パンデミック 新型コロナウイルスのエコロジー的側面
実現すべき社会変革の種類が問われている
利益ではなく使用のための生産へ
アラン・ソーネット
新型コロナウイルスのパンデミックは、急速に世界中に拡大し続けており、中国のように早い時期に断固としてコロナウイルスを管理しようと動いた国やあらかじめそのような状況に準備ができていた国を除けば、制御不能の状態にある。
もう一方では、もっとも大きな政府の失敗は、最初のうちは事実上ウイルスを否定していたジョンソンやトランプのような右翼ポピュリスト政権の手によるものだった。しかしながら、彼らも遅ればせながら、自分たちの行動によって何十万人もの人々が必要もないのに命を落とすことが明らかになると、新型コロナウイルスを深刻な脅威だと認識せざるをえなくなった。
従来的対応からの脱皮突きつけ
われわれが明らかにしなければならないことは、そのようなパンデミックは、われわれが直面している世界的なエコロジー危機の不可欠の一部であるいうことであり、そのように考えて対応しなければならないということである。
パンデミックは、地球上に存在する生命に対する他の脅威、たとえばわれわれが直面している汚染(とりわけ海の汚染)、地球温暖化、気候カオス、種の大量絶滅、新鮮な水の危機、氷床の溶解、海面上昇などと匹敵するものである。このパンデミックは、人新世(人類の活動が地球に大きな影響を与えていることで定義される地質学的年代)の反映として、それらの脅威のひとつに数えられる。
この種の危険な「集団感染」症のパンデミックは、よく成熟した社会・経済政策を持ち、十分なリソースを有する政府だけがとりくむことのできる難題を突きつけている。自由市場を信奉し、小さな政府しか持たない、新自由主義的な資本主義は、致命的で反動的なイデオロギーのために危険に晒されている。この状況のもとでは、極右イデオロギーはいつもよりもずっと多くの人々を殺すことになる。
イギリスでは、ジェレミー・コービンが(そしてそれとなく労働党の選挙マニフェストが)医療・社会サービスに大規模な投資をすべきだと主張したことの正しさが立証された。前年の総選挙においてコービンを(アメリカではバーニー・サンダースをも)最後のバラマキ政治家と嘲笑していた右翼は、自分たちの言葉を飲み込むだけでなく、自分たちがけなした政策の多くを実行せざるをえなくなっている。コービンは、そうした政策を主張した点では完全に正しい。
これらすべてのことは、草の根からの協働と社会的連帯の高揚とともに、左翼にとって重要なチャンスを作り出しているが、私の考えでは今までのところ、ウイルスに対しての左翼の対応は必要な水準にまでは達していない。
根源解明と対応可能な社会模索
左翼が、政府の準備不足、行動の遅さ、何千人もの不必要な死について政府を非難したのは正しかったし、資本主義システムがパンデミックの起きる社会条件を作り出したことに異議を唱えたことも正しかった。左翼は、資本主義システムによる地球の汚染、工業化された農業、森林伐採、生息地破壊、そして野生であれ家畜であれ、動物に対する資本主義特有の虐待を指摘した。
左翼は、この一〇年間の保守党や自由民主党による意図的で破壊的な予算削減が、イギリス社会をこの種の危険なパンデミックに対して脆弱なままに放置したと正しく指摘した。左翼は、あ然とするようなジョンソン政権の無能力さ、犯罪的な(社会ダーウィン主義的な)集団免疫政策、そして重要な局面での容認できないウイルス検査の軽視を非難した。さらに加えて、国民保険サービス(NHS)や公的介護にたずさわる何百万人もの労働者に、基本的な救命防護設備を提供できなかったことも非難した。
パンデミックの経済的影響が大きなものになることも明らかである。低賃金労働者、若年労働者、黒人労働者、移民労働者、女性労働者が、レストラン・ホテル・パブ・小売店・輸送業を含むビジネスの休業によって、もっとも深刻な打撃を受けるだろう。
実際のところ、低所得者は閉鎖された部門で働く割合が、おそらく高所得者より七倍も高いと言われている。財政問題研究所(訳注:イギリスの民間シンクタンク)によれば、所得最下層一〇%の労働者の三分の一が、最も打撃を受ける部門で働いていた。ところが、所得最上層一〇%の人々は、わずか二〇分の一(五%)しかそういう部門で働いていなかったのである。
これらは左翼からの良好な対応ではあるが、問題もある。われわれは左翼エコロジストとして、このパンデミック(あるいは一般的にパンデミック全般)の分析を、パンデミックが発生し、それが継続しているときにさまざまな政府がいかに適切に(あるいはいかにそうではなく)対応したのかについての分析にとどめておくことはできない(するべきでない)。このことは重要だが、本質的ではないからである。
われわれの出発点は、これらの病原菌が最初はどこに由来するのか、何が病原菌をパンデミックにまで追い込んだのか、なぜそういった問題がしばしば起きるのか、でなければならない。われわれはそうしたパンデミックからの出口戦略を持たなければならない。そして、われわれが将来においてパンデミックから受けるリスクを減らすことができるとすれば、そのために実現されるべき社会的変革の種類を議論しなければならない。
パンデミックは古くからあった
パンデミック(やエンデミック)が長期にわたって存在していたというのは本当のことだ。それは約一万二千年前に農業が発展し、それによって世界的に人口が持続的に増加したとともに発生した。狩猟採集時代には人口密度が少なかったため、そのような感染は限られていた。
アメリカの文化人類学者で著述家のジャレッド・ダイアモンドは『銃・病原菌・鉄』(訳注一)のなかで、次のように述べていた。「(人口の)増加は約一万年前に始まった農業の発展とともに開始され、数千年前に始まった都市の台頭とともに加速された」。彼は続ける。「なぜ農業の発展が集団感染症を引き起こしたのか? 狩猟採集よりも、農業の方がずっと高い人口密度(平均すると一〇倍から一〇〇倍高い人口密度)を維持できることが、言及される一つの理由だ。加えて、狩猟採集者はしばしば野営地を移動するのに対して、農民は定住して、自分たちの汚物の中で生活する。そのようにして、ある人の身体から別の人の飲み水へと短経路で病原菌を与えることになる」。
さらに続けて、「農業の発展が病原菌にとって大当たりだったとすれば、都市の勃興はもっと大きな大当たりになる。より劣悪な衛生条件のもとで、ますます高くなっていた人口密度がさらに悪化した。……もう一つの大当たりは、世界貿易ルートの発展だった。それは、ローマ時代まで、ヨーロッパ・アジア・北アメリカの住民を結びつけて単一の病原菌巨大培養地にした」と述べている。
記録に残る最初のパンデミックは「ユスティニアヌスのペスト」だった。それは、ユスティニアヌス一世治下のビザンチン帝国(東ローマ帝国)において、五四一~五四二年に発生した。とりわけコンスタンチノープルを直撃したが、地中海沿岸のその他の港湾都市にも大きな被害を出した。それは腺ペストであるとされ、一年間で二五〇〇~五〇〇〇万人が死亡した。「黒死病」(腺ペストの一種)は、一三四六年から一三五二年にかけて、ヨーロッパの人口の四分の一を死亡させた。それはヨーロッパにおける都市化と都市人口の増加によって助長され、人口の七〇%が死亡した都市もいくつかあった。そうした都市を結ぶ貿易の発展が問題をグローバル化させた。
(誤って命名された)「スペイン風邪」の流行によって、第一次世界大戦末期に二一〇〇万人が死亡した。それは過密で病気が蔓延していた西部戦線の塹壕で拡散し、復員した兵士によって各国へと持ち込まれた。このインフルエンザがまた特に破壊的だった理由は、第一次世界大戦中の食料不足が、戦争前でさえ窮乏のなかで生活していた労働者階級をとりわけ弱体化させていたからであった。
危険なパンデミックに対する医学的反撃の最初の可能性は、一七九八年にエドワード・ジェンナーが、牛痘によって天然痘に対する抗体が作り出されることが発見され、ワクチンへの道を切り開いたことだった。一九五九年には、世界保健機関(WHO)が世界的な天然痘撲滅の大キャンペーンを実施した。一九八〇年に天然痘の根絶が宣言された。現在のところ、撲滅された人間の病気はこれが唯一である。
しかし今日でも、ほとんどの病原菌はいまだに勝ち誇っていて、二〇世紀における現代医学の発展にもかかわらず、現代人の未来という観点からは歴史上のいかなるときよりも今日の方がより危険な存在になっている。
問題の根源、4つの原動力
この観点から、左翼は以下の問題を提示すべきである。
?この種の病原菌、とりわけ種の境界を超えて野生動物から人間へと感染する「人獣共通感染症」の病原菌(病気、ウイルス、バクテリア、宿主)はそもそもどのように生じたのか?
?人間と野生動物の境界がいったん超えられたとき、そうしたパンデミックの原動力は何か?
?現代医学による封じ込めの努力にもかかわらず、そのようなパンデミックが二〇世紀により頻発し、より危険となり、さらに二一世紀の初めにまでこの傾向が続いているのはどうしてか?
?そのようなパンデミックの可能性と影響を減らすために、どのような社会的変革をおこなわなければならないのか?
私の考えでは、これの原動力となる四つの要因がある。
① グローバリ ゼーション
第一の要因はグローバリゼーションである。世界経済だけでなく、人間活動全般のグローバリゼーションが、国内外の交通機関の発展とともに、病原菌やパンデミックのための高速伝導ベルトを提供したのである。国際民間航空機関(ICAO)によれば、定期航空便の総乗客数は二〇一八年には四三億人にのぼり、前年比六・四%増であった。二〇一八年の航空便発着数は三七八〇万回で、三・五%増だった。
② 耐え難い自然との関係
エコ社会主義者として、われわれは、全面的に受け入れることのできない(現代人としての)われわれと地球上の残りの自然との関係を拒絶しなければならない。実際に、その影響はとんでもなく巨大なものである。
この影響についての真剣な推定は、『物質的テクノスフィア(訳注二)の規模と多様性:地質学的観点』(二〇一六年秋の『文化人類学批評』に掲載)というタイトルの研究レポートに含まれている。それは、二五名の科学者による共同の成果であり、レスター大学のイアン・ザラシエビッチが代表執筆者となっていた。それによると、物質的テクノスフィア―現代人間社会の物質的な生産、物的インフラ、廃棄物(たとえばゴミ)の総量。発電所、道路、建物、乗り物、プラスチックなども含まれる―と呼ばれるものは総体として、三〇〇億トン、言い換えると一人当たり四〇〇〇トンになる。
危険なパンデミックに対する気候変動の影響について、『深い適応:気候悲劇の案内地図』(二〇一八年)の著者であるジェム・ベンデルが彼のブログの記事で述べている。彼は気候変動がこれらのウイルスに対して人類をより脆弱なものにしていると論じている。
彼によれば、「雨量や気温の長期にわたる変化、増大する変異や季節の移行は、樹木や他の植物にとって持続可能ではない。それはエコシステムのなかで生活する昆虫や動物が被害を受けていることを意味する。生物多様性の喪失はすでに巨大であり、われわれは大規模な野生動物の絶滅の中で生きている。鳥やコウモリ(訳注三)のような野生動物の総数の減少は、われわれが病気にさらされる結果をもたらす。どうしてか? これらは病原菌のための「病原体保有動物」であり、鳥やコウモリの数が少なくなると、病原菌の集中と混合がより高くなる傾向にあるからである(遺伝子多様性が減少すればするほど容易に拡散するという理由で)。それは人畜共通感染症が人間に及ぶ『過剰な危険』を増大させる」とのことだ。
これは説得力のある議論である。すべての動物の種は、野生動物であれ家畜であれ、人間によって工業的に、特に工業的な農業(とりわけ食肉生産)によって酷い扱いを受けている。工業的農業は、動物ウイルスが人間に感染するうえで絶好の条件を作り出している。最近の歴史において、人間を殺している主なもののいくつか(天然痘、インフルエンザ、結核、マラリア、麻疹(はしか)、コレラ)は、動物起源で人間に感染するようになり、いまは人間だけに感染が限られているものがほとんどである。
今日、毎年七〇〇億匹の(魚を除く)陸上動物が人間の消費のために(しばしば恐るべき条件のもとで)屠殺されている。この数字は過去五〇年間で倍増し、二〇五〇年までにさらに倍増する見込みである。こうした動物の三分の二は、(貿易においては集中動物飼育管理(CAFOs)という名で知られている)集約的な飼育法によって飼育されている。
ベンデルが指摘する例は、おそらく新型コロナウイルスについてはその状況の一部なのだろう。しかし、もう一つの要因として、最終的にさらに決定的なものは人間それ自身の数と人口密度である。
③ 都市化と人口密度
新型コロナウイルスの発生源は、WHOによれば(ベンデルもそれを受け入れているが)、過密状態にあった武漢の「海鮮市場」であると信じられている。そこでは、生きたままの動物も含めて多様な種の動物(哺乳類、魚、鳥)が多数、密集した状態でいた。そのなかには、普段はそんなに密集して生息していない種もいたのである。同時に、このことすべてが高い人口密度をもつ一つの都市において起きているのである。ウイルスが種を超えて伝播するのに最高の条件を作り出すために、諸要因が結びついたかのように思える。
新型コロナウイルスはコウモリで運ばれたウイルスがもとになっていて、それがセンザンコウを媒介種として人間に伝染した。コウモリもセンザンコウも市場内で売られ、さばかれていた。SARSウイルスも二〇〇二年に重篤な呼吸器症候群を引き起こしたが、同様に中国のコウモリのなかで広まり、ジャコウネコを媒介して人間に伝播したと考えられている。
種の境界を飛び越えたあと、病原菌は生き残るために、最小閾(しきい)値の人口密度を必要とする。ジャレッド・ダイアモンドは、麻疹は近接した地域で人口が五〇万人以下だと死に絶えてしまうようだと指摘する。麻疹で当てはまることは、世界中の他の伝染病でも当てはまる。
世界中の政府によって現在実行されている社会的距離を取るという政策は、人口密度の果たす役割を認識してのことであるとともに、一時的な「解決策」を見つけようとする試みでもある。ニューヨーク市長のビル・デ・ブラシオは、新型コロナウイルスの感染者が増加し、ニューヨークがアメリカ合衆国におけるパンデミックの中心点になったときに「われわれの敵は人口密度である。今まではそれが好きだったが、今ではわれわれを殺している」と述べた。
二〇一八年のデータでは、北アメリカは世界でもっとも都市化が進んでいる地域であり、人口の八二%が都市に居住している。その一方で、アジアでは約五〇%が都市に居住しており、アフリカではまだ多くの人々が農村部に住んでいて、四三%が都市居住である(国連、二〇一八年)。
二一世紀はじめに都市人口が農村人口を上回った。そのときから毎年七千万人となる世界の人口増加の三分の二は、巨大都市に集中している。今日、世界全体の人口の五五%が都市に居住しており、二〇四〇年までには六八%にまで増加すると予測されている。そのように、もしわれわれが重要な変革をおこなう準備ができていなければ、二一世紀は感染症のパンデミックにとっておあつらえ向きとなるだろう。
アシュリー・ドーソンは著書『極限の都市―気候変動時代の都市生活の危険性と可能性』のなかで、一九〇〇年から二〇一三年までの期間に、都市化と巨大都市の出現によって、人口密度の上昇が人口の数的な増加をはるかに上回っていたと指摘した。世界の人口はこの期間に一五億人から七〇億人へと四・五倍になったが、世界の都市人口は二億二五〇〇万人から三六億人へと一六倍も増加したのである。
④ 増加一方の巨大都市
急速な都市化は武漢のような、かつてないほどの巨大都市をもたらした。武漢は(ロンドンやバーミンガムと匹敵する)一一〇〇万人の人口を擁し、新型コロナウイルスの起点となった都市である。大都市では、もっとも多く二酸化炭素を排出するだけでなく、パンデミックが進展するのに最適の条件を提供している。
世界には三三の(人口一〇〇〇万人以上の人口を持つ)巨大都市があるが、二〇三〇年までに四三に増える見込みである。そのなかには二〇〇〇万人以上の住民を有するハイパー都市が二一ある。たとえば、東京・横浜の三七九〇万人、ジャカルタの三〇〇〇万人、デリーの二九三〇万人、ソウルの二六一〇万人、上海の二五四〇万人、カラチの二四三〇万人、ニューヨーク市の二三六〇万人、メキシコ・シティーの二二二〇万人などである。
これらの都市は社会的・経済的に多様である。発達した経済と施設を持ち、高い生活水準と良好な公的サービスを有している都市もあるが、掘っ建て小屋の並ぶ巨大なスラムのある都市もある。しかし、それらの都市には共通していることが一つある。高い人口密度によって、都市はそうではなかったときよりも、危険な病原菌のパンデミックに対してさらに脆弱となっていることである。ニューヨークはその好例である。
マイク・デイヴィスは、『スラムの惑星―都市貧困のグローバル化』(訳注四)のなかで、次のように書いている。「人類の最終的拡大(人口増加)の九五%は、発展途上国の都市エリアで起こるだろう。その人口は次の世代では四〇億人近くに倍加するだろう。実際に中国・インド・ブラジルの都市人口を合わせると、すでにヨーロッパ・北アメリカの都市人口にほぼ匹敵している。そのうえ、第三世界の都市化の規模と速度は、ビクトリア時代のヨーロッパをはるかに凌駕している。一九一〇年のロンドンは一八〇〇年と比べると七倍の人口になったが、ダッカ、キンシャシャ、ラゴスは、一九五〇年と比べて今日ではそれぞれ約四〇倍になっている。『人類の歴史上かつてない速度で』都市化が進んでいる中国では、一九八〇年代において、一九世紀全体の(ロシアを含む)ヨーロッパの全人口よりも多くの都市居住者が増えた」。
これがスラム人口の拡大にとってどんな意味を持つのかという観点から、デイビスは国連人間居住計画(UNハビタット)のレポートに目を向けている。そのレポートは、ムンバイが世界最大のスラム居住者人口を抱え、それは一〇〇〇~一二〇〇万人にのぼると結論づけていた。それに続くのは、メキシコシティやダッカの九〇〇~一〇〇〇万人、ラゴス・カイロ・カラチ・キンシャサ・サンパウロ・上海・デリーの六〇〇~八〇〇万人だった。
持続可能な地球のために
まず何よりも、穴の中にいるときにさらに掘り進めるのをやめることである。
都市化のプロセスや人口密度を元に戻すのは容易ではないだろう。しかし、その議論を始めなければならない。エコ社会主義者としては、このことは持続可能な地球をわれわれの行動すべての中心に置くことを意味する。それは、自然との新たな関係を意味するとともに、さらなる巨大都市やさらに多くの汚染という結果をもたらさない社会の新たなモデルを意味する。それは、使い捨て社会をやめ、それを利益ではなく使用のための生産に基礎をおく社会で置き換えることでもある。
それはまた、人口増加を安定させることをも意味する。このことは女性の選択する権利、つまりは強制手術や脅迫に反対して、避妊や中絶施設へアクセスする権利を支持することを意味する。それはまた、貧困状態にある女性が貧困から脱する権利を支持し、(家父長的・宗教的圧力のような)宗教による影響や他の保守的影響と闘うこと、女性に教育・雇用への十分なアクセスを保障することを意味する(選択する権利には子どもを持つ権利が含まれるのはもちろんだが、真の選択権があれば出生率が低下するだろうということには根拠がある)。
それにはまた、インフラ、生活方法、都市の規模、旅行の方法、食生活における革命も含まれる。もし現代人としてのわれわれと(われわれとともに生きている)他の無数の生命種との間の矛盾を解決して、地球の持続的な未来を築き上げようとするのならば、その任務はきわめて大きいが他に選択肢はない。
これには多くのやるべき課題が含まれるが、そのいくつかを挙げてみよう。
*二〇三〇年までに、新たなグリーン・エネルギー・インフラによってゼロカーボンを実現すること。
*公的所有を大規模に拡げること。
*森林伐採と生息地破壊をやめさせること。
*海洋汚染の流れを逆転させること。
*工業的農業をやめさせること。
*食糧輸送距離を減らすために、地産地消的な農業を推進すること。
*肉食を大幅に減らすこと。
*ペット、不正医薬品、野生動物食(ブッシュミート)のために、野生動物を交易するのを禁止すること。
*航空旅客の増加を抑制し、飛行機を頻繁に利用する者へ課税すること。
*自動車の使用、とりわけ化石燃料を用いる自動車を劇的に削減すること。
(「インターナショナル・ビューポイント」2020年4月号)
(訳注一)ジャレッド・ダイアモンドの著書『銃・病原菌・鉄』(一九九七年)は、刊行の翌年にピュリッツアー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞した。
(訳注二)テクノスフィアとは、人類が地球上に生み出してきたもの、作り変えてきたもの、破壊してきたもののすべてを指す。現代人の生活におけるエネルギーと物流を維持するのに必要な都市、農業、海洋にまつわる要素、そして増えつづける(自然に還らない)残留物のことも意味する。
(訳注三)コウモリは一〇〇〇種類近い種が確認されていて、哺乳類全体の種の約四分の一を占めている。これはネズミに次いで多い。
(訳注四)マイク・デイヴィスは、一九四六年カリフォルニア州生まれ。精肉工場労働者やトラック運転手、SDS(民主的社会を求める学生)活動家を経て、都市社会学者として多くの著作がある。日本でも引用書のほか、『要塞都市LA』『感染爆発―鳥インフルエンザの脅威』が翻訳されている。
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