「東京のど真ん中」で石川真生さんの写真展

10月13日~12月24日(「東京オペラシティ」京王新線初台駅下車)

「お会いしましょう!」12月22~24日 展示会場で

石川さん最大級の個展

 東京オペラシティ アートギャラリーで写真展「石川真生 私に何ができるか」が12月24日まで開催されている。「東京のど真ん中」とは、佐久田立々夏さんが写真とともにFacebookに代理投稿している真生(まお)さんじしんのことばだ。以下、少々抜粋させてもらう。

 石川真生-さんから

―大きな展示会を東京のど真ん中で開催してくれた。ありがたくて感謝、感謝だよ。
 私の展示会は昔から、何回も東京で開催直前に「政治的だから」とだめになってきた。
 でも今回のオペラシティーギャラリーは―(略)学芸員のみなさんががんばって実現してくれた―。
―(12月)22日の昼の便で東京に着くので、その足でギャラリーに直行する。11時から18時半まで展示会はやっている。私は最終日の12月24日まで毎日、会場にいる。
 22、23、24の3日間の間に会いに来てくださいね。みなさんに会えるのを楽しみにしています。
 皆さん、このかっこいい写真もつけて拡散お願いします!―
―展覧会の詳細です。
 https://www.operacity.jp/ag/exh267/

 本展は10月13日の金曜日が初日で手帳に記入していたが、この1週間前に母が入院。10月12日に病院から「呼吸が弱り酸素量を増やしました。時間外でも面会に来てください」と連絡が入り、翌日も自宅で待機することになった。続けて13日昼前に「心臓が弱ってきたので家族も呼んでください」と連絡を受け、午後に看取った。初鑑賞は初日からほぼ3週間後、新時代社で本紙2787号の発送を手伝ってから徒歩数分の会場に向かった。会場の地番は西新宿だが、最寄り駅は都営新宿線と直通の京王新線初台駅である。
 石川さんをはじめ、東京のど真ん中で「政治的な」催しを実現させたみなさんに敬意を表すため、このように「個人的な」ことを加えた。

大琉球写真絵巻と石川さん

 鑑賞してから1週間、真生さんと作品のネット情報を探ってみた。
 数年前の「かけはし」HPリニューアルに合わせて検索機能が加わった。昨年の本紙8月22日号でK・Sさんがの那覇市民ギャラリーで開催された旧盆恒例の「大琉球写真絵巻」展を紹介している。この記事でK・Sさんは「私は真生さんを高校生のころから知っている。来年4月に70才になるというが、一途で純粋、行動力のある所はいくつになっても変わらない。真生さんは『自分にできるのは写真だけ、だから写真をやりぬく』と腹を決めている。腹をくくった人は強い。いつまでも元気に、写真という刃を権力者の喉元に突きつける仕事をやり続けてほしい」と真生さんへのメッセージを添えている。K・Sさんの寄稿には「展示にあたってのあいさつ文をご覧いただきたい(別紙)」とあるが、HPではこの「別紙」が見当たらないのが残念だ。
 真生さんの高校生時代については、批評家の北澤周也さんが「美術手帖」のWebサイトに次のような寄稿をしている。
 ―1971年、沖縄返還協定の批准を目前に、沖縄全土では「11・10ゼネスト」が決行され、集結したデモ隊と機動隊の激しい衝突が相次いでいた。その最中、直撃した火炎瓶によって火だるまになり焼死した機動隊員の姿を、当時写真部に所属していた高校3年生の石川真生は目撃することになる。彼女は恐怖に慄きながらも「この『燃える島、沖縄』を、何かで表現したいと心から思った。そして私が出した結論が、写真という表現手段だった」(太田出版『沖縄ソウル』)―。
 さらに北澤さんは「石川写真における最大の魅力の根源はおそらく、次のような発言にこそ見出されよう」と、同じく『沖縄ソウル』から次の文章を紹介する。
 ―私には、写真と同じくらい大事なものがある。それが恋愛。正直に言うと、全軍労の四八時間ストを支援しに行ったのも、写真家を目指すきっかけになった一一月一〇日のゼネストに参加したのも、もちろん沖縄人としての怒りはあったけれど、ヤマト出身のある新左翼の学生と恋愛にのめりこんでいたからだった―。
 那覇市の絵巻展では新作のパート9など合わせて46点の展示。東京では2014年のパート1、そして8、9、最新作のパート10の合計104点を展示している。また、「赤花 アカバナー 沖縄の女」(1975ー1977)など11の作品群、合計62点の作品が展示、絵巻と合わせて166点になる。

 展示は解放された空間で

 入場した最初の作品群「赤花……」のスペースの撮影が禁止されている以外、撮影が自由となっている。11の作品群の名称と大琉球写真絵巻のパート以外は作品の通し番号だけが掲示され、撮影時期などの情報は全く掲示がない。その代わり、受け付けカウンターに作品の解説や真生さんや協力者のコメントが掲載されたハンドアウトとよぶA4判20頁の冊子が置かれ、これを読みながらの鑑賞を進めているようだ。文字数は約14000字だそうで、事前に目を通すこともひとつの手段だ。ダウンロードできるので、末尾にURLを記しておく。
 写真展と聞いて想起するのはドキュメンタリーであろう。だが、大琉球写真絵巻は史実を題材にした創作であった。ハンドアウトの真生さんのコメントには「パート1は、琉球国に薩摩が乗り込んでくる直前から撮ろうということで、創作写真だったの。ところが撮る時代が近現代に入ってきたら、私が出したいと思う個人が出てきたわけ」と記されている。
 2020年から21年の作品群パート8から10まで作品に出演する「基地いらないチーム石垣」のUさんは撮影時の年齢は「68、69」とパートごとに重ねられる。「報道」写真の人物は当人の了解もなく公開されるが、写真絵巻は被写体となることを了解したもの。パート9には私と同じK市に住み、参院選東京選挙区に立候補準備をしている時期のMさん、パート10には前出のUさんを石垣に訪ねた隣市M市の10数名が被写体である。
 ネット探索で「ドナルド・トランプ似のマスクをかぶった人物が握るロープの先はひれ伏す安倍晋三似マスクをかぶった人物の首に巻かれる作品」をみつけたが、東京会場には展示されていなかった。開催が妨害されぬよう、作品を選定したのかもしれない。
 通し番号が最後の作品は今年7月沖縄島撮影の創作で、作品名は「誹謗中傷クイズ~ママ達が考えた『ホントの沖縄を伝える方法」。「ひろくん面をつけたピースサインのカジュアル服」と「ひーちゃん面をつけ親指を上げたポーズ」のふたりを小鳥帽をかぶったふたりがボクシンググローブで「メーゴーサー(げんこつ)」した図柄。わずか1週間のうちに保育園と小学校に米軍ヘリの部品や窓枠が落ち、声を上げた母親に様々な誹謗中傷が向けられた。軽い気持ちでキーボードを打った誹謗中傷やデマに対して「これはデマだよ!」「これがホントのことだよ」「言われたらデージ(とても)傷つくよ」の3つを伝えたい活動をしているそうだ。「ひろくん」はSNSに「辺野古座り込み0日」投稿をしたひろゆき似で、「ひーちゃん」は「沖縄2紙つぶせ」発言の百田尚樹似だ。
 12月22日、23日、24日は「石川真生 私に何ができるか」展に結集せよ!
 初台駅周辺から会場まで「辺野古埋め立てNO!」の声で埋め尽くせ!

 「石川真生 私に何ができるか」のハンドアウト(展示作品の説明資料、PDFファイル)は次のリンクからダウンロードできる。
 https://www.operacity.jp/ag/exh267/j/handout.php
 入場料は一般1400円でシルバー割引はない。公式図録は税込み3520円。効率的に鑑賞するためにお勧めする。
 (KJ)

〈大琉球写真絵巻 パート9〉より 沖縄でバイレイシャル(ミックスルーツ)として生きること 2021

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