読書案内「私がつかんだコモンと民主主義」

岸本聡子著/晶文社/1760円(税込)

日本女性移民、ヨーロッパのNGOで働く

 岸本杉並区政がいよいよ動き出した。9月の議会では、区独自の政策として困窮世帯への現金給付による直接支援(約7千世帯対象、4億円)、給食費の値上げ分を保護者負担から区負担への切り替えや食材価格高騰分への補助などが提案される。困窮世帯への4億円の給付は、速やかに地元商店街などで消費され、地域経済を活性化させるだろう。岸本区長は、市民参加型予算や気候市民会議の設置などにも言及している。新自由主義と手を切りケアを重視する地方自治のスタートだ。そんな岸本区長の新著がでた。
 本書では岸本さんが区長選に立候補するまでの20年を振り返りながら、どのようにして「コモンと民主主義」をつかんだのかが語られている。本書は、Ⅰ部「日本からの移民イン・ヨーロッパ」、Ⅱ部「ロストジェネレーションの連帯」、Ⅲ部「フェミニズムを生きる」のⅢ部からなっている。それぞれに興味深く読んだが、やはり最も興味深く読んだのはⅢ部だった。「利潤と市場の法則よりも」、「コモンズ(公共財)を優先し、政治課題の中心に置く。議会制民主主義に限定せず」「市民の政治への直接参加を重視する」ミュニシパリズムが紹介されているが、これが岸本区長の目指す杉並区政の基本になる。
 ミュニシパリズムは聞きなれない言葉だが、スペインのM15運動に端を発している、グローバルに考えローカルに行動するフェミナイゼーションされた地方自治の在り方だ。さらに岸本さんは、コモンズとフェミニズムをつなぐものとしてケアの重要性について述べている。「医療、保健、教育、保育、介護、清掃・・・お互いを思いあい助け合う、ケアの範囲は広い。そして大切にも関わらず横断的にみられていないし、従事者には仕事に見合うリスペクトと賃金が払われていない」「人は誰でも人生の最初にケアされ、ある段階の人のケアをする。そしてまたケアされる」。
 岸本区政が目指すのは、新自由主義と決別した住民参加型でケアを重視したフェミナイゼーションされた地方自治だ。「作ること、食べること、生きること」を大事にし「政治も運動も生活そのもの」という岸本区長と杉並の市民運動の挑戦に注目し応援していこう。     (矢野薫)
 

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