映画紹介 「SHE SAIDシーセッド その名を暴け」

2022年製作/アメリカ/マリア・シュラーダー監督
「性的搾取」を許さない!

 この映画は#me too運動の発端となったアメリカ映画業界の性犯罪を告発したNYタイムズ紙の報道と「その名を暴け―#me tooに火をつけたジャーナリストの闘い―」(ジョディ・カンター/ミーガン・トゥーイー著/古屋美登里訳/新潮社文庫刊)に基づいて作られた作品である。監督はマリア・シュラーダー。
 ストーリーは「ミーガンとジョディはともにアメリカ大手出版社のひとつNYタイムズ紙の調査報道記者、大統領選挙から職場環境まで数多くの問題を調査報道し実績を残してきた。 そんな中、ハリウッドから大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶ権力を行使した性的暴行の噂を聞き、ジョディは調査へと乗り出す。ジョディは、産休明けで産後うつ気味のミーガンとともに、さまざまな嫌がらせや生命を脅かされる目に遭いながらも懸命に調査を続ける。しかし、取材を進める中で、ワインスタインは過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明する。さらに、被害にあった女性たちは示談に応じており、証言すれば訴えられるため、声をあげられないままでいた。問題の本質は業界の隠蔽構造だと知った記者たちは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。そして、遂に数十年にわたる沈黙が破られ、真実が明らかになっていくー。」(パンフレットより)
 「過去にあなたに起きたことを変えることはわたしにはできない、でもね、わたしたちが力を合わせれば、あなたの体験を他の人を守るために使うことができるかもしれない」(「その名を暴け」より)。

性暴力を許さない

 焦点であるワインスタインはほとんど姿を映されない。後ろ姿や声だけである。これはワインスタイン個人だけの問題であるよりも映画業界全体の構造的問題であることを示すことと、女性たちの戦いに重点をおくためだと思われた。また性暴力描写はなく、証言と場所の映像だけである。被害者女性への配慮であり、その意図がなくてもポルノ的に消費されてしまう可能性を排除したのであろう。監督は「すでにあまりにも多くのレイプシーンと、あまりに多くの暴力描写が映画に登場しました。スクリーンにもうひとつのレイプシーンを作り出したくなかったのです。」(パンフレットより)と述べる。
 日本でも22年に映画監督や男性俳優による性暴力が被害者の告発で多数発覚した。「枕営業」という言葉などで被害者女性にも非があった、利益を得ていたと中傷されることもある。しかしこれらは権力者が仕事を盾に、女性労働者を性的搾取する労働問題でもある。
 紹介が遅くなり劇場では終了しているがデジタル配信はされているので、原作とともにぜひみていただきたい。 (AB)

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