チェチェンへようこそ─ゲイの粛清─

映画紹介

監督 デヴィッド・フランス 製作国:アメリカ/2020年 

 チェチェン共和国では、同性愛者というだけで警察に拉致され、拷問され、誰が同性愛者なのか自白を強要され、そしてさらなる被害者が。その末路は警察での獄死。かろうじて釈放された者も家族の名誉を守るため、家族により殺される。17年から始まったこの弾圧により、国民的な人気男性歌手を含め、すでに数百人が行方不明になっている。
 カメラはチェチェンから同性愛者を地下ルートで国外に脱出させるロシアLGBTネットワークの活動に密着する。映画は、当事者が顔を出すことによって身元がばれることを避けるために、「フェイスダブル」という顔や声を置き換えるディープフェイクの技術が使われている。その「顔」はニューヨークのLGBTQ活動家22人から提供されている。撮影は危険を伴うため映画全体の8%が携帯電話で撮影されている。
 同性愛者であることを父親に知らされたくなければ自分と寝ろと叔父から脅迫されている「チェチェン政府高官の娘」から、ロシアLGBTネットワーク危機対応コーディネーターのイスティーフに電話がかかってくるところから映画は始まる。作戦が練られるが、救出に使える時間は携帯電話が圏外になるまでの数時間。活動家たちの救出活動が隠しカメラで撮影され緊迫したシーンが続く。
 一方ロシア国内に設置されたシェルターには、仕事でチェチェンに滞在中に警察に拉致され拷問の末、釈放された男性が身を寄せていた。彼は恋人と家族とともに国外に脱出する。しかし、裁判所にチェチェンでの犯罪行為を告発し記者会見を行うためにモスクワ行きを決意する。
 チェチェンではプーチンを後ろ盾にした親ロシア派のラムザン・カディロフが首長を務め独裁政治が行われている。彼はメディアの取材に対し、チェチェンにはゲイはいないと嫌悪感を隠そうともしない。ロシアからの独立を求める独立運動が活発だったチェチェンにおいて親ロシア派のカディロフが専制政治を行うためには、イスラム教の教義を捻じ曲げ、同性愛者を民衆の敵、「悪魔」とする必要があったのだろう。そしてチェチェンの大地の下には石油資源がある。プーチンにとって大事なのは、チェチェンにおける同性愛者の人権ではなく石油である。プーチンは、同性愛者への弾圧を否定したカディロフを擁護する。
 映画のチラシには、「この“ゲイ狩り”を世界は止められるか」と書かれている。ラストシーンでイスティーフは言う。「殺されない限り、私たちの勝利だ」。映画を観た後の私たちの行動が問われている、そんな映画だ。 (矢野薫)


 
 

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