第四インターナショナル第17回世界大会開催 ①

国際的な危機の深まりの中革命の展望切り開くために

 第四インターナショナル第一七回世界大会が二月下旬から三月初旬にかけて、ヨーロッパで開催された。二〇一〇年以来、八年ぶりとなる世界大会である。大会にはアジア・オセアニア、中東、アフリカ、欧州、南北アメリカの三六カ国から代議員、オブザーバー、ゲストが参加した。日本からは日本革命的共産主義者同盟(JRCL)、国際主義労働者全国協議会(NCIW)から複数のメンバーがオブザーバーとして参加した。
 代議員は全体で七七人だったが、オブザーバーを含めて大会会場にはその倍近い参加者がいたように見える。後からの報告では、代議員の男女別構成は男性五三人、女性二四人。年齢別では(オブザーバーをふくめ)、三〇歳以下一四人、三〇~四五歳二六人、四五歳~六〇歳二六人、六〇歳以上一九人ということ。私たちが座っていた向かいの席はギリシャ支部の代議員団だったが、全員が若手の女性だった。
 ちなみに国際執行委員のメンバーで、二〇一四年にわれわれが招待して東京と大阪で講演し、福島の被災地も訪れたギリシャのマノス・スコウフォグロウ同志は、第一子が生まれたばかりで、さすがに離れるわけにはいかず、大会に出席できなかった、とのこと。

オルタナティブへの挑戦と苦闘

議題は①「資本主義的グローバル化、帝国主義、地政学的カオスとその意味」、②「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」、③「社会的激動、反撃、オルタナティブ」、④「第四インターナショナルの任務と役割に関する文書のために」の各題目にわたって活発に論議され、採決に付された。いずれも圧倒的多数で採択された。
ギリシャ支部(OKDEスパルタコス)、アメリカの「ソーシャリスト・アクション」を中心とする「革命的インターナショナル政綱」グループ(フランスの反資本主義新党[NPA]内反対派、スペイン、イタリア、カナダの一部を含む)の対案は、ごく少数の支持を得ることしかできなかった。なお日本から参加した代表は、基本的に採択された議案を支持する立場である。
「ソ連・東欧」の官僚的「労働者国家」ブロックの崩壊以後、資本の新自由主義的グローバル化の急速な深まりと、抵抗運動の拡大を背景に、独自の革命的インターナショナルとしての綱領を持つ「世界党建設」の路線からの転換をはかった一九九〇年代後半以後の方針が、基本的に定着していると考えられる。
この路線は、今回の世界大会では「階級闘争にとって有益な広範な党の建設」として提起され、その方針に対して「革命的インターナショナル政綱」グループとの論戦が展開されることになった。確かに「反資本主義の立場に立つ広範な大衆的党建設」の路線は、フランスのNPA(反資本主義新党)やブラジルのPSOL(社会主義と自由の党)の例をとっても、多くの困難と対立を抱えていることも確かである。
しかし新自由主義的グローバル化の危機と、レイシズム、あるいは排外主義的ポピュリズムの広がりの中で、労働者民衆の新たな反撃を組織し、反資本主義的オルタナティブへの水路を切り拓いていくために、「階級闘争の前進にとって有益な」党を労働者民衆の現実の闘いの中で作り出していく課題は、いっそう重要なものになっている。こうした問題意識を共有し、現実の実践の中で試していく課題を避けることはできない。
開会に当たって、一九六八年の「パリの五月」の代表的人格だった当時のJCR(革命的共産主義青年)の指導者・アラン・クリビンヌがあいさつ(彼は一九七七年の第四インター日本支部政治集会で講演している)。彼は「パリの五月」が全世界的な青年・学生の反乱を代表するものであったことを紹介し、それがフランスではたんに青年・学生にとどまらず、より広範な広がりを持ったことを強調し、今日の世界的な危機の中で反資本主義左翼の果たすべき役割について訴えた。

朝鮮半島危機について提起

議案の①、「資本主義的グローバル化、帝国主義、地政学的カオスとその意味」についての報告は、ピエール・ルッセ。ルッセはとりわけ昨年以後の大きな情勢の変化として中国の世界的政治・経済的影響力と、朝鮮半島の「核戦争危機」について強調した。中国の影響力は近い将来においてアメリカに挑戦しうるレベルにまで到達している。米国のトランプ政権は核兵器の使用を辞さないという姿勢を見せている。この点で、アジアでの反戦・反核運動は決定的に重要な位置を持っている、とルッセは強調した。
ルッセはさらに、米国に追随して軍事力強化と改憲に踏み出す日本の安倍政権の役割にも注意を促した。「陸と海のシルクロード」を通じた中国の影響圏の拡大、さらには中東での米国の影響力の後退とシリアを通じたロシアの進出にふれたルッセは、中東における新たな戦乱の危険性、その中でのクルドの闘いの重要性についても指摘した。
また、全体としての大衆運動が「防衛的局面」にある中での、女性たちの「♯Me Too」運動の大きな意味についてもふれた。同時にフィリピンの同志たちの経験を紹介しながら、気候変動がもたらす災害の大規模化と、被害を受けた住民たちの要求に取りくんでいる経験を紹介し、国際的にもその運動を広げていく重要性を訴えた。

中国の世界的役割について

論議の中で議論になった課題の一つは、中国の国際政治・経済における役割をどう捉えるかということである。米国の「ソーシャリスト・アクション」は中国の南シナ海への進出、「一帯一路」戦略について「帝国主義と考えるのは誤り」という立場である。他方、香港の同志は「中国は、世界で多くの国を搾取している資本主義国であり、世界第二の資本輸出国で軍事基地建設も進めている。しかし植民地主義の遺産という弱さも抱えている」と指摘した。
バングラデシュなどアジアの同志たちとの連帯行動を進めてきたドイツの同志は「アフリカの視点で中国を見れば、中国は帝国主義的政策を行っており、アフリカでは最大の資本輸出国である。ラテンアメリカでも中国は最大のパートナーであり、アフリカにも中国は軍事基地を建設した。空母の就役に見られるように中国は軍事的・経済的に帝国主義国と言うべき」と語った。
日本から参加した同志は、朝鮮半島情勢に触れながら、とりわけ朝鮮半島での戦争を含んだ緊張について論じる場合、情報の正確さについて精査が不可欠、と述べた。
論議はさらにパキスタンの同志からの中国・パキスタン関係から見た中国の「帝国主義的役割」の指摘など多様な広がりをもって展開された。
これまでの世界大会において、中国の政治・経済・軍事的役割について世界大の広がりをもって論じられたのは初めてであり、こうした面からも世界情勢をより複眼的・立体的・多中心的に捉えることの重要性を実感することになった。(つづく)(K)

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社