資本主義のエコロジー的・社会的破壊の時代における革命的マルクス主義宣言
資本主義的成長との決別、エコ社会主義オルタナティブのために(①)
目次
はじめに
1.エコ社会主義・反レイシスト・反軍国主義・反植民地主義・フェミニスト的な革命の客観的必要性
2.われわれが闘いとるべき世界
3.われわれの過渡的方法 反資本主義の過渡的綱領のために
4.資本主義的成長に対するエコ社会主義オルタナティブの基本的方向
5.不均等かつ複合的な発展という状況におけるグローバルな脱成長
6.流れに逆らい、資本主義の生産主義と決別するために闘いを集中させよう。政府を掌握し、自己活動、自己組織化、下からの統制、最も広範な民主主義に基づくエコ社会主義的決別を開始しよう
生態系の危機、特に気候の危機が人類社会の基盤そのものを深刻に脅かしている。それはこの危機にほとんど責任のないグローバルサウスの民衆と未来世代にとって特に深刻だ。この危機に立ち向かう闘いの構築を急がなければならない。そのための討論をさまざまな人々の中で活性化する必要がある。その一助として、第4インターナショナル18回世界大会のエコ社会主義議案を、今号から8~10回連載(予定)で掲載する。なお、文章形式は議案形式から若干変更している。(「かけはし」編集部)
第四インターナショナルは、2025年2月に開催される次回世界大会で討議されるエコ社会主義宣言(第一草案)を2024年2月の国際委員会で採択した。今後、各国支部・組織では世界大会に向けてこの宣言草案を討論していくことになる。
はじめに
この宣言は、10月革命の遺産をスターリニストの災禍から救うために、レオン・トロツキーとその同志たちによって1938年に創設された第四インターナショナルの文書である。第四インターナショナルは、不毛な教条主義を拒否し、社会運動の課題とエコロジー危機をその考え方と実践に統合してきた。その勢力は限られているが、すべての大陸に存在し、ナチズムに対する抵抗運動、フランスの1968年5月、反植民地闘争(アルジェリア、ベトナム)との連帯、反グローバリズム運動の発展、エコ社会主義の発展に積極的に貢献してきた。
第四インターナショナルは、自らを唯一の前衛と見なしているわけではない。第四インターナショナルは、その力量に応じて、広範な反資本主義の隊伍に参加してきた。その目的は、大衆的性格を持つ新しいインターナショナルの形成に貢献することであり、第四インターナショナルはその構成要素の一つとなるだろう。
われわれの時代は二重の歴史的危機、つまり資本主義「文明」の多面的な危機に直面して、社会主義オルタナティブが危機に陥っている時代である。
第四インターナショナルが2025年にこの宣言を公表しようとしているのは、さまざまな地域レベルだけではなく、地球的次元でもエコ社会主義革命のプロセスがかつてなく必要であると確信しているからである。それは今や、世界的な資本主義の膨張にともなう社会主義や民主主義の後退に終止符を打つという問題であるとともに、人類史上前例のないエコロジー破局から人類を救うという問題でもある。この二つの目的は、密接不可分に結びついている。
しかし、われわれの提案の基礎を形成する社会主義プロジェクトは幅広い再建が必要となっている。そうした再建は、多元的な経験の評価によって培われ、あらゆる形態の支配と抑圧(階級、ジェンダー、被支配民族のコミュニティなど)と闘う主要な運動によって育まれるものである。われわれが提案する社会主義は、前世紀を支配していたモデルや国家統制主義的・独裁的体制とは根本的に異なっている。それは革命的なプロジェクトであり、根本的に民主的であり、フェミニスト、エコロジー、反レイシズム、反植民地主義、反軍国主義、LGBTQ+の闘いの貢献によって育まれるものである。
われわれはエコ社会主義という言葉を数十年間にわたって用いてきた。その理由は、エコロジー危機のもたらす世界的な脅威と課題が、グローバル化された既存秩序内部でそれに反対しているすべての闘争に浸透しなければならない、そしてそのことによって社会主義プロジェクトの再定義が求められていると確信しているからである。地球との関係、人間社会と人間が生きている環境との間の「物質代謝の亀裂」(マルクス)の克服、地球のエコロジー的均衡の尊重は、われわれの綱領と戦略の単なる章立てであるだけでなく、その共通項でもある。
革命的マルクス主義の分析を更新する必要性は、常に第四インターナショナルの行動と思想を鼓舞してきた。われわれは、このエコ社会主義宣言の執筆作業において、このアプローチを継続している。つまり、われわれは21世紀の課題に向き合うことのできる革命的視点を定式化する手助けをしたいのである。それは、社会的・エコロジー的闘争や、世界中で展開されている真に反資本主義的な批判的考察から着想を引き出す視点なのである。
1 エコ社会主義・反レイシスト・反軍国主義・反植民地主義・フェミニスト的な革命の客観的必要性
資本は勝利しても、その勝利によって資本はマルクスが強調した克服できない矛盾に陥っている。ローザ・ルクセンブルクはこうした矛盾に直面して、1915年に「社会主義か、バーバリズムか」という警告を発した。この警告は、われわれをとりまく破局が高まっている中、かつてないほど時宜にかなったものとなっている。戦争、植民地主義、搾取、レイシズム、権威主義、あらゆる種類の抑圧といった災厄に加えて、人類の生存がかかっている自然環境が資本によって加速度的に破壊されているという新たな災厄が他のすべての災厄を悪化させている。
科学者は、生態系の持続可能性を示す8項目の世界的指標を明確にした。そのうちの7項目については、危険限界が推定されている。資本蓄積という資本主義的論理によって、少なくとも7項目はすでにそれを超えている(気候、生態系の機能的一体性、窒素循環、リン循環、真水地下水、真水地表水、自然生態系地域)。このうち6項目は「上限」を超えている(超えていないのは気候だけ)。特に貧しい国々では、貧困層が主な犠牲者となっている。
競争の渦の中で、巨大な産業・金融は人々と地球に対する専制的な支配を強めている。科学の警告にもかかわらず、破壊は続いている。利潤への渇望は、まるで自動機械のように、より多くの市場とより多くの商品を求め、それゆえにさらなる労働力の搾取と天然資源の略奪を要求する。
合法資本やいわゆる犯罪資本、そしてブルジョア政治は密接に絡み合っている。銀行・多国籍企業・富裕層が地球をつけで買っている。政府は残忍な弾圧とテクノロジー支配によって、人権と民主的権利をますます締め付けている。新たなファシズムは、嘘・レイシズム・性差別主義・外国人排斥・社会的デマゴギーを通じて、体制を守るためのサービスを提供している。
社会的なレベルでも持続可能性の限界を超えていると言うのは控えめな表現である。
ヨット、ジェット機、プール、巨大なゴルフコース、多くのSUV、宇宙旅行、宝飾品、オートクチュール、そして世界の隅々にある豪華な邸宅など、1%の富裕層は世界人口の50%と同じだけの富を所有している。「トリクルダウン理論」は神話である。富が「したたり落ちる」のは富裕層に向かってであって、その逆ではない。貧困は「先進」国でさえ増加している。労働者の収入は無慈悲に搾り取られ、社会的保護は(存在するところでも)解体されている。世界の資本主義経済は、債務・搾取・格差の海に浮かんでいるのだ。
資源の不公平な分配は、さまざまな民族・人種の間で環境災害を引き起こす。例えば、先進資本主義社会において、そして多くの場合発展途上の資本主義社会においても、貧しく人種差別を受けている人々が、通常、汚染の影響を最も受ける地域や、ゴミの集中する地域、斜面や丘陵地など都市計画の欠如した危険地域に居住している。環境レイシズムは、資本主義が人種差別を受けている貧しい人々に課している排除のもうひとつの顔である。
格差と差別は特に女性に影響を与える。女性は、無償であれ有償であれ、家事や介護の仕事の大半を提供し続けている。彼女らは労働収入の35%しか受け取っていない。世界のいくつかの地域(中国、ロシア、中央アジア)では、その取り分は減少しており、時には著しく低下している。仕事以外でも、女性は女性であるがゆえにあらゆる面で、つまり性差別主義や性的暴力から、食料を得る権利、教育を受ける権利、尊重される権利、自分の体をコントロールする権利に至るまで、攻撃を受けている。
労働者階級の(そしてまた、一部の「中産階級」の)高齢者が切り捨てられる一方で、将来の世代の生活全般はあらかじめ切り刻まれている。労働者階級の親たちのほとんどは、自分の子どもたちが自分たちよりも良い暮らしができるとはもはや考えていない。ますます多くの若者たちが、恐怖・怒り・悲しみ・嘆きの感情を抱きながら、自分たちの世界が組織的に破壊され、レイプされ、焼き尽くされ、コンクリートの中で溺れ、利己的な計算の冷たい水に飲み込まれている、すなわち自らの未来が計画的に破壊されているのを目の当たりにしている。
飢餓・食糧不安・栄養失調という災禍は20世紀末には緩和されていた。新自由主義・軍国主義・気候変動が破滅的に集中した結果として、それらは再び急増している。10人にほぼ1人が飢えている。3人にほぼ1人が食糧不安に襲われている。30億人以上が健康的な食事する金を持っていない。1億5千万人の子どもが飢餓によって5歳までに発育不全に陥っている。
短期的に見れば、平和な世界という希望は消え去っている。スーダン、イラク、イエメン、パレスチナ、シリア、ウクライナ、リビア、コンゴ民主共和国、ミャンマーなど、世界の30カ国以上がかなりの規模の戦争の渦中にあるか、最近になって戦争状態になった。気候危機そのもの、気象現象、それに起因する激しい移民の流れが、世界中で多くの紛争を激化させている。人々の苦しみ、強いられた移住、死はとてつもなく大きい。
帝国主義がいがみ合う一方で、気候変動や持続可能な未来のための緊急対策が問われている。戦争は人命にかかわる大惨事であるばかりでなく、女性の身体を攻撃し、レイプを恐怖の道具とし、集団生活を非人間的なものにするなど、われわれが住む地球にとっても有害である。戦争は生息地を破壊し、森林破壊を引き起こし、土壌・水域・大気を汚染し、炭素排出の大きな原因となっている。
2022年のロシアのウクライナに対する残忍な戦争と、2023年・2024年のガザ戦争でパレスチナ人に対して行われた新たなレベルの民族浄化は、人道に対する重大な犯罪である。どちらのケースも、今日の資本主義の野蛮な性質を裏付けている。2022年のウクライナに対するロシアの帝国主義的侵略は、世界規模の地政学的緊張を助長した。それは、アメリカとその同盟国および中国とその同盟国が世界の覇権をめぐる帝国主義間競争の新時代に入ったことを裏付けている。土地・エネルギー・鉱物資源は、この帝国主義間競争において重要な利害関係となっている。
誰もが地球上で良い生活を送ることができる。しかし、資本主義は搾取的・マッチョ的・人種差別的で、戦争好きの、権威主義的で致命的な略奪形態である。生産主義は破壊主義である。この2世紀で、資本主義は人類を深いエコロジー的・社会的袋小路へと導いた。
気候変動は生態系破壊の最も危険な側面であり、歴史上前例のない人類生活への脅威である。地球は、この災厄に責任のない何十億もの貧しい人々が住むことのできない、生物学的なゴミ捨て場と化す危機にある。この破局を食い止めるためには、2030年までに世界の二酸化炭素とメタンの排出量を半減させ、2050年までに排出量をゼロにしなければならない。したがって、優先されるべきなのは、化石燃料、アグリビジネス、食肉産業、ハイパーモビリティをなくすこと・・・つまり、世界的に生産量を減らすことである。
一方では、やみくもな資本主義的蓄積によって、人類は、最終的なエネルギー消費の脱成長、ひいては物質生産と輸送の世界的な脱成長が緊急に必要であるということを突きつけられている。他方では、資本主義と帝国主義のせいで、主にグローバル・サウス(注1)に住む30億人の人々が恐るべき環境で暮らしている。社会正義が求めているのは、ある種の生産が成長して、彼らの満たされない膨大なニーズを充足させることである。すなわち、良質な医療制度、適切な住宅、良質な食料、良質な教育、公共交通、きれいな水、全員のための社会保障・・・。
(注1)この文書では、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの従属国、被支配国、周辺国を「グローバル・サウス」という言葉で表現している。これらの表現はすべて、同じ現実を指すために使用している。われわれは、中国、ロシア、石油君主国など、世界資本主義支配体制の中で特定の地位を占め、「支配されている」とは見なされない国々を「グローバル・サウス」には含めない。
(つづく)
The KAKEHASHI
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