書評 書名「The Korean War: A History(朝鮮戦争の歴史)2011」

著者:Bruce Cumings (ブルース・カミングス)

 昨年末から今年にかけて朝鮮民主主義人民共和国(以下、「朝鮮」)がミサイル発射実験を繰り返し、朝鮮半島情勢は緊迫の度を増している。2月に実験は行われなかったが、3月に再び実験が再開された。数年前から、朝鮮半島情勢は1953年以降で最も危険な状態が続いている。朝鮮半島における戦争の危険性は高まっており、朝鮮と大韓民国(以下、「韓国」)の関係を根本的に変える過渡期に入った。過去約70年間、南北朝鮮は危機的状況にあっても対話を通じて関係を改善してきた。しかし近年は、その対話すら困難な状況である。昨年9月、朝鮮は事前の通告なしに、憲法に「先進核」政策を明記した。そして同年11月24日、朝鮮は緊張緩和のための2018年の南北合意を完全に破棄し、すべての軍事活動を再開すると発表した。さらに今年1月15日の最高人民会議での演説で金正恩は、韓国を占領する意向を表明した。金正恩は韓国を「最も敵対的な国家、不変の主敵」と表現し、その国の憲法に明記した。現在、朝鮮と韓国が偶発的に衝突すれば、停戦中の朝鮮戦争が再開される可能性がある。
 朝鮮戦争休戦以来の危機的な時期にあたり、久しぶりに本書を手に取ってみた。
 本書は、以下の著者の言葉から始まる(以下、筆者訳)。
 「これは朝鮮戦争について書かれた本であり、アメリカ人のために、アメリカ人によって書かれたものである。基本的には朝鮮半島の紛争であるが、アメリカでは1950年6月に始まり1953年7月に終わる、アメリカ人が主役となった個別的で包括的な物語であったと解釈されている」。
 著者はこれまで、本書以外でも朝鮮戦争について多くのことを語り続けてきた。本書において、朝鮮戦争は内戦と定義されている。アメリカ主導の国連軍の旗の下で行われたこの戦争については、多くの見解があった。時には誤解され、長い停戦のなかで時には忘れられ、あるいは故意に無視されてきたその戦争を、著者は全部で300ページほどの簡潔で無駄のない英文で描いている。アメリカ人にとって朝鮮戦争は、1950年から1953年までの散発的な紛争であったかもしれない。しかし、朝鮮人、そして東アジアの人々にとっての朝鮮戦争は、まだ終わっていない。現代もその地域に住む朝鮮人にとって、その戦争は何世代にもわたる苦しみであり続けた。本書でブルース・カミングスは、第二次世界大戦後のアメリカによる朝鮮半島占領の無視された歴史を共有し、血なまぐさい反乱と、語られてこなかった物語を本書で明らかにした。アメリカが朝鮮戦争の南側で犯した恐ろしい虐殺、そして残虐行為がこれでもかというように描かれている。保存された文書のアーカイブ、そして数多くの新たなエビデンスや秘密資料にアクセスすることで、実際に戦われた戦争に実態が明らかにされていく。
 本書は、日本による朝鮮の植民地支配にも触れている。本書の出版された前年の2010年は「朝鮮戦争の開戦から60周年であると同時に、日本が朝鮮を植民地化して100周年」であった。そして著者は朝鮮戦争を「日本の帝国史、とりわけ1931年の日本の侵略の黎明期にあった中国東北部(満州と呼ばれていた)で、その遠い胎動があった。朝鮮を植民地化しようとする日本の野望は、アジアにおける最初の近代的大国としての日本の台頭と重なった」と説明している。そして朝鮮半島を「世界のほとんどの国が分割され、植民地制度全体を解体しようという進歩的な動きが出てきた後に、世界の時間の中で「遅れて」やってきた奇妙な植民地」としている。著者にとって南北朝鮮の対立は、「1930年代に満州で10年にわたる戦乱に発展した日韓の敵対関係を引き継いだものであり、その意味では80年近く前のもの」であるとしている。
 そしてこの「アメリカ人が主役となった」戦争について著者は、「一般市民が虐殺された卑劣な歴史があり、そのなかでは、朝鮮は凶悪なテロリストであるというアメリカのイメージとは裏腹に、表向き民主的な同盟国が最悪の犯罪者であった」と断罪している。
 本書によると、朝鮮戦争での死者は約300万人で、そのうち半分は民間人である。その数は日本の太平洋戦争での死者数を上回る。
 現在、南北朝鮮の両政府は、通常兵器ではない核兵器に言及し、強硬路線をとっている。これらの政策は、今後の南北朝鮮間の緊張を激化させるとともに、これまでとは異なる緊張関係を与える結果をもたらす恐れがある。もはや南北朝鮮は、同族ではなく、敵対的二国間関係となっている。金正恩政権は、核兵器を背景にさらに危険な道を歩んでいる。しかし核兵器の使用は政権の崩壊を招くことになるであろう。そして、この緊張のエスカレートは、南北朝鮮だけでなく、東アジア地域をこれまで以上に緊迫したものにする可能性がある。本書に込められた歴史と記憶が、70年の時を超えて、再び現実とならないことを祈るばかりである。(YN)

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