第四インターナショナル第17回世界大会開催 ④
労働者民衆の反撃を危機における資本攻勢との対決
矛盾の広がりと社会的闘争
世界大会の三日目から四日目にかけて「社会的激動・反撃・オルタナティブ」についての討論が行われた。このテーマは、「情勢の転換」を土台にした労働運動、新しい社会運動と連帯運動、そして地域的運動などに焦点を据えて、グローバル資本主義の下での反撃の闘いの現状、左派の関与、闘いの方針などに関わる文脈である。ここでは従来から語られてきた「新しい社会運動」と労働運動などをより共通の文脈で捉える作業が意識的になされている。ただしこの分野の論議については、運動の主体の評価をふくめて日本では最も弱い分野であり、われわれの経験に即して、丁寧な論議・紹介が必要だろう。
われわれとしては、二〇一一年の福島原発事故を契機にした反原発運動、二〇一五年の戦争法反対運動における新しい青年・学生世代の登場などとも重ね合わせながら、いま直面している改憲阻止の闘いを、どのような社会的・政治的文脈の中で作り出そうとするのかという課題に絞り込んでいかなければならない。
世界大会のこのテーマは、とりわけ発言希望者が多く、一人当たりの発言は五分以内に制限された。今号と次号の二回に分けて議案の骨子を中心に紹介する。
反撃の多様な広がりと連携
「二〇〇八年、リーマン・ブラザーズの破産が国際的金融危機に転化し、その金融危機がさらなる多くの危機、特にヨーロッパにおける公的債務危機を引き起こした。それは一九八九年(ベルリンの壁崩壊)に始まった資本主義グローバリゼーションの新たな段階以後に引き起こされた激変に加えて、新たな社会的攻撃の引き金を引いた」。
ここでは、二〇世紀末からのオルタグローバリゼーション運動の新展開=世界社会フォーラム・プロセスが、「リーマンショック」に示される資本主義の世界的危機に有効な攻勢のイニシアチブを取れなかったことをどう捉えるべきかという課題を設定した上で、分析を進めようとしている。
「グローバル・ジャスティス運動は今世紀初めよりは弱体化しているが、それにもかかわらず社会的正義の問題および銀行・主要な国際企業・国際機関の支配力と闘う必要性は、依然として急進化の強力なベクトルである。社会的正義、工場における公正な労働、自らの畑を耕作する農民の権利、そして環境問題の間には明確な関連がある」「暴力や不公平な法律の強制がない生活をしたいという解放に向かう願いはまた、LGBTプラスとフェミニストの動員への強力な推進力である。これはまた、レイシストによる差別・暴力に反対する闘いや、植民地主義・奴隷所有社会の遺産に終止符を打つ闘いにおいても同様である」。
ここで問われていることは、どういう問題意識だろうか。
「資本主義的政策の結果を拒否することが自動的に反資本主義的意識を引き起こすわけではない。同じように、労働者の社会的アイデンティティーが階級的アイデンティティーを作り出すわけでもない。これらの闘いを、資本主義社会やそれが生み出し再構築した抑圧に対する急進的な挑戦という戦略的政治的プログラムの中に含める能力とは何か。この状況で、グローバル・ジャスティス運動やセクター相互の闘いを結び付けようとしてきたさまざまな国際ネットワークをどのように評価することができるのか?……これらの抵抗運動における政治的傾向によって提起されている力や方向は何なのか」。
こうした問題意識から、活発な討論が行われた。
新しい労働者の闘いに向けて
ここで世界の労働者階級が置かれている位置についての指摘が行われる。
グローバル化はインド、中国、トルコ、メキシコなど「新興諸国」での人口の都市への集中と工業的・経済的発展を加速した。もう一つの顕著な特徴は、製造業と比較してサービス部門が相対的に成長したことである。それは、以前は「専門的」と考えられていた教育や医療のような多くの仕事のプロレタリア化を伴い、ますます強まる労働強化、賃金凍結・民営化の中で、こうした層が労働争議に参加する必然性をもたらしている。しかしこれらの国々では過半数の労働者が不安定雇用であり、その割合は増加している。
「顕著な都市化、および社会機構の破壊と同時進行する農村人口の少数派への転落は、……明らかに生活条件の悪化を招いている」。
他方「古い工業国」では、第二次大戦後の「高度成長」に伴う「社会的妥協」と「福祉国家」の発展は、もはや過去のものになってしまった。「自動車産業は東方(東欧、トルコ、イラン、パキスタン、インド、中国)に移り、「新たな工業発展地域では、二〇世紀における社会的妥協はもはや支配的ではない。古い工業国では、新自由主義的緊縮政策がすでに広範囲にこれらの妥協に挑戦している。その上、特に移民労働者は半奴隷状態に置かれており、地下企業は法的規制を免れている」。「世界の労働者の半数近くが、極端な不安定さのもとで、賃金労働の外側で生活している」「これらの展開は、資本家が最長労働時間と雇用者数を日々の必要に応じて変える柔軟さと能力を増大させている。これによって、無数の下請け業者を用いることで可能な限りコストを削減する生産・分配チェーンの流通管理組織が生まれている」。
債務危機は公的債務、家計債務をふくめて「南」の諸国から先進資本主義諸国にシフトした。
「これらすべての変化は、集団的組織を持続させ、企業内で集団的抵抗を構築する能力を弱体化させている。同時にそれは、反撃の必要性と自己組織化の原動力を組織化している。これにより、孤立した臨時雇用の労働者を労働現場の枠を超えて再結集させることのできる地方の社会組織の発展も必要とされている」。
こうして先進資本主義諸国(とりわけ西欧諸国)の相対的に強力だった労働組合運動の基盤が、全体として大きく崩されてきたことが示されている。
グローバル化がもたらした現実
農民に対する攻撃は、資本主義的グローバル化の中でさらに深刻化している。農業は依然として労働力人口の四〇%、一三億人を雇用している。「農民は食糧システム、環境バランスの将来という問題にとどまらぬ脅威」に直面している。農民が直面している問題は、土地強奪、食糧生産を犠牲にした輸出依存型単一栽培、天然資源への圧力であり、それは「投資家や投機家に加えて、政府・地方政府との共謀のもとで、地方や国家のエリート、国境を越えるエリートによって企てられている世界的な現象」なのである。土地強奪の原動力となっているのは「銀行や年金基金、その他の投資ファンドなどの金融機関だ」。
「資本のグローバル化は、著しいまでの住民移動を引きおこしている。国境を越える住民移動は全世界で二億五〇〇〇万人に達し、国内移民は七億五〇〇〇万人に上る」。
「こうした加速化する移民は、明らかに重要な政治的問題であり、進行中の社会的現象である。工業国にはそこに行きたいという人々を迎え入れる完全な能力があるが、こうした移民はアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、南アフリカを含む多くの国々において、ゼノフォビック(外国人排斥)キャンペーンの標的となっている。労働運動にとっての二重の課題は、この外国人嫌悪と闘うとともに、これらの移民労働者を受け入れ組織するのを援助することである。彼らは多くの古い国々で労働者階級を強化するからだ」。
われわれもまた「移住労働者」の課題を、副次的課題としてではなく、日本における労働者階級の組織化に関わる中心的テーマとして取り組まなければならない。 (K)
(つづく)
The KAKEHASHI
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