「アリラン ラプソディ」
投書 川崎特別上映会
SM
8月21日・月曜日、川崎市アートセンター アルテリオ映像館で〈ハルモニといっしょ!『アリラン ラプソディ』川崎特別上映会〉に参加し、本格上映は1月からというドキュメンタリー映画「アリラン ラプソディ~海を超えたハルモニたち~」(金聖雄監督作品、125分)を観た。
この映画は、戦争と植民地支配の中を生きぬいてきた川崎の桜本に住むハルモニ(おばあさん)たちの歴史と闘いを描いている。この映画には、朝鮮戦争や「北朝鮮」への帰国事業、安保法案の強行やヘイトスピーチのエスカレート、戦争反対のハルモニたちの800mデモなども出てくる。映画のクレジットでは、映画を支援した人たちの中に、私の見間違いでなければ、鎌田慧さんや石橋学(いしばし・がく)さんや太田 昌国さんなどの名前もあった。
上映後のトークでは、チマチョゴリを着た80歳・82歳・65歳・72歳・92歳の5人のハルモニたちが発言した。92歳のハルモニは「ぜったいに戦争はイヤだ。昔のように暮らしたくない」と語っていた。上映前にハルモニに聞いたら、ハルモニの1人は「みなさんと仲良く平和に暮らしたい。戦争のない世の中でおだやかに暮らしたい。それが望みです」と語っていた。
金聖雄(キム・ソンウン)監督は、〈ぼくは1992年大阪で生まれた在日2世で6人兄弟の末っ子だ。母は77歳で亡くなった。ぼく自身が何でここにいるのか、もうちょっと聞いておけば良かった。そう思った。オモニ(お母さん)が亡くなった同じ時期に川崎のハルモニたちに出会った。何でこんなにたくましく生きているのか。感銘を受けた。「花はんめ」を作った。2015年にステキなステキなハルモニたちの戦争反対の800mデモに出会った。実は300mらしい。とても良かった。そのあとに、あてつけのようにヘイトスピーチがまちにやってくる。映画を作ることを決意した。ハルモニたちの生きざまを知っていただくことがこれからにつながっていくのではないかと思う。この映画は新宿のK’s cinema(ケイズシネマ)でやることが決定した。釜山(プサン)の映画祭にも出品している。1人でもたくさんの人に届けたい〉と語っていた。
上映前に金 聖雄監督に聞いてみた。「今一番言いたいことは何ですか」(私)。〈ハルモニたちがなぜ川崎にやってきたのか。どうしてここで生きているのか。そのことを一番伝えたかった。ヘイトスピーチをするような人たちは、そのことがすっぽりと抜けていると思う。ちゃんとそのことを知れば「朝鮮に帰れ」などの言葉が出てくるはずはない。ヘイトスピーチなど出来るはずはない。関東大震災の問題についても、「慰安婦」の問題についても、あったことをなかったことにしようとしている。とても危ういと思う。負の歴史をきっちり認識するところからしかスタートできないと思う。まずは、実際にあったことを伝えていかなければならないと思う〉(金 聖雄監督)。
スタッフの三浦さんは、トークで「なかったことにしてはならない。ハルモニたちは川崎の宝だ。わたしたちの宝だ。そのことをみんなで共有したい。川崎が共生のまちとなるようにしたい」と語っていた。
最後に「ウリマダン」や「トラヂ会」で良く歌われていて、韓国では知らない人のいないという「コヒャンエポム(故郷の春)」と「アリラン」をハルモニたちと会場が一体となって歌って上映会を終えた。
川崎特別上映会についてSNSでヤユするようなこともおこなわれたという。とても問題だ。そう思う。
私は「ハルモニ」ということばは、「いい言葉」のような気がしていた。韓国では日本にくらべて高齢の人を尊重する文化が強いのではないか。そんな風に思っていた。韓国では、「ハルモニ(おばあさん)」の他に「ハルモニム(おばあさま)」や「ハンメ(おばあちゃん)」などの言葉もあるという。だが、「ハルモニ」が「いい言葉」のように私に思えたのは、ハルモニの生に対する罪の意識と一体となった共感のせいでもあるのかもしれない。映画を観た後は、そうも思っている。
私は戦争と平和について、考える。第1に、日本における「絶対平和主義」を批判する人もいるが、「日本が他国に攻められたらどうするか」よりも、「日本が他国を攻めたらどうするか」を考えるべきだと思う。日本国家の性格を抜きに、抽象的で被害的な質問を考えるのはナンセンスだと思う。
第2に、マスコミは「戦争は悪い」というが、戦争を起こす国家権力を打倒することなしに「戦争のない世界」を作り出すことは出来ない。核兵器だってそうだ。「核保有国の政府やその同盟国の政府」を打倒することなしに核兵器を廃絶することは出来ない。そのことをマスコミは隠している。真実を隠している。そう思う。
第3に、この映画を観て私は、ハルモニたちを戦争と植民地支配の中にたたきこんだ根源に天皇制があるのだと思った。天皇制を「天皇の制度」などと言い換えたり天皇制廃止の闘いを放棄したりするのはナンセンスだ。差別の根源の1つが天皇制であることは明らかだ。「反天皇制の放棄」も「反安保や反自衛隊の放棄」と同じくナンセンスだ。私はそう思う。
ハルモニたちと一緒に「差別も暴力もない世界」を作り出そう。
(2023年8月22日)

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