SОGIハラスメントを許さない

LGBT差別禁止法制定を
性的マイノリティーの権利を
職場から叩き出す暴挙

 さまざまな労働・生活の現場で「性的指向・性自認に関する侮辱的言動」(SОGIハラ)によって傷つき、職場から事実上排除される事態を許してはならない。少なからぬ職場で執拗な差別言動で圧力を加えられている。LGBTの人びとの権利を守るために行動を(編集部)

横行する侮辱的言動

 朝日新聞(9・12)は、「『SOGIハラ』で労災認定 性別変更した看護助手が精神障害を発症」という見出しで、茨木労働基準監督署(大阪府茨木市)がSOGIハラスメント(★注)で労災認定したことを報道した。
 看護助手のAさんは、性自認は女性で性同一性障害特例法に基づき、性別を女性に変更(2004年)した。大阪府の病院就労後(13年から)、職場で「男性のような名前で呼ばれ」続け、精神障害を発症する。労基署は、このような言動についてAさんに対する「性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」でパワハラにあたり、心理的負荷は3段階で「強」と認定し、労災を適用した。
 病院は「職員の発言で精神障害を発症したとは考えられない。職場外にストレス原因が存在した可能性も否定できない」などと居直った。つまり、SOGIハラが厚生労働省のパワハラ防止法の1つであり、いわゆる「SOGIハラ是正と職場改善」が求められていたことを知っていながら放置し、不誠実対応を続け、Aさんの人格・人権を否定しぬき、実質的にAさんを職場から「叩き出した」と言える。

 (★注)SOGIハラスメントについて日本共産党は、以下のように説明している。「SOGI(ソジ)とは、セクシャル・オリエンテーション(SO=性的指向)とジェンダー・アイデンティティー(GI=性自認)の頭文字から作られた言葉です。性的マイノリティーの人も、異性愛者の人も、すべての人の多様な性的指向・性自認を認め合おうという意味で使われるようになっています。」(日本共産党/「2019参院選・各分野の政策9 性的マイノリティー・LGBT/SOGI 性的マイノリティーの人たちの人権と生活向上のために」2019年6月から)

差別暴言を許さない


 続いて朝日新聞(9/16)と各報道は、「『SOGIハラ』主張し労災申請 『性自認侮辱、うつ病に』」、「性自認は女性、なのに『彼』 メーカー社員、SOGIハラで労災申請」、「トランス女性 『上司から執拗に『くん付け』された」 うつ病発症で労災申請」という見出しで会社員Bさんの労災申請についての記者会見を報じた。
 Bさんは、「7〜8年前に性同一性障害の診断を受けた。2017年11月に会社側へ性自認を伝え、部署を異動した。直後から上司にあたる男性社員に他の社員の前で『彼』と呼ばれ、『女として見られない』などの侮辱を受けるようになった。やめるように求めても繰り返されたという。翌18年春から体調を崩し、冬にうつ病と診断されて会社を休んだ。
 21年に職場復帰しようとしたところ、引っ越しが必要な遠隔地への転勤を命じられた。個人で加盟できる労働組合を通じて会社と交渉し、今月からは引っ越しも不要な、休職前と異なる職場に復職した」(朝日新聞9/16)。
 なお弁護士ドットコムニュース(9/15)によればSOGIハラを繰り返した男性上司は、「『君のことを女として見られない』『女として扱ってほしいなら手術を受けたらどうだ』などの趣旨の発言があったという。そのほかにも、仕事からはずさせるようなパワハラにあたる言動があった」と報じている。Bさんの人格・人権を否定し、そのレベルは悪質であり、意識的にSOGIハラを繰り返し、Bさんに打撃を与えた。
 Bさんは会見で「『会社も上司の発言をハラスメントとは認めてくれなかった。労災と認定されれば会社や世の中の意識も変わるかもしれない』と話した」(同)。
 朝日新聞は、Aさんの労災認定に対して「労災認定されたケースが明らかになるのは珍しい」と評価し、代理人弁護士の(SOGIハラ)「抑止の意味で意義は大きい」という発言を紹介している。Bさんのケースに対しても、Bさんの発言を紹介する形でSOGIハラ防止に向けた法令遵守の徹底を呼びかけている。

「LGBTとハラスメント」

 改正労働施策総合推進法(20年6月施行)は、パワーハラスメント防止義務とし、その指針(20年1月)の中にはSOGIハラとアウティング(性的指向・性自認等の個人情報を本人の同意なく暴露する)もパワーハラスメントであることを明記し、大企業・団体・地方自治体は20年6月、中小企業は22年4月から防止を義務付けた。
 指針は、パワーハラスメントの言動の類型(身体的な攻撃/精神的な攻撃/人間関係からの切り離し/過大な要求/過小な要求/個の侵害)を明示している。さらに性的指向・性自認に対するハラスメントに関しては、①「精神的な攻撃」(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)―人格を否定するような言動を行うことを含む。 ②個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)―労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること―と明記した。
 さらに厚労省は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について」の通達を発出し、「相手の性的指向・性自認の如何は問わないものであること」と明記した。
 詳細な内容、諸ケースについて「LGBTとハラスメント」(神谷悠一「LGBT法連合会」事務局長)、松岡 宗嗣(LGBT関連情報を発信する一般社団法人fair代表理事)著/集英社新書)において整理されて提起している。
 本書は(「序章「性の多様性」についての基礎知識/第一章「LGBT」へのよくある勘違い―ネガティブ編/第二章「LGBT」へのよくある勘違い―一見ポジティブ編/第三章「LGBT」に限らないよくある勘違い/第四章「SOGIハラ・アウティング防止」法とは/第五章 LGBTをめぐる「人事・労務制度」/巻末付録「パワハラ防止指針」という構成になっている。丁寧なアプローチでわかりやすくなっている。ぜひ学習してほしい。

根拠法が必要だ


 ただしパワハラ防止法には罰則がない。厚生労働相が労働施策総合推進法の観点から必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導または勧告、公表するというレベルだ。前記のAさん、BさんのSOGIハラ事件でも明らかなように企業などは建前上、パワハラ防止などの就業規則を明記していても、実質的に放置、サボタージュしているのが実態だと言える。
 だからこそパワハラ防止法を強化し、LGBTに対する差別を許さないための根拠法が必要なのだ。
 すでに日本学術会議は、「提言 性的マイノリティの権利保障をめざして―婚姻・教育・労働を中心に―」(2017年9月29日)を明らかにしている。
 さらに「提言 性的マイノリティの権利保障をめざして(Ⅱ)―トランスジェンダーの尊厳を保障するための法整備に向けて」(2020年9月23日)において「提言2 トランスジェンダーを含む性的マイノリティの人権が侵害されることがないよう、性的マイノリティの権利保障一般について定めた根拠法が必要である。国会議員あるいは内閣府による速やかな発議と立法府における迅速な法律制定が望まれる。関係省庁及び自治体は、より実効性の高い権利保障政策の立案・実行・評価に努めるべきである。」と強調している。
 超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」は、「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(LGBT差別解消法案)を国会提出にむけて準備し、与野党は「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるという認識の下」で修正合意した(5・14)。
 法案は、①性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する国、地方公共団体及び国民の責務②政府は基本方針を、都道府県は都道府県基本計画を、市町村は市町村基本計画を策定③行政機関等及び事業者における性的指向又は性自認を理由とする差別的取扱いの禁止④行政機関等及び事業者に対する性的指向又は性自認に係る社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の義務(事業者については努力義務)……」と責任主体を明確にし、是正を強めていくものだった。
 だが法案は、自民党内トランスジェンダー排除派、天皇制家父長主義派、極右反動の日本会議などの妨害に直面し、自民党合同会議は、法案提出を断念した(6・7)。

21衆議院選挙に向けて

 LGBT差別解消法案を国会提出さえもできなかったが、野党は衆院選に向けて政策公約に法案実現に向けて明記し、次のようにキャンペーンを開始している。
 立憲民主党(9・13)政権公約―「性的少数者(LGBT)平等法」制定を掲げた。次期衆院選で政権交代を実現した場合、LGBTが抱える課題解決の担当閣僚を置くことを明らかにしている。
 社民党は、「2021年 重点政策」の中で「同性愛や性同一性障害など性的少数者(LGBT)が職場で不当な差別を受けたり、学校でいじめの対象となる例が後を絶ちません。先の通常国会では議員立法の『LGBT差別解消法案』の提出が直前で断念されました。『LGBTは生物学上、種の保存に背く』というような発言をした自民党議員らの妨害によるものでした。EU加盟国や米国の多くの州、カナダなどでは、すでに性的少数者への差別禁止法が制定されています。日本は差別を禁止するよう国連から勧告を受けています。早期に『LGBT差別解消法案』を成立させます」と主張している。
 大椿ゆうこ(社民党副党首)衆院候補は、政策の中に「LGBT差別禁止法をつくる」と掲げている。
 日本共産党は、第28回大会(20年1月)で綱領の中で「ジェンダー平等」の項目を設け「ジェンダー平等社会をつくる。男女の平等、同権をあらゆる分野で擁護し、保障する。女性の独立した人格を尊重し、女性の社会的、法的な地位を高める。女性の社会的進出・貢献を妨げている障害を取り除く。性的指向と性自認を理由とする差別をなくす。」と改正した。
 すでに「2019参院選・各分野の政策9 性的マイノリティー・LGBT/SOGI 性的マイノリティーの人たちの人権と生活向上のために」2019
年6月)で「LGBT/SOGIに関する差別のない社会をめざし、性的マイノリティー(少数者)の人たちの人権と生活向上のためにとりくみます」と掲げている。
 「かけはし」(19年7月1日号)も「2019年 参院選に向けた政策提案」の中で矢野薫が「LGBTQIA+の権利保障実現を」というタイトルで、「性的アイデンティティは女性・男性だけではないということである。……性的アイデンティティは女性と男性だけではなく多様な広がりがある。」と強調し、「1.LGBTQIA+の啓発活動を行うこと。性的アイデンティティは多様であることを実感できる公教育を実践すること。2.同性婚を認めること。3.学校・企業等すべての公共スペースでLGBTQIA+の権利を保障すること」の具体的要求を提起している。 

あらゆる性的抑圧に対して反対

 最後に、遠山は(本紙2
021年1月1日号)「『女性差別との闘いの義務』と 『組織のフェミニズム化』の検証に向けて」で「第四インターナショナル第15回世界大会(2003年2月)は、規約前文の中で『レズビアンとゲイに対する抑圧とあらゆる性的抑圧に対して反対』を確認している。さらに第四インターナショナル第17回世界大会でも『LGBTQ』(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クエスチョニング)の取り組みの重要性を強調しているように、JRCLがどのように受け止め、政治的立場を明らかにし、実践的な取り組みをしていくのかとして問われている」ことを浮き彫りにした。
 そのうえで「JRCLと『かけはし』に求められることは、家父長的資本主義社会のヘテロセクシズム(異性愛中心主義)による日常生活までふくめた抑圧構造に対して系統的に『LGBTQ』の仲間たちの抗議や批判、政治分析を取り上げていくことだ。新たな第四インターナショナル日本協議会(日本支部)の建設は、『LGBTQ』の問題提起、テーマを避けてはならない」と提起した。あらためてこのことを再確認したい。
       (遠山裕樹)

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