第4インター国際委員会決議

北アフリカ・中東における
 革命プロセス:結果と展望 ④

5.労働者階級の空間と革命的マルクス主義者の課題

 この地域における現在の広範な闘争の高揚は、組織された労働者階級の弱さ、そしてその中にある革命的社会主義左翼の弱さという状況の中で起こった。民衆的前進によって打撃を受け、ブルジョア政権の権力が侵食されていく中で、労働者のオルタナティブが存在しないことは、反革命が結束力を取り戻す前に、街頭や広場での大衆の力によって一時的に補われた。
 この大衆的反乱は、専門的組織(労働組合・協会)としても、政党(労働者政党の周縁化)としても、労働者階級が大きな弱点を抱えていることを明らかにした。チュニジアのUGTT、および最近でのスーダン専門職組合は、もちろんこれらの組織もまたその急進主義という点で限界があるとしても、この枠組みの中では部分的な例外となっている。エジプトでは、独立組合の経験もまた、たとえば厳しい弾圧にさらされる前には、民衆反乱が始まった際に重要な役割を果たした。
 労働者運動は、独立した階級的プロジェクトを持っていたら、人民を効果的な経済的・政治的解放へと導いたことだろうが、そうしたものを持った潜在的中心勢力としては関与しなかった。労働者階級の関与は非常に断片的であり、労働者は階級的アイデンティティを持たない市民として参加した。チュニジアでは、中心的な労働組合(UGTT)を基盤にして、大多数の部門・地域でダイナミックな動き(相次ぐゼネスト)が開始された。しかし、その指導部の役割は、救国のための国民対話の名の下での合意と交渉に限定されていた。
 多くの政権は、この前の時期[2011年の「アラブの春」の時期]には、組合官僚と結託して、労働者階級を無力化し、賃上げや要求の一部を満たそうとする闘争から労働者階級を遠ざけることに成功した(例:モロッコやアルジェリア)。たとえばモロッコの場合を見ると、労働組合官僚にはブルジョア民主主義と思われる政治勢力の一部が含まれており、それらは自由主義的な形をとったり、反動的な宗教的変形を遂げたりしている。
 急進的で進歩的な潮流は、綱領と定着という両面での弱さに苦しんでいる。進歩的潮流は反乱に不意打ちをくらった。そして、気がついてみると、進歩的潮流は、ソ連崩壊に内在する変化を誤って理解したために、疲弊して方向喪失の状況に置かれており、反動的宗教勢力の驚異的な台頭に直面して混乱していたのだった。進歩的潮流は、反革命の構成要素(帝国主義大国・反動的地域大国・自由主義的政治勢力)のいずれかと同盟するという欺瞞的な戦略を考え出した。ほとんどの民族主義者、スターリニスト、毛沢東派スターリニストの諸組織は、陣営主義の立場をとることでシリア人民の革命を裏切ることになった。
 つまり、革命的マルクス主義潮流は、自らを強化し、労働者階級と人民の諸部門に深く根を張り、次の革命の波に備えて、労働者階級の独立した政治的組織の建設に貢献するために、多くの努力をしなければならないということである。左翼は、労働者と被抑圧者の自己組織化を援助することができる進歩的・民主的・独立した戦線の建設に集中すべきである。このプロセスなしには、資本家に対抗して、われわれの陣営が自らを他の労働者と共通の利益を持つ階級としてみなすことはできないのだ。
 同様に、左翼は、広範でオルタナティブな政治組織の構築と発展において中心的な役割を果たさなければならない。この必要性と並行して、左翼はまた、展望として政治革命を追求するだけでなく、社会の構造と生産様式が根本的に変化する社会革命をも追求する政治戦略を発展させなければならない。
 さらに、政治的シーンでは、とりわけ農業問題や水へのアクセスについて、エコロジー的要求がますます支持されるようになっている。この地域の国々は、現在の気候激変によって影響を受けており、気温上昇によってもっとも影響を受けるだろう。エコロジー問題と社会問題は密接に結びついている。なぜなら、水を求め、廃棄物に反対して闘う人々は、一般的には失業の影響を受けたり、失業に反対して闘ったりする人々と同じだからである。さらに、エコロジー闘争は、抑圧された民族集団や文化集団(モロッコにおけるリフ、ザゴラ、ジェラーダ、アルジェリアにおけるカビール人、エジプトやスーダンで土地から追放されたヌビア人)の問題としばしば結びついている。
 にもかかわらず、環境闘争は依然として細分化されていて、地域的なものである。しかし、そうした闘争は同じ要因からスタートしているのだ。環境闘争を他の社会経済的な要因と統合する必要がある。
 革命マルクス主義者は、既存の大衆闘争と生きた関係にある綱領を擁護し、資本主義勢力との日和見的な同盟を追求することはしない。情勢はこの地域における革命的左翼勢力間の緊密な調整を前提として求めている。20世紀後半において民族主義者とスターリニスト左翼が採用した極端な民族主義が何十年も続いてきた中では、それは非常に正当な根拠を持っている。民族主義者とスターリニスト左翼は、専制主義政権が帝国主義やシオニズムとの対決を主張しているという理由だけで、専制主義政権に従属してきたからである。
 大衆は、独裁政権と帝国主義の持つ強力なメディア装置に直面して、反乱の現実と闘争の展望を説明する左翼の革命的な情報ツールを奪われている。このため、文書による討論を拡大するための共同行動を提起しながら、革命的マルクス主義による報道を強化し、調整することが必要となっている。
 内戦中の国々(とりわけシリア)の状況が悪化することによって、革命調整機関を中心的に担った革命的青年の大部分が国外脱出することになった。ヨーロッパの諸都市で行方不明になったり、自由主義者や反動派(彼らは、帝国主義とその同盟国によって組織された会議で、シリア人民に代わって交渉している)に包囲されたりしているとしても、この若者たちは今のところまだ存在している。若者たちを結集し、地域のパワーバランスが突然変化した場合の革命の展望についての議論を始めるために介入する必要がある。われわれは、状況がいかに困難なものであるかを知っているが、現実は急速に変化している。反革命の激しさと野蛮さにもかかわらず、大きな闘争が生まれつつある。このアプローチでは、一つの国家の国境内ではいかなる解決策も見いだせないため、国際主義が基本的なポイントとなってくる。
 最後に、労働者の闘争だけでは、賃金労働者階級を団結させるのに十分ではない。こうした闘争の中にいる社会主義者は、抑圧されているすべての人々の解放をも擁護しなければならない。このことは、女性、宗教的少数派、LGBTコミュニティ、抑圧された人種的・民族的集団の権利を求める強い要求、環境問題についての強い要求を提起することを必要とする。そうした要求への明確なとりくみについて少しでも妥協するならば、急進左派が社会の根本的な変革のために労働者階級を団結させることはできないだろう。
(おわり)

2021年2月の国際委員会で議論され、採択された(賛成49:保留1:棄権6)文書は、議論にもとづいて3月22日に最終決定された。

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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