「女性運動の新たな高揚」②

かけはし 第2661号 2021年4月12日

決議 2021年2月 第4インターナショナル国際委員会

2 この高揚を引き起こした要因は何か?

2・1 以前の高揚での成果

 新しい世代は―不均等だが複合的な形で―以前の[女性運動の]高揚によって女性運動とLGBTIQ運動が得た成果から恩恵を受けることができた。それは、第1に、正式に認められた権利・家族や法規範の変化・教育や医療への女性のアクセスにおける成果であり、第2に、再生産・性の権利・自由における成果であり、第3に、専門的・学術的・文化的・政治的・メディア的な世界が開かれたという成果だった。いくつかの国では、社会主義(階級闘争)フェミニスト潮流が、労働者の権利を改善するために、労働運動の中で―労働運動とともに―闘ってきた。

2・2 労働の女性化

 女性はどこでも男性よりも多く働いている…しかし、女性の仕事の一部は不可視的である。女性は、グローバルサウスでもグローバルノースでも、世界の無償ケア労働の4分の3以上を占め続けている。
男性との格差が続いているにもかかわらず、世界の労働市場への女性のアクセスは増加しており、世界では労働者の10人に4人が女性である。北アフリカや西アジアなどの一部の地域では、グローバルサウスの他の地域に比べて女性の割合が低い(30%未満)にもかかわらず、この増加はすべての地域で見られる。
どこでも、女性はパートタイムで働かざるを得ない可能性が高くなっており、この傾向は新型コロナウイルスの大流行にともなって強まっている。このような不完全雇用は、女性の雇用全体の半分に達する可能性がある。世界的に見ても、女性労働者の半数近くが、とりわけILOが「脆弱な雇用」と呼んでいる農業・手工芸・小売業の分野で働いている。南アジアとサハラ以南のアフリカでは、この割合は70%を超えている。

新自由主義的グローバリゼーションは経済と雇用の構造を大きく変えた

 全体的に、雇用は過去20年間で農業から工業へ、そしてさらにサービス業へとシフトしており、サービス業は労働力の約半分を雇用している。
世界の女性労働力の4分の1は依然として農業に従事しており、南アジアとサハラ以南のアフリカでは、女性の主要な雇用源であることに変わりはない。ラテンアメリカとカリブ海地域では、農村部の女性化が加速している。都市に到着する製品の60%以上が家族農業や小農民農業の生産者によって生産されているため、女性の役割が経済の鍵を握っている。しかし、経済政策は、国内消費を犠牲にして、ほとんどが男性で占められる輸出志向の部門を支援している。このように、女性は世界の小規模農家の大部分を占めているため、彼女たちの状況は依然として脆弱である。
工業における女性の存在は、1995年以降減少している。一般的に、女性は繊維や衣料品などの分野に集中している。経済特区(自由貿易区)では、輸出産業が大多数の女性を雇用しているが、多くの場合は非常に若い女性である。そして、輸出産業は低賃金と社会的保護の欠如・劣悪な労働条件・ジェンダーにもとづく暴力とを結びつけている。
1995年から2015年にかけて、サービス業で働く女性の割合が世界規模で優勢になった。中所得国では小売業、高所得国では医療・教育といった特定の活動分野に女性が集中している。全体的に見て、女性の存在感が高いということは、特に販売・清掃・ケータリングの業界ではパートタイム労働の頻度が高く、相対的に低賃金であることと関連している。医療・教育・社会福祉事業における彼女たちの過剰な存在感は、これらの分野で必要とされるスキルを低く評価するジェンダー・ステレオタイプに直結している。
しかし、より一般的には、さまざまな仕事や感情的関与をこなす能力を含む適応性や困難な特別の条件のために、新しい形の従順さを形成する「典型的な女性的資質」が必要とされているのである。
世界平均では、男女間の賃金格差は23%と推定されている。女性のほぼ40%が彼女らの労働のゆえに社会保護制度に加入していない。つまり、そのような女性は、インフォーマル部門・未登録労働・ブラック企業で働き、たまにしか仕事がなかったり、家庭内での仕事に就いている。その結果、定年を迎えた2億人の女性が全く年金を持っていない。世界の貧困層の合計70%が女性である。
パンデミックの中で、在宅有給労働と家事労働を同じ場所でおこなうテレワークが大量に利用され、女性の身体的・精神的負担が増大している。多くの女性が過労による疲労から退職を余儀なくされ、解雇されたり、働けなくなったりして、自立して生活する手段を奪われている。
これが労働市場における女性の地位にどのような意味を持つのかを完全に評価するにはまだ十分な統計がないが、既存の格差が深刻化していることは確かである。仕事の「女性化」とは、労働市場における女性の数的参加が増加していること、および新自由主義政策の影響で女性の特徴的な労働条件(不安定性、脆弱性、不完全雇用、権利と社会的保護の欠如、低い組合加入率)がプロレタリアート全体に及ぶ傾向があることの両方を意味している。
雇用の不安定さは絶えず増加しており、全雇用のほぼ半分を占める。10人中6人以上の労働者がその中に含まれるインフォーマル経済の割合もまた増加している。
賃金労働と余暇の間の境界線は、再生産労働におけるのと同じように、(24時間上司に仕えなければならないので)曖昧になりがちである。個人生活と職業生活の間の境界線もそうである。女性化された能力や特性を用いることが、会社に仕えるためには必要とされるのだ。その中には、上司が魅力的だと考えるものに順応する、上司のエゴに媚びる、仕事には含まれない上司のための買い物などの社会的再生産の日常的雑用をおこなう、感情移入する、複数の仕事をこなすなどが含まれる。

2・3 ジェンダーにもとづく暴力の増加

 女性に対する暴力は、社会的に構築され、国家によって常態化されて、何らとがめを受けていない。暴力による死は、ジェンダーによるだけでなく、階級・民族性・多重リスクの状況・周縁化・不安・軍事化・移民などによる女性の差別と搾取の複雑な網の目の中で起こっている。
世界の女性の3分の1以上が、人生の中で性暴力や身体的暴力を経験することになる。ジェンダー暴力で殺される女性の大半は、パートナーや元パートナーに殺されている。2008年の危機以降、公共サービスや社会的保護が破壊され、女性の介護責任や仕事が増え、暴力から逃れる機会が減り、緊縮政策によって暴力被害者女性のためのセンターやシェルターへの資金が削減されていることで、ジェンダーにもとづく犯罪はさらにエスカレートしている。若い女性が経済的・心理的・性的に自立することが増えることによって、彼女たちは家族の男性メンバーによる「報復」の対象とされている。保守的な規範を「裏切る」女性、レズビアン、トランスの人々の行動を「正す」ためのヘイトクライムは、右翼の政治的・宗教的なオピニオンメーカーによって正当化されている。
フェミニサイド[男性による女性の殺害]は、今日、ジェンダー暴力の極端な形態の一つとして認識されており、女性であるという理由だけで、多様な形態―肉体的・性的・心理的・家族的・労働的・制度的形態―の暴力によって女性が殺害され、死亡することである。この新しい極端な暴力の形態は1980年代に注目され始め、1993年からメキシコのシウダー・フアレス[チワワ州の都市]で記録されるようになった。その後、メキシコ全土で追跡され、現在ではラテンアメリカの世界的・地域的な現象として認識されている。メキシコの女性たちが作ったスローガン「NI UNA MS!」[二度と起きてはならない!]は、22年後にアルゼンチンの女性たちのスローガン「NI UNA MENOS」[もはや一人の女性も犠牲になってはならない]―今日では世界中で取り上げられている―となり、このような形の女性嫌悪でマッチョな暴力・暴力に対する免責・人権侵害が持続・増加していることの明白な証拠である。多くの国において、女性たちは組織を作って、行方不明となった娘を探したり、フェミニサイド事件での国家の正義を要求したりしている。こうしたキャンペーンは、被害者の名を冠することで、しばしば象徴的な事例となっている。
MeToo運動はアメリカで爆発的に広がり、世界的な影響をもたらした。女性たちは沈黙を破るとともに、公式的な枠組みの中でそうしようとする際に直面する障害物を明らかにしながら、さまざまな文化的・職業的・社会的領域でのセクシュアル・ハラスメントや職場でのハラスメントを公然と糾弾し、大衆的糾弾の正当性を確立し始めたのである。
若いフェミニストの新世代は、大学当局と対峙して、性的暴行を取り扱う対応やメカニズムを要求することで、大学での性的暴力に対応し、反撃してきた。
多くの国で、人身売買・国際的組織犯罪ネットワークが女性を性的奴隷や強制労働に就かせるために、女性が行方不明となっている。多くの紛争において、レイプが戦争の武器として使用されている。その背景には、地域社会の屈辱から民族浄化、民間人へのテロ行為までさまざまな動機がある。
女性移民の置かれている状況のために、女性は性的暴力・失踪・売春・人身売買・恐喝・家族からの隔離(多くの旅は子ども同伴)・恣意的な拘留・病気・事故・フェミニサイドの犠牲者になりやすくなっている。女性たちは一緒に旅をする子どもたちに責任を負うことが多いので、二重の標的となっている。そして、女性たちの不法就労者としての立場ゆえに、彼女らと子どもたちのために雇用やサービスを得ることがますます困難となっている。
過去20年間、国家が責任を負うこと、暴力に対処する新たな法的枠組みを確立することを要求するフェミニスト運動の圧力の下、多くの国が法律や公共政策を導入し、格差に立ち向かったり、女性に対する暴力やフェミニサイドに対応してきた。しかし、実際には、そうした政策は十分な資金がなく、きちんと実行されてこなかったため、暴力を根絶することはおろか、政府の行動はその言説と矛盾したものとなっている。それどころか、暴力を糾弾する女性のエネルギーと決意を通じて暴力がより可視化される一方で、暴力は増加している。
暴力を経験した女性が司法にアクセスする際に直面する障害物は、ジェンダー差別、女性が劣っているという偏見、制度的な文化やイデオロギーを支える固定観念に関係している。暴力を受けた女性被害者を擁護するために闘う女性活動家、人権擁護活動家、フェミニストは、敵意や脅迫に直面し、犯罪者扱いされ、場合によっては国外追放される。

2・4 社会と社会運動における女性の役割の増大

 女性は、既成秩序に挑戦する運動に常に積極的に参加してきた。しかし、政治的主体としての女性が、あらゆる種類の動員の最前線に明らかに登場してきたのは、ここ数十年間のことである。
その例をいくつか挙げてみよう。マキシマ・アクーニャとペルーでの採掘に反対する彼女の闘い。ホンジュラスでの環境保護・人権擁護活動家であるベルタ・カセレス。スーダンでの民主的反乱のリーダーであるアラア・サラア。アメリカでの「ブラック・ライブズ・マター」のアリシア・ガルザ、パトリッセ・キュロス、オパール・トメット。気候変動に反対する若者の世界的運動「未来のための金曜日」におけるグレタ・トゥーンベリ。世界最大の鉄鋼会社アルセロール・ミタルに反対する大規模動員を主導するインド・ジャールカンド州のダヤマニ・バーラ。土地を守る闘いを主導するロリオンドの「マサイ女性司牧評議会」。サンフランシスコ湾岸地域のラテン系移民女性の草の根組織である「統一し、行動する女性」(MUA)は、2013年に家事労働者の権利に関する法律が承認された際に重要な役割を果たした。エクアドルのワオラニ族の女性たちは、自分たちの領土(テリトリー)で天然資源の搾取を止めることに成功している。
女性たちは、ブラジルの100以上の先住民族に属する女性による土地・医療・教育の保護を要求する行進など、地域社会の抵抗運動を主導している。また、エクアドルの先住民族の女性たちは、日常生活に影響を与える燃料補助金の廃止を追求する経済政策に憤慨し、闘いの主導的役割を果たした。カナダのファーストネイションの女性とアメリカのネイティブアメリカンの女性は、自国の領土内での天然資源の搾取を止めることに成功している。
チリの若い女性と学生は、ピノチェト憲法をくつがえすことによって、新自由主義のモデル国家というのがまったくの誤りであったことを明らかにした感動的な反乱の一部となっている。特に、「フェミニスト3月8日調整」は、集会の組織化とフェミニストプログラムの開発を通じて、このプロセスの中できわめて重要な役割を果たした。
中東・北アフリカ地域では、暴虐や社会崩壊に反対する運動を主導する女性たちが、社会や国家に浸透している宗教原理主義とのイデオロギー的な闘いを強いられている。
ブラジルとアメリカでは、マッチョで権威主義的なボルソナロ大統領とトランプ大統領に率いられた政府によるパンデミックへの悲惨な対応に対して、女性たちは抗議行動の先頭に立ってきた。
旧ソ連圏の2カ国[ポーランドとベラルーシ]では、女性たちが独裁的で腐敗した政権に反対する大衆の闘争を主導している。ポーランドでは、すでに制限されている中絶の権利に挑戦することで何百万人もの人々を動員し、民主主義的な要求へと向かう一般的発展のための空間を作り出した。ベラルーシでは、女性たちは[大統領選挙の]投票結果を尊重させ、強奪された政府を追放する民衆闘争の最前線にいる。
新たなフェミニストの台頭と社会運動における女性の重要な役割の増大は、新しいタイプの女性政治家の出現を可能にした。スペインでのエイダ・コラウやわれわれの同志であるテレサ・ロドリゲスの選挙、アメリカでのアレキサンドリア・オカシオ・コルテスやラシダ・トレイブのような民主党左派からの新しい(非白人の)スピーカーたち、ブラジルでのマリエル・フランコとそのパートナーであるモニカ・ベニチオなどがその例である。
このように、女性が社会的・政治的運動の中で積極的かつ主導的な役割を果たし、国の政治的プロセスに完全に参加し、新自由主義的政策によって引き起こされた幅広い層の人々の貧困に抵抗するという顕著な成長が見られるようになった。われわれは、これらの闘いが、実際には、エコロジー的・経済的・社会的・文化的な、ときには精神的な意味での生命の擁護、社会的再生産の問題に結びついたものであることを理解している。これらの闘争は、自分たちの環境や社会一般に蔓延しているジェンダーの不平等や家父長的な暴力に対する主人公たちの意識の高まりと連動している。

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