第四インター第15回世界大会 世界政治情勢冒頭報告
世界政治情勢冒頭報告–新たな不安定化の進行と変化し始めた階級間の力関係
フランソワ・オリビエ
前回の同志フランソワ・ベルカマンによる概括的報告に続いて、今号では第十五回世界大会議案のひとつである「世界政治情勢決議案」についての同志フランソワ・オリビエの冒頭報告を掲載する。次号以降も、世界大会の各議案についてのいくつかの報告や、日本から出席した同志による報告を掲載していく予定である。
われわれは、一九九五年六月に開催されたインターナショナルの十四回大会との関係でしるされた変化についての言及から始めたい。この大会は、「現存社会主義」体制の崩壊と、世界のこの地域における資本主義の復活、多くのヨーロッパ諸国における政治的・社会的敗北、そしてラテンアメリカの革命運動の敗北の圧力によって特徴づけられた情勢のただなかで開催された。
二〇〇三年の大会は、われわれのレベルでは一連の諸国における反グローバリゼーション運動と社会的抵抗の成長によって特徴づけられるきわめて異なった情勢のなかで開催された。これは、社会の諸部分の政治化と社会運動にとって有利な、新たな政治的・イデオロギー的状況である。スターリニズムの歴史的重荷の除去を別にすれば、新自由主義の攻勢と東側ブロック諸国の崩壊という一九九五年の事態は、社会的・政治的・イデオロギー的敗北状況を引き起こすものだった。
今日、社会的・経済的、そして政治的力関係のより深い変化の方向を指し示す、抵抗と政治化という政治的・イデオロギー的変化が存在している。このような変化とはどのようなものだろうか。
1 戦争、不安定、新たな諸矛盾
支配階級は新世界秩序を安定化させることができず、グローバル化した資本主義は新しい諸矛盾を生み出している。イラクへの戦争は、世界情勢の無秩序をあらためて証明するものである。
1-1 新自由主義の攻勢と旧東側ブロックにおける新しい市場の開放は、資本主義経済の持続的成長の新局面をもたらさなかった。そこには同時に、資本の過剰蓄積の危機――資本は利潤を生み出さない――と、過剰生産能力と企業の倒産――その数は、二〇〇一年から〇二年にかけてそれ以前の二十年間より多かった――に示される過剰生産危機が存在している。それは利潤率を圧迫している。ハイテク産業の株式市場の崩落に先行したアメリカでの事態の変化に関する根本的な説明がこれである。
成長の時期は限られたものであり、アメリカの不況、あるいはヨーロッパの経済的減速の時期はより厳しいものであった。アルゼンチン、ウルグアイといった諸国は崩壊している。資本主義の現局面は、先進資本主義諸国でも世界の他の諸国でも、不平等、悲惨、貧困を激化させている。
1-2 グローバリゼーションは軍事的グローバリゼーションでもある。この十年にわたってアメリカ帝国主義は一連の戦争――そのそれぞれに特殊性がある――を主導してきたが、その目標はアメリカの覇権を打ち固めるためである。それはまたアメリカの経済機構内部の変化を指し示している。そこでは石油多国籍企業と軍産複合体が決定的位置を獲得し、軍拡の再出発、軍事予算の爆発的拡大、アメリカ帝国主義の攻撃的路線をもたらしている。こうした国際的攻撃の目的は、他の帝国主義諸国をふくむ世界に対するアメリカの政治・軍事的な戦略的支配であり、世界全体の資源――とりわけ石油――の支配である。イスラエル・パレスチナの紛争はこの枠組みの中で理解されるべきである。
しかし、とりわけ一九九一年の湾岸戦争、バルカン戦争、アフガニスタン戦争との関係で、新しい要素は、アメリカの支配階級内部、なかんずくヨーロッパブルジョアジーの一部とアメリカとの間での帝国主義間矛盾の出現である。こうした矛盾が深化すれば、国際政治の新たな勢力配置を作りだすだろう。
1-3 こうした諸要素の結びつき(経済危機、エンロンなどの企業破産、大金融業・製造業の多国籍資本のリストラクチャリング、株式市場の崩落、アルゼンチンなどの諸国家の破綻)は、新自由主義の政治的・イデオロギー的危機やIMFなどの諸機関への疑問をもたらした。
それは社会運動や労働組合の指導部との合意を追求しながら、新自由主義政策の目標を維持するための帝国主義的反撃を作りだした。これが「ダボスとポルトアレグレとの対話」(ダボスとポルトアレグレとの敵対を克服する「第三の道」)や、年金問題での合意をかちとる努力(今日のフランスに見られるような)を支持する人びとの路線なのである。この反撃は、内部的矛盾にもかかわらず、支配階級の政治的マヌーバーの余地と、自らを機能させ、維持する制度側の能力を示している。
2 作用している強力な傾向とグローバリゼーションへの抵抗
2-1 一九九〇年代中葉・末期には、階級間の力関係の変化が見られた。また資本主義的グローバリゼーションの国際的矛盾も、大きな広がりを持つ社会的・政治的反撃を引き起こした。
それは、賃金労働者の諸部門の動員に表現された。一九九五年冬のフランス、スペインとイタリアのゼネスト、ラテンアメリカの多くの諸国における闘争と抵抗(二〇〇一年十二月のアルゼンチン、ボリビアの民営化反対の動員、ベネズエラの危機、ルラの勝利)などである。とりわけアメリカとイギリスでの反戦運動の大規模な動員も、それを表現している。
インターナショナルの課題の一つは、こうした諸闘争、こうした新しい社会運動、こうしたタイプの社会的・政治的諸要求の自主的組織化が占めている中心的位置について、その力学を分析し、総合することでなければならない。
2-2 反グローバリゼーション運動は、この力関係の転回の部分的表現である。その広がり、とりわけ青年層の間でのラディカル化――一九六〇年代、七〇年代以来ならぶもののない――は、抵抗の潜在力を示すものであり、それは新しい労働者運動を再建し、再出発させるための重要な出発点である。
2-3 しかし、このような変化は、この二十年間の支配的傾向を変化させてはいない。新自由主義の攻勢は続いている。労働力のフレキシブル化と非正規職化、労働者階級の細分化の増大、規制緩和、民営化、税政策は、豊かな者に公然と有利に作用し、賃金に圧力をかけ、労働者階級の購買力を引き下げている。こうした社会的後退は再度確認されており、破産や何十万人もの余剰人員は、われわれに真の力関係を想起させる。
2-4 この社会的力関係の上に、われわれは資本と労働の間の関係、諸国家間の関係、つまり世界資本主義システムによって支配されたすべての社会的・政治的諸関係の全体を測定しなければならない。われわれは、欧州連合の構築、同様に米州自由貿易地域(FTAA)の構築における支配階級の攻勢に留意すべきである。
われわれは全体としての賃金取得者が防衛的状況にあることを忘れるべきではない。アメリカ、ロシア、中国といった大国では部分的闘争は存在しているが、労働組合への組織化はきわめて低率で、議会での労働者の政治的代表はきわめて少数か、まったくいない。アラブ地域やアジアの諸国では、スターリニズム、民族主義、改良主義の危機の結合が、イスラム主義潮流の発展をもたらした。それは特定の潮流の分析を超えて、これら諸国の大衆の政治的意識の後退を表現している。
最後にわれわれは、社会的動員と反資本主義的階級意識の再建との間のリズムの相違を強調すべきである。一連の諸国において支配的なものは、依然として伝統的労働者運動の分解、脱組合化、伝統的左翼政党の党員数の減少である。革命的なものをふくめて全体としての労働者運動は、前世紀の敗北、とりわけスターリニズムの悲劇の代価を支払っている。新しい革命的展望の構築には時間がかかるだろう。
3 労働者運動の新たな歴史的局面
3-1 今日われわれは、労働者運動の全体としての歴史的局面の終焉と新たなサイクルの登場との間の過渡的局面にいる。それはスターリニズムの終焉、社会民主主義の社会自由主義的転換、そして新たな社会的・政治的勢力の登場として特徴づけられる。このプロセスは始まったばかりである。
3-2 社会民主主義の社会自由主義への転換の根本的理由は、それが国家と経済機構、金融資本機構のトップ階層にますます統合されるようになったことと、資本主義の新自由主義的変容に適応したこととが結びついたことによる。民営化の急激な増大、社会的諸関係の規制緩和、公共的側面の縮小、緊縮賃金政策は、国家的レベル、あるいは例えばヨーロッパレベルでケインズ主義政策の基礎を掘り崩している。
政府の実験への参加はこうした変化を拡大した。われわれは、一連の諸国において、民衆的諸階級が伝統的左翼から分離しているのを見ている。しかしこうした質的変容は、完了したプロセスではない。各政党の現実を分析することが必要である。歴史と労働者運動の現実とのあらゆるつながりは消し去られてはいない。社会主義政党は右派政党に同化できないのである。
3-3 大衆的共産党の現実性を特徴としていた諸国では、こうした諸党の崩壊あるいは急速な衰退が、重要な政治的事実となっている。ソ連邦の終焉は、すべての歴史的機能を奪い去ってしまった。イタリアの共産主義再建党を例外として(同党の現段階は、イタリアの共産主義運動の諸部門の積極的な再転換を示している)、共産党の危機は、ソ連邦の崩壊から十年以上たった今日においても、民主主義的で統一性をもった階級闘争の展望の中に位置づけられた潮流や組織を生み出してはいない。
社会民主主義との戦略的同盟路線を採用した潮流――フランス共産党、スペイン共産党、ドイツPDS(民主的社会主義党)――や、民主主義的で統一性をもった諸概念を拒否しスターリニスト的・ネオスターリニスト的郷愁にしがみつく潮流が存在する。われわれは、旧東側ブロックの官僚の一部が資本家階級に変容したことを忘れるべきではない。
われわれの方針は、こうした二重の行き詰まりを超える潮流を生み出し、統一性をもった民主主義的で反資本主義的な進路を選択するために、対話と共同行動を促進することである。
3-4 国際的な労働者運動を支配してきた潮流――社会民主主義とスターリニズム――のこの危機は、すべてのラディカルな改良主義、ネオ改良主義、民族主義の終焉を意味しない。反対に、われわれは一連の諸国――たとえばブラジルやベネズエラ――でも、反グローバリゼーション運動の内部でも、ラディカルなネオ改良主義の登場を見ている。
数万人の活動家が、前世紀の敗北や、大衆の自主的活動の限界と反資本主義的オルタナティブの弱さに特徴づけられた情勢の中で、新自由主義の攻撃に反対し、彼らの最初の政治的経験をしている。この事実は、こうしたラディカルなネオ改良主義の発展の基盤を据えるものである。
こうした潮流は、自らの根っこを伝統的な社会民主主義やスターリニズムの改良主義の中に持っているわけではない。彼らは、労働者運動の再組織化の中での過渡的現象を表現している。明確化と差異化を行い、国家あるいは準国家的機構の枠組みの中で右翼的に結晶化することを阻止するための闘いが存在しているのである。
4 われわれの責任、方針の諸要素
4-1 運動の中でのこの新たな情勢、この歴史的過渡期は、社会のラディカルな変革の展望と階級闘争の現実の運動への統合、すなわち言い換えれば非セクト的な方針を維持することによって「持ちこたえて」きたラディカルで革命的な潮流と組織にとってのスペースを切り開いている。革命的マルクス主義者にとって、この歴史的過渡期は、広範囲にわたる政治的・文化的変革を求めている。
われわれは長年にわたってスターリニズムへの反対派として誕生し、機能してきた。しばしばこのことは、われわれが代理人を立てて介入しなければならないことを意味した。われわれは他の組織に対して、統一戦線を結成することを要求してきた等々。
スターリニズムがもはや存在せず、社会自由主義的変容が進んでいる今日の情勢は、革命的諸組織に、新たな、今回は直接的な責任を付与している。われわれは自ら自身の組織、ないしは広範な反資本主義政党を建設しなければならず、また労働組合やアソシエーションを再建しなければならないのである。つまり民衆運動、社会運動の再組織化に全面的に参加しなければならない。マルクスがセクト主義者について言ったように「かれら自身の姿の彫琢に没頭する」のではなく、革命家は「労働者階級の利益から離れた利益」を持たないことを示す綱領を防衛するのである。
4-2 このことは、過渡的綱領の方法の適用を必要とする。当面する闘争の諸要求から出発し、この時期の新しい要素である民主主義的で社会的な反資本主義の行動綱領の主要路線をかたちづくる一連の戦略的・綱領的諸問題を統合することである。
この戦略的・綱領的討議の刷新は、反グローバリゼーション運動の討論の中に表現されている(「もう一つの世界は可能か? われわれはどの世界か、と言うべきだ」)。以下のような意味で戦略的基準がしるされる。われわれは来るべき時期に権力を獲得する――そしてかくして定式を完結させる――ことはできないが、一連の諸問題を提起するために反グローバリゼーション運動の経験と討論に自らを基礎づけることができる。
戦略的諸問題。大衆闘争と社会運動における統一性をもった方針。自主的組織化に中心的位置を与えること。社会自由主義政権への参加の拒否。資本主義システムとの決別の必要性。帝国主義戦争反対。
綱領的諸問題。資本主義市場に反対し、あらゆるレベルでの民主主義の要求。資本主義的利潤の論理に代わる社会的必要の論理。
かくしてわれわれは、一連の諸国の一連の主要部門(保健、教育、民主主義的諸権利)において基本的諸権利を防衛する論理を持たなければならない。われわれは、これらの基本的諸権利を掘り崩す新自由主義の論理に抗して「世界人権宣言」をも利用することができる。それは、被支配諸国における国家主権についての新しい思考を必要とする。
アルゼンチンなど金融市場の強奪に直面している国においてFTAA(米州自由貿易地帯)に対決し、特定の地域(たとえばイラク)での帝国主義の植民地化戦略に対決して国家主権を防衛することは、直接に反帝国主義的側面を有する。雇用を求める闘いにおいて、われわれは、それがたんなる宣伝であったとしても、整理解雇を阻止するために私有財産を制限する必要性を押し出し、社会的・公共的支出の全体的展望を押し出して民営化に反対することをためらってはならない。
4-3 反資本主義勢力の再編ないしは結集政策の方針には、いくつかの兆候がある。もちろんあれこれの綱領的問題は、結集の条件ではない。われわれは論じつくされた革命的諸定式を基礎にした勢力結集を目指しているわけではない。しかしその選択は明確であるべきである。反資本主義的方向性の擁護、ブルジョア国家機関からの独立、スターリニズムと社会民主主義の主要な教訓を組み入れた展望。
反資本主義会議での中心的重点も、われわれの方針のキーポイントを指し示している。ヨーロッパ反資本主義会議は、革命的、反資本主義的諸組織、すなわち伝統的諸組織の外部にある潮流から徐々に発展してきた。現在の激変は、伝統的諸組織に容赦なくのしかかってくるが、われわれは外部から、強力な極から大胆不敵に行動した時にのみ、彼らに影響を与えることになるだろう。
4-4 この段階で、ヨーロッパ反資本主義会議は経験交流と行動における統一の可能性のためのスペースである。そこではわれわれ自身、イタリアPRC(共産主義再建党)、イギリスSWP(社会主義労働者党)といった潮流が、統一の可能性を示唆している。
現在の情勢についての強力な参照点を共有しつつ、われわれは反グローバリゼーション運動への介入と広範な反戦運動(戦争に反対する動員と直接行動――デモ、象徴的な占拠、ストライキ)の構築の重要性と必要性に共通のアプローチをとっている。もちろん、こうした問題は出発点にすぎない。しかしそれは全般的なアプローチにとって不可欠である。
社会主義革命への言及のみに基づいた革命派の統一は、政治的に有用ではない。革命派の統一は、それが社会運動の動員と政治的再組織化の全般的な課題に向かう時にのみ意味あるものとなる。
実践的経験を基礎にして、他の大陸や国際的レベルでの反資本主義会議の提案に向かう上で、われわれの指針とならなければならないのが以上のことである。
革命的で、ラディカルで反資本主義的な諸組織を現在において結集できる分析、方針、組織化の主要路線を討議し、今日的なものにすること――これが世界大会の主要なポイントの一つである。
(以上は、第四インターナショナル第十五回世界大会の世界政治情勢の討論にあたって、大会前の国際執行委員会を代表してフランス革命的共産主義者同盟〔LCR、第四インター・フランス支部〕政治局のフランソワ・オリビエが行った口頭報告である。この報告につづいて二日間にわたる討論が行われた。その中で、スターリニズムのバランスシート、労働者党〔PT〕候補ルイス・イグナシオ・ダシルバ・「ルラ」の勝利以後のブラジル情勢、資本主義的グローバリゼーションへの抵抗運動についての特別セッションも行われた。討論後、世界政治情勢決議は大多数の賛成で採択された。)(「インターナショナルビューポイント」03年5月号)
戦後補償実現へ日韓首脳に日韓市民団体が共同要請書
韓国のノムヒョン大統領が来日し、日韓首脳会談が行われた。以下に資料として掲載するのは、両国首脳に対して日本と韓国の市民団体と個人が、戦争被害者に対する日本側の誠実な謝罪と補償を実現することこそ「未来志向」の日韓関係の前提であることを強く訴えた要請書である。
盧武鉉大韓民国大統領貴下 小泉純一郎 日本国総理大臣貴下
盧武鉉大統領訪日に際する日韓両首脳への要請書
六月六日からの盧武鉉大統領の初の訪日に際し、日韓両国首脳が「慰安婦」・強制連行・強制徴用被害者など日本の植民地支配と侵略戦争によって被害を受けた人々の問題を解決するために誠意と勇気を持って協議し取り組まれることを強く求めます。九〇年以降、これらの被害者たちは自らの尊厳と人権回復のために日本政府に公式謝罪と補償を求めて両国の内外で問題提起をし、国連人権委員会やILOなどで継続的に取り上げられ、国際的にも大きな共感を得てきました。四月にジュネーブで開かれた国連人権委員会では「慰安婦」問題が再度取り上げられ、韓国政府代表は「従軍慰安婦」という戦争犯罪・人道に対する罪を認めず、法的責任と責任者処罰を回避する日本政府を名指しで批判したラディカ・クマラスワミ特別報告官の報告を歓迎しながら、補償問題が未だに解決していないことに強い憂慮を表明しました。
しかし、これまで日本政府は「日韓条約で解決済み」として韓国の被害者に対しては個人補償を拒み、歴代首相も「お詫びと反省」を繰り返すのみで、こうした要求に誠実に答えようとはしてきませんでした。最近では、釜山地裁で争われている三菱重工強制徴用被害者訴訟で、裁判所が求めた一九六五年日韓請求権協定締結交渉に関する記録文書の開示請求を、日本政府の要請を受けて韓国政府が拒否したことが発覚しました。
盧大統領の来日を目前にした五月三十一日、与党自民党の麻生太郎政調会長は東京大学で行った講演で、日本の植民地時代の「創始改名」を「朝鮮の人が『名字をくれ』といったのが始まり」と朝鮮に対する植民地支配と皇民化政策を正当化する発言を行い、内外の批判を受けています。
五月三十日大阪高裁は「浮島丸訴訟」で、日本政府に損害賠償を命じた京都地裁判決を覆して棄却判決を下しましたが、六月十二日には韓国のシベリア抑留被害者、靖国合祀の遺族らが日本政府に謝罪と補償を求めて東京地裁に提訴を予定するなど、謝罪と補償を求める動きは途切れることなく今なお続いています。
二十一世紀にもなって、日本政府がいまだに被害者に対するきちんとした謝罪と補償を実施せず、韓国政府がそのことを許したまま日韓関係が積み上げられていくのではないかと被害者たちは強い危惧を持っています。両首脳は「未来志向」を掲げていますが、こうした不信と懐疑の上に、未来に向けて信頼できるパートナーシップを築くことはできません。半世紀以上も被害に苦しみ続け、現在なお日本政府から誠実な謝罪を受けられずに侵害され続ける「現在の人権問題」を解決してこそ、盧大統領が高く掲げる「人権」という人類普遍の価値の上に二十一世紀の日韓、アジアの平和と友好関係が築かれるのではないでしょうか。
首脳会談で、日本の植民地支配と侵略戦争による被害者たちの人権回復のために、両首脳が国際的にも納得のいく解決をはかるべくしっかり交渉して下さることを強く要請します。
二〇〇三年六月五日
〈日本〉個人土屋公献(元日本弁護士連合会会長)、坂本義和(東京大学名誉教授)、荒井信一(茨城大学名誉教授)、李仁夏(川崎教会名誉牧師)、内海愛子(恵泉女学園大学教員)、石川逸子(詩人)、鈴木裕子(女性史研究家)、船橋邦子(和光大学教員)、戸塚悦朗(龍谷大学教員)、前田朗(東京造形大学教授)、加藤武(立教大学名誉教授)、空野佳弘(弁護士)、大島孝一(戦後補償実現!市民基金)、有光健(戦後補償ネットワーク世話人代表)、池田幸一(シベリア抑留訴訟原告団カマキリの会事務局長)、平塚光雄(全国抑留者補償協議会東京都連会長)、蓮見幸恵(日本キリスト教会牧師)、高城たか(「慰安婦」問題の立法解決を求める会)、吉井國勝(日本キリスト教会横浜長老教会)、小野寺ほさな(日本キリスト教会牧師)、三宅和子(日本キリスト教会慰安婦問題と取り組む会)、金英姫(戦後補償実現!Japan=Koreaネットワーク)、大谷雄暁、森川静子、渡部静子(日本キリスト教会牧師)、朱秀子、矢嶋宰(韓国ナヌムの家)、岩脇彰(三重県歴史教育者協議会事務局長)伊藤孝司(フォトジャーナリスト)、木野村照美(在日の慰安婦裁判を支える会)、鳥居靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)、俵義文(歴史教育アジアネットワークJAPAN共同代表)、神山典子(城西国際大学大学院生)、弘田しずえ(カトリック正義と平和協議会)、天野理(神奈川大学法学研究科)、及川信(中渋谷教会牧師)、石下直子(かながわ憲法フォーラム)、木村公一(伊都キリスト教会牧師)、伊吹由歌子(教員)、長谷川洋一(大阪女学院教諭)、森田幸男(日本キリスト教会大阪北教会牧師)、仲田文之助(飯田市民主・平和教育を語る会)、川見一仁(花岡裁判支援連絡会議会員)、新国久男(日本キリスト教会札幌琴似教会会員)、新国雪子(日本キリスト教会札幌琴似教会会員)、斉藤寿子、岡田泰平(大学院生)、森崎千恵(日本キリスト教会浦和教会長老)、野村光司(行政評論家)、吉田好一(国際人権活動日本委員会代表委員)、根本敦子(くにたち慰安婦問題を考える会)、坪川宏子(歴史教育アジアネットJAPAN)、曽根緑(戦後補償を考える湘南市民の会)、杉山百合子(藤沢市民)、丹羽 雅代(アジア女性資料センター運営委員)、伊藤明彦(日本キリスト教会横浜長老教会)、木村登喜子(日本キリスト教会横浜長老教会)、武田兵次郎(日本キリスト教会横浜長老教会)、登家勝也(日本キリスト教会横浜長老教会)、梁澄子(在日の慰安婦裁判を支える会)、金貞任(大学教員)、むらき数子(フリーライター)、Edward BRZOSTOWSKI(カトリック教会神父)、平田一郎、坂内宗男(キリスト教学生寮寮長)、坂内義子(キリスト者政治連盟副委員長)、原田あきひろ(横須賀市議会議員)、芹沢明男(ノーモア南京の会)、飯島信(足立教職員組合委員長)、及川真理子、里子和子、氏家多貴子、関口朝子、朴英子、村田まり子(挿絵画家)、御園生光治(在韓軍人軍属裁判を支援する会関東事務局長)〈77人〉
団体「慰安婦」問題の立法解決を求める会(会長・土屋公献)、日本の戦争責任資料センター(共同代表・荒井信一・吉見義明)、戦後処理の立法を求める法律家・有識者の会(会長・土屋公献)、戦後補償ネットワーク(世話人代表・有光健)、戦後補償実現!J=Kネットワーク、戦後補償実現!市民基金(代表・大島孝一)、リドレス国際キャンペーン、戦後責任を問う・関釜裁判を支援する会(代表・松岡澄子)、日韓民衆連帯全国ネットワーク、在日韓国民主女性会、アジア女性資料センター、日本キリスト教会「従軍慰安婦」問題と取り組む会、戦時性暴力調査会(代表・小林美和子)、戦後補償を考える湘南市民の会、日本キリスト教会横浜長老教会靖国問題委員会、アンポをつぶせ!ちょうちんデモの会(代表・谷島光治)、フィリピン・ピースサイクル(代表・大森進)、ピースサイクル三多摩ネット(代表・大森進)、カサナグの会(代表・森彪)、在韓軍人軍属裁判を支援する会、千代田・人権ネットワーク〈20団体〉
〈韓国〉
団体3・1女性同志会、浪費追放汎国民運動本部、ナヌムの家、大邱KYC、独島守護隊、独立記念館、民族問題研究所、民主社会のための弁護士会、白凡精神実践民族連合、釜山民主抗争記念事業会、不正腐敗追放実践市民の会、シベリア朔風会、歴史問題研究所、歴史を正しく伝える市民連帯、浮島丸爆沈真相究明会、浮島丸爆沈被害者賠償推進委員会、原爆被害者とともにする市民の会、全国民主労働組合総連盟、全国女子大生代表者協議会、挺身隊ハルモニとともにする市民の会、太平洋戦争被害者補償推進協議会、太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会、太平洋戦争犠牲者遺族会、太平洋戦争犠牲者光州遺族会、平和市民連帯、韓国労働組合総連盟、韓国原爆被害者協会、韓国挺身隊問題対策協議会、韓国挺身隊研究所、韓日民族問題学会、韓日歴史問題研究所、韓日問題研究会、アンチ日本歪曲教科書、日帝強制動員被害真相究明特別法推進委員会、戦後補償推進速報、三菱重工業強制徴用者裁判支援の会、東アジア平和運動連帯、日本の教科書を正しくする運動本部〈38団体〉連絡先 〒102-0074千代田区九段北2-2-7-601 Tel03-3237-0287 Fax03-3237-0287
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