投書「ビヨンド・ユートピア 脱北」の映評を読んで
N・J
「ビヨンド・ユートピア 脱北」の映評を拝読しました。丁寧に映画のあらすじを紹介していて読みやすい記事でしたね。いろいろ反響もあったのではないですか。
実は私も先日、このドキュメント映画を見ました。封切り間もなくだったためか、二~三十人の観客が詰めかけていました。やはり、「脱北」という問題は人々の関心を引くテーマであると言えるのでしょう。これまで脱北者の体験記などを読んできて、脱北を試みるということが人生を掛けたものであることは理解していましたが、映像を実際に見て改めて命がけの挑戦であることがひしひしと伝わってきました。韓国に無事到着した幼い子供二人を含む五人家族の今後の無事を願わずにはいられません。
もとより個人には、移動の自由、自分の好きな国で暮らす権利がある筈ですから、脱北者を取り締まり処罰することは国家の犯罪といえると思います。そもそも朝鮮が国外への移住の権利を保障していれば、鴨緑江を越える危険な逃避行に挑む必要はないのです。これまで一体どれだけの人々が鴨緑江や強制収容所で命を落としてきたでしょうか。
朝鮮からの脱北者を受け入れている国は主に韓国です。韓国は国として北からの移住者の受け入れ・定着のシステムが稼働し、3万人以上の脱北者が暮らし、韓国社会でマスコミ・公務員など様々な職業について活躍していると言われています。中には、今度の選挙では落選しましたが、前回の国会議員選挙に当選した太永浩さんのような人物もいます。これは、朴正煕・全斗煥軍事政権に対して数えきれない多くの犠牲を払って民主化を闘い取った韓国社会の強さといえるのではないでしょうか。
在日朝鮮人の北への帰還運動が1959年から進む中で、「地上の楽園」とされた国の実態が様々な形で明らかにされてきましたが、長い間、北の国は幻想のベールに覆われたままでした。批判や攻撃は主に反共主義者や右派が行ないました。スターリンのソ連に対するヨーロッパ知識人の甘い幻想と迎合の1930年代と同じような事態が続いてきました。
朝鮮をはじめ、いわゆる社会主義国の人権問題を反共主義者や右派たちの「専売特許」にしておいてはいけません。人権と民主主義は、国境を越えた民衆の共通の価値観であって、積極的に関わるべきです。「かけはし」が左派の観点から、映評や書評、論評などで中国・朝鮮の問題を継続して取り上げて行くのはとても重要だと思います。アジアに基盤を置いた組織として、闘うジャーナリズムとして、国境を越えたアジアの民衆の旗印となることを願います。
(2024年4月12日)
The KAKEHASHI
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