気候 子どもたちが気候のためにストライキ!
われわれが行うことは?
ダニエル・タヌロ
若者の危機感は
大げさではない
今年に入り特に欧州各国で、気候変動への真剣な行動を求める高校生のデモが続いている。気候変動がもたらす破壊的結果に対する危機感が若者の間に高まっていることが示されている。この状況を前に、ベルギーのタヌロ同志が、環境の課題と社会的課題を一体として闘うことの不可欠さと緊急性を、あらためて呼びかけている。内容からは、特に立ち上がった若者への訴えを意識していることがうかがえる。(「かけはし」編集部)
世界中で、多くの若者たちが自然発生的に、気候のための出発を始めようとしている。一月一七日ブリュッセルでは、一五歳のスウェーデンの高校生、グレタ・トゥンベリによりCOP24に合わせて行われた格調高いアピールに応えて、一万二〇〇〇人以上の人々がストライキとデモを行った。彼らは一週間後三万五〇〇〇人以上になり、運動は継続している。 「わたしたちの世界が明日破壊されるのであれば、学校に行く利点とは何なのか?」、先の若者たちはこう問いかけている。それは常識そのものだ! これらの若者たちは誇張しているわけではない。情勢は実際深刻だ。平均気温は一八〇〇年以後で一度Cしか上昇していない。しかし結果はすでに懸念を呼んでいる。つまり、熱波、寒波、より厳しい干ばつ、溶けつつある氷河と氷冠、より暴力的になったサイクロン、巨大な山火事……と。
上昇が二度Cで、影響は破局的になるだろう。われわれはその点から、地球温暖化の雪だるま効果(坂を転がる雪玉が自動的にひたすら大きくなることにたとえられた加速的昂進の作用:訳者)を経験する危険を犯す。地球は、「乾燥した衛星」になるだろう、そして気温は、極めて急速に四度Cも上昇する可能性があるだろう。全地域が居住不可能になると思われ、何億人もの人びとが気候難民になるだろう。そして生物多様性は崩壊し、海面はやがては三メートルから四メートル上昇するだろう。それはもはや惨害というようなものではなく、激変となるだろう!
パリのCOP21で決定された地球温暖化の閾値、一・五度Cを確実に超えないようにするために、あらゆることが行われなければならない。それが不可避の結論だ。しかし諸政府は、これを行おうとはしていない。諸政府の「気候計画」を基礎とした場合として、専門家たちは、二・七度Cから三・七度Cの温暖化を予想している……。それは最低の場合だ。ドナルド・トランプやブラジルのファシスト、ボルソナロのように、ますます多くの指導者が真実否認に引きつけられているからだ!
欧州では、ベルギー政府がもっとも偽善的な政府の一つだ。実際この政府は昨年一二月二日、気候に関する七万五〇〇〇人のデモ行進に祝意を表したが、翌日になると、EUの気候に関する二つの指令を支持することを拒絶したのだ。これらの偽善者はまさに恥知らずだ! しかし人々は、まがいものの約束と開き直りにうんざりしている。一月二七日のブリュッセルには、もっと多くのデモ参加者がいた。
暮らしと地球
を資本が破壊
科学者たちは二五年以上警報を鳴らし続けてきた。排出はなぜ増え続けているのか? 諸政府はなぜ(ほとんど)何もしないのか? 彼らが資本主義に奉仕しているからであり、資本主義のただ一つの目的が利潤であるからであり、利潤は成長を必要とし、この成長は歴史的に化石燃料エネルギー(石油、石炭、天然ガス)に基づいているからだ。
再生可能エネルギーはどうか? それらも環境のためではなく、利潤のために生産されている。われわれがより少なく生産し、より多くを分かち合うならば、人間の真の必要を満たす上では、それで十分となるだろう。
しかし多国籍企業は彼らが確保している埋蔵化石燃料と設備の放棄を拒否し、銀行はそれらの埋蔵と設備に投資された彼らの資本の放棄を拒絶している。そしてあらゆる部門の経営者が心中に抱える考えは一つしかない。つまり、むしろもっと多くを生産し、彼らの競争相手よりも多くの利潤を上げる目的で、さらに多くの労働者と自然を搾取する、ということだ。
われわれは、あらゆること、われわれの仕事、賃金、社会保障、公共サービス、生活水準にとっては成長が条件だ、と告げられている。こうしてわれわれの暮らしは、われわれの搾取と自然の搾取次第になっている。現実には、この生産力主義のシステムがわれわれの暮らしと自然両者を破壊しているのだ。
われわれは今
奈落の縁にいる
今日われわれは、崩壊の瀬戸際にある。地球温暖化一・五度Cを超えない可能性が半々になるためには、世界全体のCO2純排出が、二〇二〇年から二〇三〇年の間で五八%減らなければならない。それらはその後、二〇五〇年までにゼロにならなければならない。そしてその後、地球がCO2を排出以上に確実に吸収するようにすることが必要になるだろう。
そうでなければ、用済みに成り果てた地球に自らを任せるか、大気中から炭素を人工的に取り除く技術(「マイナス排出テクノロジー」)の利用、あるいは太陽放射の一部を宇宙空間へ戻す技術(「ジオエンジニアリング」)の利用か、が必要になるだろう。
しかし警告がある。つまり、こうした魔法使いの弟子的技術が機能する保証はまったくないのだ。それは、地球の上での、そこに住む生き物を使った、直接の実物大規模の実験を経ることが必須となるだろう……。
いわば死を招く危険を前に、自己保存本能は一〇〇〇倍も正統化される。高校生にはそれゆえに、ストライキに打って出る権利が一〇〇〇倍もあるのだ。ぼうっと傍観しないようにしよう。それがどこから来ようが、親トランプ右翼や権益回復のもくろみからの攻撃に立ち向かい彼らを支援しよう。そして彼らの模範に続こう!
社会と環境の
闘争一体化を
地球温暖化の主な犠牲者は、諸政権や雇用主から変わることなく攻撃を受けている者たち、つまり労働者、小農民、子どもたち、女性、年金生活者、病人……そして移民だ!
金持ち連中は自らに、それが億万長者のために用意された人工島上での暮らしを意味しているとしても、自分たちはいつであれ何とかやっていけるだろう、と言い聞かせている。彼らの特権を救い出し、われわれの社会と民主的達成成果を破壊するために、彼らはますます、レイシストであり、性差別主義者であり、気候変動否定派である極右に引きつけられている。したがって、社会的課題と環境の課題が同じ民主的な大闘争の両面だということは明確だ。
この戦闘は始まったばかりにすぎない。そこには労働の世界が現れなければならない。黄色のベストから若者まで、今こそ闘争と要求を結集する時だ。今日われわれの子どもたちは、この地球上に彼らが存在する権利を、また彼らの子どもたちが存在する権利を守るために、ストライキを行い、そして街頭にいる。われわれ大人はどうなのか? われわれは何をするのか? われわれは彼らを支援しなければならない。それはわれわれの義務であり責任だ。
あらゆる手段で決起しよう。われわれもストライキに決起しよう。自宅にとどまるストライキではなく、能動的なストライキに、それこそ、あらゆる不公正、あらゆる破壊、社会的なまた環境上双方の現在の窮状に終止符を打つ方法、それらを徹底的に討論するためのストライキに、だ。
エコ社会主義
の緊急計画を
気候の惨害を回避することはまだ可能だろうか? 必要な努力は巨大だ。それは、民主主義と公正の中で社会的課題と環境上の課題を組み合わせることで、はじめて成功できる。一つのエコ社会主義的移行が基本だ。これは緊急計画を必要とする。以下に一〇項目の提案を示したい。
1.不必要かつ危険な製造品(武器を始めに)、および不必要な商品輸送の廃止、製品品質を最高度に高め、計画的な陳腐化と闘うこと。
2.あらゆる建物を断熱化し刷新する(住民の超過費用負担ゼロで)公的企業の創出。
3.自家用車の使用を思いとどまらせる公共交通に対する大規模な投資。航空移動を合理的に見直すこと。4.化石燃料を地中にとどめること。再生可能エネルギーを一〇〇%基礎にする(核エネルギーのない!)経済への急速な移行を組織するために、エネルギーと金融部門を収用し社会化すること。
5.富の再配分、課税における平等性、および世界化された所得に関する課税の累進性の回復。公的部門、教育、医療・介護への資金再充当。
6.クライメートジャスティスの尊重。全員のための持続可能な発展に必要な技術と財源の、南への移転。7.アグリビジネスの放棄。可能な限り多くの炭素を土中に隔離するために必要なことを行う、環境調和的な農業の推進。
8.賃金を下げることなく、全員の間で必要な仕事を分かち合うこと。廃止されるべき部門の労働者を、新たな活動に転換すること(所得の維持と社会的成果と一体的に)。
9.市場からの取り出し。つまり、無料の教育、交通、医療だ。基本的必要に対応する水と電力の無料消費。この水準を超える消費に対しては急激な累進的価格設定。
10.「思いやり」、透明性かつ説明責任の文化の発展。民衆とエコシステムに対するケア活動の強化と社会化。全員に対する投票権容認。被選出代表に対するリコールを含む、市民と民衆の統制と主導性に関わる諸権利の容認。
これはユートピアだろうか? 一九四〇年から同四四年まで、米政府は緊急計画を実施した。軍事生産はGDPの四%から四〇%まで上昇するにいたった。そしてあらゆる種類の制約が課された。ナチスを打ち破り、米国の多国籍企業の世界的優位性を確保するために行われたことは、社会的公正に基づき気候を救い出すためにも行うことが可能だ。それは政治的意志の問題だ。それを迫ることはわれわれにかかっている。
▼筆者は実績を積んだ農学者かつエコ社会主義の活動家であり、「ラ・ゴーシュ」(第四インターナショナルベルギー支部、LCR/SAPの月刊機関誌)記者。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年二月号)
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