読書案内『郵政労使に問う』

池田実著/すいれん舎/1600円+税
4・28反処分闘争の勝利を勝ち取って

 『郵政労使に問う』の著者である池田実さんが臨時補充員として18歳で赤羽局に入ったのは1970年だった。
 この時期の60~70年代は敗戦後の復興期を経て、高度経済成長期の真っ只中にあり、郵政は生産性向上運動を通して矢継ぎ早の合理化施策を打ち出し、全逓労組への組織分断攻撃と平行して全郵政(第二組合)の育成・拡大策を全国で開始していた。こうした中で全逓本部は、78春闘で刑事弾圧回避を口実として公労協の統一ストから脱落、その後「労使協調路線」へと突き進み、全郵政との合併方針を発して(合併実現は2007年)、かつて「権利の全逓」と呼ばれていた全逓は「大きく右へと舵を切った。そのような全逓本部に対して、全逓労働者が全国全逓活動家連絡会(全活連)をつくり機関誌『伝送便』が創刊されたのも78年である。さらに、この78年には昇任差別やUターン差別、全逓脱退強要など郵政の不当労働行為が日常的に展開され、全逓の掲げる反マル生闘争は政治問題化してくる中で総評は「郵政マル生粉砕中央共闘会議」を結成、こうして郵政反マル生闘争は越年して闘うこととなった。しかし、全逓の闘争戦術の地本委譲をめぐる本部・地本・地区の混乱の中で事実上の無条件降伏となり、現場労働者に限って大量の61人に免職処分、8183人に懲戒処分が発令された。
 この『郵政労使に問う』は、第1章から第9章組みで構成されている。ここでは「第4章 4・28処分発令」から「第8章 逆転勝訴」までの28年間の実に長い筆舌に尽くし難い闘いをかいつまんで文章化するなど、史実として正確に真実を捉えることを明らかにすることは到底不可能である。労使協調路線を選択し、全郵政との合併に突き進む全逓本部にとって免職者の存在は文字通り〝ノドに刺さったトゲ”であったがために、後に裁判闘争の終結と組合員資格はく奪を決定し、卑劣にも免職者たちを切り捨てていく。こうして免職者たちは郵政労使双方から首切りされるという前代未聞の処分を受け、ここから自立した新たな闘いとして継続していくことになったのだ。
 他方この後、総評解体から89年連合の発足にあわせて『伝送便』全活連は反連合の旗の下、郵政全協の設立を経て独立労組(8労組)を結成、4・28反処分の闘いは郵政全協の闘いの軸となり、後に郵政労働者ユニオンの結成につながっていく。そして2007年、最高裁は免職処分の決定を取り消すことを確定したのである。
 『伝送便』では「回想 4・28処分」を18年から4年間にわたって連載してきたが、編集委員会として池田実さんの了解の上で本を出すことは確認されていた。4・28反処分闘争は郵政史上で最大の労使紛争であり、この闘いの記録がいま現場で汗する労働者の「命と権利」を守る闘いに向けての一助として活用されるとすれば『伝送便』編集委員会としてこの上ない喜びである。ご一読を!
(村上幹男、郵政シルバーユニオン、『伝送便』編集委員)
※新時代社でも取り扱いますので、ご連絡下さい。

郵政公社前で4.28反処分闘争勝利判決を支援の仲間と分かち合う(2007年2.16)

4.28処分を跳ね返し、職場復帰を勝ち取った池田実さん

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