右翼のプロジェクトは矛盾に逢着

かけはし 第2655号 2021年3月1日

英国 ブレグジットの現実
英帝国主義国家にとって悪夢に

デイブ・ケラウェイ

 ボリス・ジョンソン[首相]は、ブレグジット[EU離脱]・キャンペーンの成功の中で、イギリス国民が「自分たちのケーキを自分たちで食べる」ことができるだろうと自慢していた。つい先日、オランダに入ってきたトラック運転手が、国境規制に違反しているとして、ハムサンドウィッチを没収された。彼は「パンだけでも持てないか」と質問したが、これも拒否された。ハムもパンもケーキもダメだった。

離脱協定下では
GDPも減少に


 海外にいる多くのイギリス人は(私も含めて)、先週、彼らが楽しんでいたテレビの配信サービスがブレグジット後に利用できなくなることを知った。クレジットカード会社のマスターカードは、EUから購入する人に追加料金を課している。多くの中小企業―しばしばブレグジット支持だった―は、追加の非関税コストによってコストが増加し、遅延が生じていることを見つけた。付加価値税(VAT)と一部の輸入関税は今すぐ支払わなければならない。また、安全衛生規制や基準の調整のために、余分な書類を記入しなければならない。多くの企業が離脱協定の前に部品や材料を備蓄していたので、完全な影響はまだ明らかではない。そのような企業が何をすべきかを関連省庁に質問したとき、倉庫を用意するとか、EU域内にその企業の支店を準備するとかを助言されたことが報告された。支配権を握り、幻想であるイギリスの主権を取り戻すためには、こんなにも多くが必要なのだ!
 製造業よりも重要な経済分野―金融やサービス―は、自由貿易協定には含まれさえしていない。困難な交渉が継続することになるだろう、ブレグジットはジョンソンが主張するようには行われていない。ほとんどの主流エコノミストは、この「中身の乏しい」協定によってGDPが4~5%減少すると考えている。

労働者の打撃
が最も過酷に


 このような経済の衰退は、労働者にもっとも打撃を与えるだろう。この協定書のインクが乾くとすぐに、労働法や規制を緩和する方法を検討するための「会議」がビジネス省に設置された。週48時間という労働時間の上限、休日の権利と法定休憩時間、労働時間を記録する会社の義務など、すべてが見直しのテーブルに置かれた。このような騒動があり、大臣はその後、この会議設置を取り下げた。それは間違いなく別の形で戻ってくるだろう。ジョンソン保守党にとってのブレグジットは、ヨーロッパのコストから切り離された「シンガポール」のような島を作ることだった。低税率・低賃金経済によって、アメリカや中国からのグローバルな投資を受けて、イギリスはEUに対して競争上の優位性を得ることができるだろうというものだった。
 EU内での労働者の自由な移動を終了させることは、労働者にとって最大の敗北であり、同時に社会における人種差別的で反移民的な態度を増幅させた。政府は、2021年6月までに「定住資格」を確保できなかったEU労働者の本国送還に「インセンティブ」を与えるために、一人当たり2千ポンドを支給するというスキームで、この「犬笛政治」[一部の人々にだけわかるメッセージを込めて政治発言をすること]を悪用し続けている。さまざまな理由で、長年イギリスで働いてきた数万人のEU移民が、この期限に間に合わないだろう。ブレグジットと新型コロナウイルスの危機のために、ほぼ100万人の人々がすでにロンドンを離れた。

屈服と国際主義
左翼内分岐進展

 野党である労働党は、現在「ミスター・反コービン」と呼ばれるキール・スターマーに率いられており、それを中身の乏しい協定と呼んできた。しかし、指導部は闘いが終わったと判断し、議会で協定に賛成投票することを決めた。この協定は、スターマーがコービンの下でブレグジットを主導した時に決められた基準(有名な6つの基準)をどれも満たしていない。しかし、スターマーはいわゆる「レッド・ウォール」の有権者―前回選挙で保守党に鞍替えした、主にミッドランドと北部の元労働党支持者―を取り戻すことに固執している。そうした有権者を社会主義的な政策と国際主義で取り戻す代わりに、彼は労働党がブレグジットに屈服し、それを受け入れるべきであると考えている。
急進的左翼の中の少数派は、「人民のブレグジット」(Lexit)を主張し、EU離脱投票を左翼にとっての好機とみなした。というのは、彼らの見解では、残留を支持していた既存支配層に対して労働者が逆襲したことを示しているからである。こうした左翼は、離脱投票の人種差別的要素を過小評価したり、無視したりしていた。彼らは、EUの法律や規制が労働者のために確立した利益については、極左的になっていた。これらの勢力はいずれも、「人民のブレグジット」潮流を動員したキャンペーンやデモを組織することができなかった。今日、彼らは議論を避けるか、右翼的ブレグジットへの代替案が実際にあったと想像して、説明することに自己満足している。
コービン支持の下院議員・労働党活動家・労働組合員・左翼グループらの一部による連合は、「もう一つのヨーロッパは可能である」を通じて、ブレグジットに対する国際主義的な対応を求めてキャンペーンを続けてきた。彼らは最近、ここで見ることができるオンライン会議を開催した。

国家構造の危機
が再度深刻化へ


最後に、ブレグジットは、ジョンソン政権が新型コロナウイルスのパンデミックに対処してきたひどいやり方とともに、イギリス国家の制度的危機を発展させる大きな要因となっている。5月におこなわれるスコットランド議会選挙では、スコットランド民族主義者が地滑り的に勝利する可能性が高く、すでに世論調査では、国民投票の呼びかけと独立のどちらも賛成派が過半数を占めていることが示されている。ウェールズでも、より一層の自立への支持が高まっている。北アイルランドは基本的にアイルランド南部の26郡との関税同盟内にあるが、これも客観的に見て統一アイルランドについての投票を支持するのに役立つだろう。
ブレグジットは、すでにイギリス帝国主義国家にとって悪夢だった。というのは、資本の支配的な部門が決して熱心ではなかったからである。新型コロナウイルスのパンデミックと連合国家の危機という矛盾が加わることで、彼らは保守党内でジョンソン陣営の代わりを探すか、あるいは穏健で親企業派のスターマー率いる労働党に乗り換えることになるかもしれない。
2021年1月28日
(『インターナショナル・ビューポイント』2月1日)
(デイブ・ケラウエィは、第四インターナショナルと協力関係にあるソーシャリスト・レジスタンスの支持者)

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