資本主義のエコロジー的・社会的崩壊時代における革命的マルクス主義宣言
資本主義的成長との決別、エコ社会主義オルタナティブのために⑤
4 資本主義的成長に対するエコ社会主義オルタナティブの基本的方向
エコロジー的制約を尊重しながら、真の社会的ニーズを満たすことは、資本主義の生産主義・消費主義の論理と決別することによってのみ可能である。そうした論理は格差を拡大し、生活に害を与え、「地球と労働者という、すべての富の唯一の二つの源泉を破滅させる」(マルクス)からである。この論理を打ち砕くことは、次のような方向に向けて闘うのを優先させることを意味する。それらは首尾一貫した全体を形成し、国や地域の特殊性に応じて仕上げられるか、取り除かれるかする。もちろん、それぞれの大陸、それぞれの国において、過渡的な観点から提案されるべき具体的な手段がある。
⑴ 大災害に対する、民衆の管理下での、社会的ニーズに適応した公的な防止計画
気候破局の影響のなかには、不可逆的なもの(海面上昇)や、長期にわたって続くもの(熱波、干ばつ、例外的な降水量、より激しい竜巻など)がある。資本主義の保険会社は民衆階級を守らないか、(せいぜいのところ)不十分にしか守らない。富裕層は、こうした大災難に直面して、「適応」という言葉だけしか口にしない。彼らにとって温暖化への「適応」とは、①自分たちのシステムに責任がある構造的な原因から注意をそらすこと、②長期的な心配をすることなく、最大限の利益に焦点を当てた有害な実践を継続すること、③資本家に新しい市場(インフラ・空調・輸送・炭素補償など)を提供することである。この技術主義的で権威主義的な資本主義の「適応」は、実際にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が言うところの「不適応」なのである。それは格差・差別・収奪を増大させる。また、気温上昇に対する脆弱性を増大させ、特に貧困国においては、将来的な適応の可能性そのものを著しく危うくする危険性がある。資本主義の「不適応」に対して、われわれは民衆階級の状況に適応した公的防止計画の即時要求を対置する。特に被支配諸国では、彼らが極端な気象現象の主な犠牲者なのである。公的防止計画は、科学者との対話を通じて、民衆階級のニーズと状況に応じて立案されなければならない。この計画は、特に農業・林業・住宅・水管理・エネルギー・工業・労働法制・保健衛生・教育など、あらゆる部門を網羅しなければならない。また、関係する地域社会・従業員の拒否権をともなった広範な民主的協議の対象としなければならない。
⑵ 人間と生活環境を大事にする、無償での富の共有
質の高い医療、質の高い教育、幼い子どもたちへの行き届いたケア、尊厳ある老後、依存を尊重するケアシステム、利用しやすく永続的で快適な住宅、効率的な公共交通機関、再生可能エネルギー、健康的な食料、きれいな水、インターネットへのアクセス、良好な自然環境。これらは、肌の色・性別・民族・信条にかかわらず、すべての人間にとって、その名にふさわしい文明が十分に満たすべき真のニーズである。これは、われわれの環境において、地球への負荷を大幅に減らしながら可能なことである。なぜそれが達成できてこなかったのか? 経済が、資本家たちによって、産業の副産物として生み出される消費を誘発するようなものに転換されているからである。資本家は利潤のために消費と投資を拡大し、あらゆる資源を収奪し、あらゆるものを商品に変えてしまう。彼らの利己的な論理は、不幸と死をまき散らす。
180度の転換が必要である。天然資源と知識は、慎重かつ集団的に管理されるべき共有財である。真のニーズの充足と生態系の再生は、民衆階級の積極的な統制のもとで、可能な限り自由なアクセスを拡大することによって、民主的に計画され、公的部門によって支援されなければならない。この集団的プロジェクトは、科学の専門知識を活用しなければならない。必要な第一歩は、格差や抑圧と闘うことである。社会正義と万人のための良い生活はエコロジー的要求である!
⑶ 民営化・市場化に対抗する共有財(コモンズ)と公共サービスの拡大
これは社会的・エコロジー的転換の重要な側面のひとつである。例えば、
水:現在の水の民営化、水の浪費、(河川・湖沼・地下水における)水の汚染は、社会的・エコロジー的災害である。気候変動による水不足と洪水は、10億人の人々にとって大きな脅威となっている。水は共有財であり、消費者の管理のもと、公共サービスによって管理・分配されるべきである。景観地や都市は、大規模な洪水を避けるために、水を透過させ、貯水できるようにすべきである。
住宅:きちんとした、長持ちのする、エコロジー的に持続可能な住宅というすべての人々の基本的権利は、資本主義のもとでは保証されない。利潤法則は、立ち退きや取り壊しをもたらし、抵抗する人々を犯罪者にしてしまう。利潤法則はまた、貧しい人々には高いエネルギー料金を、富める人々には補助金付きの再生可能エネルギーをもたらす。不動産市場の公的管理、銀行の利子と利益の引き下げと凍結、優良で公的・社会的な協同住宅の抜本的な増加、住宅の気候断熱化の公的プロセス、エネルギー的に自立した住宅の大規模な建設計画は、オルタナティブな政治の第一歩である。
保健衛生:新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらしたものは非常に明確である。ケア部門の民営化と削減は、民衆階級――とりわけ子ども・女性・高齢者――を弱体化させ、公衆衛生全般に対する強い脅威となっている。この部門に対する大規模な資金の再投入をおこなわなければならないし、それは完全に民衆の手に委ねられなければならない。最前線の医療に優先的に投資しなければならない。製薬産業を社会化しなければならない。
交通手段:資本主義における個人輸送は、自家用車を優遇し、健康と生態系に悲惨な結果をもたらしている。これに代わるものは、大規模で効率的な無料公共交通システムであり、歩行者・自転車エリアの大幅な拡大である。商品は、膨大な[温室効果]ガスを排出しながら、トラックやコンテナ船で長距離輸送されている。無駄な消費の削減、生産の再ローカル化、鉄道による貨物輸送が直ちに必要な対策である。航空輸送を大幅に削減し、列車でカバーできる距離よりも遠くへの輸送を抑制すべきである。
⑷ 資金をあるところから取り立てる 資本家と富裕層は支払わなければならない
その名にふさわしい世界的な移行戦略は、化石燃料の再生可能なエネルギー源による置き換え、すでに顕在化している気候変動の影響からの保護、損失や損害の補償、再転換のための支援(特に関係する労働者の所得保証)、生態系の修復を明確にしなければならない。これには、現在から2050年までの間に数兆ドルが必要である。誰が支払うべきなのか? その大惨事に責任がある連中が支払わなければならない。つまり、多国籍企業、銀行、年金基金、帝国主義国家、「北」と「南」の富裕層である。エコ社会主義的オルタナティブは、その資金をあるところから取り立てるための税制改革および格差の抜本的削減の広範な計画を必要としている。すなわち、累進課税、銀行機密の解除、資産土地登記、資産課税、遺産に対する特別な高率単一課税、タックス・ヘイブンの撤廃、企業や富裕層に対する優遇税制の撤廃、企業会計帳簿の公開、高額所得の上限設定、「不当」であると認められた公的債務の廃止(小口投資家を除き補償なしで)、被支配諸国が化石資源開発を放棄した費用に対する富裕国による補償(ヤスニ公園プロジェクト)。
⑸ 反レイシスト闘争なくして解放なし
人種的抑圧は、資本主義生産様式の構造的で構造化された一部であり、資本の原始的蓄積を保証する要素だった。資本の原始的蓄積は、植民地化と奴隷化された黒人の人身売買によって可能になったのだ。
あらゆる抑圧・搾取のない新しい世界を築くには、エコ社会主義戦略の中心的課題として、レイシズムに正面から反対することが必要である。われわれは、レイシズムが社会的関係を形成し、ブルジョア的搾取と富の蓄積のメカニズムを深化・複雑化させる任務を果たしていることを認識しなければならない。肌の色が白いという基準から逸脱する多様性は抑圧へと変質させられている。
何百万人ものアフリカ人を強制的に離散させ、アメリカ大陸で彼らを商品として扱い、彼らの労働力を搾取したことによって、ヨーロッパ人の豊かさが確かなものとなり、今日でも彼らの特権が保証されている。われわれは、とりわけ茶番的な麻薬戦争という新自由主義的戦術を通じた非白人集団に対する大量殺戮の論理、すなわち社会的な人種差別を受けてきた集団に対する大量殺戮政策の正当化と決別して、大量投獄に反対する反収監闘争の強化を追求する必要がある。
警察の軍事化に反対する闘いは、まともな生活条件全般へのアクセスとともに、反レイシスト闘争の中心でなければならない。
レイシズムは、今日まで、主に労働者階級の諸セクターを抑圧するメカニズムとなって現れている。そして、レイシズムは、白人であること(普遍的存在であるとされている)にとって、そして人種差別されていると認識される人々にとって、地位やアクセスが社会的に決定されるという特有の構図を作り出している。
あらゆる財政緊縮政策に立ち向かうことが必要である。財政緊縮政策は、全体としての労働者階級の生活をますます不安定にさせるが、そのほとんどは非白人にさらに重くのしかかる。財政緊縮政策は、この気候非常事態において、資本主義生産の致命的な結果を不均等に分配する環境レイシズムを構造化している。
⑹ 地球上での移動と居住の自由! 不法滞在者はいない!
エコロジー破局は、ますます移住の原動力となっている。2008年から2016年の間に、年平均2150万人が気候に関連した出来事によって移住を強制された。そのほとんどは貧困国出身の貧しい人々である。気候に起因する移住は今後数十年で急増すると予想されている。そして、2050年までに全世界で12億人が移住を強制される可能性がある。亡命希望者とは異なり、「気候難民」はいかなる地位すら有していない。彼らはエコロジー破局に何の責任も負っていない。しかし、本当に責任のある資本主義システムは、迫害・紛争・暴力・人権侵害の結果として、彼らを2020年に移住を強制された1億840万人に加えようとしているのである。こうした人々の基本的権利、すなわち、暴力から守られる権利、十分な水と食料を得る権利、安全な家に住む権利、家族が一緒に暮らす権利、まともな仕事を見つける権利などは絶え間ない攻撃に晒されている。国連難民高等弁務官事務所(UNHDR)によって無国籍者とみなされる人々も増えている(1000万人)。こうしたことはすべて、最も基本的な正義に反している。それは、移民をスケープゴートにし、移民を人間と見なさないファシストを増殖させている。これはすべての人々の民主的・社会的権利に対する大きな脅威である。国際主義者として、われわれは移民に反対して闘うのではなく、資本を制限する政策のために闘う。われわれは、壁の建設、センターへの収容、収容キャンプの建設、追放、強制送還、レイシスト的論理に反対する。地球上に不法滞在者はいない。誰もがどこにでも移動し、どこからでも離れる権利を持たなければならない。国境は、その理由が社会的・政治的・経済的・環境的なもののどれであろうと、自国から逃れるすべての人に解放されなければならない。
⑺ 不必要・有害な経済活動を排除する
気候破局や生物多様性の減少を食い止めるには、世界レベルで最終的なエネルギー消費をきわめて迅速かつ大幅に削減する必要がある。この制限は避けられないものである。その第一歩に含まれるのは、富裕層の購買力を大幅に削減すること、ファストファッション・広告・贅沢品の生産と消費(クルーズ、ヨット、自家用ジェット機、ヘリコプター、宇宙旅行など)をやめること、大量生産の肉・乳製品を減らすこと、製品の陳腐化を加速させることをやめ、製品の耐用年数を延ばし、修理を容易にすることなどである。商品の航空輸送や海上輸送は、生産の再配置によって大幅に削減されるべきであり、可能な限り鉄道輸送に置き換えられるべきである。エネルギーの制限は、より構造的には、無駄な経済活動や有害な経済活動を可能な限り速やかに削減することによってのみ実現することができる。考慮すべき主な生産部門は、兵器生産、化石エネルギーと石油化学製品、採掘産業、持続可能でない製造業、木材・パルプ産業、自家用車組立、航空機生産、造船である。
(つづく)
The KAKEHASHI
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社