第四インターナショナル第17回世界大会開催 ③
資本主義による環境破壊とエコ社会主義への挑戦
オルタナティブへの踏み出し
世界大会の二日目夜から三日目にかけて、第二の主要議題である「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」についての提起と討論が行われた。
「エコ社会主義」についての問題提起は、グローバル資本主義がもたらす貧困・格差・差別・社会的紐帯の解体と闘う反資本主義オルタナティブの核心をなすテーマとして、二〇〇三年、二〇一〇年、そして今回の世界大会でも変革のためのプログラムの重要な位置を持っていた。日本では福島原発事故を一つの契機として、反原発・脱原発の運動がきわめて重要なテーマになっているが、残念ながら「脱原発社会」の展望を、エコロジカルな社会主義として提起していくための論議は、なかなか作り出すことができていない。
私自身も、この間マニラで開催されるアジア・グローバルジャスティス学校や、第四インターナショナルの国際委員会で、福島事故を契機にした反原発・脱原発運動について報告する機会があったが、エコロジー運動と反原発運動が内包する反資本主義的オルタナティブの方向性に関して、現実に即して提起することは全くと言っていいほど論議しえていない。おそらく世界的にもそうなのである。もちろん、それが安易に提示できるものではないにしても、「脱原発社会」において生産・消費・労働などについて、どのような「もう一つの」在り方が求められているのか論議を積み重ねていくことを、つねに意識していく自覚があらためて問われている。
そのことは、前回の世界大会で第四インターナショナルが「エコ社会主義」の展望を採択しても、それがわれわれの実践をどう変えていくのか、ということを改めて問い返す作業を突き付けている。
過渡的アプローチが必要だ
第四インターナショナル・イギリス支部のアラン・デービスは「文明の警鐘、そしてエコ社会主義者の回答」という対案の中で、気候変動がもたらす「自然災害」の打撃に対し、フィリピンやバングラデシュ、パキスタンの同志たちの被災した住民を守る「エコ社会主義者」としての先進的実践に注目しつつ、次のように述べている。
「資本主義に終止符を打つ全般的な闘いの不可欠な一部として、地球環境を守る闘いを展開し、環境的に持続可能で、経済的・社会的に公正なエコ社会主義社会を樹立するという過渡的アプローチは重要である」。
「しかしこれは……今日の環境危機の解決策が、今後二~三〇年以内に世界的に資本主義を打倒し、置き換えることである、ということを意味しない。……環境破局はまさについそこまで来ている一方で、世界的なエコ社会主義革命という点では、現実に起こるという兆候はほとんど見られない。実際、実践的には、もし今後二~三〇年以内の世界的なエコ社会主義革命が地球温暖化の解決策であるならば、地球温暖化の解決策はないことになってしまう」。「われわれは、人びとに絶望ではなく希望を与える要求を前進させなければならない。そして革命だけを唯一の解決策とする政策では、ほとんど希望はない」。「それゆえ求められているのは、最大限綱領的なアプローチではなく、過渡的なアプローチである。別の言葉で言えば、資本主義に地球環境を守るのに必要なステップを歩ませる(たとえばパリ協定の約束を完全履行させる)闘いという観点での資本主義を終わらせる闘いである」。
彼はそこで次のように述べる。
「『グリーン資本主義』に対するいかなる幻想も持つことなく、時間を稼ぎ、温室効果ガスの削減を手始めとして、進行中の破局に対する具体的手段を権力者に強制するようにしなければならない」。
アラン・デービスがその中で提示している具体的要求とは以下のようなものだ。
「化石燃料からの完全かつ緊急な脱却」。「社会化されたエネルギー・システムの一部として、再生可能エネルギーへ転換させる集中的プログラム」「社会のあらゆるレベルにおけるエネルギー使用の削減」「核エネルギーに終止符を打つこと」。
さらに彼は、「使い捨て社会を終わらせること」、「プラスチック製品の生産を終わらせること」、「自動車、とりわけ個人的自動車使用の大幅な削減」「個人的なCO2排出の大幅削減――とりわけグローバル・ノースにおいて」、「賃金削減を伴わない労働時間の大幅削減」などの項目を提示し、さらに「化石燃料」を大幅に削減するための具体的戦略を提示する努力を訴えた。
このアラン・デービスによる「提案的対案」は、少数で否決されたが、気候変動に対するエコ社会主義の観点からする論議を喚起する上で、一定の役割を果たしたのではないか。
人びとの苦難に立ち向かおう
「環境破壊とエコ社会主義」の展望についての討論は、二一世紀に入ってからの第四インターナショナルの大会の中で、継続的に論議の焦点となり、中心的なテーマとなってきた。資本主義が作り出したエネルギー多消費による環境・人間社会そのものの破壊との闘いをどのように提起していくのか。
この点では、日本が経験した二〇一一年の福島原発災害は、国際的にも大きな影響をもたらした。反原発の闘いは、国際的にはストレートに資本主義をベースにしたエネルギー多消費社会そのものの批判と結びついた。フィリピンなどで多発する大規模災害と貧しい人々の生活基盤そのものの破壊は、自然災害と貧困の克服のためにどのような行動が必要となっているかを自覚させることになった。
パキスタンやフィリピンの同志たちは、台風、地震などの自然災害と住民生活への打撃が、まさに政治・社会のあり方と深く結びついていることを、身をもって体験してきた。日本でも東日本大震災と福島原発事故などを通して、政治・経済のあり方と住民の被害の深刻化が深く結びついていることが多くの人びとにとって露わなものとなっている。
原発事故、災害からの復旧、被害を受けた住民の支援――人びとの苦難にどう立ち向かうかという課題は、資本主義的搾取・収奪のシステムとの闘いと深いところで結びついている。福島原発事故を経験したわれわれは、その経験と闘いの展望をさらに国際的に発信していく責務を持っている。 (K)
(つづく)
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