反資本主義的労働運動の再組織化と再建を
FI16回世界大会議案
第四インターナショナルの役割と任務(国際委員会の決議草案)(上)
第四インターナショナルは二〇一〇年の前半に、第十六回世界大会を準備している。次回世界大会は、二〇〇三年の第十五回大会で打ち出した反資本主義的で革命的な新しい党とインターナショナルに向けた挑戦をさらに一歩前に進めることを課題としてしている。LCR(革命的共産主義者同盟・第四インターフランス支部)が解散し、NPA(反資本主義新党)を結成したことは、フランスの国内のみならず国際的にも未踏の領域への挑戦として大きな注目を集めている。ここに掲載する決議草案に続き、本紙では順次大会の諸議案を掲載していく予定である。(編集部)
次回世界大会の準備は、グローバルな経済危機と世界的なエコロジー危機のかつてない組み合わせを特徴とする情勢の中で進行している。これは重大な転換点である。この二重の危機は資本主義システムの失敗を示すものであり、反資本主義的労働者運動の再組織化と再建を課題とするものである。
(1)
民衆的諸階級に対する社会的・経済的攻撃と、新自由主義的「反動改革」が強化されようとしている。さらに多くの戦争と紛争が生じるだろう。エコロジー的破局が幾百万人もの人びとを直撃するだろう。新しい歴史的時代が地平線に姿を現している。世界経済と政治をめぐる帝国主義諸国間の新しい力関係が、中国、ロシア、インド、ブラジルといった新しい資本主義諸国の登場を伴って形成されている。米国の覇権の弱体化と、欧州・ロシア・アジア・米国の間での資本主義間競争の激化の結びつきも、NATOの役割の増大と新しい国際的緊張を伴いつつ、新しい政治的・軍事的勢力配置の中で地政学的・戦略的影響を有している。
近年アメリカ帝国主義は、その経済的衰退を世界の四隅における軍事的覇権の再配置によって埋め合わせてきた。その社会的・経済的諸矛盾は、米国においてさえG・W・ブッシュを取り巻く共和党チームの信用失墜をもたらした。オバマの当選は、この信用失墜に対する、米帝国主義にとっての代案的解決策としての対応である。彼の当選が、いずれ失望することになるだろう米国社会の一部の層の変革への願望に応えるものであったとしても、それが現実なのである。
つまるところこの危機は、解決策を提示できない新自由主義イデオロギーの失敗を明らかにしている。この社会システムに固有のすべての矛盾は、社会民主主義や中道左派が適切な対策を打ち出すことができないまま、爆発的なものになっていく。いずれにせよ採用されることのなかった新ケインズ主義的措置でさえ、危機を解決するには十分ではない。
(2)
社会的反撃の闘いは世界的規模で発展し続けているが、それはきわめて不均等な形をとったものであり、依然として防衛的である。グローバル・ジャスティス運動は二〇〇四年まで保持していた力学を失った。にもかかわらずベレンWSF(世界社会フォーラム)は、国際的合流の必要性と可能性を示している。しかし闘いがさらに細分化・分散化しているという枠組みにおいてなのである。
▼一部の欧州諸国――フランス、ギリシア、ドイツ、ポーランド、イタリア――では、社会的闘争が政治の場に中心的影響を持っているが、こうした闘争は資本の攻撃と危機の影響という基本的傾向を阻止し、転換させるには不十分である。こうした闘争は労働者の分裂と細分化のプロセスを克服することに成功してはいない。こうした闘争は依然として防衛的なものである。これらは、反資本主義的意識の面での表現をいまだ見出してはいない。反資本主義左翼の不在というこの枠組みの中では、反動的、さらには外国人嫌悪症的・レイシスト的オルナティブや傾向が強力になりうるのである。
▼中東では、パレスチナ、イラク、レバノンで、民衆は西側諸国とイスラエルによる侵略と占領に抵抗して闘い続けている。レバノン侵攻の二年後にシオニスト政権がガザで行った殺人的侵略は、抵抗運動を打ち負かすことができなかった。今やハマスとヒズボラが、この抵抗の主要な政治勢力として取り上げられるが、自らの行動を民族解放であると共に社会的文脈の中に位置づける勢力も存在する。
▼ラテンアメリカは、アルゼンチンやブラジルのように不均衡で限界を持った諸国もあるとはいえ、依然として最も社会的に爆発的な情勢をかかえた大陸である。とりわけベネズエラ、ボリビア、エクアドル、パラグアイのように帝国主義との部分的決裂を経験した諸国もある。
▼一連の新興資本主義国、ないし資本主義の復活がもたらされた諸国――中国、インド、ロシア、旧東側ブロック――では、グローバリゼーションの旋風が幾億人もの人びとをプロレタリア化する傾向にある。しかし、来るべき数年のうちに中心的役割を果たしうるこの新しい社会的パワーは、このグローバルな再組織化の挑戦に対峙しうる、労働組合、アソシエーション(社会組織)、政治組織などの大衆的な独立組織をいまだ形成していない。
▼巨大な資本主義的多国籍企業の利益のためのアフリカにおける資源の収奪は、現在の諸政権との共謀の下で拡大している。近年のサハラ砂漠以南アフリカでのGDPの継続的成長は、住民の利益のためになっておらず社会的不平等を拡大しているだけである。生活水準の悪化に直面して、ギニアのゼネスト、トーゴのデモ、南アの公共部門でのゼネストなどに見られるように大きな闘いが起こっている。二〇〇八年末の食糧危機は、多くのデモに火をつけた。
しかし、ギニア、カメルーンでそうであったように、政治的オルタナティブの不在は、こうした闘いの成功にとって巨大な妨げとなっている。それらは、マダガスカルでのように後見を受けたブルジョア政治組織によって脇道にそらされたり、ナイジェリアやコンゴ民主共和国のように宗教的袋小路によって自らを見失ったり、さらに悪いことにはケニアや南アのようにエスニック的・レイシスト的袋小路に陥っている。
▼ソビエトブロックの分解と金融的グローバリゼーションが結びついた長期的影響は、アジアにおいて継続的に見られるところである。「熱い戦争」の中心(アフガニスタン、スリランカ、フィリピンのミンダナオ島)、国際的紛争地帯(朝鮮半島、パキスタン、インド)、以前の地政学的な力の均衡への挑戦(東南アジア、中国、日本)、以前に勝ちとられた民主主義的空間の縮小(タイ、フィリピン、インドネシア……)などである。
こうした不均衡は、今や金融・経済危機と食糧危機によって激しくなり、現存するさまざまな分野――反戦・反核、債務反対・食糧主権、社会的・エコロジー的諸権利の防衛――での地域的調整と、社会的反撃の運動のいっそうの合流を推し進めている。
(3)
資本主義的グローバリゼーションと現在の危機の力学は、伝統的左翼の進化と展開の枠組をも変化させた。改良主義官僚指導部は、その余裕を大きく失ってしまった。一連の支配的諸国や開発途上国で、社会民主主義やそれに類する勢力が、「改良なき改良主義から「反動的改革をもたらす改良主義」へと転化したことは、社会自由主義への転換を経験しているということである。つまりこうした勢力は、直接に新自由主義的ないし新保守主義的政策に同意を与えているのだ。
さまざまな度合いで社会自由主義や中道左派と政治的・制度的につながったすべての勢力は、労働者運動のこうした質的変化に引き込まれ、危機から抜け出るプランを定式化する能力を持たない。さらに重大なことは、ブラジルのルラ政権の政策に見られるように、エコロジー的危機をいっそう悪化させていることである。
伝統的な共産党は長期的後退を続けている。彼らは、リベラル左派の指導的勢力や制度的機構にすがりついたり、彼らのノスタルジックで自己確認的な立場に舞い戻ることにより、この衰退を押しとどめようとしている。ギリシアの「シナスピスモス」のように反資本主義的諸勢力と共に社会運動を築き上げようと願う部分や潮流が存在しているが、彼らはその改良主義的性格のために矛盾と分裂を運命づけられている。社会的抵抗と伝統的左翼機構のこうした変化の結びつきは、ラディカル左派にとって新たな空間を切り開いている。これは労働者運動の新たな基盤での再組織化と再建、つまり反資本主義とエコ社会主義の下での再組織化と再建を課題に載せるものである。
(4)
われわれは、今世紀の挑戦と労働者運動の再建、その構造、階級意識、政治的・文化的レベルでのブルジョアジーからの独立に対応できる新しい左翼を創出するための再組織化に参加しようと思う。それは次のような左翼である。
反資本主義的・国際主義的・エコロジスト的・フェミニスト的左翼。
社会民主主義とその政府に対して明確なオルタナティブとなる左翼。
自主管理的で民主主義的で、そこに向かうための一貫した綱領を持つ、二十一世紀の社会主義をめざして闘う左翼。
この目標のためには資本主義やその論理と決別しなければならず、資本主義はそこからの決裂を望む勢力と共に統治できないということに意識的である左翼。
社会運動ならびに労働者の戦闘性を統合した職場での闘い、女性とLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の自由と解放をめざす闘い、エコロジー的闘争に根ざした複数主義的左翼。
労働者の解放は労働者自身の任務であるという原則に立脚したプロレタリアートと被抑圧者の自己組織化戦略に基づく非制度圏左翼。
ベレンの世界社会フォーラムで表現されたような新しい社会セクター、新しいテーマ、とりわけ新しい世代を統合する左翼。古い材料で新しいものを作ることはできないからである。
支配体制と戦争に反対して闘い、大衆的な民主主義的インターナショナルの枠組みを提示する国際主義的・反帝国主義的左翼。
フェミニズム、エコ社会主義、ラテンアメリカの先住民族運動の発展を伴った批判的で革命的なマルクス主義の貴重な遺産と結合できる左翼。
危機に対決し、労働者とすべての被抑圧者の権利、成果、願いのための最大限に広範な統一行動で闘う独立した階級闘争的左翼。
(5)
これは、第四インターナショナル、新しい反資本主義諸政党、そして新しい国際潮流の建設という問題が、そこにおいて提起されている大きな希望である。われわれは一九九二年以来、自らの方法でそのことを表明し、過去二回の世界大会(1995年の14回世界大会と2003年の15回世界大会)の文書で、「新しい時代、新しい綱領、新しい党」という三本柱を発展させてきた。われわれは前回の二〇〇三年世界大会で、広範な反資本主義政党の建設に関して、われわれの選択の基本要素を確認している。
第四インターナショナルは、あらゆる形で新しい局面に立ち向かっている。革命的マルクス主義の活動家、その中核、潮流、組織は、労働者階級の新しい独立した政治的代表を確立するという展望の下に、反資本主義的で革命的な政治組織の建設という問題を提起しなければならない。各国のレベル、そして国際的レベルでこのことは真実である。
この十年間における階級闘争の経験、グローバル・ジャスティス運動、防衛的闘争、反戦の動員の発展、とりわけブラジルPT(労働者党)やイタリアの共産主義再建党の転換、フランスの反リベラル左翼の討論から導かれる教訓を基礎に、革命的マルクス主義者はこの数年間、ブラジルのPSOL(社会主義と自由党)、イタリアの批判的左翼、フランスの反資本主義新党、イギリスのRESPECTの建設に関与してきた。この展望の中で、われわれはポルトガルの左翼ブロック、デンマークの赤と緑の連合の経験を積み重ね続けてきた。
異なった道を通じた共通の目標は、広範な反資本主義政党である。そのことは、組織統合や革命的潮流単独で、という古い公式を取り上げるという問題ではない。大きな希望は、単なる革命的組織の枠を超えた諸勢力の結集である。それは、反資本主義政党の建設にはっきりと賛成する勢力を結集するプロセスの支えとなりうる。
結集のそれぞれのプロセスは各国の特殊性や力関係を考慮したものになるため、モデルは存在しないが、かくしてわれわれの目標は、社会民主主義や中道左派から独立した広範な反資本主義的政治勢力の建設、階級協調主義的政府、今日では社会民主主義や中道左派の政府へのいかなる参加・支持政策をも拒絶する組織の建設を追求することでなければならない。われわれが採用しなければならない方針は、こうした展望を基礎にしたものである。われわれが知っているアフリカとアジアでの差異と再組織化の経験は、同じ方向を指し示している。われわれが新たな前進をなしとげられるのは、この過程を通じてである。第四インターナショナルの次回大会の枠組みを形成しなければならないのは、この問題である。
The KAKEHASHI
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