CO2排出ゼロは待ったなしの課題だ!

気候変動
システムをこそ変えろ
気候惨事ノーの決起を今こそ

2019年11月4日 第四インターナショナル・ビューロー

 九月二〇日から九月二七日の週は、気候の公正を求める歴史的な決起を経験した。それは、一八五ヵ国で七五〇万人以上のデモ参加者をもって、二〇〇三年のイラク戦争以後では、最大の協調による世界的決起だった。
 新しい世代が、集団的行動と政治的行動から誕生し、登場し続けている。その強さと決意が、社会の他の層――労組活動家、科学者、両親……――を導きつつある。

気候と社会の
惨事が進行中


 地球平均気温における一九世紀中盤以来の上昇、一・一度Cはすでに、劇的な作用を及ぼしつつある。極端な現象――山火事、洪水、干ばつ、ハリケーン、台風――の山積と深刻化は地域全体を荒廃させている。三年目まで連続して増大した飢饉は、世界中で八億二〇〇〇万人以上の人々に影響を与えている。人類の四分の一が、水不足で脅かされている。化石燃料、水、農地利用をめぐる二五〇〇件以上の紛争がある。
 環境上の不平等は、社会的、人種的、ジェンダー的不平等をさらに深刻化させる。富裕層が地球を破壊すれば(最富裕諸国の最富裕層は、最貧国の最貧困層の二〇〇〇倍も多く諸々のGHG〈温室効果ガス〉を出すことができる)、気候の惨害から最も苦しめられるのは、最も汚染された地域で生きるのは、飲料水の不足と農地の劣化から苦しむのは、労働者諸階級、南の民衆、人種的に差別された人々、女性、なのだ。

気候変動の進行
加速する悪循環


 農地の四分の一は、温室効果ガス排出の三分の一にも寄与している(二〇一九年八月八日のIPCC報告)産業的な農業と家畜放牧によってすでに劣悪化されている。気候の危機が悪化すればするほど、それだけ農地も劣化する。しかしながら、農地が劣化すればするほど、それが吸収するCO2は少なくなり、したがって、気候変動に反対する戦闘に農地が関わる程度も低くなるのだ。
 融解する氷、海の温暖化、そして海面上昇が、世界の沿岸域、高地地域、あるいは北極海域住民の四分の一、特に先住民衆を脅かしている(九月二五日のIPCC報告)。熱の影響を受けた水の膨張と氷冠の融解は、世紀の終わり時点で一メートルほどの海面上昇を引き起こそうとしている。
 海洋は、気候の変動に対抗する闘いでは大きな役割を果たしている。それは、一九七〇年以後で、排出されたCO2の四分の一、温室効果ガスに起因する熱の九〇%を吸収しているのだ。しかしその海洋の温暖化と酸性化は、生物多様性の破壊も加わって、その吸収能力を引き下げ、結果的に気候変動を悪化させる。
 IPCC特別報告(SR15)は、パリ協定で一・五度Cへの言及を迫る前線に関わった人々が早くから知っていたことを確認している。それは、地球平均気温の二度C上昇が安全な限度とはかけ離れたもの、ということだ。

まやかしの策
は気候を殺す


 COP25がチリのサンチャゴで開催されることが予定されていた。ピノチェト独裁下で有名になった軍の脅しの下にこの会議が組織されたとすれば、それはシニカルで漫画的になっていたと思われる。それは結局、一二月二日から同一三日までマドリードで開催されるだろう。この会議は、あらゆる新たな国際会議同様、「行動のCOP」と自称し、「各国の約束を引き上げる」という野心をもっている。
 「各国毎に自主申告された寄与」をその約束の付属として登録した二〇一五年COPにおけるパリ協定は、その約束がたとえ満たされるとしても、そしてそれは実情とはかけ離れているのだが、平均気温の三度Cを優に超える上昇へと導いている。したがって、二〇二〇年のグラスゴーにおけるCOP26……に向けては、新たな上乗せ修正の約束を確約することが必要になっている。
 気候否定論者のトランプとボルソナロは二〇一九年九月の国連気候サミットをボイコットし、そのことでは最悪の環境殺しの罪がある。しかし、他の大国指導者の言動もそれよりマシということはまったくない。
 アントニオ・グテレス(問題の国連サミットを主導した国連事務総長:訳者)が推し進め、ドイツ、カナダ、イタリア、日本、英国を含むおよそ六〇ヵ国によって採択された「二〇五〇年までの炭素中立」という目標は、危険なまやかしであり、炭素中立あるいは「純排出ゼロ」は、GHG排出ゼロを意味するわけではない。排出は、マイナス排出――つまり炭素除去――によって「相殺される」との条件の下に、現在の進行と同じように増大し続けることが可能なのだ。
 これらの「マイナス排出」の背後には、BECCS(炭素隔離・捕獲と一体化されたバイオエネルギー)のような危険で破壊的な技術がある。そしてこのBECCSの場合、過剰な炭素の意味のある吸収のためには、バイオマスを育てるためにインドの農地に相当するものを捧げものにすることを求めるのだ。そしてそれはもちろん、民衆と農民の諸権利をものともせずに、食料穀物と生物多様性を犠牲にする。
 市場的対応あるいは技術的な対応は不十分であり危険であり、また不公正だ。しかし、資本主義システムの枠内で想定可能な唯一のものがそれらなのだ。
 このシステムは気候の試練に対応できない。それが問題を根元でとらえること、つまり化石燃料を問題にすることができないからだ。
 地球温暖化を一・五度C以下にとどめるチャンスを半々の確率で確保するためには、炭素排出の二〇三〇年までの抜本的な削減(二〇一〇年比でマイナス五八%)が不可欠だ。しかしながらGHG排出の八〇%は化石燃料由来であり、そしてその化石燃料が現行システムでは、エネルギー需要の八五%をまかなっている。
 問題になっているのは一つの移行ではなく、エネルギー革命なのだ。しかしながら化石エネルギーシステム、および原油、天然ガス、石炭の埋蔵は、資本家グループ(あるいはその諸国家)の支配下に集中されている。そしてそれらは資本の巨大な実体に対応している(資本装備向けだけで世界のGDPの五分の一)。資本家が彼らの資本を自発的に放棄することはないだろう。また彼らに奉仕するどのような政府も、そうするよう彼らに強いることはないだろう。

若者と民衆が
唯一の道開く


 われわれは、本物の民主主義、社会的公正、気候変動を組み合わせる、エコ社会主義の過渡的綱領を必要としている。それは、環境的制約を尊重する中で必要を満たす、すなわちより少なく生産しより多くを分かち合うものだ。
 化石エネルギーと核エネルギーから抜け出し、一〇〇%再生可能で、分散化され、経済的かつ社会的に公正なエネルギーシステムへと移行する上では、補償や買い戻しのない収用、およびエネルギーシステムと金融システムに対する、従業員と住民により統制を受ける社会化が、基本的な条件になる。それは、エネルギー源変更という問題であるだけではなく、資本主義の中で引き継がれた生産力主義と決別する問題、そして不要で有害な生産や、広告と計画的陳腐化を源とするエネルギー、資源、労働力の浪費、を廃絶するという問題、でもある。
 環境適合的な家族農業と短い供給回路は、社会的公正と気候の公正における一つの武器であり、それは、農地を破壊し農民を零落させるアグロ産業を終わりにすることを想定するものだ。交通は温室効果ガス生産ではその責任の五分の一に値している。航空輸送やコンテナー輸送は抜本的に削減されなければならず、自動車交通は、都市や地域の再開発により、また無料の公共交通を有利にする中で、消失に向かわなければならない。
 それは全体として、何が、またどのような条件で生産されるべきか、を民主的に明確にする問題だ。賃金の引き下げや労働強化なしの大規模かつ集団的な労働時間短縮は、労働内容やその組織における変革と共に進められなければならない。分かち合いは、今大きく不可視化され、女性によって行われている社会的再生産労働を含まなければならない。これは、公的な医療サービス、早期の子どものケア、高齢者や助けの必要な人々に対するケア……を必要とする。
 GHG排出の歴史的な責任は、その工業的発展を長い間化石燃料に基礎付けてきた帝国主義諸国家と支配下に置かれた諸国の間で、釣り合いが取れていない。南の諸国の移行と適応に資金を融通することを二〇一〇年以後約束したグリーンファンドは、今なお動いていない。交渉が基礎にしている炭素計算は、「共通だが差違のある責任」に対する認識を消し去っている。貿易と市場化と補償の仕組みは、炭素の全量が、あらゆる場所で、またあらゆる社会的条件と歴史的な条件の下で同等である、と見なしているのだ。
 それらは、気候の債務を認識するどころか、賠償の重荷を気候変動の第一の犠牲者に負わせる、新たな環境帝国主義の基礎になっている。他方、植民地化の犯罪に対する賠償は、債務の帳消し、移動の自由、移民の定着、そして先住民衆の諸権利の承認を求める。
 資本主義は世界全体を、地球的、気候的、環境的、社会的、経済的な危機に、そして政治と民主主義の危機、文明の危機、へと投げ込んでいる。
 しかしながらこのシステムは、それだけでは崩れないだろう。それは、一層権威主義化し軍事化され、戦争を引き起こし、何百万という命を破滅させ、生物多様性、地球そして気候……を破壊している。そしてそれが支配力を保つ限りそうし続けるだろう。
 しかし今あらゆるところで、人々が立ち上がり続けている。そしてこの反乱の中では、若者たちが多数派であり、女性が前衛の位置にある。
 地球的な気候運動の同時的出現と新たなフェミニズムの波が、資本が労働者の使い尽くしに加えて、あらゆる生命、人類の生命、切り離すことができない自然の生命をも使い尽くしている事実、に返答している。これが、資本の廃絶による、また民主的、フェミニズム的、また環境の諸原則を基礎に置く、民主的に計画された経済と社会のシステムを構築することによるシステム変革に向け、九九%の合流のために基礎を提供している。地位を失うことなく仕事を変える機会を提供することによって、除かれるべき企業の従業員を保護するただ一つの方法は、民主的に計画された経済なのだ。
 この合流は、実体のある決起がもつ熱気の中でのみ、諸々の論争、自己組織化、ストライキ、また封鎖の中でのみ、構築される可能性をもつ。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一一月号) 

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