映画紹介『夜明けへの道』

監督・脚本・撮影 コ・パウ

指名手配された映画監督が描く「逃亡劇」と「ジャングルでの潜伏生活」

民衆の大義を全世界に訴える

軍政打倒のゆるぎない信念

 ミャンマーの著名な映画監督コ・パウが制作した『夜明けへの道』が新宿・ケーシネマで4月27日公開された。朝10時からこの日は1回だけの上映だったが、80数席の座席がほぼ埋まっていた。NHKが動画を撮 りインタビューを行っていた。上映後には、ラインでジャングルで生活する監督の意見が聞けた。

 2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起きるまで、コ・パウ(49)は映画監督・俳優として精力的に活動していた。映画の最初は、クーデター前の監督作品を思わせるような、お笑い芸人のマネを監督自らがやっているシーンが写された。それからあの2021年2月1日の軍事クーデター。民衆は街頭に無抵抗の座り込みやデモで抗議する。夜には鍋を叩く。それに対して軍はデモ隊を乱打し、銃撃を行った。
 コ・パウは「歴史を記録したい」と、クーデター直後から家族や最大都市ヤンゴン、民主化運動の様子を撮影しはじめ、自身も平和的なデモを主導する。ところがクーデターから2週間余りが経った頃、彼を逮捕しようとした当局が自宅に押し入る。さいわいデモに参加していて不在だったコ・パウは、そのまま家族のもとに戻ることなく、長い逃亡生活に入る。少数民族が戦う「解放区」へ決死の逃避行を行う。
 ようやく「安全な解放区」にたどりつくと、PDF(国民防衛隊)や少数民族の若者たちが軍事訓練するキャンプだ。若者たちのきびきびした動きや真剣に戦いに備える動き、そして食事の時の和やかな姿に好感が持てた。そこでは、解放放送が作られ、全国に配信されている。監督はそれを支援する。監督自らが軍服を着て、行動にも参加する。
 政府軍による爆撃によって村が焼け出される姿なども映し出される。学校が焼かれ、塹壕で授業する子どもたち。ミャンマー国内で教師として活動している友人に監督が今何が必要かと聞くと、教科書と答えると思っていたら、「村を焼き人々を殺している爆撃機を撃ち落とすためのミサイルが欲しい」との答えに絶句する場面がある。クーデター後には、監督の小さな子どもたちまでもが武器を持って軍政と戦うというのだ。
 この映画では監督が家族と幼い子どもたちと離れ離れになり、殺されるかも知れないと恐怖を抱えながら、命がけで軍政打倒のために、民主主義の実現、未来のために戦う、そして戦おうと何回も呼びかける。最初に映し出されたお茶目な監督から、引き締まった姿に変貌して淡々と決意を語る姿は何か「人間の根源的な力」を感じさせるものだった。

 強く胸を打つ
 支援への訴え

 クーデター後に当局に逮捕された人は2万6555人、殺害された人は4920人に達する(人権団体「政治犯支援協会〈AAPP〉2024年4月23日時点)。監督はこうした犠牲者の思いも背負って戦っているという。
 2023年10月以降、ミャンマー東部で民主派や少数民族武装勢力が優勢に転じ、2024年4月にはタイ国境地域の主要な貿易拠点であるミャワディを制圧した。北部、西部でも厳しい戦いだが国軍との戦いを進めている。
 この映画は戦う人々の姿を見てもらい、国際的支援を訴えるものだ。その点で、全編が監督の語りと映像になっているので、極めて分かりやすく、胸を打つものだ。「よし、軍政を倒すためにがんばろう、支援をしよう」という熱い思いが湧いてきた。

 日本政府の支援
 を変える行動を

 映画終了後の監督とのインタビュー。
 監督のいる小さな掘っ建て小屋の国民防衛軍のキャンプ が映し出される。監督は次の動画を撮るために、川の先に政府軍がいる所にいる。監督は「日本人は民主主義のない国を経験したことがないだろうが、ミャンマー人は日本と同じ、民主化、自由、同じような人権を持つために戦っている。ミャンマーの人権を取り戻すために支援してほしい。自国の国民を殺害している軍に対して、そのまま支援を続けていくのか、軍に対して何もしないのか、日本政府に問うて、実効性のあるものにしてほしい」と訴えた。これに応える闘いを在日ミャンマー人たちと担っていこう。
(滝)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

・発行編集 日本共産青年同盟「青年戦線」編集委員会
・購読料 1部400円+郵送料 
・申込先 新時代社 東京都渋谷区初台1-50-4-103 
  TEL 03-3372-9401/FAX 03-3372-9402 
 振替口座 00290─6─64430 青年戦線代と明記してください。