コロナパンデミック

G7:ワクチン・アパルトヘイトはそのままだ!
フランク・プルーエ

民衆に対する
犯罪が進行中
 NGOのオクスファムによれば、現在の接種進行率では、最貧困諸国が新型コロナウイルスに対し十分な住民にワクチンを接種するには、60年かかるだろう。アフリカでは少なくとも一回の接種を受け終わった住民は2%しかいない。対してそれは、フランスで45%以上、英国では61%、米国では64%近くになる。このワクチン・アパルトヘイトの対価は何か? 世界全体で日に1万5000人以上の死が公式に記録されている。インドだけで、第2波の頂点の数週間、毎日4000人に上る人々が死亡した。この悲しみの鐘の音は、新型コロナウイルスを原因とする公式の死者数を380万人まで、WHOによればその数の2ないし3倍まで押し上げている。ワクチン・アパルトヘイトを取り除くことなく過ぎている日々は、民衆に対するひとつの犯罪だ。
 当面の間、その強まる感染力が明確な変異型とワクチン間の競争において、諸々のワクチンは世界的に非常な有効性をとどめている。しかしそれはどの程度の期間になるのだろうか? したがって、世界の住民に、世界の住民全体にワクチン接種を行う切迫した必要がある。そしてそれを行うには、われわれは生産能力を高めることを、それゆえワクチンに関する特許を取り除くことを、技術移転を強要し、生産能力を徴発することを必要としている。さらに、富裕な諸国による製薬大企業のワクチンの高価格での独占に導き、時として、マクロンが認めざるを得なかったように、この世界的な不足という脈絡の中で、貧しい諸国が1回分を購入するために、米国やEUよりも多くを払わなければならないという、そのようなワクチン民族主義に背を向けることが必要だ!

ごまかしで飾る
G7会合の約束
 それでも6月7・8日のWTO・TRIPS(知的所有権の貿易関連側面)委員会会合でEUは、フランスとドイツの支持を受けて、インドと南アフリカによる特許棚上げの提案をあらためて阻止した。これは2日後の6月10日の記者会見でマクロンが次のように高らかに言明することを妨げなかった。つまり「われわれは、知的所有権がワクチンへの障害になることは決してないだろう、とWHOで、WTOで約束しなければならない。……これこそが、われわれが南アフリカと共にひとつの提案を議題に乗せることを決定した理由だ。その提案とは、時と場を限定して、この知的所有権に一定の価値引き下げを設定することを可能にすると思われる提案だ」。
 まさにその翌日この提案は取り下げられた。コーンウォールのG7会合で、世界の指導者たちが貧困諸国に10億回分のワクチンを提供すると約束したからだ。問題は、実のある日程表がまったくないことだ。そして今も漏れ出し続けていることが懸念を呼んでいる。バイデンは2021年2億回分を、そして2022年6月までに3億回分を約束した。フランスは、年末までに3000万回分を送る計画を立て終えた。
 そして基本的なことだが、問題のワクチンはアストラゼネカということであり、それをフランスは使用をすでに避け、南アフリカで現れたベータ変異型には、非常に有効、というわけではない、ということだ! この国は事実上、ヨハネスブルグのウィトウォータースランド大学の研究にしたがって、アストラゼネカの接種をすでに止めていた。ちなみにその研究は、問題の変異型に対しこのワクチンの有効性は22%にすぎない、と示した。

ワクチン利用の
普遍的権利化へ
 あまりに長い間、あまりに遅すぎて、あまりに多くの死が起きている。富裕な諸国の世論に対し、自らの人民に向けたこのような時間表を誰が自慢する勇気を持つだろうか! そして世界の民衆が今求めているものは富裕な諸国からの慈善ではないのだ。それは、裕福な諸国が避けたワクチンを得ることではないし、あまねく知られすぎている宣伝効果に基づいた、世界の主人の善意に頼ったスケジュールでもない。
 必要とされることは、彼らが自ら彼らに必要なワクチンを生産することなのだ。インド、南アフリカ、ブラジル、またタイは生産の能力をもっている。世界の主人に製薬大企業の特許を取り消すよう、それによって、人類の共有財であるワクチンに対する即時の、無料の、普遍的な利用のために、ワクチンがあらゆるところで低コストで生産される可能性を得るよう、強制することは世界中の活動家がやるべきことだ。
 Covaxシステム(WHO主導の下に新型コロナウイルスワクチンを発展途上諸国に供給するシステム:訳者)を管理するGavi(Gaviワクチンアライアンス)の指揮者であるセス・バークレイ(米国の感染症学者で、ワクチンがもつ力の世界的主唱者:訳者)の耐え難い発言に対し、特許取り消しのためにわれわれの連帯を示そう。先の発言でセスは、6月2日の募金は「2022年のはじめまでに、低所得国の住民の30%近くを防護する」ことを可能にするだろう、と大胆にも喜んだのだった。次の画期は6月17日、WHO・TRIPS評議会の公式会合の時だ。

▼筆者は医師であり、フランスNPAメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2021年6月号)

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