『東電刑事裁判 問われない責任と原発回帰』

海渡雄一・大河陽子著 彩流社 1650円(税込)

読書案内

 本書は2011年の3月11日の東日本大震災で起きた福島原発事故に対して、その刑事責任を徹底的に追及するとともに、原発のない社会をつくるための行動こそが私たちの未来を切り開く上で絶対的な必要条件であることを訴えていくための、事実に即した改めてのアピールである。

原発事故は予
測されていた

 内容を紹介しよう。「プロローグ」が「原発事故の経緯と裁判のおさらい」。第1部が「東京高裁の控訴棄却・東電役員らに対する無罪判決を批判する」。
 第2部「福島原発事故を忘れるな」は「東京高裁の控訴棄却・東電役員らに対する無罪判決を批判する」で、9の章(第1章「東電の主張を鵜呑みにした刑事裁判控訴審判決」、第2章「原発事故被害の大きさ、悲惨さを考慮していない」、第3章「国に責任はないとした最高裁判決と今回の刑事訴訟控訴審判決の共通点」、第4章「安全確保のために対応するべき科学的知見とは」、第5章「長期評価と東電津波計算の位置づけについての判断の誤りが刑事控訴審判決の中心的誤り」、第6章「貞観津波の佐竹モデルと房総沖のモデルについて」、第7章「津波対策を講ずることは可能だった」。第8章「刑事裁判が明らかにしたこと」だ。
 第9章は「福島からの声」と題した特別寄稿で構成。佐藤和良さん「裁判は多くの事実を明らかにした」、橋本あきさん「裏切られた判決」、菅野経芳さん「裁判長、誰への忖度なんですか」、五十嵐和典さん「成熟したものとは言えない」、「後知恵」、武藤類子さん「裁判所はこれでいいのか、私たちの社会はこれでいいのか」の高裁判決批判の各論稿からなっている。
 第2部の「福島原発事故を忘れるな」は①「福島原発から、我々は何を教訓化しなければならないのか」から始まって②「福島原発事故に学んだ脱原発の国民合意を一握りの政治家と役人だけで覆した岸田政権」、③「再稼働を進めるために原子力規制委員会を骨抜きにしようとしている」、④「老朽原発を廃炉にすべき理由」、⑤「革新炉(高速炉)」の日米共同開発を許してはならない」、⑥「福島イノベーション・コースト構想のもとで進められる軍事・民生デュアルユース研究」、⑦「子ども甲状腺がんの多発」、⑧「汚染水海洋放出の問題」に分けて、その危険性を指摘している。
 第3部は「2011年3月11日の前後に、この国でいったい何が起きていたのか―真実こそが脱原発への確信となる」は本書の核心部分であり、結論である。
 ここでは「大津波」が「想定外」ではなく、関係者の間では、明らかに「想定」されていたのであり、歴史的にもその痕跡は明らかなものであったことがさまざまな資料から明らかにされていた。「被ばく」の可能性についても、専門家の間では十分に想定されていた。しかしそれは意識的に隠蔽され、過小評価されていた。
 言うまでもなく、その危険性が原発の開発・運転にとって障がいとなることを恐れたからである。本書の結論部分で編集にあたった海渡雄一、大河陽子の2人の弁護士は、私たちの福島の仲間たちの協力も得ながら、本書を刊行したとのこと。ぜひ読んでください。(純)

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