業を開始している。すでに日米共同演習が公表された軍事演習、サイバー戦も含めた隠密軍事演習を頻繁に強行していることに現れている。軍事演習の積み上げによる修正も行なっていく。
パンフの中で横山哲也(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)は、「台湾有事」における日米共同作戦計画の主な内容について、以下のように分析している。
実戦訓練も
積み上げ中
①台湾有事の緊迫度が高まった初動段階で、米海兵隊は自衛隊の支援を受けながら、鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を設置。
②米海兵隊が攻撃用軍事拠点を置く候補地として、陸上自衛隊がミサイル部隊を配置した奄美大島、宮古島、さらに配備予定の石垣島を含む約40カ所(大半が有人島)。
③米海兵隊が攻撃用軍事拠点を置くのは、中国軍と台湾軍のあいだで戦闘が発生し、放置すれば日本の平和と安全に影響が出る「重要影響事態」と日本政府が認定した場合。
④米海兵隊の攻撃用軍事拠点には、対艦攻撃可能な高機動ロケット砲システム「ハイマース」を配置。自衛隊は、輸送や弾薬の提供、燃料補給などの後方支援、米空母が展開できるよう中国艦艇を排除。事実上の海上封鎖。
⑤台湾本島の防衛ではなく、部隊の小規模・分散展開を中心とする米海兵隊の新たな運用指針「遠征前方基地作戦」(EABO)に基づく共同作戦を展開。
「遠征前方基地作戦」とは、ミサイルやセンサーを装備した海兵隊の小規模部隊が島々を分散して移動し、対艦ミサイルで洋上の中国艦隊に攻撃を加えた後、すぐに撤収する奇襲攻撃作戦が主な内容。
これだけ「台湾有事」作戦が、すでに緻密に作り上げられているのだ。自民党の国防族議員たちは、単なる危機アジリの面もあるが、しかし「台湾有事」米日共同軍事作戦態勢の構築を土台にしてアプローチしていることは確かだ。
また、横山が「日米共同訓練『レゾリュート・ドラゴン21』(2021年12月)は、「遠征前方基地作戦」(EABO)を想定した訓練と言われている。訓練は王城寺原演習場(宮城県)、霞目駐屯地(宮城県)、岩手山演習場(岩手県)、八戸演習場(青森県)、矢臼別演習場(北海道)が舞台となった。岩手山演習場に沖縄の海兵隊が『ハイマース』を持ち込んでEABO演習を実施し、ここに陸自も対艦誘導弾を持って合流する内容だったとの指摘もあった」と紹介しているように実戦訓練はかなり積み上げている。机上の構想ではなく、いつでもどこでも軍事対処をしていく能力を押し進めているのが日米共同軍事指導部なのである。
経済安保論
の闇も暴く
このような日米軍事動向下において、岸田政権は軍事費を「防衛力強化加速パッケージ」と称して21年度補正予算7738億円とあわせて6兆1743億円に膨らませた予算を計上した。
吉沢弘志(パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会)は、22年概算要求が「前年より減額するとは予算編成上あり得ない手法」を使っていることに対して、「『補正予算を一気に増額する』『中期防はもとより、その根拠となるべき防衛大綱を前倒しで変更=大軍拡への道筋を作る』以外にあり得ない」と注意喚起する。つまり、「補正予算+当初予算の『パッケージ』6兆円超をベースに推移することが常套手段となるに違いなく、岸田政権が明言している2022年度内の『国家安全保障戦略』、『防衛大綱、『中期防衛力整備計画』前倒し改定では、この『6兆円』が1年あたりのお買い物額の基準となるだろう」と批判している。増額される軍事費に対して厳しい監視が必要だ。
さらにパンフは、以下のテーマにもとづいて分析を深めている。
木本茂夫(すべての基地にNO!をファイト神奈川)は、「『遠征前方基地作戦』(EABO)と海上自衛隊予算」について分析。海上自衛隊幹部の(EABO)について「敵の長距離精密兵器の射程内において統合された海軍部隊の一部を形成する。これにより敵軍が対処しなければならない多くの分散した標的を作り出し、敵軍に多軸の脅威を生み出すことになる」という見解を紹介しながら、「ミサイルが飛んでくるかもしれない状況下で、本当に離島間の移動が簡単にできるのかと思ったし、軍事的な有効性はどうなのかという疑念は今も消えない。しかし、自衛隊が琉球弧(南西諸島)で、米軍の後方支援を担うための装備は、着々と調達されている」「装備の面でも『日米軍事一体化』が進むことになる」と指摘し、具体的な軍事装備・巨額な調達費などを列挙して批判している。
大西一平(立川自衛隊監視テント村)は、①宇宙・サイバー・電磁波領域の空自予算」 ②F15改修費「FMS(対空地ミサイル)の闇、米国の言いなりは認められない」 ③毎年120億円もかかる!グローバルホーク運用部隊「偵察航空隊(仮称)」 ④進む日英軍事協力、次期戦闘機の開発 ⑤対中国戦での航空自衛隊の役割について解説している。
池田五律(有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会)は、「宇宙・サイバー・電磁波領域の軍拡 総合ミサイル防衛」というテーマ。とりわけ「SSA(宇宙状況)と衛星コンステレーション(比較的低い高度に多数の衛星を打ち上げ、協調して動作させる運用方式)」「サイバー部隊、電子戦部隊」などに着目し、「巨額な軍事費が使われていく」ことを浮き彫りにしている。
また、経済安保推進法の制定も取り上げ、「国家安全保障官僚たちは、ITなどの先端技術とそれに欠かせない戦略物資を制した者が覇権を握ると考えている。それゆえ、経済安保推進は、留学生、研究者、関連産業企業およびその労働者への監視強化につながる。経済安保推進法と連動して画策される入管法や特定秘密保護法の改悪にも、警戒を怠ってはならない」と強調している。
関連して杉原浩司(武器取引反対ネットワーク〔NAJAT〕)は、「研究開発費用の膨張と懲りない武器輸出の企て 日本版『軍産複合体』づくりを止めるために」では、「宇宙・サイバー・電磁波」における研究費批判を行なっている。さらに、日本版『軍産複合体』づくりへと向かっていることをクローズアップし、「研究費開発費の急膨張をもたらしている国内的な要因は、岸田政権による『経済安全保障』への傾斜だ」と明らかにしている。また、元国家安全保障局(NSS)次長・兼原信克が「科学技術政策、産業政策と国家安全保障政策の連携がないと……防衛省も気づいて、安全保障技術研究推進制度を作って産学との協力に踏み込んだとき、立ちはだかったのが日本学術会議です」(正論/2021・10月号)と公言しているように日本版『軍産複合体』づくり推進派の野望の具現化が始まっていることを警戒しなければならないと訴えている。
パンフは、現在の日米安保体制下の米日共同軍事作戦態勢の情報、狙いなどが網羅されている。各地の反戦反基地運動、岸田政権批判に向けて有効に指針を提示してくれるだろう。(Y)
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