犯罪的誤りの根拠に向き合えず

三里塚反対同盟の分裂と内ゲバ襲撃

水谷 保孝/岸 宏一著「革共同政治局の敗北1975~2014」(白順社)「第9章/第1節」に対する批判メモ

1 3・8分裂について

「土地売り渡し
運動」規定否定
中核派(革共同)の政治局員であった水谷、岸が『革共同政治局の敗北1975~2014』と題して「革命的共産主義者同盟全国委員会(革共同、いわゆる中核派)の分裂と転落の歴史および実相の切開」を中核派中央や革共同(中核派)再建協議会(関西派)を批判する立場から明らかにした。
その中の第9章では「第1節 三里塚三・八分裂をめぐる誤り石橋弾劾運動から三・八分裂へ 一坪再共有化運動の政治構図 三・八分裂は回避できたか 第四インターへのテロル」(326頁)と題して二人の見解を明らかにしている。
だが水谷・岸は「第四インターへのせん滅戦の誤りについて問題点を明らかにしなければならない」(22頁)と言いながら、「八三年三・八分裂」は「三里塚現地責任者であった岸の責任は重い」などと岸の欠点に集約しようとしている。その岸は、こんどは「あとがき」(443頁)で「私が関わった八一年以降の三里塚闘争の歴史的な総括がもっとも困難だった」と弁明し、なぜならば「革共同は三里塚闘争にいわば特化した組織となっていた」のであり、「三里塚担当に着任するときは、本多さんに代わって『清水の党』を選択する、と決断した」というに至っては、ほとんど独立した自己として内ゲバ主義(対立する党派間や、大衆運動内部の意見の異なった人びとに行使される暴力=「内部ゲバルト」)のあり方にアプローチするのではなく、「清水の党」に依拠したのが「革命運動の敗北」だということになる。
一坪再共有化運動に対しても、水谷・岸は「『政府・公団に土地を売り飛ばす道を開くもの』と短絡的に批判することは誤りである。なぜなら一坪再共有化を担おうとする人たちは、土地登記という形だけで三里塚闘争支援の意志をもつ人たちであるからである。土地を売り飛ばすうんぬんは、三里塚闘争をたたかう人たちを信用していないということであり、革命党派としてはありえない論点である。この論点を苦し紛れにつくりあげた責任の多くは現地責任者の岸にあった。批判のための批判であるという自覚は当時からあった。今なおそれを繰り返しているのを見ると、悔恨の念ひとしおである」などと、これまでの「土地売り渡し運動」=北原派反対同盟に敵対する反革命規定から「大きな転換」を表明している。

自らの果した
役割について
当時の中核派は、三里塚芝山連合反対同盟と一坪再共有化運動に対し土地売り渡しなどと悪罵を投げ、全国の一坪共有者を戸別訪問し、恫喝などの暴力を強行し、熱田派系の三里塚連帯集会に対しては集会破壊を繰り返し策動してきた。中核派革命軍と称する襲撃犯は、一九八四年一月九日、一〇日に東京、大阪、広島で五人の仲間を襲撃、七月五日、一四日に三人の仲間を襲撃した。仲間たちの被害状況は、こうだ。A(金属労働者/頭蓋骨骨折、鼻骨陥没、脳挫傷、脳内出血で重体)、B(印刷労働者/足の骨折、無数の裂傷、全身打撲で全治二カ月)、C(自治体労働者/左足複雑骨折)、D(足首骨折)、E(学生/肩こう骨骨折、両手甲の骨折、足の甲骨折、口腔裂傷、全治三カ月)、F(左足切断の重体)、G(両足骨折、全治五カ月)、H(頭部骨折、左腕複雑骨折等で全治五カ月の重傷)。
ところが水谷・岸は、本書でこの事実経過、どのような組織的な共謀関係を積み上げたのか、その意志一致をどのようにしたのかについて一言も明らかにしていない。「私たち筆者は本書において、革共同にかかわった多くの人たちから証言の聞き取りを重ね、多角的な検証をおこなった」(16頁)と言っているが、「第9章 第1節」では、具体的な事実などが出てこないが、いったいどのように反映されているというのか。正直に語るべきである。
つまり、熱田派反対同盟および支援を「反革命」規定し、第四インターへのテロルへの強行に至るプロセス、決定した諸会議での著者らの任務・役割などを具体的に告白し、自らの犯罪と向き合う姿勢になっていないということだ。「間違っていた」というポーズをとることによって意図的に内ゲバ主義を維持しつつ、三・八分裂を仕組んだ根拠を抽象的にデッチ上げているにすぎない。その結論が「第四インターへのテロル」は、「道義性を踏み出した」の一言に現れている。
襲撃直後、中核派は「一・九 極悪の三里塚闘争破壊者、公団の先兵=第四インターに東西で正義の鉄槌」と叫んでいたが、その「正義」とはなんだったのか。真正面から格闘するのではなく、己の内ゲバ主義を切開し、解体していくための踏み込みを巧妙に回避したいのが本音ではないか。だから「対革マル戦」まで貫かれている内ゲバ主義の根本的な誤りに迫ろうともしないのだ。
たとえ「第四インターへのテロルの誤りを自己批判的にとらえ返し、襲撃を受けた第四インターの被害者の方たちに心から深く謝罪する。あわせて第四インターの皆さんとラディカル左翼を支援してきたすべての皆さんに謝罪する」(335頁)と言っても、内ゲバ主義を維持したままの居直りでしかない。

決定過程を明
らかにせよ!
何度も言おう!「三里塚闘争の方針をめぐる八三年三・八分裂と翌年の第四インター活動家にたいするテロルなどの諸問題については、明確な内在的な切開と自己批判的総括をしなければならないと考えている」(22頁)と言っているが、そもそも三里塚芝山連合反対同盟と一坪再共有化運動に打撃を与え、政府・権力・公団を大喜びさせた犯罪行為であるという設定がない。三里塚反対同盟(代表・熱田一)「声明 中核派のテロ行為を弾劾する!」(一九八四年一月一三日)は、「反対同盟は理論対立を暴力によって解決したことはない。また党派間において時折突発的に発生するこぜり合いがあれば、討論の一層の徹底を要請して、権力に対して闘う者どうしの暴力的紛争を中止するよう最大限の努力を行ってきた」「三里塚闘争を中核派の支配下に従属させたいのであれば、まず現地反対同盟農民を皆殺しにしてからにせよ」という糾弾をいかにとらえているのか。さらに三里塚闘争に連帯する会の「緊急アピール 権力の意図に手を貸す襲撃 心から憤りを禁じえない」(一九八四年一月一〇日)、「テロ襲撃に反対する三五八氏が共同声明」をどれだけ一字一句読み込んだというのか。謝罪対象は、熱田派反対同盟、熱田派を支援する多くの市民、活動家、共有者、支援党派であり、さらに襲撃・暴行された第四インターの仲間たちだ。
同時に中核派が反対同盟分裂と一坪共有地運動敵対方針を決定したプロセス、諸機関決定と水谷・岸の関与事実を明らかにせよ。さらに第四インターに対する「殺人未遂、傷害、暴行、脅迫」事件への犯行にいたる中核派諸組織機関の決定経過、襲撃犯を認定・公然化させ自己批判、革命軍の関与と事実経過、とりわけ一連の犯罪に水谷・岸がどれだけ具体的に関与し、指導したのかの経過、八三年以降の居直り続けた経過と謝罪に至る経過を明らかにせよ。
「第2章 三・一四Ⅱの発生 〇六年三~九月 [第一局面]」では、かなり詳しく中核派党内分裂に至る諸会議、テロ・リンチ、対立・分裂経過が出ているが、「第9章 第1節」はそのようなスタイルを取り入れていない。「深く謝罪する」と言いながら、巧妙に犯罪実態・経過などの隠蔽のための操作である。

2 「赤色テロリズム論」解体を

 「第四インターへのテロル」の理由として、「三里塚闘争で主流派になる」目的で「現地の劣勢」を挽回するために「全国運動で巻き返し、さらに熱田派の中心的支援党派である第四インターに軍事的せん滅戦を仕掛け、その党派的瓦解を策動したのである。この行為は、筆者らは今にしてはじめていえるようになったのだが、国家権力にたいしてともにたたかう左翼運動の原則を踏み外したものといわざるをえない」と内ゲバ主義者から「内ゲバ反対主義」への軽薄な乗り移りを披露している。
「三里塚現地責任者の岸の責任は重い」と言いながら、「政治局の政治利用主義」、「岸の政治利用主義」があったとしているが、それ以上の切開に入ることをしない。水谷に至っては、「強まっていた第四インター批判の当否を検証することもなく鵜呑みにし、第四インターへのテロルの流れを促進する役割を担った」と言うならば、その根拠に迫り、内ゲバ主義解体に向けた方針に迫るのではなく、結果現象を披露するだけだ。
そもそも水谷・岸の「赤色テロリズム」論(244頁)は「反革命分子の頭上に鉄槌を打ち下ろすことは、まったき正義である」という独善主義に貫かれたものでしかない。中核派の党派的利害を優先し、第四インターを「反革命」と規定し、その「殺人未遂、傷害、暴行、脅迫」事件が「正義の戦い」だと居直ったのではなかったか。数々のテロルを強行してきたことを「反省」すると称するならば自らの対革マル戦も正当化する「赤色テロリズム」論も解体しなければならない。
この作業を棚上げしたままだから、「革共同と第四インターはラディカル左翼内の運動的な競り合い、論争・相互批判する関係」から「カクマルと同列に置く軍事的せん滅戦を発動した」根拠が「現地の劣勢を挽回していく」ためなどと局面的に手前勝手な意味づけを行うだけでしかないのだ。内ゲバ主義に貫かれた「赤色テロリズム」論解体を意図的に避けるのではなく、自己解体に向けて踏み出さなければ「歴史的な総括」の入り口に踏み込めず、「総括」作業は永遠にほど遠いだろう。
水谷・岸は、当然、「革共同(中核派)再建協議会の自己批判は受け入れられない/2009/02/23 週刊『かけはし』 「中央委員会声明」」(資料/別掲)を読んでいるだろう。
われわれの関西派批判は、同様に水谷・岸批判へと繋がるものである。それにもかかわらず二人は、関西派批判を真摯に受け止めることができず、なんら具体的に反省の弁を語ろうとしていない。繰り返すが、内ゲバ主義を保持しつつ、彼らがよく使っている「政治利用主義」のレッテルがそのままあてはまり、そのために「第四インターへのテロル」の歴史に触れたにすぎないのである。(L・L)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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