「謎の無人島 鳥島サバイバル〜人の生命を試す島」

ダークサイドミステリー

投 稿

6月20日NHKBSプレミアム放映を見て

 6月20日、NHKBSで、絶海の孤島、鳥島で19年間も生き延びた漂流民のことをテーマとした番組を偶然見た。メモしたりしたものではないので今残っている記憶による。
 漂流の話だと、アメリカに行ったジョン万次郎(1841年に遭難し、鳥島に漂着。143日でアメリカの捕鯨船に助けられてアメリカに。アメリカで勉学にいそしみ、帰国後、日米和親条約の締結に尽力した)やロシアにたどり着いた大黒屋光太夫(ロシアの女帝エカテリナ2世に謁見し、勲章までもらった)は有名だが、名もなき人々の話だ。

荒涼とした島で
必死の生き延び
 江戸時代の1700年代に青森から江戸湾に荷物を運んでいた運搬船が九十九里沖で嵐にあい、伊豆諸島の絶海孤島の鳥島に漂着した。これは運が良いことで黒潮の流れによってはハワイ方面の太平洋の方向に流されたら生存できなかった。
 しかし、鳥島は水なし草木なし小動物なしの不毛の地。そこに12人の乗組員は本船から小舟に乗り換えて島に渡るが、嵐がやってきて、本船、小舟ともばらばらに砕け散ってしまう。それでも、火打石、桶、まさかりなどを持って上陸した。まず、困ったのは飲み水だ。島のあちこちの窪みを探し、水たまりを見つける。臭くてともて飲めないような水でもがまんした。食料はアホードリを捕まえて焼いたり煮たりした。難破船の木材や釘などが海岸に打ち上げられているのを見つけた。木材をくりぬき桶にし雨水を貯めた。釘を曲げて釣り針にし魚を取った。食べ物にバラエティーが出てきた。

団結と帰る意志
リーダーの役割
 ここで一番大事なのは、12人の仲たがいを避け、団結させることだった。船長がリーダーシップを発揮した。桶づくりなど仕事を複数の人間で行わせ、仲間意識を培った。悩んでいる者に、船長が寄り添い話を聞きなぐさめた。「絶対に帰る」という強い意志をもたせた。
 それでも、絶望して波打ち際にあった穴に閉じこもり死んでいった者もいた。土がないなかで、野菜をはじめビタミンBやCを取ることができず、脚気などの病気に罹り、死んでいく者が出た。
 俵にあった赤米から芽が出ているのを見つけた。島中で土のある所を探した。ようやく岩と岩のわずかのくぼ地にわずかな土のある所を見つけた。そこに芽の出た赤米を植えた。やせた土地なので、肥料になるように、魚や鳥の骨を砕いてまいた。やがてわずかな赤米が育ち、稲穂に実がついた。みんなの喜ぶ姿が目に浮かぶ。リーダーはその赤米をすぐに食べるのではなく、いよいよ困った時のために貯蔵した。
 リーダーはまた、「自分たちの身分を明らかにする荷受けの証書を絶対になくしてはいけない」とみなに言い聞かせ、脂紙に包み大切に保管した。そんなリーダーもやがて病気でなくなり、最後に3人だけになってしまった。するとどうしても、一人が食料を独占するようになり、いざこざが耐えなくなった。
 そこに、17人乗りの船が漂流してたどり着いた。新参者の漂流民はまさか「先住民」がいるとは思いもよらず、けんかになろうとした時、3人が荷受け書を差しだし、運搬船の船員だということが分かり和解した。3人は蓄えてあった飲料や水を分け与えた。漂流民たちはこのおかげで生き延びることができた。そして、乗ってきた小舟を修理した。いざ、島を離れる時、乗組員の中から、17人にプラスして3人も乗せたら船が転覆するかもしれいなと、自分たちだけで帰ると反対意見が出された。船頭は「いや全員で帰ろう。3人が居なかったら、われわれは生きられなかった。もし、全員死んでも悔いはない」と訴え、全員で帰還することになった。
 何と3日間で八丈島に着いた。そののち公儀の船で3人は江戸に戻った。将軍徳川吉宗が直々にこの者たちを謁見した。そして、故郷の新井浜(浜名湖の西側、関所や港がある)に帰り静かな余生を過ごしたという。
 その後も鳥島には何回か漂流民がたどり着いた。3人が残した桶などや道具類などによってわずかしか死者が出なかった。そして、明治になって政府肝いりで移民が進められ、港が整備され、百数十人が住み着いたが、島の大噴火によって120人程が亡くなくなり無人島になった。今は自然のまま残し、進化の過程を観察するために、国が人間の立ち入りを禁止している。

生物の進化と人
間の進化の違い

 生物の進化と人間の進化の違いをコメンテーターが語っていた。
 「数万年前に、ホモサピエンスがアフリカを出て、全世界に広がった。絶海の孤島のような所にたどり着いた人間と同じく、世界に散らばった人間は何もない所で一から定住のために知恵をしぼった。他の生物のように自分の肉体をその環境に合わせて進化させたのではなく、社会を作り、道具などによって生きるすべをえていった。世界のどこでも、ホモサピエンスに変わりはない」。

希望を捨てない
ことの大事さが
 この番組を見て、まず驚かされたのは絶海の孤島に19年間もよく生き延びることが出来たものだということだ。希望をどのよう持ち生きたのか、何を話していたのか、歌や踊りはしていたのか。衣類はどうしていたのか、知りたいことがたくさんある。
 もし優れたリーダーがいなかったら、個々人が勝手に生きようとしたら、全員がもっと早く、亡くなっていたかもしれない。「社会的・組織的」生き方を守りぬいたから生き延びたのだろう。ストレスが襲い掛かる今日この頃だがこの番組は「希望」を捨ててはいけない、生きる勇気をもらった。        (小)
 

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