第4インター国際委員会決議

北アフリカ・中東における
 革命プロセス:結果と展望 ③

4.第二の高揚期に入っている反乱

 2011年に反乱を経験した国々におけるいくつもの反動的攻撃にもかかわらず、この地域の他のいくつかの国々では、大規模な社会的・大衆的デモの新たな高揚が生まれている。それは、国際金融機関が指示し、抑圧を一般化している支配階級が実行している新自由主義政策の結果に対して、世界の他のいくつかの国で起きた多くの民衆動員と一致するものだった。
 モロッコでは、少し早く2016年末にリフ・ヒラク運動として開始された。この運動が主に関心を寄せていたのは社会的要求だが、政治的要求にも関心を持っていた。2019年のスーダン、アルジェリア、イラク、レバノンでの反乱は、この地域全体の独裁政治と搾取からの自由を求める新たな機運と希望に勢いを与えている。
 アルジェリアとスーダンでの頑強な大規模デモは、ブーテフリカ大統領とバシル大統領による支配を終わらせることに成功した。両国では、この逆転はデモ参加者にとっては決して十分なものではなかった。こうした軍事的性格を帯びた政権の機能全体への反対が増大した。それは民衆階級に有利な真の政治的・社会経済的変化を得るためだった。
 地域大国と国際的な帝国主義大国は、こうした民衆反乱を自らの利益と権力に対する脅威と見なし、その発展を恐れながら注視してきた。それに応じて、こうした国々は、スーダン軍とアルジェリア軍の指導部への支持を表明したり、根本的な変化をともなわない上からの統制された移行への支持を表明したりした。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は[スーダンの]ハルツーム政権に30億ドルの援助を申し出たが、デモ隊によって拒否された。同時に、フランスはアルジェリア軍上層部と軍部による統制された移行を支持してきた。
 スーダンの大衆的反対諸勢力は、サウジ王国がイエメンで遂行している戦争へのスーダンの軍事的参加を終わらせるよう要求してきた。そして、エジプトのシーシ独裁政権によるスーダンへの内政干渉を拒否してきた。アルジェリアでは、デモ隊はまた、フランスの帝国主義的役割とアルジェリア政権への支援を非難した。民衆の不満を和らげようと、政権は内部からシステムを「改善」し、「浄化」するための「改革」を発表したり、打倒された独裁者と関係のある元財界人を対象にしたいわゆる「反腐敗」キャンペーンを展開したりしている。
 スーダンでは、軍は、抗議行動の先鋒である自由・変革同盟(ALC)との間で、軍が国家における権力的地位を維持することを可能にした「市民との権力共有」という公式にもとづく政治合意を結ぶことで、運動の主な要求を回避することができた。ALCは軍隊を権力共有に追い込む巨大な政治勢力を構成することができたが、スーダン共産党と同様に、ALC内部にも限界が存在している。その主なものの一つは指導部の政治的方向性である。スーダン共産党はしばしば、自らの力の基礎を下からの大規模な大衆動員に置くのではなく、何らかの形で支配層との協力と理解を求めようとしている。
 アルジェリアに関しては、民衆動員が、ブーテフリカの再選阻止を含め、首脳会議での交渉を阻止することができた。ヒラク運動は、政権の基盤を何とか崩壊させることなしに、政権のさまざまな構成要素の中にある矛盾を強調した。軍部に近い官僚を排除するための労働組合レベルでのイニシアチブは今のところ成功していないが、それにもかかわらず、将来的に影響を与えうる可能性を秘めている。
 レバノンにおいて、そして相対的にはイラクにおいても、大衆的抗議運動は宗派的体制に根本的に挑戦している。宗派的体制(と関係するすべての政党)が、社会経済状況の悪化に責任があると明確に非難されている。この二カ国における宗派的・新自由主義的体制は、実際には、労働者階級に対する支配を強化するために支配政党が使用している主要な手段の一つである。宗派主義は、レバノンとイラクの政治エリートが階級闘争にイデオロギー的に介入し、民衆階級に対する支配を強化し、宗派的指導者との関係において民衆階級を従属的な立場に置き続ける道具として理解されなければならない。
 過去において、支配エリートは抑圧によってだけでなく、社会的分断を利用することによって、抗議運動を阻止し、粉砕することに成功してきた。大多数の民衆が貧困に陥る中、支配的な宗派的政党と経済エリートのさまざまなグループは、民営化のプロセス、新自由主義的な政策、政府省庁の支配を利用して、強力な利益供与、縁故者登用、汚職ネットワークを発展させた。この点で、宗派主義はレバノンとイラクにおける現在の国家・階級権力の形態の構成部分・活動的部分であると考えなければならない。こうしたアプローチによって、われわれは、宗派主義の中に、言われているような文化的伝統などではなく、現代的産物を認識するようになる。
 この意味で、社会正義と経済的再分配を求める抗議運動の要求は、支配者の特権を保証する宗派的政治体制への反対と切り離すことはできない。デモの巨大な規模が両国政府の辞任を獲得したあと、要求実現と根本的な体制変革をめざす運動を継続させることが明らかに重要な課題となっている。
 しかし、アルジェリア、スーダン、レバノン、イラクにおける抗議運動は多くの課題に直面している。もっとも顕著な課題は、イラクとレバノンにおける権力を握る宗派的政党と経済グループの支配やアルジェリア政権に対抗できる組織やオルタナティブな政治的表現が存在していないということである。しかし、組織化の試みは、特に労働組合や新しい社会的・政治的オルタナティブというレベルでは、依然として限定されたものにとどまっている。

コロナウイルス危機の状況

 コロナウイルス危機は、この地域の2011年の革命プロセスを引き起こした固有の構造的要因を悪化させた。この地域の諸政権は、金融・経済危機を解決するために、債務とその緊縮条件以外の選択肢を見つけられなかった。新型コロナウイルス危機の影響は、シリア、イラク、占領下のパレスチナ、イエメン、リビアなどの戦争状態にある国はもちろんのこと、アルジェリア、エジプト、ヨルダン、レバノン、モロッコ、チュニジア、スーダン、モーリタニアなどの中・低所得国の人々にさらなる影響を与えることになるだろう。政権によって取られた施策は大企業向けのものである。賃金労働者と貧困層の所得は大幅に減少し、若者と女性の失業率が悪化している。公的医療サービスは、ウイルスの拡散を抑制するには非常に弱体である。たとえば、この地域の医師の割合は、人口千人当たり4・45人の医師・看護師・助産師というWHOが推奨する基準値を大幅に下回っており、モロッコでは0・72人、エジプトでは0・79人でしかない。
 各国政権は革命プロセスの第二波を阻止するために、新型コロナウイルスのパンデミックによって課された医療緊急事態を利用した。各国政権は、隔離や外出禁止令という組織的な抑圧手段、監視手段の開発に頼った。各国政権は、民衆動員の新たな高揚に対応するために、抑圧の道具を完成させた。
 チュニジアでは、10年前の反乱と同じスローガン「労働・自由・社会的尊厳」のもと、2021年1月中旬からいくつかの都市で若者のデモがおこなわれている。それだけではなく、このデモは警察に逮捕された数百人の抗議者の釈放をも要求している。2月初旬、中東部の海岸地域で、肉の輸入と家畜飼料価格の上昇に反対して、非常に貧しい小農民たちの抗議運動が始まった。
 アルジェリアでは、ヒラク運動2周年を記念して、何千人もの人々が街頭に出て、ヒラク運動を再出発させた。
 1月末には、レバノンでもっとも貧しい都市の一つであるトリポリを皮切りに、抗議運動が国内の他の地域に広がった。
 モロッコでは2月初旬、同国北部の町で、スペインの飛び地セウタとの国境が閉鎖されたあと、生活環境の悪化を糾弾し、「尊厳と労働」を求めて、数千人の市民がデモをおこなった。
 これはまさに、地域全体を燃え上がらせる可能性のある新たな反乱の警告標識である。
 こうした抗議運動は現場での闘争経験を構成しており、新型コロナウイルス後の新しい段階で用いることができ、要求の実現と政治的急進化に向けた進展を可能にする成果を蓄積してきた。2011年以降のこの地域における革命プロセスの最大の成果は、(それがある指導者、国家組織、政党のどれによるとしても)上からの変化についてもはや何の幻想も持たない大衆が政治舞台へとなだれ込んできたことである。何百万人もの人々が街頭に出て、自らの意識・闘争手段・組織において大きな変化を経験した。反乱は、一つの世代全体の政治意識を不可逆的に変えてしまった。このプロセスの成果を、国家機構の政治的変化の規模だけで判断するのは間違いだろう。この革命的成果は、反革命のさまざまな極によって今もなお標的にされ続けている。
 女性は革命プロセスのどちらの局面でも中心的な役割を果たした。とりわけ女性は反革命の標的となった。反革命は、抵抗の最前線に積極的に参加したとして、女性を公的領域から排除しようとした。この期間を通じて、女性は暴力的な迫害にさらされた。セクシュアル・ハラスメントとレイプがまん延していた。ダーイシュは公開市場で女性を売ったことさえあった。反革命が女性を攻撃したのは、女性の権利と状況の進歩がさまざまな反革命勢力にとっての脅威であり、地域人民の解放に向けた希望の抑圧にとっての脅威だったからである。この分野での反革命勢力の前進は、その反動的なテーゼへの扉と地域人民の解放に向けた希望の抑圧への扉を開くことになる。
 したがって、女性の地位は、革命プロセスの前進、女性の権利を擁護するために出現した運動の前進にとって主要な基準となっている。
 学ぶべき教訓は、大衆的・進歩的・民主的なオルタナティブ政治構造の発展に参加する必要があるということである。チュニジアとスーダンの経験は、UGTTやスーダン専門職組合のような労働組合レベルでの大衆組織、民衆委員会、女性組織の存在によって、これらの反乱がたとえまだ脆弱で確実なものではないとしても、とりわけ民主的権利の面でより多くの成果を獲得できたことを示している。
 帝国主義勢力や地域大国の介入や対立関係は、この地域の他の国々と同様に、こうした民衆反乱を弱体化させる可能性がある。こうした介入は、イラクでの民衆反乱を頓挫させる脅威を増大させる。イランの革命防衛隊指導者カセム・ソレイマニがアメリカによって暗殺されたことは、イラクの民衆反乱を失敗させる脅威を増大させている。その脅威は、イラクの抗議運動がアメリカへの反対に焦点を当てるほど大きいものではない。それはこれまでのところ、明らかに外国からの影響すべてに反対してきたし、最近のバグダッドをはじめとする全国の都市での抗議行動では「アメリカもイランも反対!」というスローガンが繰り返されてきたからである。しかし、抗議運動は親イラン派の民兵によって管理・組織された別の運動に乗っ取られる可能性がある。それは、現在の新自由主義的・宗派的システムに挑戦することなく、アメリカの撤退を唯一の要求として重視するものである。これは、イランと指導者サドルに雇われた民兵たちの願望である。サドルは、現在、策略と武力によってデモを抑圧し、新首相の背後に運動を結集させようとしているのである。
 こうした動きに直面して、アメリカ帝国主義の継続的干渉およびイランとイラクに対する戦争の脅威に反対することは、専制主義政権や地域大国に譲歩することなく、中東・北アフリカの進歩的・革命的勢力との連帯に根ざしている場合にのみ有効である。

国内問題と人民の自己決定

 国内問題、特に中東のパレスチナ人問題とクルド人問題、北アフリカのアマズィー人[ベルベル人]問題とサハラウィ人[西サハラ人]問題、およびアルジェリアやモロッコにおける自らの文化的アイデンティティを防衛するアマズィー人の闘いは、本質的な問題である。パレスチナ問題は、地域的・世界的な政治力学においてもっとも重要な問題であり続けている。アメリカのトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相がパレスチナ側を全く排除して2020年初頭に提示したいわゆる中東和平案は、国連で可決されたすべての国際決議と国際法に違反して、パレスチナ問題を清算しようとする新たな試みのためのプログラムに他ならない。
 この状況の中で、われわれは、イスラエルのアパルトヘイト・植民地国家に反対して自らの解放をめざすパレスチナ人民の闘争へのわれわれの支持、およびすべてのパレスチナ人囚人の解放と難民の帰還を求めるパレスチナ人民の闘争との連帯キャンペーンの重要性を思い起こさなければならない。われわれは、世界的に成功を収め続け、イスラエルとその同盟国から重要かつ増大する脅威とみなされている「ボイコット・投資撤収・制裁」(BDS)キャンペーンに焦点を当てている。そのキャンペーンは、欧米諸国政府が60年以上にわたって日常的に国際法を蹂躙してきた国家や利益を上げるために占領を利用する多国籍企業と連携している実態を明らかにし、非難することを可能にしている。
 さらに、この地域の専制主義政権はすべて、パレスチナ民族解放運動を抑圧・支配・統制しようとしてきた。したがって、パレスチナ民族解放運動を防衛することは、イスラエルとの直接的・間接的な協力を通じてパレスチナ人の苦しみに加担しているすべての専制主義政権を打倒する闘いにおいて、その地域の民衆革命を支持することを意味している。
 これと同じ観点から、国家や自治権を求めるクルド人の熱望は、地域的にも国際的にも諸国家を脅かし続けている。2017年9月のイラク・クルディスタンでの住民投票の苦い失敗は、大国による無視およびイラン・トルコの助けを借りたイラク中央国家による弾圧のためだったが、クルド人の希望のもろさ、および地域の政治スペクトル上でのクルド人の何よりも機能的な役割を明らかにするものだ。トルコ、シリア、イランはクルド人を少数民族として抱える隣国三カ国であるが、住民投票を非難し、イラクの統一の継続を求めていた。アメリカやロシアを含む国際的な帝国主義国家の大多数もクルド人独立に反対している。
 その数カ月後、今度はシリアでクルド人民はまたもや幻滅に見舞われた。2018年3月、反動的シリア武装勢力の支援を受けたトルコ軍がシリアのアフリン市を制圧したのだ。この町は、クルド労働者党につながるクルド民主統一党の軍事部門であるYPG(人民防衛隊)のクルド人部隊の支配下にあった。アフリンの制圧と占領は、国際列強の共犯のもとでおこなわれた。2019年10月には、トルコ軍が地元の武装部隊の援軍を得て、シリア民主軍(YPG支配下にあるクルド人・アラブ人・アッシリア人の戦闘員で構成される軍事同盟)が支配する地域に再び侵攻した。このため、われわれはこの地域におけるクルド人の自決権支持を表明し、クルド人の自決権を否定しようとする地域的・国際的な外国からの圧力を糾弾する。
(つづく)

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