米国 女性に対する右翼の最新攻撃

アラバマ州最高裁、「胚子は子ども」と裁定

ダン・ラボッツ

 アラバマ州最高裁は先週、凍結された胚子は人間であり、その破壊は違法と裁決し、まずはじめに、体外受精(IVF)を利用している女性とそれを提供する医療専門家の中にパニックと混乱を生み出した。その決定はIVFを非合法にしているわけではないが、つくり出された胚すべてが、それが生存可能であることを問題にせず移植されることを求め、その処置をより高額に、より複雑に、そして女性にとってより危険にしている。これは、女性の性と生殖の権利に対する、LGBTコミュニティに対する、そして公的公衆衛生に対する、福音派クリスチャン右翼による最新の攻撃だ。
 女性の卵子と男性の精子がシャーレの中で結合され、その後女性の子宮内に移植される処置であるIVFは、ガン治療を前にした女性が思い描くようなトラブルを抱えるカップルによって、また代理母と協力して子どもを欲しいと思うゲイのカップルによって利用されている。米国内では、毎年およそ75万人のIVF出産があり、1978年に米国でIVFが始まって以来、そのような出産は約1200万人あった。
 裁判所のこの決定は、科学的に確実な根拠があり、民衆にも評判がよい、州最大の病院で出産クリニックであるバーミングハムのアラバマ州立大学医療システムをこの仕事の一時休止に追い込んだ。その間民主党と共和党の政治家双方は、IVFを守る法の採択に急いだ。
 この決定に同意したアラバマ州最高裁判事のトム・パーカーは、福音派クリスチャンであり、繰り返し聖書を引用した。「人間の命が不当に破壊されれば、必ず神聖な神の怒りを招く」とパーカーは書いたのだ。彼と彼の法廷はこれまで、多くの他の反動的な反女性の決定に責任を負ってきた。
 トランプはすぐさまIVFを支持して現れ、アラバマ州の議会にそれを守るよう呼びかけたが、彼の対立候補者であるニッキー・ヘイリーは「私にとって胚子は赤ん坊だ」と語った。共和党の政治家ほとんどは、アラバマの決定は11月にかれらに害になる可能性があると認識し、IVF支持として登場している。
 州のモットーが「われわれはわれわれの権利を守る」であるアラバマ州は、女性の性と生殖の権利を制限するために、他のあらゆる州よりも多くのことを行ってきた。それは、ドッブス決定として最高裁が2022年6月22日に、中絶する女性の権利を保護した「ロ―対ウェード」判決をひっくり返して以来のことだ。2022年6月24日アラバマ州は、妊娠のあらゆる段階で中絶を禁止するという全面的な中絶禁止の実効化を始めた。この週の憲法は「命への権利を含んで、まだ生まれていない命の尊厳と生まれていない子どもの権利を認め支持することがこの州の公的な政策である、と認め、宣言し、確認する」というものだ。
 多くが、法廷や議会を利用する福音派クリスチャンとカトリックが避妊をも非合法化することをもくろむ可能性もある、と恐れている。
 米生殖医学会は「アラバマ州最高裁は医療の現実とアラバマ市民の必要に真っ向から刃向かう決定を行った」と宣言した。女性に生殖医療を提供している最大かつもっとも重要な「プランド・ペアレントフッド」は「われわれは、裁判所や政治家から干渉を受けることなく、われわれが望む家族と未来を作り上げることができなければならない。アラバマ州最高裁によるこの裁定は、何年にもなる性と生殖の自由に対する攻撃、およびIVFを含む医療ケア利用を制限する活動の結果だ」と書いた。
 進歩派民主党下院議員のアレクサンドラ・オカシオ・コルテスは次のように投稿した。つまり「女性憎悪の一派とかれらのプロパガンダ・ネットワーク全部をくずかごに投げ捨てよ。かれらは米政治史のごみとして自らに汚点をもたらすことになった」と。一方バーニー・サンダース上院議員は「可能な限りはっきりさせたい。裁判所、政府、また教会には、子どもをもつかどうか、あるいはどのようにもつかに関する完全に個人的な決定に干渉する仕事など全くない」と投稿した。(2024年2月25日)(「インターナショナルビューポイント」2024年2月26日)

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