第四インター第15回世界大会の成果と日本における挑戦課題4

アジア地域の第四インター

 今日の世界情勢は、東アジアにおける反資本主義的で民主主義的な左翼勢力の建設とその緊密な連携の重要性をわれわれに突きつけている。
 それは、①東アジアが地政学的に言ってもアメリカ帝国主義の「グローバル戦争」の枢要の戦略的軍事拠点であること②「世界の工場」として急速に「資本主義化」している共産党支配の中国が政治的・経済的影響力を拡大し、アメリカにとっての「潜在的脅威」として浮上しているとともに、爆発的矛盾をその内部に蓄積しつつあること③世界第二位の経済力を持つ日本帝国主義が、十年以上に及ぶ経済危機の中で「国際的不安定要因」になっているとともに、アメリカ帝国主義のパートナーとしての軍事化に踏み込んでいること④戦後の米ソ対立の結果として分断された朝鮮半島において、北朝鮮の金正日独裁体制が崩壊の危機に喘いでおり、冷戦時の「反共」最前線国家として形成された韓国では労働者民衆の戦闘的闘いが継続し、反米感情が社会的に定着しつつあること――などの諸要因に基づいている。
 今回の第四インターナショナル第十五回世界大会では、日本からわが同盟と国際主義労働者全国協議会(「労働者の力」)、香港からは先駆社、フィリピンから新たに第四インターの支部として承認されたミンダナオ革命的労働者党(RPM―M)が参加するとともに、ゲストとして初めて韓国と台湾から同志が参加した。フィリピンを除けば世界大会に出席した東アジア地域の諸組織はそれぞれ小さなグループであるが、いずれも現実の労働者・市民運動、社会運動の中で理論的にも実践的にも一定の無視しえない役割を果たしている。
 大会の中では、これら東アジアの諸組織以外にインド、スリランカ、レバノンの同志たち、そしてオーストラリアDSP(民主的社会主義党)が参加してアジア地域会議が開催された。
 この地域会議では、一月にインドのハイデラバードで開催されたアジア社会フォーラムの報告、来年一月にインド(ムンバイ)で開催される第四回世界社会フォーラムに向けた共同の取り組みの可能性や、米軍基地に対する共同のキャンペーン、パレスチナ連帯運動、インドネシアの民主主義運動への支援、自由貿易地区の労働者の闘いへの国際的キャンペーンの可能性について論議された。
 この間、オーストラリアDSPは第四インターナショナルとも協力しつつ、フィリピンの非CPP(フィリピン共産党――シソン派)系左翼組織、インドネシアの民主人民党(PRD)、パキスタン労働党(LPP)などとの党としての独自の関係を強め、何度かの国際会議を開催するとともに、二〇〇一年六月にはアジア太平洋民衆連帯会議をジャカルタで開催した(われわれもそこに参加した)。二〇〇四年四月にはシドニーで次の国際会議が計画されている。
 オーストラリアDSPは第四インターの一員ではないが、一九九〇年代半ばから、第四インターの国際執行委員会にも毎回ゲストとして参加し、オーストラリア国内では労働党の左に位置するトロツキストなど反資本主義左翼諸組織を結集した社会主義連盟(SA)の中軸に位置して精力的な活動を繰り広げている。
 われわれはDSPのイニシアティブへの関与とともに、東アジアレベルでの地域的な共同の行動と左翼諸組織の国際的ネットワークに挑戦していかなければならない。われわれは香港や台湾の同志との組織的・運動的交流に着手しているが、今回の世界大会はその構想をいっそう具体的に進めていくための踏み台になるだろう。
 さらに、激動する朝鮮半島の情勢に韓国の労働者・民衆運動、左翼組織との連帯を通じて主体的に関わっていくことは緊急の課題である。日本をはじめとした多国籍企業の支配、自由貿易協定に対する抵抗を基軸にした反グローバリゼーション運動、そしてアメリカ帝国主義の「グローバル戦争」と日本帝国主義の戦争加担に反対する大衆的キャンペーンが、その基礎となる。
 反グローバリゼーシヨン運動は、アジアにおいてはいまだ力を持った大衆運動として定着しているわけではなく、ブッシュの「反テロ戦争」や新自由主義の攻勢に対する抵抗の気運は、多くの場合さまざまな色合いを持った宗教的原理主義や、民族主義に集約されている。南アジアや東南アジアでの紛争と軍事化は、暴力・テロリズムや差別的排外主義の気運をも拡大している。そこではジェンダー的差別と家父長制の構造が暴力の蔓延とからみあっている。
 中国共産党の官僚的一党支配の堅持と労働者の闘いに対する弾圧、北朝鮮の金正日体制による残虐きわまる民衆抑圧体制に見られるように、東アジア地域ではスターリニスト官僚支配体制の清算のための闘いが、決定的に重要な位置を占めている。そして日本での「内ゲバ主義党派」の存在、フィリピンでのシソン派CPP(フィリピン共産党)の他の左翼勢力に対する「内ゲバ暗殺路線」のエスカレートに示されるように、左翼運動内部でのスターリニスト的伝統の克服が依然として困難で重要な任務であり続けている。そうであればこそ、「平和、公正、人権、民主主義」のための闘いが新しい左翼勢力を作りだすための根幹にすえられなければならないのである。

日本での反資本主義潮流建設へ

 世界情勢はますます不安定化している。アメリカ帝国主義を唯一の「スーパーパワー」とした世界秩序は、混迷と危機の色彩を深めている。ブッシュのイラク侵略戦争はその混乱を加速させた。この中で、一九九九年のシアトル以来の反グローバリゼーション運動の流れが反戦運動と結合して、大衆運動の受動性を転換させる大きな契機になっている。
 それは一九九〇年代を通じた新自由主義的グローバリゼーションの基礎の上に登場した新しい社会運動であり、その中で展開されるさまざまな論争を媒介に、反資本主義左翼のオルタナティブな結晶化を現実のものにしなければならない。それはまだ始まったばかりのプロセスであるが、われわれの「希望」はそこにある。
 多元性と民主主義を重視しつつ、新たな革命的インターナショナルの形成へと凝縮していくこの困難な歩みを着実に進展させていくことを確認した十五回世界大会は、日本で闘うわれわれにとっても、これまでの経験のみでは計られない意識的な飛躍を課すものである。
 もちろん世界的な反グローバリゼーション運動の展開や労働者民衆の抵抗運動の「復活」と日本における主体状況との間には、容易には越えがたい溝がある。私自身、この間の国際執行委員会の討論の中では、長期の不況とリストラや失業の増大にもかかわらず社会的に影響力のあるストライキ闘争や「集団的抵抗」が長期にわたって存在せず、初歩的な階級意識すら解体状況にある日本の現実と、ヨーロッパで復活してきた新しい社会運動との深刻なギャップの中で、「周辺化した左翼」が抱える困難さを繰り返し強調してきた。自らに鞭打つ意味も込めてである。
 だが、今回の世界大会の討論の中では私たちは、むしろ始まったばかりの反グローバリゼーション運動への関心や、反戦運動の中で表現された青年層の端著的な登場の可能性に重点を置いて発言した(その時はまだワールド・ピース・ナウの3・8日比谷四万人集会の以前ではあったが)。そこではインターナショナルの挑戦との関係で、日本における左翼の役割を主体的に引き受けようとする意識が強く働いていたことは言うまでもない。
 われわれは、日本で社会主義革命運動の再生をめざす左翼が直面する困難な現実とヨーロッパなどとの大きな溝をいかなる幻想もなく自覚しつつも、「反資本主義左翼潮流の建設」を決してたんなる立場表明に止めてはならない。昨年開催したわが同盟の第十九回全国大会の「情勢と任務」決議は、「われわれは『反資本主義的左翼』のための具体的挑戦を彼岸化するのではなく、それを今日的にどのように意識的に推し進めるのかとして課題を設定し直さなければならない」と述べている。
 同決議が一九九九年の十八回大会決議を引用して確認しているように、こうした「反資本主義左翼」の建設は「労働組合運動や社会運動の抵抗勢力としての再建と相関関係にある」ことは確かである。しかしそれは、「反資本主義左翼」の形成に向けた努力が、労働組合運動や社会運動の「集団的抵抗の主体」として再建される度合いに応じて初めて現実化するということと同義ではない。それらは平行して意識的に進められなければならないのである。
 現在、日本では総選挙を前にして、民主・自由両党が合同し「保守二大政党制」が現実化しようとしている。日本経団連も自民、民主両党を対象に「政治献金の再開」を検討している。それは、支配階級の「新・民主党」にかけた期待を端的に示すものである。
 こうした中で、有事法制3法案が通常国会で衆院では九割の賛成で可決されたことに見られるように、旧来の「護憲・革新」勢力は議会内的には完全に周辺化した存在になってしまった。
 共産党は、非共産党系市民運動にも「窓口」を広げながら、総選挙のため来年一月に延期された第二十三回党大会で現綱領を全面的に改訂し「資本主義の枠内」路線を完成させる右傾化の道に踏み込んだ。社民党は「市民と女性の党」への転身をなしえないまま、「消滅的危機」を克服しえずにいる。
 もちろんわれわれは、「戦争ができる国家体制」づくりへの突進と憲法改悪、新自由主義的「構造改革」による労働者・市民への攻撃に対する反撃のために、共産、社民両党をふくめた共同の戦線を追求していかなければならない。しかしわれわれは同時に、旧来の「革新」左派の危機と流動化の中で、社会的抵抗の陣形を築き上げるために労働者・市民運動の中に独自の政治的結集軸を築きあげる必要があるのだ。
 日本における新しい左派勢力と再編と結集の基軸には、少なくとも日本、朝鮮半島、中国・台湾をふくむ東アジア規模の国際的展望を持った方針が求められる。それは資本の新自由主義的グローバリゼーションと対決し、アメリカ帝国主義とそれに無条件に追随する日本帝国主義の軍事戦略に立ち向かう東アジアの労働者人民の国際的な共同の闘いを土台に据えたものでなければならない。
 われわれは第四インターナショナル十五回世界大会の成果を世界の同志たちと共有し、日本における左翼主体の危機を見すえて、新たな可能性に挑戦する複数主義的で民主主義的な反資本主義左翼のオルタナティブを現実化するためにイニシアティブを発揮していかなければならない。(平井純一)

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