投書「オッペンハイマー」を観た

SM

 イオンシネマ新百合ヶ丘で映画「オッペンハイマー」(原題:Oppenheimer、監督:クリストファー・ノーラン、2023年、アメリカ、180分)を観た。
 映画は、アメリカの原爆開発チームのリーダーだったJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)を描いている。原爆開発のリーダーとしてのオッペンハイマーと、赤狩りの被害者としてのオッペンハイマーを描いている。第96回アカデミー賞では7部門で受賞した。
 トルーマン大統領(ゲイリー・オールドマン)との面会で、オッペンハイマーはトルーマンに「私の手は血塗られているように思います」と語る。部屋からオッペンハイマーが出ていくときに、「二度とあの泣き虫を連れてくるな」というトルーマンの声が聞こえる。
 オッペンハイマーは、アメリカの水爆開発に途中から反対し、「核兵器の国際的な管理」を主張する。オッペンハイマーは言う。「アメリカが水爆を持てば、ソ連も持たざるを得なくなる」。
 ナチスに対抗するためだった原爆開発だが、ヒトラーが自殺すると、敗北が明らかな日本(に住んでいる市民)に使用する。その後は、ソ連に勝つために核軍拡を進める。ナチスは600万人をこえるユダヤ人を虐殺したが、アメリカは人類を滅ぼすことが出来る核兵器を保有するようになる。「核保有国」という「新たなナチス」「現代のナチス」の誕生だ。「ナチス以上のナチス」の誕生だ。誕生させた一因に「抑止力」という考えがあることは明らかだ。
 第2次世界大戦における枢軸国(ドイツ・イタリア・日本など)と連合国(のうち、少なくともイギリス・アメリカなど)の闘いは「ファシズム対民主主義の闘い」ではなく、「帝国主義どうしの闘い」であった。そう主張する人びとの方が正しかったのではないか。そうでなければ、原爆投下など説明出来ないことが多すぎる。
 映画では、ヒロシマへの原爆投下のニュースを聞いて、アメリカ人が大喜びするシーンがあった。ホロコーストを大喜びするようなものだ。そう思った。私は涙が出そうになった。
 私が監督なら、原爆投下で何が起きたかを、省略も「短い抽象化」もせずに、描いただろう。宮本ゆきさん(広島出身の被爆2世で、デポール大学の教授)は「女性の皮膚がめくれるシーンがきれいなのはおかしい」という意味の批判をしている(2023年8月12日・土曜日、朝日新聞デジタル)。映画では、ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下は人びとの命を救ったという原爆神話への批判も弱いような気がした。
 また、オッペンハイマーとジーン・タトロック(フローレンス・ビュー)のセックスシーンをどう考えればいいのか、混乱した。女性が好きなものどうしの前以外で、好きでハダカになるだろうか。いやいや、やらされているのではないか。女性に実質上の拒否権は認められているのだろうか。映画におけるセックスシーンというのは、ある種の暴力なのではないか。実際にセックスしたりオナニーしたりしているように見えるエロサイトの動画にくらべれば、マシだと言えるのだろうか。そんなことも私は考えた。
 後、ジーン・タトロックの自殺の原因が良く分からなかった。
(2024年4月8日)

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