エコ社会主義の追求は急を要す

気候 1・5℃に関するIPCC報告

第四インターナショナル・エコロジー委員会

 つい先頃IPCCから、産業革命以前期比で一・五℃の地球温暖化がもたらす影響についての特別評価報告が公表された。そこでは従来推測されていた以上の大きな影響が起きると予想され、それは日本の各種メディアでも一定の警告を交えて報じられている。しかしこの報告では、真に必要な施策は回避され、むしろ極めて危険な方策への依拠を暗示する部分も含められている。そして日本のメディアでこの部分に触れているものは非常に少ない。以下では、この問題部分を含めた、今回の報告への批判的評価とわれわれに求められる対応が危機感をもって訴えられている。(「かけはし」編集部)

1・5℃を超
えないが必須


 驚くことではないが、一・五℃までの地球温暖化に関するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)特別報告は、人為的気候変動の影響が恐ろしいものになり、社会的にも環境的にもその両者でその影響が過小評価されてきた、ということを確証している。
 われわれがすでに経験しつつある一℃の温暖化は、大きな悲劇を引き起こすに十分になっている。すなわち、前例のない熱波、ハリケーン、洪水、氷河と氷冠の乱調だ。これらは、人為的な温暖化ができるだけ早く止められない場合、何がわれわれを待っているかについて、一つの考えを与える。惨害はもはや阻止できないが、しかしできる限りそれを限定することはまだ可能であり、また必要なことだ。
 この報告は何の疑いも残さない。つまり、二℃の温暖化は、パリ協定に含められている一・五℃の温暖化(小さな島国の諸国、もっとも低開発の諸国、科学者、また気候運動からの圧力の下に)よりもはるかにもっと深刻な結果になるだろうと。最新の研究によれば、「温室の地球」に対する閾値という問題では、二℃が引き金になることさえ可能性があるのだ。最大一・五℃というこの限度の尊重を確実にするために、あらゆる努力が払われなければならない。
 このことは、不可能ではないとしても、「マイナス排出テクノロジー」(TEMs)とジオエンジニアリングを使ってさえ(注)、極度に挑戦的なことだ、IPCC報告はこう評価している。したがって同報告は、先のような技術に頼って世紀の後半に冷却することにより相殺される、「一時的なはみ出し」というシナリオに触れている。
 このシナリオは非常な危険に満ちている。実際にも一時的なはみ出しは、数メートルにおよぶ海面上昇に結果する、グリーンランドと南極大陸の氷冠に関する大きな部分の突然の崩壊といった、大規模で非線形、そして不可逆的な移行を引き起こすことも十分に可能なのだ。それほどに、状況は深刻だ。
 これらの移行は、地球というシステムを暴走的気候変動へと押しやる、相互影響の連鎖を解き放つ可能性がある。加えて、先に挙げた考慮されている魔法使いの弟子的技術は、仮説的なものにすぎず、しかもそれらの効果は極めて否定的になりかねないのだ。

利潤法則前提
の発想は無力


 「排出されていないCO2の全量が大切だ」、科学者はこう語っている。実際全量が大切だ、地球の救出には、できるだけ早い、そして完全な、全化石燃料の使用の停止が必要なのだ。それでは専門家は、以下のようなものからの排出をなぜ数えないのだろうか? つまり、無用で有害なもの――たとえば兵器――の生産と消費、あるいは多国籍企業の利益を最大化することにしか役に立たない愚かしい国際的な商品運送、こうしたものからの排出ということだ。
 国際運輸からの排出を削減する直接的な方策としては、国際海運や国際運送が使用する化石燃料に対する恒常的な増税がなされるべきだろう。税収は、グリーン気候基金を介してグローバルサウスに再配分されなければならない。
 原理的には、一・五℃を超えないことを真剣に目標とする戦略には、一つの優先策として不要あるいは有害な生産の廃絶、また地域の環境適応農業(全員に良質な食料を提供しつつも、巨大な量の炭素を固定できる)を選択する中でのアグロビジネス放棄が必要になる。
 しかしこれは、資本主義の利潤法則との決裂を意味する。問題は、この法則が社会的進展のまさに心臓部に位置し、そのことが予想にとっての基礎として役割を果たしている、ということだ。IPCC第五報告はこのことを「使ったモデルは完全に機能する市場と競争的な市場行動を当然のこととして仮定している」と文書の形で述べている。
 IPCCの専門知識は、気候変動という物理現象の評価という問題になる場合は必要なものだ。他方で、その安定化戦略は、成長と利潤という資本主義の要請に対する従属により偏向させられている。原発の維持、およびマイナス排出テクノロジーとジオエンジニアリングの展開と一体化された一・五℃からの一時的はみ出しというシナリオは、主には先の要求によって指示されている。

エコ社会主義か
バーバリズムか


 一・五℃に関するIPCC報告は、COP24交渉に対する基礎として役割を果たすだろう。この交渉には、パリで決定された最大限一・五℃、それと現在の各国ごとに決定された貢献を基礎に予想された二・七℃―三・七℃の間にある溝を埋める、との意向が込められている。しかし資本家と彼らの政治代表は、彼らの足をブレーキの上に乗せている。つまり彼らにとって、化石燃料を地中に残すなどということは問題外なのだ。
 そして、新自由主義との決裂も、食料主権も、一〇〇%再生可能エネルギーへの最速で可能な移行を計画するためのエネルギー部門の社会化も、真に公正な移行と気候の正義も、問題外なのだ。逆に、高度に仮説的なマイナス排出テクノロジーが排出削減目標をさらに弱めるための口実として利用される、という大きな危険がある。
 「排出されていないCO2の全量が大切だ」。しかし、誰が今計算しているのだろうか、どちらが社会的に優先かを基礎に、どちらの必要に役立てるか、誰によりどのように決められているのだろうか? 今までの四分の一世紀の間、諸々の計算は、本物の民主主義などものともせずに資本家と彼らの政府に握られてきた。
 結果は衆知の通りだ。すなわち、さらなる不平等、さらなる抑圧と搾取、さらなる環境破壊、富裕な者たちによるさらなる土地強奪と資源専有……そしてかつてよりも大きな気候の脅威だ。今こそゲームのルールを変える時だ。
 環境運動、労組運動、農民運動、フェミニストと先住民の運動の強力な世界的な決起が必要であり、それは急を要している。怒りを覚え、政策策定者に圧力をかけるだけではもはや十分ではない。われわれは立ち上がり、諸闘争の集中をつくりあげ、何百万人、何千万人で街頭を埋め、化石燃料への投資や土地強奪や軍国主義を阻止し、農民支援に精力的に投資し、資本主義の枠組みによっては決定されない社会的諸行為に向けた基礎を整え……と、こうしたことを行わなければならない。
 気候の課題は主要な社会的課題になっている。搾取された者と抑圧されたものだけが、彼らの利益に一致した回答を与えることができる。エコ社会主義かバーバリズムか。これこそが、ますます鮮明になろうとしている選択肢だ。われわれの地球、われわれの命、命それ自身、それらは彼らの利益よりも価値がある! (二〇一八年一〇月八日)

▼エコロジー委員会は、環境問題について活動しているFIの国際機関。
(注)マイナス排出テクノロジーは大気中から炭素を取り除くことを目的に置き、ジオエンジニアリングで想定されていることは、大気中への太陽エネルギー取り入れの限定。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一〇月号)

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