世界の地政学的情勢の諸要素 ①

第4インターナショナル国際委員会

 第4インターナショナル国際委員会に提出された「世界の地政学的情勢」に関するテキストは、他のテキストと同様に次回世界大会に向けた討論の素材として位置づけられるものである。この決議草案にはいくつかの不十分点があることは、テキスト内でも指摘されていた。たとえば、アフリカに関する情勢にはほとんど触れられていない(この点については、別にアフリカの同志から補足的な提起が提出されていた)。しかし、「連鎖的な危機が収束して存在している」という分析は、第17回世界大会をはじめ、近年の第4インターナショナルの諸文書に共通した認識であり、同時に「資本主義によって引き起こされた世界的危機の加速を十分に考慮しなければならない」として、分析をさらに更新していく必要性が強調されている。(編集部)

 (ロシアによる)帝国主義的侵略は、世界の地政学的状況が非常に不安定であることを証明しており、それはこのテキストで分析したとおりである。ジョー・バイデンの戦略的優先順位は、中国とインド太平洋地域であった。いまや、彼はロシアとヨーロッパに焦点を当てざるをえなくなっている。いずれにせよ、主要国間の関係と紛争において、ユーラシアが中心的位置を占めていることは確認された。
 国際委員会での議論では、以下の点についてさらなる分析が必要であることが明らかとなった。(a)とりわけ2007~8年の決定的な経済・金融危機以降における、(エコロジー危機および)経済・社会的危機と地政学的危機との結合、(b)パンデミック以降の、このかつてない危機の組み合わせが、世界情勢において、防衛的ではあるが新たな局面を開いたのではないかという問題、(c)第4インターナショナルが、ケアという社会的再生産の危機の考え方を取り入れること(それゆえ、われわれの綱領において、社会的ケアのテーマがもつ重要性)。

 1980年代にすべての主要な地政学的セクターにおいて、革命運動が国際的に敗北したことにより、新自由主義的反革命、資本主義グローバリゼーションと経済の金融化、中国とロシアの世界市場への再統合への道が開かれ、資本膨張の新しい局面が開始された。
 グローバリゼーションの勝利的局面は相次ぐ金融の混乱をともなっていた。その頂点は2007年から2009年にかけての大きなサブプライム危機であり、その影響は現在も続いている。これらの危機、とりわけサブプライム危機の経済的・社会的影響は大きく、とりわけもっとも影響を受けた国々を犠牲にした資本の国際的再分配(格安価格での企業の買収)と社会階層の残酷な貧困化に寄与した。多くの国で、破滅した中産階級が反動に転じた。
 パンデミック(新型コロナウイルス )や気候変動、より一般的にはエコロジー危機を背景に、資本主義グローバリゼーションの勝利的局面は、紛争をともなう、矛盾に満ちたグローバリゼーションにとって代わられた。古い危機の弧(債務、国際統治など)は、現在、とりわけ力強く爆発的な方法で絡み合い、グローバルで多次元的な危機を開き、アメリカと中国との覇権をめぐる地政学的闘争に新たな方向をもたらしている。
 帝国主義巨大資本(欧米、日本)は、ロシアと(世界の工場となった)中国を自らに従属させることができると確信していた。そして、それは起こりうることだった。特に中国の新しいブルジョア階級が(独立に始まる)革命の遺産を生かして、世界市場における財と資本の自由な移動を自分たちに有利になるよう使うことができるとは予見していなかったのである。中国の社会形成は従属的な特徴をもつものであるが、同国は世界第2位の大国となり、地政学的な関係を変化させている。ロシアは、かつてのツァーリ帝国やソビエト連邦の時代の勢力圏を維持する意思を改めて断言している。
 第4インターナショナルの諸機関によって採択された以前の文書で分析された分析的枠組みは、その大部分において依然として有効であるが、状況は急速に変化している。われわれは、資本主義によって引き起こされた世界的危機の加速を十分に考慮しなければならず、この問題は、国際委員会で議論される3つの文書に共通している。

1.これまでの力学の深化と悪化


 アメリカによる保護のもとでの40年間にわたる新自由主義的グローバリゼーションの結果、金融・生産・サービスチェーンが国際化された。グローバル化した資本の「論理」は、国境を越えた投機と投資の自由を要求する。それは国家の「論理」と矛盾している。国家は労働者の自由な移動を制限するだけでなく、地政学的利益の名の下に今日もそれに反対しているからである。列強間の対立は、実際には、非常に高度な経済的相互依存が顕著な世界における「陣営」の分裂につながり、資本主義経済システムの「良好な機能」をますます否定的に阻害する(対立関係の進展と互換性のない技術の開発)。最近の例では、ワシントンはウォール街に上場している外国企業に対して、より厳しいアメリカによる管理(監査を含む)を課し、これに対して北京は国家主権の名のもとに、この脅威を受けた一部の中国企業に対して香港への「本国回帰」を課し始めている。これは部分的な「技術断絶(デカップリング)」とともに国際的な「金融断絶」につながる可能性がある。
 同時に、(日本、韓国、オーストラリアなどを含む政治的な意味での)西側諸国と中国(とロシア、あるいはロシア抜きで)との間の「新冷戦」がますます頻繁に語られている。「東西両陣営」の時代でも、冷戦という公式はすでに不適切であった。なぜなら、冷戦はヨーロッパ中心の対症療法的な公式だったからだ(アジアでの戦争は非常に熱いものだった。それは、アメリカのベトナムでのエスカレーションを思い出すだけで十分である・・)。今日、状況は大きく変化しているため、この類推は誤解を招きかねない。今日、中国とロシアはアメリカやEUと同じく世界市場に統合されている。資本主義グローバリゼーションは基本的な事実である。
 軍事面では、2つのホットスポットが出現している。アメリカ・中国間の台湾、ロシア・欧米間のウクライナと黒海である。より一般的には、軍拡競争は、ミサイルシステムや対ミサイル防御網を破壊する兵器(極超音速兵器など)の開発といった新たな段階に入っている。核兵器の「小型化」は、作戦地域での使用を政治的に容認できるようにするためのものである。大国が備えるべきものはより複雑になりつつある。空母艦隊や潜水艦艦隊を擁する海軍に加え、宇宙や(情報通信の顕著な操作を可能にする)人工知能における覇権を追求しなければならなくなったのである。

2.前例のない状況


 したがって、現在の課題に政治的に対応するためには、すべての政治的当事者に大きな課題を突きつける歴史的分岐の瞬間において、連鎖的な危機が収束して存在していることから出発しなければならない。

▼地球規模のエコロジー危機。人々はエコロジー危機の影響をすでに感じており、エコロジー危機の現実を認識するようになっている。そのことが自覚を促し、新たな抵抗運動の発展につながっている。これは明らかに地球温暖化の問題であるが、生物多様性の崩壊、土壌侵食、飲料水資源の枯渇などの問題でもある。
▼資本主義グローバリゼーションの危機。これは整然とした脱グローバリゼーションによって現れてきたものではなく、たとえそれが約50年前に押し付けられ始めた新自由主義的資本主義の規制様式によって生じた混乱を示しているとしても、根本的には問題となっていない支配的な新自由主義秩序の中で、収縮が増大することによって顕在化しているのである。
▼国際的な資本主義ガバナンス(「多国間主義」)の危機。それはドナルド・トランプが爆発させたものだが、ジョー・バイデンの当選によって簡単に克服できるものではない。実際のところ、それは今世紀初めに始まり、過去15年間に悪化したブルジョアの戦略的政治プロジェクトにおける亀裂の表現である。その亀裂は、古いコスモポリタン的民主主義的新自由主義に賭けているセクターと、世界的に「民主主義」の正統性が失われたことを考慮して、トランプ、ボルソナロ、ドゥテルテ、モディ、エルドアン、そして東側と西側、グローバルサウスとグローバルノースにおける多くの運動がその例であるポストファシスト(民族主義、排外主義、差別主義的)の道に賭けているセクターとの間の亀裂である。
▼新型コロナウイルスによるパンデミックの特殊性によって引き起こされる健康危機。これまでのコロナウイルスの流行とは対照的に、この流行は真に世界的な様相を呈しており、長期化するだろう。なぜなら、とりわけ新型コロナウイルスの変異能力が当初の予想よりはるかに大きく、グローバリゼーションの枠組みでの交流が活発だからである。われわれはすでに流行が繰り返される新しい時代に突入している。そして、これがどの時点まで続くかが国際レベルの中心的な問題となっている。今回のパンデミックの規模は、第一次世界大戦(いわゆるスペイン風邪)以降では前例のないものである。
▼新自由主義的政策と公的債務・民間債務の範囲によって悪化した社会危機。それによって、社会部門全体の一般的な非正規化と世界のさまざまな地域での社会構造の断絶が引き起こされている、格差は、最富裕層への富の集中、流行やパンデミックによって悪化し、国際的には異なる地域間で、国内的にはほとんどの国で、指数関数的に拡大している。
▼民主主義の危機。その支配的な傾向は、民主主義的自由および民衆の社会的部門の権利や人々の権利に対する全般的な攻撃であり、権威主義体制の過激化であり、さまざまなタイプの(宗教的関連を持つものや国際的に存在するすべての宗教におけるものを含む)極右グループやファシズム的潮流の台頭である。
▼市民権の危機。階級的、ジェンダー的、「人種的」抑圧が顕著となり、ますます多くの国々において全国民のための選挙権が侵食され、西側諸国においてすら往年の「ブルジョワ民主主義」が実体的に失われている。

 これらの危機は互いに結びつき、助長し合っており、ときには大規模なものとなる多様な社会的抵抗を引き起こしている。その中には重要な政治的影響(チリの大統領選挙など)も含まれるが、持続し調整することは困難である。 (つづく)

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