第4インター国際委員会決議(下)
歴史的分岐点への主体的挑戦
IV 抵抗運動は止まらなかった
2019年には世界のさまざまな地域で大規模な反乱が起きた。とりわけアフリカ(独裁政権に対するスーダン、アルジェリア、リビア)、中東(レバノン、イラク、イランなど)、中南米(プエルトリコ、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ、ハイチ、エクアドル、チリ、コロンビア、ボリビア)はもちろんのこと、インドネシアやカザフスタンなどのアジア諸国、さらにはヨーロッパの小さなマルタにまで及んだ。オルタナティブサイト『メデイアパート』によれば、2019年には32カ国で運動が展開された。一般的には、それは経済的理由および民主主義的理由によって爆発したものだった。
それらに、ラテンアメリカ・ヨーロッパの女性運動による抗議行動、気候変動をめぐる若者の世界的な動員だけでなく、香港における民主主義的抵抗運動、フランスの社会的闘争も加えると、おそらく1968年以来のもっとも偉大かつ大衆的な動員の時期の一つとなるだろう。その動員はすでに、ブレグジットとトランプの勝利によって右派によるプロジェクトが増殖・拡大し始めた2016年以降の世界的シナリオに対する進歩的な対抗策の出現を示すものだった。2019年には強力な反新自由主義運動が登場し、民主主義闘争と反専制主義闘争を結合し始めた。それはときには圧制的政権への抑止力となっている。
この抵抗運動の高揚は、パンデミックによって相対的な中断を余儀なくされた。しかし同時に、パンデミックは、資本主義グローバリゼーションの悲惨な影響、森林破壊、社会政策の悲惨な記録、人々の福祉よりも資本主義の利益を優先する政府の行き詰まりなどを浮き彫りにした。パンデミックはまた、社会的格差と差別に苦しむ世界中の人々の多く、主に女性と人種差別を受けている労働者が経験した不安定さを浮き彫りにした。
したがって、パンデミックの間に出現した闘争は、安全な労働条件、警察の暴力、医療サービスのための資金増、中絶の権利といった特定の問題を超えて、共通の分母(それ以前に始まっていた高揚の連続性)として、民主主義的で反レイシスト的な要求、腐敗した体制の拒否、社会的権利の制限に対する拒否を持っていた。この新しい段階において、われわれは以下の点を強調しなければならない。
*2020年3月・4月の第一波から発展した、とりわけ医療・教育部門でのエッセンシャル・ワーカーの間での職場闘争。それは安全でない労働条件に抗議するものだった。特定部門(商業や流通の分野)の不安定さは、アマゾンの倉庫やアメリカの多くの食品工場でおこなわれたようなストライキにもつながった。
*パンデミックの拡大にもかかわらず、2020年3月8日には、近年すでに提起されていた問題をめぐって女性たちの大規模な動員がおこなわれた。その問題の中には、ロックダウンの経験によって浮き彫りにされた男性からの暴力(フェミサイド、あらゆる種類の虐待やハラスメント)が含まれる。フェミニストグループは、女性が多数を占める部門での重要な労働者の闘争を支援し、女性も顕著な役割を果たした反人種差別・反警察暴力運動と連帯して、運動に参加した。ポーランドでの中絶権制限に反対する運動は、政権政党とカトリック教会の妥協にもとづいた政治体制に対する挑戦、そして民主主義体制を求める挑戦へと発展した。年末には、アルゼンチンにおいて、中絶を合法化するための議会の施策を支持して再び運動が動員された。ナミビアでは、10月にジェンダーにもとづく暴力とフェミサイドに反対する抗議行動が街頭でおこなわれた。
*「第一波」の間に導入されていた規制が解除され始めると、アメリカで爆発的に広がったブラック・ライブズ・マター運動は、世界中の人種差別や警察の暴力に反対する抗議行動の中に引き継がれた。フランスでは、警察の暴力に反対して移民の権利を求める運動やその後の新たな抑圧的な法律に反対する運動が展開された。
*第3四半期には、タイで君主制に挑戦する広範な民主化運動が起こった。ベラルーシでは、専制主義的なルカシェンコ大統領の反民主主義的な再選に異議を唱える大衆運動が展開された。
*動員のさまざまな波がインドを席巻した。モディ政権の新自由主義的で人種差別的な政策、とりわけ市民権法修正[訳注:インドへの難民のうち、イスラム教徒だけに市民権を認めないとする]に反対する闘い、11月26日のゼネスト、インド北部と首都デリーを震撼させた農民の大規模な動員など。運動は何カ月も続き、2021年2月には部分的な勝利を獲得した。
*ギリシャでは、左翼は2020年10月7日に大規模な反ファシストデモを組織した。その結果、ネオナチ党「黄金の夜明け」は[裁判所から]犯罪組織として[認定され]、[党首が]有罪判決を受けた。2021年2月と3月には、若者の強力な参加を得て、弾圧に反対する大きな統一動員が起こった。
*モーリシャスでは、沖合での石油タンカー沈没事故を受けて、汚染に反対し、生物多様性を守ろうとする民衆の動員がおこなわれた。
*明確な弾圧にもかかわらず、香港の民主化運動は2020年を通じて継続した。レバノンでも、政府の政策に反対する運動がこの年を通じて続けられた。マリでは、7月に大規模な動員が新自由主義的な大統領の辞任を誘発することに成功した。タンザニア、ギニア、コートジボワールでは、不正選挙に対する民衆動員があった。
*ナイジェリアでは、若者によって主導されている「#Stop SARS運動」によって、10月に警察の暴力に反対する広範な民衆動員があった。アンゴラでも、失業、汚職、社会的不正に反対する若者のデモがおこなわれた。2019年10月初旬から始まったイラクにおける運動は、無宗派で、都市をまたがった、政党や民兵への所属を問わないもので、政治的性格を持った要求(支配階級の腐敗を糾弾する)、社会改革の要求(社会正義を求め、貧困に反対する)、外国勢力(イランやアメリカ)の存在に反対する要求を提起した。ハンガリーでは、高等教育の民営化に反対する学生の動員があった。
*ラテンアメリカでは、2019年と2020年に経験した大きな闘争が、重要な選挙での勝利につながった。チリでは、組織された女性たちが主導した2019年10月と11月の反改革運動が、1年後の新憲法制定のための国民投票で歴史的勝利を達成した。ボリビアの農民と労働者は、アネスのクーデター政権の抑圧的策略に対して、多くの死者を出しながらも必死に抵抗し、10月の選挙でMAS(社会主義運動)に権力を取り戻させた。それは、選挙協議のさらなる延期を避けるために、民衆の激しい反乱が起きた3カ月後のことだった。プエルトリコでは、新しい政治運動(2019年の民主化デモから生まれた「市民の勝利運動」)が10月の選挙で強烈な形で登場した。ペルーでは、11月に、現政治体制に反対する若者たちの大規模な動員がクーデター指導者の退陣と新自由主義にもとづく憲法の変更を要求した。グアテマラでは、民衆反乱が2021年予算案を否決し、大統領の辞任を要求した。コロンビアのように、このプロセスがもっとも遅れて進展している国においてさえ、動員(農民の支持を得たゼネスト)と勝利(ウリベ[上院議員:2010年までは大統領であり、新自由主義的政策と反政府ゲリラへの強硬な弾圧政策で知られる]の収監など)があり、左翼およびウリベ主義に対する反対派の再結集の可能性がある。
*ミャンマーでは、2021年2月初め以降、抵抗する人民が並外れた勇気をもって、軍による血なまぐさい弾圧に立ち向かっている。中国政府が軍の反乱を支持している中で、各部門の産業労働者階級が、とりわけ中国企業において積極的に行動に参加している。
X 新しい労働者運動・人民運動への大きな挑戦
多くの政府が新自由主義の教義を一時的に放棄せざるを得なくなり、医療緊急事態への対応にあたっては、国家による介入が「市場の自由な手」の輝きを失わせた。社会における労働者、とりわけ医療・社会サービス、輸送、物流、食品、教育などの「最前線」にいる労働者の不可欠な役割が明らかになった。
経済的・社会的問題についてこの報告は、労働者階級の居住区で表現された集団的連帯についての報告とともに、新型コロナウイルス以降の世界が以前の世界と同じものであってはならないという考え方をより強固にするものだ。生命、医療、住宅、住民の基本的なニーズによって、社会的生活が導かれ、経済が組織されなければならない。それは資本家の利益がアジェンダのトップにあるシステムとは対照的なものである。
強い民主主義的要求や、パンデミックや国家による命令から被害を受けたくない、職場・近隣・地域の状況を管理するために自らを組織したいという労働者階級の欲求も存在していた。また、ロックダウンによって増加する警察の暴力、マスコミの検閲、人種差別、外国人差別、ジェンダー暴力などに対する拒絶もしばしば起きてきた。
したがって、客観的に見ると、パンデミックは社会的動員のための共通の分母、つまり資本主義および世界がパンデミックに直面したときにこのシステムがもたらした結果すべてを作り出したのである。しかし、ほとんどの国における政治的変化は、新自由主義的なドグマに挑戦する準備ができていないことを示している。
われわれ革命家は、次のようなとりくみをより強化しなければならない。
(あらゆるタイプの統一行動において、そして、期限を切られた目的のための広範な戦線において)闘争の集中をめざすイニシアチブをとること。下からの(労働者・民衆・フェミニスト・反レイシスト・環境保護活動家・コミュニティからの)自己組織化やあらゆる可能な横断的組織を促進すること。国際的連帯・組織をより強化する重要性を運動に確信させること。反システム勢力のもっとも広範な綱領的統一を促進すること。このとりくみの中で、人種差別的・家父長的・略奪的な資本主義システムとの根本的な脱却の必要性を人々に確信させるために、資本主義とその政府にますます立ち向かっている民主的・エコロジー的・社会的・部門別闘争の旗を運動と一緒になって練り上げること。
民衆運動にとって二つの主要な危険がある。(1)社会的消極性を助長し、反資本主義の要求を転換し、極右へと向かう変化を促進する陰謀論の伸長。(2)政府と資本家による新型コロナウイルスにもとづく「ショック戦略」の適用。それには専制主義的解決策の永続的実施と民主的自由の抑圧だけでなく、超自由主義的な改革がともなっている。
このことすべては、ここ数カ月の社会運動を土台にして攻勢に出る必要性を強め、緊急を要する社会的闘争、民主的闘争、フェミニストの闘争、環境保護の闘い、反レイシスト闘争、反差別闘争をすべて網羅する反資本主義的回答を急いで進めるために、こうした運動の参加者と指導者をまとめる必要性を強めるものである。この状況は、同じ運動の中で、社会の革命的変革のために闘う社会的・政治的勢力が共通の戦線を構築し、社会主義的・革命的なオルタナティブを明確に推進する集中点を構築する必要性を強めている。
資本主義の多元的危機がきわめて深刻なレベルに達していることは、これまで以上に、医療(巨大製薬会社を含む)・エネルギー・金融・農業といった分野から始めて、資本家を収奪する必要性を正当化するものである。ガバナンスの正統性が危機に瀕していることによって、社会の政治的・法的構造を根本的に変えるという構造的プロセスを切り開く必要性を強調することが必要となっている。
IX グローバル化された資本主義システムの多面的な危機に直面して、国際主義的・フェミニスト的・エコ社会主義的な革命的左翼の再構築を
過去2年間の社会的抗議運動は、その急進化と政治化のレベルを通じて、既成秩序に挑戦する意欲を示してきた。若者や人種差別を受けている人々の参加が多いこと、動員において指導的役割を果たす若い女性の存在が顕著であることは、新しい世代が運動の構造の急進性、多様性、ダイナミズム、刷新の大きな源となっていることを証明している。
しかし、闘争が大規模かつ広範になればなるほど、こうした動員のダイナミズムとオルタナティブな政治的回答の弱さとの間の隔たりはますます大きくなる。最近数年間の多様な大衆闘争では、新たに組織された反資本主義勢力の大規模な出現や統合は見られず、これらの運動を強化することができる新たな政治的手段の創出にもつながっていない。
今日欠けている要素は、本物の急進性を体現し、19世紀末から20世紀初頭にかけて登場したものと同様の政治的役割を果たすオルタナティブの登場である。それは、蓄積された経験や今日とりくまれている解放・環境正義のための大きな闘争によって豊富化されるだろう。
これを実現するためには、階級意識を高めるイニシアチブ、あらゆる形態の搾取と抑圧に対する社会的闘争の全領域に基礎を置く、新自由主義政策を打ち破り、極右と戦い、制度的左派を克服することのできる政治的戦線を構築するためのイニシアチブが必要である。
この方向に進むための積極的な要素として、コロナウィルスの流行に直面している多くの国の政府が制定した移動と自由に対するさまざまな制限の圧力の中で、高いレベルの社会的対立が生まれていることを強調する必要がある。政治的行動は、この新しいシナリオに適応しなければならない。
わがインターナショナルのこのような根本的なオルタナティブの登場への寄与は、多元的で民主的な方法でおこなわれ、さまざまな地域レベルでつながっている闘争に参加する中でおこなわれる。それは、国家レベルを含む、地域レベルから地球レベルでの基本的な問題についての動員に基礎を置いて「過渡的な原動力」を作り出すという問題である。それは、過去に獲得されたものを防衛し、すべての支配関係とそれを永続させる制度に対して新しい社会的・環境的権利を獲得するために、大衆的な自己組織化を促すという問題である。それぞれの部分的な闘争は、不公正を「現実的に」受け入れる方向に向かうのでなければ、自信を与え、想像力を刺激し、あらゆるレベルの力関係の変革に貢献することができるだろう。
第4インターナショナルとして、われわれは、これらの闘いで行動的なすべての参加者とともに、資本主義システムのシステム的危機の現段階における課題に対する綱領的回答を議論し、練り上げるイニシアチブをとっている。これにより、われわれは自らの提案を確固たるものにするとともに、革命的な視点で前進するために必要な統合を促すことができるようにすべきである。
(賛成48:反対6:保留1:棄権1で採択された)
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