軍事的秩序に反対し、ミャンマー人民・諸民族との連帯を!
かけはし 第2658号 2021年3月22日
第四インターナショナル国際委員会決議
2021年2月24日
(1)
ビルマ国軍(タットマダウとして知られる)は、2021年2月1日の反乱で初めて権力を掌握したのではなく、1962年以来、継続的に権力の中枢を占めてきたのである。 また、今回の軍の反乱は、今年定年を迎えるミン・アウン・フライン総司令官の政治的野心のためであったとしても、過去の事例のように軍閥間の単なる争いの産物ではない。今回の反乱は、ますます制御不能になった政治状況に直面する中での「予防クーデター」という側面が強い。ビルマは、社会で起きている激動の規模を反映して、深刻な社会経済危機・政治構造危機とともに、政権の新型コロナウイルスへの対応が破滅的であったことによる新型コロナウイルスによる医療危機をも経験している。
ビルマ国軍の指導者たちはこうした激動の広がりを把握していなかったため、軍の反乱が引き起こした、当初はほとんど自然発生的であった市民的不服従の大規模な運動を予想していなかったのだろう。1988年にまでさかのぼる軍事独裁政権に対する大規模な動員は、とりわけ学生運動や公務員の中で生まれたが、政権によって流血の中で鎮圧された。今日、その動員はさらに拡大しているように思える。ほとんどすべての社会階層が抵抗運動に積極的に参加している。多民族国家であるミャンマー連邦のほとんどの構成要素(諸民族)もまた、抵抗運動に積極的に参加している。1988年と比較すると、新たに進展した具体的な行動の枠組み、つまり市民的不服従運動(CDM)がすぐに取り入れられた。
(2)
アウン・サン・スー・チーの国民民主連盟(NLD)が大勝した2015年の選挙に続いて、その翌年には軍とスー・チーの間で(きわめて不平等な)権力分立合意が成立し、「平和的な民主化」を開始するとされた。2月1日の軍による反乱は、この移行の失敗を認めたものだった。しかしこの期間中に、市民社会は自らを強化し、新たな経験を積むことができた。そして、経済開放を受けて、若い女性を中心とした産業賃金労働者、労働組合(特に輸出志向の衣料品部門)、諸団体、NGO、批判的な報道機関が発展したことや選挙の実施によって、10年前に始まった力をさらに強化した。国際的な連帯の絆が築かれ、社会的・民主的権利のための闘いが正当性を獲得した。しかし、NLDが選挙という場面だけで、こうした運動を自分たちの利益に結びつけようとしたこと、NLD政権が自由を制限する法律を採択してきたことに留意すべきである。
アウン・サン・スー・チーと軍部との対立は、一般的な政治的方向性の問題が中心ではない。軍部は確かに、北京がNLDの選挙キャンペーンに資金を提供したと疑っている。軍部は、中国から援助を受けた[少数]民族運動とはこれまでも戦ってきたし、これからも戦っていくことになるだろう。しかし、軍部は大きな隣国、つまり中国に対処しなければならない。中国はビルマに大規模な投資を行い、ラカイン(アラカン)地域の深水港の建設をはじめとするインフラ整備を進めている。習近平にとってビルマは戦略的に重要である。地域紛争が発生した場合に閉鎖される可能性のあるマラッカ海峡を迂回して、インド洋にアクセスできる「回廊」を構成しているからである。
(3)
2017年の悲劇は、NLDと参謀本部の間の危機がこの問題をめぐってのものではなく、その逆であったことを示している。ミン・アウン・フライン将軍の庇護のもと、軍部と民兵は、中国とインドの利益を領土に定着させることを容易にするためにロヒンギャを攻撃した。ロヒンギャはイスラム教徒が圧倒的多数を占めており、これまでもひどい虐殺を受けていた。この迫害のあまりの激しさのために、このコミュニティの73万人もの人々が脱出せざるを得なかった。アウン・サン・スー・チー(かつてのノーベル平和賞受賞者!)は、この虐殺を非難するどころか、国際的舞台も含めて、大量虐殺体制を全力で擁護するキャンペーンを展開して、すべての民主主義的・人道的な信頼を失ってきた。実のところ、軍事政権の中枢と同じように、スー・チーは(ビルマ人口の過半数を占める)ビルマ人民族主義を信奉している。ビルマ人民族主義は多民族連邦国家という概念にも浸透している。スー・チーは、ロヒンギャには何の配慮もしないどころか、ロヒンギャの名前すら声に出すことを拒否してきた。その恐ろしい経験の中で、ロヒンギャは連邦の諸民族から何の支援も受けていない。
実際、アウン・サン・スー・チーとミン・アウン・フラインとのせめぎ合いは、制度レベルでおこなわれてきた。2016年の妥協案では、憲法改正の問題は解決しなかった。2008年の憲法は、軍に上下両院で25%の議席(参謀本部が指定し、選挙されない)を与えている。憲法を改正するには75%以上の賛成票が必要である。軍選出の議員は、その同盟者とともに、自分たちの利益に反する修正を阻止することができる。加えて、大統領職は正当にも民間人に戻されたが、軍事政権はアウン・サン・スー・チーが大統領に就くのを阻止するために、特別に作成した条項を憲法に導入している。つまり、外国籍の人物の配偶者や子ども(彼女はこれに当てはまる)は大統領に就任できないというのである。そのため、アウン・サン・スー・チーは顧問として「事実上の」国家元首に過ぎず、大統領の肩書きは持っていない。
2020年11月に行われた自由選挙では、NLDが軍部の政党を抑えて圧倒的な勝利を収めた(得票率83%)。スー・チーは選挙での連続的な成功により、制度的な状況の解除を要求できる立場にあったが、参謀本部とミン・アウン・フラインは、議会で非選挙枠の議席を得ているおかげで、彼らの意に反して憲法改正が可決されることはなかったにもかかわらず、これを拒否した。軍部は正当性をますます失って、予防的なクーデターに打って出たのである。
(4)
新しい時代の兆候として、軍の反乱に対する抵抗はすぐに大規模なものとなった。若者たちが再び闘争の先頭に立った。その中には大学入学前の若者も含まれていた。この世代―Z世代―は、1988年の動員を担った世代とは全く異なっている。特に世界に開かれており、現代的なコミュニケーション手段を使いこなし、創意工夫と反応性に富み、この地域の同世代、とりわけタイの同世代の若者と同じ行動形態を取り入れている。その中には、ストリートシアターから、「ハンガーゲーム」の小説・映画から借用した、3本指を空に向けるというシンボルまでが含まれている。この国は長期にわたって軍事政権によって鎖国状態にあったため、時代の変化がとりわけ顕著である。
その上、医療関係者、公務員、教師、ジャーナリスト、公務員、民間労働者、ゴミ収集人、消防士、企業家、商店主も異議を唱えた。社会全体が関心を寄せているのだ。ミャンマー労働組合総連合(CTUM)は、2月8日にゼネストを呼びかけ、多くの軍部所有の企業に影響を与えた。この運動は、外国の投資流入で不安定な状況に置かれている農民たちにも広がっている。各地のコミュニティが鉱山プロジェクトやダム建設に反対している。この動員で特に重要な役割を果たしているのは、Z世代や年長の88世代や労働組合運動である。こうした人々は「市民的不服従委員会(CDM)」の中で協力関係にある。彼らは積極的な非暴力を提唱しながら、「流動的」行動や大規模集会と並行してストライキにとりくんでいる。CDMはとりわけ無収入になったストライキ参加者への連帯を組織している。抵抗勢力のもう一つの構成要素はNLDで、その幹部は組織的に弾圧の対象となっている。ビルマ国での動員は、NLDの旗とアウン・サン・スー・チーの肖像画の下でおこなわれることが多い。
ほとんどの民族の中で抵抗運動が起きている。これら諸民族は、ビルマ人民族主義者であるスー・チーを信用せず、クーデターによって自分たちへの軍事介入の危険性が高まったと考えている。憲法改正が課題となっていることから、彼らは独自の要求を提示し、真の連邦制という問題を提起している。民族的権利は、ビルマ連邦の将来にとって重要な問題である。
(5)
軍のトップに立つ上級将校の世代は、かつてビルマの独裁政権が頼りにしていたような訓練を受けていない。彼らは二つの大きなコングロマリットを経営している。その利益は、「軍部資本主義」の柱である地域貿易とともに、ヒスイやその他の宝石、麻薬、木材といった利益を得られる貿易にも依存している。彼らは、アジアの近隣諸国、商工会議所、多国籍企業がクーデターに順応すると(当然にも)考えていたのだろう。しかし、不服従運動の力は、(中国など一部の例外を除く)ビルマの経済的パートナーがそれを考慮しなければならないほどのものとなっている。とりわけ多国籍企業は、過去のようにボイコット運動に直面することを恐れている。
軍事政権は、警察による弾圧を試み、5人の犠牲者を出した。そして、700人以上の人々を逮捕した。軍事政権は、軍隊を兵舎から出すことで力を誇示した。これは、抗議行動を急進化させただけだった。軍事政権は、国民が深刻な貧困の中にいるので、運動が疲弊することを期待して時間稼ぎをしているようだ。(特定の人物を文民政府に協力させることで)反対派を分裂させようとしているのだ。縁故資本主義を地理的に拡大することで、各地域のエリート層を取り込むことができる。また、少数民族の代表何人かと協定を結んでいる。外国政府をなだめるために、(コントロールされた)選挙を約束している。しかし、政権がいずれ大規模で血なまぐさい弾圧を選択する可能性を排除することはできない。
このような困難な状況の中で、第四インターナショナルは、進行中の市民的不服従の偉大な運動との完全な連帯を確認し、その範囲、とりくみ、ダイナミズムに敬意を表する。
*第四インターナショナルは、すべての政治犯の無条件釈放を要求する。
*第四インターナショナルは、諸民族の権利を守るために諸民族を支援する。
*第四インターナショナルは、弾圧を支障なく可能にするすべての弾圧法規(特にサイバーセキュリティ分野)の廃止を要求する。デモ参加者やストライキ参加者の保護および表現・報道の自由、結社の自由、労働組合権の尊重を要求する。
*民主的な選挙がおこなわれ、軍の後見を受けない文民政府が成立するまで、ASEANをはじめとする国際機関へのビルマの参加を停止しなければならない。
*軍部は、ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)とミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)という二つの巨大コングロマリットを所有している。これらの財閥との協力関係を停止し、軍事政権マンバーとその同盟者の海外資産を凍結しなければならない。軍が管理する産業の製品をボイコットしなければならない。
*広範な憲法改正の条件が満たされなければならない。2月1日以前の状態に単純に戻すことは意味がない。軍はすでに権力の中心にいて、民主主義への移行を阻止することができたし、今後もそうするだろうからである。
*(タイなどの)地域的経験や国際的経験から、権威主義体制を強化するという一般的な傾向は、大きな勝利を収めることができる民衆の反乱に直面することがわかっている。ビルマ人民は、香港・台湾・ビルマ・タイで活動している非公式な「ミルクティー同盟」の支援をすぐに受けた。今こそ、連帯にもとづく新たな国際主義を確認するときである。
THE YOUTH FRONT(青年戦線)
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