気候変動 気候保全と社会的公正を一体化した地球規模の大衆運動作ろう
第四インターナショナルビューロー
http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4252
変化の早さは専門家の推定以上
地球の気候は専門家たちが考えた以上にはるかな早さで変化の途上にある。これを引き起こしているものに関し疑いはまったくない。すなわち、温室効果ガス、主には石油、石炭、天然ガスの燃焼によるCO2排出の結果としての、地球温暖化だ。
地球はこの二世紀を通じて〇・八度Cだけ暖まってきた。これは、今後数世紀中で、ほぼ二メートルの海面上昇を引き起こすに十分なものだ。それを止めることは誰もできない。数億人の民衆が移動を強要されるだろう。食物を育てる農地は何百万ヘクタールも失われるだろう。都市地域では立ち退きが必要になるだろう。南の人びとは、こうしたことには最低限の責任しかないのだが、もっとも苦しむ者となるだろう。
諸政府はこうした諸々の警告を無視してきた。リオサミットから二三年、温室効果ガスの年間世界総排出は、一九九〇年代における速度の二倍で増大中だ。経済危機の最中であるにもかかわらず、だ!
この排出率であれば、今世紀末における温暖化は、二度Cではなく六度Cになると思われる。これは、恐るべき惨害に導くだろう。それを全体として思い描くことなどとうていできない。
COP21はボスたちへの贈り物
切迫性は高い。われわれが取る必要のある諸方策が何十年間も遅らせられてきたからだ。
「先進」諸国は最低年当たり一〇%の率で即刻排出削減を始めなければならず、二〇五〇年までには完全に排出ゼロにしなければならない。主要な途上国は、早急にその後に続かなければならない。その他の諸国にはまだ一定の余裕はあるが、しかしそれらの国の排出も早々に継続的削減が続けられなければならない。
何も変わらないとすれば、地球温暖化が二度Cを超えないという条件で今後も燃やすことが可能な石油、石炭、天然ガスの総量は、二〇三〇年までには使い尽くされるだろう。
気候に関する第21回国連会合は、二〇一五年一二月にパリで開催される予定になっている。政治の指導者たちは、今回彼らは「野心的な」合意に達するだろうと語ることで、われわれをだまそうと試みている。
彼らが面目を施すある種の合意に達する可能性がある、ということは本当だ。しかし確実なことは、この合意が環境の点では全面的に不十分であり、社会的には極めて不公正、ということだ。その内容は、主要な汚染者、つまり米国、EU、中国、日本、オーストラリア、カナダの関与によってあらかじめ決められている。これを基礎とすれば、今世紀末における地球温暖化は最低でも、三・六度Cから四度Cとなるだろう。
こうした諸々の取り決めは、産業や金融のロビー活動をテコに交渉されたのであり、それは彼らの利害に合わされている。多国籍企業は、新しい市場、すなわち炭素市場、「グリーン」テクノロジー、森林相殺、炭素捕獲・隔離、地球温暖化効果への適応、その他、といったものの市場が開かれるという見通しを今やもみ手をして歓迎している。
しかし四度Cの温暖化が意味するものは、長期的に見た海面の一〇メートル上昇に加えて、それ以上の直接的な影響、すなわちより多くの嵐、サイクロン、干ばつ、洪水、熱波、農業生産性の減退、その他なのだ。
資本主義の救出か気候の救出か
真実は何十年という時間の中で確証されてきた。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は政府間の機関だ。各国政府は、IPCC報告の主要基軸に関与していると想定されている。技術的な解決策は存在している。金融的な手段も同じだ。それでは、なぜ諸政府は必要な歩みを進めないのか? なぜ彼らは、シェールガスやアグロ燃料や核エネルギーやジオ・エンジニアリング(地球環境の意図的な操作、たとえば、火山の大爆発がもたらす寒冷化効果を念頭に、大気中へのSO2注入というような信じられない提案がある:訳者)などの偽物の、あるいは危険な「解決策」を推奨するのか?
回答は単純だ。すなわち諸政府が、最大限の利潤を求める競争という戦争、さらにもっと多くを生産するよう(したがってもっと多くの資源を消費するよう)企業を駆り立てる戦争をしかけている、そうした多国籍企業や銀行に奉仕しているからだ。そしてそれらが利用するエネルギーの八〇%以上が石炭、石油、天然ガス由来だからだ。
次のことが地球救出のために必要なことだ。つまり1)化石燃料の確認埋蔵量の五分の四は地中に留められなければならない。2)こうした化石資源(また原子力)に基礎を置くエネルギーシステムは補償なしに可能な限り早期に破壊されなければならない。3)有害かつ不必要、あるいは意図的に仕組まれた退行性を付随させた生産は、エネルギーや他の諸資源の消費を削減する目的の下に放棄されなければならない。4)横暴かつ不平等な生産力主義/消費拡大主義のシステムは、再生可能なシステム、効率的で脱集中化され、民主的かつ社会的なシステムで置き換えられなければならない。
全員に尊厳ある暮らしを保障しつつ気候の破局を食い止めることは可能だ。そこには一つの条件が必要だ。すなわち反資本主義的な諸方策を取り入れるということだ。諸政府はむしろ地球を破壊し、すでに気候変動の犠牲者になっていて、武器商人たちが利益を挙げる中暴力的な混沌によって人間性を脅かされている、そうした貧しい何億人もの人びと、労働者、小規模農民、女性、若者を危険にさらす方を好んでいる。
資本は自然とその成果を自らの財産と見なしている。気候の緊急性と社会的公正の間に選択の可能性などまったくない。それは一つであり、同じ闘争なのだ。われわれ自ら決起しよう。COP21を超えて、われわれの諸権利をはっきり主張しよう、われわれの闘争を発展させよう、われわれの共同行動を作り上げよう、地球規模の大衆運動を作り上げよう。
あらゆる戦線から共に行動へ
化石資源多国籍企業は彼らの掌握を広げることを必要としている。それらを止めよう。それらに奉仕するインフラ計画、すなわち新空港、新パイプライン、新高速道路、またシェールガスの新たな常軌を超えた暴走、これらに反対して決起しよう。海運や航空や道路輸送に提供された税金やその他の便益を断固否認しよう。
地球温暖化に主要に責任がある「先進」大国は、次いで、支配と事態を悪化させる武器供与というそれらの政策が原因となっている諸々の危機によって生み出された難民に背を向けている。要塞となっている欧州の壁と難民キャンプを拒否しよう、気候移民には難民の権利が与えられるよう要求しよう。
アグリビジネスと製材産業は、温室効果ガス排出の四〇%に責任がある。GMOS(遺伝子組み換え作物)に反対して決起しよう、現地の有機的な小規模農業と食料主権を支持しよう。生産者―消費者のネットワークおよび共同団体を作り上げよう。先住民衆の彼らの資源に対する諸権利を、並びに南の諸国で食料の八〇%を生産している女性の闘争を支援しよう、
われわれは今、生物多様性の破局を目撃しようとしている。それは六度目の大量絶滅、すなわち恐竜絶滅以後では最大の種の絶滅として知られている。この地球上にいる全種の四〇%から五〇%が今世紀半ばまでに絶滅させられる可能性がある。全哺乳種の四分の一が現在、七〇〇年毎に僅か一種という基底的な(自然の)絶滅率に反する絶滅の危険にある。生物多様性保護に向け組織化しよう。
見苦しくない居住基準、清潔な水、交通、光熱に対するすべての人の権利は、気候と雇用にとっては好適なものとなる。水、交通、そして住宅の断熱と改造が、生産者と労働者の統制下で公的部門の形で確実に提供されるよう、そしてすべては利用の際無料となるよう組織化しよう。
家具、繊維製品、電子装置、包装などに見られる生産力主義的で消費拡大主義的な度を超した暴走は、地球的な温暖化に大いに力を貸してきた。使い捨ての、意図的に退行化された、修繕不可能にされた、あるいはリサイクル不可能にされた製品を拒絶しよう。こうした部門の、特に賃金が低い諸国の労働者を支援するために組織化しよう。
労働者は移行の犠牲を負ってはならない。浪費的な、有害な、そして汚染を引き起こす産業に職を得ている労働者は、社会的に有益で環境的に責任を果たす職務に向けた、賃金損失のない集団的転換を求めて決起しなければならない。
自由時間に向けた権利は、気候にとって、さらに健康や雇用にとって好適だ。労働時間短縮によって、賃金削減のない、それに見合った人員補充と労働密度の引き下げを伴うそれによって、すべての者が少なくかつ都合よく使い回されることが少なく働くために、決起しよう。
化石資源多国籍企業と銀行はそうした移行を阻止し続けている。こうした部門からの投資引き上げを要求しよう。エネルギーや金融部門から、賠償や買い戻しなしに私有部門を駆逐しよう。これは、移行を早期にかつ合理的に組織する義務を負う共同体にその能力を与える不可欠な条件だ。エネルギーは自然の贈り物であり、それは誰に対しても帰属させてはならない。労働者と利用者の統制下に置かれた、脱集中化されたエネルギーの公共サービスのために決起しよう。
エコ社会主義かバーバリズムか
気候危機は、「社会主義かバーバリズムか」という二者択一に対し、現代との大きな適合性を与えている。本物の革命が必要だ。われわれはすべてを変えなければならない! われわれの労働の成果を平等主義的なやり方で配分するためだけではなく、われわれが何を生産するか、どのように――廃棄物や不必要なものをなくして――生産するかを決定するために、さらに家父長的な資本主義が男と女に与えている役割に異議を唱えるためにもだ。
つまりそれは、連帯と環境の尊重を基礎とした、エコ社会主義、エコフェミニズムの新しい社会に向けた移行という、文明の転換だ。それは、大きな管理の諸決定、生産と消費の優先性に対する決定が、一握りの搾取者、官僚、あるいは偽専門家によって利潤に導かれて行われるようなことがもはやなく、全員によって行われる社会だ。この変革は、選挙を通してではなく、われわれの闘争を通して現れるだろう。われわれがそれを求めれば、すべてが力を合わせる中でわれわれはそれを強要できる。
二〇一五年九月二一日
(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年九月号)
ポルトガル
右翼与党が敗北した選挙
で左翼ブロック唯一躍進
ルイス・ブランコ
http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4245
一〇月四日、ギリシャと同じくトロイカからの緊縮強要をめぐって民衆の抵抗が大規模に展開されてきたポルトガルで総選挙が行われ、トロイカにしたがってきた現政権与党が過半数を失った。そしてこの間反緊縮抵抗の先頭に立ってきた左翼ブロックは大躍進を果たし、その抵抗をもっとも直截に議会に表現する勢力となった。以下はその選挙結果を現地から伝える速報。(「かけはし」編集部)
反緊縮抗議の中
与党得票大幅減
一〇月四日投開票された総選挙でポルトガルの右翼連立政権は議会の絶対多数を失ったが、主要な政治勢力としての地位を保持した。他方左翼ブロックは、得票数のほぼ二倍化、および選出議員数二倍化以上という、これまでで最良の結果をもってめざましい回復を遂げた。
このポルトガル議会に対する五三七万人の投票者の決定の主要点は、右翼から議会における多数を奪った、ということだった。連立政権の二政党は、トロイカのメモランダに署名した二、三週間後に行われた二〇一一年の前回選挙からその時を通じて、およそ七二万七〇〇〇票失い、今回の得票率は三八・五五%となった(二党が別々の名簿で立候補した、マデイラ諸島とアソーレス諸島の結果を含む)(訳注)。
ポルトガル民衆に押しつけられた厳しい緊縮は、ほぼ五〇万人の有権者を海外移民に追いやっている。しかしこの人びとは、今回の選挙に投票する機会をもてなかった。そして社会党は国に残された抗議の票を集めることができず、得票を二〇万票上乗せ(最終得票率三二・三八%)したにすぎなかった。二つの事実が、党の支持者を分裂させ、志気をくじく上で力を貸した。一つは、前首相のホセ・ソクラテスが汚職の嫌疑を受け昨年以来当局の保護観察下に置かれたことだ(彼は選挙運動開始時点で警察の監視の下家に押し込められたが、彼に対する告訴はいまだにまったく行われていない)。もう一つは、アントニオ・コスタによる昨年の党指導部引き継ぎであり、その際には、ソクラテスの競合相手が率いたEU議会選における十分とは言えない勝利直後に党は選挙を強いられた。
左翼ブロックが
不満の受け皿に
反緊縮勢力の中では共産党が、「トロイカの年月」を通じて街頭で表現された反乱を利用することができなかった。この党は前回選挙の支持者を維持したにすぎず、得票数増加は約三四〇〇、獲得議員数も一増にとどまった(八・二七%、一七議席)。
不満を高めた有権者を引きつけることに成功した唯一の政治勢力は、明らかに左翼ブロックだった。左翼ブロックは、五四万九〇〇〇票(二〇一一年比で二六万一〇〇〇票増)、得票率一〇・二二%、獲得議席一九をもって、数地区で右翼連合から議席を奪うことに成功するなど、様々な地域に議員をもつ形で今や全国勢力となっている。それらの地域の一つは、四〇年の民主主義における一つの歴史的標識だ。すなわちマデイラ諸島は今回初めて、急進左翼の議員を選出することになったのだ。
新たに選出された議員のうち三人は、無所属であり、そこには、長年障がい者の権利を求めてきた活動家が含まれている。後者の選出は今や、彼の議席と演壇までの車椅子通路の建設を議会に迫るだろう。
この左翼ブロックの結果はもっぱら、二〇一四年一一月の全国大会で選出された左翼ブロック新指導部の実績の上に築かれた。党のスポークスウーマンであるカタリナ・マルティンスは、首相、副首相、また社会党指導者との直接TV論争すべてで、幅広い称賛を受けた勝利を刻み、街頭キャンペーンでも左翼ブロック全史を通じて最大の民衆的支持を集めた。選挙結果は、この二カ月の間見られた国のあらゆる隅々におけるこうした温かい受け入れを確証した。
そして、左翼ブロックの不同意派が形成した二政党(リヴレ〈自由〉とアジル〈行動〉)は、メディアの広範な取り上げを得たものの、得票率が各々〇・七二%と〇・三八%にとどまり、今やその行動の政治的不適切さを宣告された。議会参入を果たした唯一の小政党は動物の権利保護を課題に掲げるPANだが、この政党は、どのような政府も支持する用意ができている。
トロイカ従属の
大連立の可能性
議会内に左翼が多数となったことで、社会党にとっては、その責任を引き受け、左翼ブロックと共産党によって支持される(あるいは反対されない)可能性のある代わりとなる政権への交渉に挑む時が到来した。しかしアントニオ・コスタが示した開票日夜の最初の反応は、右翼政権の計画(左翼ブロックと共産党は、それには反対する、とかねてから語っていた)に対する議会承認に対して障害を置くつもりはないと語るものだった。そしてそれは、トロイカの協定に署名し、欧州財政条約を支持する、そうした三政党大連立への余地を開けている。
実務上の条件として、社会民主党(PSD)・民衆党(CSD)連立政府が強要しようとしているどのような付加的な緊縮策(つまり、ブリュッセルにすでに約束済の年金六億ユーロ削減)も、議会通過のためには社会党の同意を取り付けなければならない。この政府の倒壊と早期の新選挙という仮定は、ポルトガルの法律に従えば実行可能なことではない。つまり、来年一月には大統領選挙があり、現大統領は彼の任期中最後の六カ月には議会を解散できず、さらに議会も、その任期の最初の六カ月には自ら解散することができないのだ。
▼筆者は、左翼ブロック、並びに第四インターナショナルポルトガル支部であるPSRメンバー。左翼ブロックニュースサイトである、エスクエルダネットの編集・発行責任者。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一〇月号)
訳注)両諸島とも本国から遠く離れた大西洋上にある。アソーレス諸島はポルトガルでの呼称、国際的にはアゾレス諸島が一般的。マデイラ諸島はモロッコの沖合にある。
The KAKEHASHI
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