フランス「黄色いベスト」運動を学ぶ 3

直接民主主義の体現
代議制の限界越える挑戦

この運動の評価をめぐる対立と論争
運動への2つの評価

 一方の評価。
「黄色いベスト」運動に対して「これは極右派の運動だ」という評価がある。当初、国民戦線をはじめとする極右派がこの運動を利用しようとして介入を試みたことは事実である。しかし、極右派の「介入」によって政府と交渉して取引、譲歩を引き出し、これを選挙での票獲得に利用をねらった。だが、これは運動側からも拒否された。また、マクロン政権の強硬な姿勢に本質的な譲歩はなく、強硬な姿勢を貫き、すさまじい暴力的弾圧が続いた。

 参加者への世論調査から全体の三分の一が、左翼でも右翼でもない「ノンポリ」だと言える。
政治的立場を表明した人々のうち――四〇%以上が自らを左翼としていて、革命派だと答えた人は一五%、右翼だと答えた人は一五%以下、極右と答えたのは五%だった。
その後、労働組合や左翼政党が参加し、こうした労働運動や左翼政治勢力との共闘の中で、黄色いベストに参加している人々の意識も変化していく。
労働組合や政党の側からはどのような働きかけがなされていたか。労働組合と極右派の攻防の現れとしてミュレでのCGT横断幕問題があった。「ファッショではなく、ファッショを(怒れ)を!」掲げる。これを妨害しようとした極右の試みは失敗する。
自分たち自身が運動を立ち上げ、運動していく中で人々の意識は変わっていくことの現われだ。ところがイギリス、アメリカとの違いでは、移民排除の「カリスマ」的政治家を受動的に選択し、それに委ねるところにとどまる傾向があった。
なぜ、このような評価が生まれるのか? 例えば、プジャード運動(一九五〇年代の自営業への税負担の軽減を求める極右運動)があったが、マリーヌ・ルペンの父はこの極右運動の議員だった。
フランスの左翼も民族主義を引きずっている。左翼のナショナリズムは、例えば、国外の敵―ヨーロッパの王政の攻撃からフランス革命を防衛したという起源を持っている。また、第一次大戦後にフランス共産党が成立し、第二次大戦後はド・ゴールのアメリカからの独自外交をフランス共産党が忠実に従った。
その政策がどうなのかは、インドシナ戦争、アルジェリア戦争に対する社会党と共産党の恥ずべき対応の歴史が示している。
今日、ヨーロッパでは、一九三〇年代のユダヤ人に匹敵する人種差別の攻撃対象はイスラム系の人々だ。今、挙国一致的「反イスラム」に対していかに抗するかがフランスでは問われている。
もう一方の評価。
「黄色いベスト」運動は、従来の「労働組合」運動や左翼の運動との違いを強調し、自分たちの自前の運動であることの意義を高く評価する。この運動を支持し、参加する労働組合や左翼の動きを、外からの介入として反発する気分がある。
例えば、日本の反原発運動の中での、青年たちの労働組合に対する反発 ドイツの緑の党の「世代交代」など今日の時代における全世界的に共通する課題と言える。
エンツォ・トラヴェルソは、二〇世紀の運動と二一世紀の運動の断絶・亀裂と言った。新旧二つの運動の亀裂にいかに立ち向かうか。

 6 われわれに問われているもの

◇この亀裂をどうすべきなのか?
まずこの運動は、きわめて大衆的な民衆によるマクロン政権に反対する運動であり、マクロンを窮地に立たせるところにまで追いやっている。フランス国民の圧倒的支持を受けている。ここから出発すべきだ。
そのうえでこの大衆的運動は、マクロン政権を窮地に追いやっているが、この新自由主義を体現するこの政権を打倒するまでに到達するには、労働組合を含むさまざまな社会運動や左翼の政党の合流が不可欠である。
どちらか一方が絶対に正しく、他方が絶対に間違っている、と考えるべきではない。これまでの運動がさまざまな限界をもっていて今日に至っている、それに対する不信から生まれている二一世紀の運動はいまだ形成途上であり、未だ不確定なままである。
古い運動の中で活動し、その限界を突破しようとして来た勢力はどうすべきなのか? 二つの運動の間の架け橋を試みる必要がある。共同の闘いの中で相互の経験と理論を交換、討論を積み上げ、長い時間をかけて共同で新しい運動と展望を練り上げていく必要がある。
今回の闘いの現実の展望からしても、両者が収斂して合流していく必要がある。二つの陣営のうちのどちらか一方の勢力だけでは、マクロン政権を決定的に後退させることはできない。「みんないっしょに」(tous en ensemble!)。すでにこの試みが始まっている。
実際に運動の合流に向けて次のような試みがなされている。
・コメルシーの黄色いベスト運動全国集会の呼びかけ(一月二六日)
・それを受けた社会運動と左翼政党の共同アピール(二月七日)
・パリでの共闘委員会でのアピール(三月一六日)。
・サン・ナザール全国集会のアピール(四月五日~六日)

 ◇運動の変化

 「コメルシーの集会アピール 2月5日のストライキの呼びかけ」は、労働組合の運動への参加 共同のデモ、封鎖を呼びかけている。「ファッショではなく、ファッショ(怒りを)を」もその現われただ。
運動的にも女性の参加者の増大、「下からのCGT派」系組合+SUD系の組合、教員組合などの参加が増えた。
さらに気象変動をめぐる高校生の闘い、フォード自動車工場での闘い、グルノーブルの空き家占拠闘争、アルジェリア、スーダンでの民衆の決起が続いている。

7 今後の課題


課題として、以下のことが上げられる。
①黄色いベスト運動と社会運動との合流を強化・拡大していくこと
②CGT全国指導部の協調路線を変更させていく闘い
③極右派との闘い、人種差別主義、民族排外主義との闘い

 さらにRIC(市民のイニチアチブにもとづく国民投票)の要求が提起している問題を具体的な闘いに代議制民主主義(間接民主主義)の形骸化、空洞化に対してどうすべきか?
黄色いベストの人々は、政治家を選んだ後、議員たちが裏切っても何もできない代議制システムでは不十分だと考えている。
だからこそ議員の報酬を労働者の平均賃金にし、任期と途中でもリコールできるようにするだけでなく、重要問題について自分たちの意見を直接に表明できる「住民投票」、「国民投票」という直接民主主義を求めている。
スペインのカタルーニャの人々が自分たちの運命を自分たちで決定しようとしたようにだ。これは、原発問題や沖縄問題とも深く関連してくる民主主義の問題として重要である。「黄色いベスト」の運動を支援するということは、今日、全世界で問題になっている「民主主義の危機」、グローバリゼーションによる民主主義の空洞化、これまでの代議制民主主義のさまざまな弱点、限界の問題を取り上げ、それを具体的な要求にまとめ、そうした要求を実現する闘いを展開していく必要がある。  (了)

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