第4インター国際委員会決議(中)

歴史的分岐点への主体的挑戦

Ⅵ トランプの敗北:極右にとっての大きな後退

 依然として西側における覇権的帝国主義であるアメリカの選挙結果は、アメリカの選挙制度の歪みとトランプが獲得した7000万票が重くのしかかってはいるが、世界中の極右の保守的・伝統主義的・ファシスト的なプロジェクトにとって深刻な敗北を意味している。にもかかわらず、これによってこの極右の発展という一般的傾向が打ち消されることにはならない。
 パンデミックによって強いられた困難にもかかわらず、11月のアメリカの選挙は、2008年以来最高の投票率をもたらしたようである。反レイシスト反乱で表現された二極化と数十万人による民主主義的圧力の結果であるこの高い投票率は、トランプがその結果に挑戦することを困難にし、バイデンの大統領就任への道を開いた。トランプの敗北は、ポーランド、ハンガリー、トルコ、インド、フィリピン、ニカラグア、エジプト、ブラジル、ビルマなど世界中に広がっている専制主義の勢いを妨害するものである。
 トランプとトランプ主義(ボルソナロ、モディ、ドゥテルテなども)は、新しい形の専制主義および反科学・反啓蒙主義・中世千年王国の陰謀論が多くの国で広がっているというもっと大きな傾向の一部である。そうした考え方は、既存の制度に対する幅広い層の不信感を表現しており、極右勢力によって助長され、操られている。もし進歩的勢力が原動力となった大衆動員と勝利がなければ、このような考え方は広がり続ける可能性がある。われわれの任務は、こうした傾向を孤立させ、それに反対して闘い、あらゆる手段を用いて糾弾することである。なぜなら、それはもっとも極端な専制主義への道を開くからだ。
 バイデン政権は、オバマ政権(2009~17年)と同様に、自らの衰退を抑える政策とともに、国際関係とりわけ欧州との関係を正常化し、中国の躍進に対抗しようとすることは明らかである。さらに、今回の選挙で共和党の中で強力に動員された極右は、今後も非常に強力であり続けるだろう。その一方で、社会運動はその行動を強化しなければならないだろう。

Ⅶ パンデミックの経済的・社会的・政治的影響

1[経済]活動の容赦ない低下

 パンデミックとそれに対処するために採用された施策は、巨大情報企業(ビッグ・テック)の覇権をますます明らかにする一方で、2008年の危機からまだ回復していなかった経済に深刻な不況を引き起こした。一見矛盾しているように見えるが、途方もない景気後退は、とりわけアメリカ・EU・日本において金融バブルを生み出している。しかし、証券取引所やその他の金融市場での利益は、われわれがもっとも長期にわたるグローバル資本主義の下降傾向の中で生きているという事実を隠すものではない。そのため、パンデミックはバリューチェーンに深刻な混乱をもたらし、そのことは巨大通信企業、電子商取引企業、製薬企業などパンデミックから直接利益を得る部門を除いて、資本の収益性低下をもたらしている。
 経済活動の低下により、2020年のGDPは全体として約4・3%の減少となった。それは大恐慌以来の最悪の数字であり、2008―09年の危機よりも5倍以上激しいものとなっている。現在の危機は世界中で同時に発生しているという特殊性があり、バリューチェーンの国際的な絡み合いによって目立ったものとなっている。もはや、ある地域や国が中央経済の動向から完全に切り離されることは不可能である。そして、この要素は、2020年においては、たとえ諸大陸や諸国の間で量的な差が残るとしても、原料の生産と価格の一般的な下落に寄与している。
 中国だけが、過去20年間に比べてはるかに小さな割合ではあるが(2・3%)、成長を維持した。対照的に、アメリカ経済は3・5%縮小した。日本は-4・8%、ユーロ圏は-6・8%、英国は-7・8%、インドは-8%、メキシコは-8・5%、ブラジルは-4・1%、ロシアは-3・1%、「低所得国」は-1・2%だった。
 2021年にはある程度の回復が見込まれているが、アメリカと欧州では今後数年は上昇率が低く、格差や貧困の拡大につながるだろう。とりわけ利益率の低下により、資本家や政府は雇用や賃金への圧力を強め、緊縮政策を実施することになるだろうから、このことはとりわけ真実である。

2 不平等と貧困の拡大

 世界銀行によれば、医療と経済の危機は、2021年までにさらに1億5000万人を極度の貧困(1日あたりの収入が1・9ドル未満)に陥らせるだろう(すでに貧困状態にある世界人口の36%に相当する28億人の仲間入りをすることになる)。インフォーマル部門の労働者20億人のうち、80%がパンデミックの深刻な影響を受けている。
 最富裕国が自国民のためにワクチンを蓄えている(そして、ワクチンは巨額の公的資金を投入して開発されたのに、製薬会社は知的所有権保護ルールの緩和を拒否している)一方で、ピープルズ・ワクチン・アライアンスの推計によると、「南」の多くの国は2022年まではワクチンを広範囲に接種できないだろう。
 したがって、パンデミックは、医療サービス、医薬品、水、食料、適切な住居へのアクセスにおける格差をきわめて浮き彫りにしている。ウイルスとロックダウンの影響をもっとも受けている人々は、(公的医療へのアクセスがほとんどないか、存在しない地域で)もっとも不安定な状況の中で生活している人々であり、しばしば他に疾患を抱えた人々や健康不良、栄養失調の人々である。こうした人々は多くの場合、すでに失業や貧困に苦しんできたのと同じ人々である。
 ほとんどの国では、新型コロナウイルスのパンデミックという暴力は、医療や社会保護システムのための資金が長年にわたって削減された結果である。一般的に言うと、パンデミックは、資本主義社会の暴力、差別、女性に対する暴力、レイシストによる暴力、不安定な生活条件、交通や住宅の劣化や欠如、食料不足を悪化させている。

3 増大する公的債務と中央銀行の政策

 主要な中央銀行(連邦準備制度理事会、ヨーロッパ中央銀行、イングランド銀行、中国銀行)は同じような対応をしてきた。金融資産(公的機関や民間が保有する株式・債券)の価格を維持し、1%の富裕層の破産や多額の損失を回避するために、経済に数十億ドル、数十億ユーロを注入してきた。その金額は資本主義の歴史の中でかつてないものであり、2008年[の金融危機]のあとで投入した額をはるかに上回っていた。
 すべての政府が財政赤字削減の目標を一時的に放棄した。しかし、これまでのところ、もっとも高額の所得や資産に課税する措置は取られておらず、危機から利益をあげた企業(巨大製薬企業、アマゾン、グーグル…)には特別税は全く適用されていない。
 公的債務の巨大な増加は、今後数年間で、社会保護制度、労働法、民営化、公共サービスへの攻撃といった新自由主義的改革の継続を正当化するために利用されることになるだろう。大企業の利益のために公的債務が利用されることに異議を唱え、返済の停止から始めて、不当な公的債務の取り消しを要求することが必要不可欠である。

4 国家専制主義のための口実

 2020年には、多くの国で専制主義的な施策、非常事態、外出制限、旅行制限が導入された。新しい技術のおかげで、国民を管理する上での大きな「進歩」が見られたのは言うまでもない。数十カ国の政府が最大数の緊急措置を利用した。そうした緊急措置は、医療的リスクがあるという名目でおこなわれたものである。とりわけパンデミックによって、政府や大統領に例外的な権限を与えることで、もっとも反動的な大統領や政府があらゆる制度メカニズムをより強く掌握する機会が提供されたのである。そのことによって、立法権や司法権のもつ権限をさらに骨抜きにし、何よりも市民の自由をさらに制限することができた。
 こうした施策は、ブラジル、インド、フィリピン、ポーランド、トルコ、エジプト、イスラエルなど多くの専制主義的政府の維持と合わせて実施された。
 フィリピンでは、新型コロナウイルスとの闘いが警察や軍隊からの圧力をますます強めた。ドゥテルテの「封鎖を遵守しない者を射殺せよ」という命令を受け、報道の自由を攻撃し、戒厳令再導入の脅しをかけている。多くの国がパンデミックの状況を利用して、民主的権利と個人の自由を制限する法制を強化してきた。ドゥテルテと同じく、オルバーン・ビクトル[ハンガリー首相]はパンデミックを利用して、彼に全権を与える法律を成立させ、報道の権利を攻撃した。ミャンマーでは、国軍が2021年2月1日に、制御不能になった政治状況に直面して、「予防的クーデター」と称した権力強化のための反乱を組織した。民衆の並外れた抵抗に直面して、軍は組織的に銃を使用し、2カ月の間に500人以上のデモ参加者を殺害した。
 ポーランドでは、政府が最初のニュースチャンネルを直接の支配下に置いた。プーチンは憲法を改正し、2036年まで大統領の座にとどまることができるようにした。世界中の数十カ国では、緊急報道法がパンデミック対策に対する批判を抑制する足がかりの役割を果たし、何百人ものジャーナリストが起訴されたり、投獄されたりしている。民主的と思われていた多くの政府が同じような安全保障の道をたどり、テロリズムや麻薬取引との闘いという名目で成立した法律に非民主的な規定を新たに追加した。

Ⅷ 新たな社会的災厄へと向かうパンデミックと気候変動

 新型コロナウイルスは人獣共通感染症であり、それは以前の他のウイルスと同じである。このウイルスが人間に伝染したのと同じ要因によって、今後数年のうちに全く同じ結果が生まれることが予想される。さらに、気候変動の影響は今後数年間で増大し、多くの人々に壊滅的な結果をもたらすだろう。
 1980年から2000年の間に、ラテンアメリカ・アフリカ・アジアで1億ヘクタールの森林が破壊された。10億人以上の人々が生活のために湿地に依存しているが、20世紀初頭以降すでに激減していた湿地は1970年から2015年の間に35%減少した。こうした変化によって、これまで人間から隔離されていた病原体を運ぶ野生動物の種が移動して農村部の住民と接触し、人獣共通感染症の発症につながっている。
 気候変動は、森林破壊という被害を超えて、水不足や異常気象によって自然環境を変化させ、生態系を破壊している。このようにして、気候変動は、人や商品の移動の増加、土地利用の変化と結びついて、新たな伝染病の発生を促進することになる。病原体を運ぶ蚊は、以前は温帯だった地域に移動している。ライム病を媒介するダニも同様だ。永久凍土は2100年までに70%消滅する可能性がある。この永久凍土の溶解によって、メタンの大量放出に加えて、それまで埋もれていた植物性・動物性の物質からウイルスやバクテリアが再出現するようになる。
 グローバリゼーションがエコロジー的大災害、人獣共通感染症、その感染症の世界規模での急速な拡散のリスクを増大させている。そして、労働者階級の生活状況や居住状況、および社会予算の大幅な削減政策が、労働者階級や農民、移民、人種差別を受けている人々、先住民のような社会的に脆弱なすべての部門にとって、感染症流行のリスクを悪化させることが確認されている。
 このことすべてが、労働者階級や被抑圧人民の生活条件の抵抗と防衛のための社会運動や動員、そして社会的不公正と差別に対する闘争を強化・構築する必要性を確固たるものにしている。      (つづく)

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