映画「ゲバルトの杜」を鑑賞に劇場へ

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 はじめの前置き

 本紙2810号(4月22日発行)の「ゲバルトの杜」記事を瀬戸宏さんの個人サイト「川口大三郎君追悼資料室」(注1)で知ったSさんから新時代社にメールが届いた。「応答はできるだけ貴誌で公的にお願いいたします」とあったが、編集担当者の一人から「対応の必要はない」と言われたので、KJとしてはあとの対応は組織に任せた。編集担当から転送されたメールの一部を紹介する。前後は省略してある。

―当該記事は、「内ゲバ」問題を、「平井純一」文を引用するかたちで、革マル派の問題と、ほぼ正しく位置づけておきながら、同映画が実質的に革マル免罪の映画になっていることに全く無自覚な、ちょうちん記事になっています。―

 私は1960年の早生まれで、78年入試で早稲田の一文を記念に受験した。テレビ映像で68年以降の青年の反乱を知った世代で権威主義には反発があったので、高校進学では公立の新設校を志望した。担任らは進学校への入学者を増やすために親を説得し、いやいや応じた。文部省の指定校だったため、教員らの評価のために犠牲になったわけだが、反権威のために学生運動も選択肢としてはあったので応じた。
 高校では不登校になった。5月6日に放送されたテレビドラマ「むこう岸」(注2)の「有名私立中学で落ちこぼれた」少年と立場は近いが、私には出席日数を数えてくれる友人がいたし、教科書を見ながらの追試を認めてくれる教員らもいた。思い出すと不登校をはじめた時期はスト権ストの数か月後だ。大学で反権威を貫く以外に、労働者になりストライキをするとか、地域活動をすることも選択肢に加わってきた。
 78年3月25日の晩、親と縁を切って浪人生活をする友人の送別の宴が夜通しあり、翌日の三里塚全国集会にそのまま行こうということになった。翌朝、10名近くいた仲間のうち4名で三里塚第一公園に向かった。最寄り駅はじめどこの駅近くの電柱にはステッカーが貼られていたので満場一致だった。4名のうち2名は早稲田へ進学している。私は地域活動に参加、地域生協を紹介されて三里塚の野菜を配達してきた。代島治彦監督の作品を紹介する必然があった。なにより、クラウドファンディング(注3)の締め切りが近づいていたにもかかわらず、最も「内ゲバ」を批判してきた第四インターが映画への協力を求める発信をしていなかったからだ。
 新時代社へのメールは、KJがどこかで試写をみたことを前提に書かれているように思ったが、5月5日に早稲田奉仕園で開催された「特別先行上映&シンポジウム@早稲田奉仕園」がはじめてだ。「平井純一」文を引用したのは、革マル派批判に加え、中核派なども加えねばならないので簡略化したためだ。

先行上映会に200人

 その先行上映会では、定員約200名のスコットホールがほぼ満席になった。
 ホールには暗幕設備がなく、日没時間を待つように進行役の代島さん、原案作家の樋田毅さん、劇パート演出の鴻上尚史さんが登壇したシンポジウムが行われた。代島さんが会場参加者に早大現役生に挙手を求めると、10数名が手を挙げた。後半は、川口大三郎さんの同級生など映画に協力、登場した数名が会場最前列から広報に向かってそれぞれの記憶、思い、原案や映画への感想が述べられた。「映画の題名は『彼は早稲田に殺された』とすべきであった」という発言は関係者や参加者の多くに突き刺さっただろう。川口さんは革マル派に「中核派と誤認され殺された」わけだが、大学当局と革マル派との共存関係によって何重にも何度も殺されたと受け取った。
 休憩をはさんで上映が行われた。ひとつだけ解説しておく。池上彰、佐藤優、内田樹の役についてだ。池上は川口さん虐殺場面の再現劇のオーディションで選ばれた演者らに、事件当時の「左翼史の講義」の実写版で登場する。池上との左翼史の共著がある佐藤の役割もこれに近いが、代島と鴻上に近い世代の代表としてのインタビューだ、としておこう。
 東大生だった内田は革マル派活動家の友人・金築寛が神奈川大学で殺された。金築を追悼する東大では、中核派が革マル派と誤認してバールを使用して四宮俊治さんが虐殺されたことを他の友人の発言と合わせて早大以外への暴力の拡大とエスカレートする凶器使用を表現した。
 この催し後、千葉駅近くの千葉解放塾で一緒に泊り、近辺で飲み歩いた友人らと作品の感想を語り合った。内田が革マル派に誘われて三里塚の集会に向かう際、「千葉駅近くのおでん屋で集団無銭飲食をした」という場面について、誤りであるという結論に達した。内田の発言通りであれば京成線の経路が違い、千葉駅近くには該当するようなおでん屋はなく、京成成田駅近くのある路地にある飲食店のはずだ。
 さいごに。映画製作者に「革マル派からの妨害などはないか」と質問したが「全くない」とのこと。「内ゲバ」とは、組織内部に向かった統制がエスカレートしたものともいえるので、組織外部である映画製作者への批判は行わず、組織内部に向かって批判を喧伝し、統制を強化しているのだろう。(KJ/5月17日記)

注1 https://www.asahi-net.or.jp/~ir8h-st/kawaguchitsuitou.htm

注2 ドラマ「向こう岸」は、2019年に貧困ジャーナリズム大賞特別賞を受賞した小説『むこう岸』を実写ドラマ化した作品。ヤングケアラーの少女が、有名私立中学をドロップアウトした少年と出会い、ともに自らの状況を打開して未来への希望を見出してゆく姿を描いた作品です。

注3 クラウドファンディングには299人から約364万円がよせられた。

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