気候とは別のCO2の危険
濃度上昇でコメが貧栄養化へ
新研究が追加的裏付け
T・V・パドマ
地球温暖化に関係づけられている二酸化炭素濃度の上昇に応じて、コメがつくり出す人類に基本となるタンパク質、ビタミン、ミネラルは、より少なくなる可能性がある、コメをもっとも消費する一〇ヵ国に対する新しい調査評価がこう示した。
この発見は、以前に報告されたタンパク質、鉄分、亜鉛の低下を確証しているだけではなく、より高濃度の二酸化炭素条件の下で生産されたコメにおける、ビタミンB1、B2、B5、B9の同調的な低下、及びビタミンEの――逆関係としての――上昇に関する追加的な情報をも提供している。
そしてそれらは、食料と栄養の安全保障に影響を与えている地球温暖化に関する全般的な懸念に上乗せされている。報告は、すでに一〇億人に上る人びとが「食料が不安定」と思われている、と述べている。たとえばいくつかの評価は、熱帯や亜熱帯地域におけるコメやトウモロコシといった主要穀類の収穫が、二一〇〇年までに全体として二〇~四〇%減少すると示している(注一)。
新たに分かった
ビタミンの減少
コメは世界のカロリー全体のおよそ四分の一を供給し、低所得と中―低所得のアジア諸国にとっては主なカロリー源と栄養源だ(注二)。
二〇一三年時点で、バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、ベトナム全体のおよそ六億人は、彼らが食物からとるエネルギーとタンパク質の半分以上をコメに依存している(注三)。
科学者たちの評価は、現在の(大気中)二酸化炭素レベル、及び二一〇〇年に予想されるレベル双方での、多くの年月、地域、また広範に広がるコメの品種に及んでいる。彼らは、二酸化炭素レベルに応じてコメの栄養成分がどのように変化するかを評価した。科学者たちはさらに、一〇ヵ国の最も高いコメ消費国に対して、これらの変化の社会経済的影響をも一人あたりGDPで評価した。
結果は、より高い予想二酸化炭素レベルの野外条件下で成長するコメの栽培品種は、「有意な」低下を見せた、と示した。その低下は平均で、タンパク質が一〇・三%の低下、そして鉄分と亜鉛が同様に各々八%と五%という「有意な」減少、というものだ。
科学者たちはまた、B1が一七%、B2が一六・六%、B5が一二・七%、B9が三〇・三%という、ビタミン類の相当な減少をも見つけ出した。われわれが共に作用するこのような定量的パターンを得たのは初めてだ。
一つへの依存は
ますます危険に
シヴ・ナダル大学の教授であり、ニューデリーにある科学・技術・開発研究国立研究所の元主任科学者であったラジェスワリ・ライナによれば、インドでは「われわれが今食べているコメと小麦では九つの微量栄養素がすでに消えようとしている」、そして「二酸化炭素が誘発する変化はもっと広がるだろう」と語った。
それに、沿岸地域を除くインドではもっともコメを食べている地域が伝統的にタンパク質不足にあるという事実を加えて、より少ないコメ、タンパク質、より少ない野菜を食べている貧しい女性がインドで最悪の打撃を受ける者になるだろう、とザ・ワイアー(政治、ビジネス、科学、文化などの主要ニュースを含んでインドと世界の最新ニュースを取り上げているニュース媒体:訳者)に語った。
栄養の少ない穀類というような問題に対し政策策定者は歴史的に、栄養価強化計画を通して対応してきた。しかしながらライナは、それに代えて「他の穀類――トウモロコシ、きび、また二次的な穀類――の種類を取り戻す」べきだ、と確信している。それらは頑健であり、乾燥の条件と水不足にもっとよく持ちこたえることができる。そのような動きはまた、一つの穀類への依存に代えて多様性という手法の導入にもなると思われるのだ。
何人かの食料政策専門家は、栄養不足を埋め合わせるために、食料生産における似たような変更を推奨してきた。たとえば二〇一七年の一文書は「量に焦点を当てた生産政策は、栄養を高める生産を確保するもっと強力な努力、つまり食物が含む栄養素を基礎にした、穀類品種、魚、家畜の評価と選別で補足されなければならない」と述べた。
これは、われわれが穀類の栄養算出を測定する新しい方法と生産システムを開発する、ということを求めている。
この新しい研究は、食料摂取のパターンは将来も変わることなく続くと当然視してはならない、と述べている。経済が改善するに伴い、人々は、魚から、乳製品から、肉からと、タンパク質の多様化を始める。そしてより西洋化スタイルの食物を取り入れる。
日本では一九五九年、コメが全食料エネルギー消費の六二%を占めた。それは一九七六年までに四〇%まで落ちた(注四)。ここ二、三年ではその比率は二〇%内外で浮遊している。韓国では、コメの一人あたり消費量が一九七五年以後ほぼ半減した(注五)。
対抗戦略が
多々必要に
二〇一五年世界保健連合は、六つの穀類、すなわちコメ、小麦、トウモロコシ、大豆、モロコシ、エンドウ豆に関して、二酸化炭素レベルの高まりの作用を分析した(注六)。そのまとめ役であり、マサチューセッツのハーヴァード・公共医療T・H・シャン学院の科学者であるサムエル・マイヤーは、作用(栄養素移行に対する)は「地球温暖化が原因ではない」と、そして「それは二酸化炭素レベルの上昇が穀類の栄養に及ぼす直接の作用であり、気候からは独立している」とザ・ワイヤーにはっきり説明した。
大気中のより多くの二酸化炭素は同時に地球温暖化をも引き起こしている(注七)。
マイヤーにとって最新の発見は重要だ。それらが彼のチームによる以前の発見を強めているからだ。その発見こそ、次の五〇~七五年の中で限界を蹴破ると予想されたより高い二酸化炭素濃度で成長するコメの栽培品種には、亜鉛、鉄分、タンパク質がより低い量しかない、というものだったのだ。彼は「われわれの以前の発見に対して、似たような技術を使った今回の確証を得たことは極めて貴重だ」と語った。
この新たな研究は、ビタミンBとEに関する新たなデータを追加的に提供し、「二酸化炭素の増大がもつ栄養への影響についてのわれわれの理解」を高めている。
彼はまた、インドやインドに似た他のコメ消費国が栄養摂取を監視し、飲食摂取の多様性を増す努力を倍化し、人びとが確実に亜鉛、鉄分、タンパク質の十分な量を消費するようにすることが重要だ、とも語った。 日常の飲食物を栄養的に多様化することを超えたいくつかの戦略には、これらの栄養素がより高い穀類の品種改良、栄養価の高い食料に向けた日常飲食物を奨励する助成金パターンの変更、重要な栄養素を含んだ食品の強化、そして「もちろん、もっとも基礎的なレベルとして、世界の二酸化炭素排出を削減するわれわれの努力を倍化すること」が含まれる。
▼筆者はフリーランスの科学ジャーナリスト。
(注一)『サイエンス』、「前例のない周期的な熱波による将来の食料不安に対する歴史的な警告」。
(注二)植物生態に関するオックスフォード学術紀要。
(注三)国連食糧農業機関統計。
(注四)MIT学報「日本の日常食の変移とその影響」。
(注五)米農務省、経済調査局報告「南アジアにおけるコメ市場」。
(注六)『ネイチャー』電子版、「重要食料穀類の栄養素に関する大気中CO2上昇の影響」。
(注七)国連気候変動「地球温暖化の潜在的可能性」。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年七月号)
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