11.19LGBT法連合会がシンポジウムを開催

法整備とSОGI
LGBT差別禁止法の制定を実現しよう

宗教右派の反対策動を許さない

 11月19日、一般社団法人LGBT法連合会は、早稲田大学16号館で早稲田大学教育学部金井景子研究室と共催で「法整備とSOGI」(SO〈Sexual Orientation/性的指向〉、GI〈Gender Identity/性自認〉)というテーマでシンポジウムを行った。
 連合会は、「性的指向および性自認に基づく差別を日本から無くさなければならない。そのためには法律が必要だ。」を柱に2015年4月に発足し、LGBT差別禁止法の必要性を訴えてきた。また、超党派「LGBTに関する課題を考える議員連盟」を通して政策提言、各政党ヒアリング、総会で「2023年度予算編成ならびに政策に関する要望書」(10月12日)を提起してきた。シンポジウムは、この間の取り組みを検証し、あらためてLGBT差別禁止法の制定に向けて論議した。
 開催あいさつが安間優希さん(連合会・理事)から行われ、「2015年発足時からLGBTの権利を抑え込もうとする反動的力も登場した。渋谷区パートナーシップ条例に対して反対するビラなどが撒かれた。その中心は、今、大きな問題となっている宗教右派だった。やはり押し返し、LGBT差別禁止法を成立させていく必要がある」と述べた。
 金井景子さん(共催)は、「早稲田大学教職員向けに『セクシュアルマイノリティ学生への配慮・対応ガイド』を作り活用している。また、学生向けに『セクシュアルマイノリティ学生とアライ(ally/LGBTを理解・支援する人)のためのサポートガイド』を配布している。今はとても大切な時だ」と発言。
 全体会に入り、3人が登壇し、以下のように問題提起した。

三成美保さん

(日本学術会議社会と教育におけるLGBTIの権利分科会 前委員長)

 2014年に日本学術会議社会と教育におけるLGBTIの権利分科会を立ち上げた。2017年提言は、①性的マイノリティに対する理解を深めていくために差別解消のための根拠法の制定と包括的な法政策 ②婚姻の性中立化をはかること、婚姻の多様性を認める ③労働・雇用のガイドラインなどを立法府・政府に求めた。
 2020年提言では、①性同一障害特例法の廃止と性別記載変更法の制定 ②SОGIESО(性的指向や性自認、ジェンダー表現、性的特徴)を理由とする差別を禁止する法律の制定 ③性的マイノリティだけでなく包括的差別禁止法の制定を求めた。

宗教右派について

 ①2000年頃から神道政治連盟、生長の家、日本会議を宗教右派と呼ぶようになった。統一教会は重視されていなかった。
 ②宗教右派で共通しているのは異性婚主義、性別役割や男女の違いを強調し、ジェンダー平等に否定的だ。同性婚やトランスジェンダーの権利保障を個人の人権保障として捉えるのではなく、伝統的な家族や社会秩序を覆すとして危険視している。家族観や子どもへの影響、トランスジェンダー女性の脅威など情緒的な訴え方が多く、一見、政治性を持たないようなイメージ操作が行われている。
 ③宗教右派の影響力が、かならずしも可視化されていない。学校で平等原理を学ぶことで、男女平等が実現していると錯覚してしまう現象と似ている。政教分離原則を習うことで、日本では政治と宗教が分離していると錯覚しやすくなっている。宗教に触れること自体がタブー視される傾向が強い。
 今回の統一教会問題は、宗教右派の危うさを社会が認識するきっかけになった。今後、日本における宗教の本来的な多様さと寛容さを宗教関係者と協力しながらはっきりさせることが必要だ。

トランスジェンダーバッシング

 トランスジェンダーバッシングは、トランス女性フォビア(トランス女性嫌悪)に焦点化されている。女性トイレなどの女性専用空間からはペニスをつけた者は排除されるべきという議論だ。
 次のことが無視されている。第1は、誰が、どのように判定するのか。ペニスなどの性器は、人目に触れるものではない。男女を問わずトイレの入り口で性器をチェックしたり、露出したりするのは公然わいせつ罪になる。それはトランス女性であるかいなかとは無関係だ。
 第2は、トランス女性一般を語ることは、女性一般を語るのと同じぐらい非現実的だ。トランスは性別移行を意味し、トランス女性の在り方は個人によって異なる。多様であるという前提に立ち、性別移行のそれぞれの段階に応じたスタイルや支援が必要だ。
 第3は、トイレや更衣室などの施設は、設置者の工夫によって、いくらでも使いやすくできる。北欧の大学では、個室トイレに切り替わっているようです。日本でも国際基督教大学では、性別集団トイレを残しつつ、一番使いやすい場所にトイレを設置し、学生の評判もいい。
 トランス女性を装って女性トイレに入る者は、痴漢であり、性犯罪だ。刑法の性犯罪規定によって存在している。トランス女性フォビアは、合理的根拠は一切ない。目指してる法律は、合理的ルールを作るということだ。これに対して情緒的な反論が、宗教右派と結びついた政治勢力によって行われている。トランス女性フォビアは、その象徴となっている。

中川重徳さん

公益社団法人Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に/弁護士)

 同性同士の結婚を指す「同性婚」を認めないのは憲法に違反するとして、同性カップルらが国を提訴した「結婚の自由をすべての人に」訴訟を取り組んでいる。 同性婚を支持が広がっているにもかかわらず日本政府は認めようとしていない。自民党の支持者の6割も賛成している。政府は、「慎重に検討する」の繰り返しだけで前に進めようとしない。だから裁判の力によって突破しようとしている。
 2021年3月、札幌地方裁判所は、判決の中で「同性愛者に対して婚姻によって生じる法的効果を認めない民法及び戸籍法の規定は、憲法14条1項に違反する」と述べる画期的な判決が出ている。ところが22年6月、大阪地裁は合憲の判断を示した。判決の中では「婚姻制度は人の尊厳にかかわる問題だ」と踏み込んだ。司法の判断が分かれている状況にあり、なんとか法的に認めさせるよう取り組んでいきたい。行政がパートナーシップ制度の導入が増えているように、後々において「同性婚」を法的に認める状況がおとずれるだろう。

宗教右派を批判する

 神道政治連盟、統一教会のパンフで書かれていることは、事実を徹底的に無視することだ。2003年頃に全国の性教育が攻撃され、子どもたちの教室、図書室から性に関する図書が消えた。七尾養護学校事件(2003年)では性教育のための教材を産経新聞、右派議員たちが攻撃した。この傾向は、今でも続いている。「同性婚」に対して「同性愛は依存症だ」などと言っている。社会の性問題に対する不慣れな状況につけこんで嘘を繰り返している。みんなではね返していこう。自民党は、選挙で勝つために統一教会に力を求めた。民主主義の歪みを許してはならない。

原ミナ汰さん

(LGBT法連合会・事務局次長)


 連合会は様々なコミュニティーとの交流、差別が発生した時の被害者支援と解決に向けた取り組みなどを行ってきた。前国会でLGBT法が潰された。『差別は許されない』という文言が入っていたことに対して、反対意見が強くなったからだ。あからさまなSOGIハラスメントが職場、地域で続いている。『性同一性』から『性自認』が使われるようになった。だが、『性同一性』に戻そうという動きがある。男女二分論を死守しようという意図がある。私は、Xジェンダー、ノンバイナリー(男女どちらとも異なる性自認)の立場から男女二分法にこだわる社会に危惧を持っている。
 性は多様性でグラディーション、スペクトラムだ。法律は人間が作ったものだから変えられる。性的マイノリティーについて啓発を行ってきた。人々は変わってきているのに、一向に変わらないコアな層が存在しているということだ。しかし時代の流れは変わっていく。

3分科会で議
論を深める

 全体会後、「教育とSОGI」、「性差別とSОGI」、「宗教とSОGI」の3分科会に分かれて論議を深めていった。
 なお各分科会の登壇者は、以下のとおりである。

【分科会1】 教育とSОGI
登壇者
・三成 美保(追手門学院大学 教授/奈良女子大学 名誉教授)
・太田 美幸(一橋大学 大学院社会学研究科 教授)
・小山 聡子(日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科 教授 )
・河野 禎之(筑波大学 人間系 助教)
座長 林 夏生(一般社団法人LGBT法連合会 代表理事)

【分科会2】 性差別とSОGI
登壇者
・遠藤 まめた(一般社団法人にじーず 代表)
・太田 啓子(弁護士)
・藤沢 美由紀(毎日新聞記者)
・奥野 斐(東京新聞記者)
座長 藤井 ひろみ(一般社団法人LGBT法連合会 代表理事)

【分科会3】宗教とSОGI
登壇者
・堀江 有里(日本基督教団京都教区巡回教師)
・戸松 義晴(公益財団法人全日本仏教会 理事/WCRP世界宗教者平和会議日本委員会 理事長)
・斉藤 正美(富山大学非常勤講師)
・松岡 宗嗣(一般社団法人fair 代表理事)
・鈴木 翔子(レインボーさいたまの会)
座長 神谷 悠一 (一般社団法人LGBT法連合会 事務局長)
          (Y) 

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