世界情勢と革命派の任務(上)

資本主義の危機に挑戦する階級的主体建設へ
アメリカ主導の国際秩序の動揺と分岐点に立つ労働者・民衆の闘い

フランソワ・サバド

 ここに掲載する「世界情勢報告」はフランスLCR(革命的共産主義者同盟)と第四インターナショナルの指導的メンバーであるフランソワ・サバドが、昨年十二月十五日、十六日にブラジルのサンパウロで開催されたブラジルPSOL(社会主義と自由党)内の潮流である「エンラーチェ」グループの総会で提起した内容。PSOLは現在のルラ政権与党である労働者党(PT)の新自由主義政策への追随に反対して除名処分を受けたり離党した活動家などによって結成された。なおPSOLでは、第四インター・ブラジル支部だったPT内DS(社会主義的民主主義)から離脱して、PSOL結成に参加した第四インターナショナルのメンバーも重要な役割を果たしている。「エンラーチェ」には他の人びとと共に第四インター派も加わっている。(本紙編集部)
 国際情勢は、資本主義的グローバリゼーションの拡大と深化を確証している。それは幾億人もの人間と労働者の生活条件に対する、自由主義的な反改革の体系化、世界経済の中で「金融化」が占める部分のいっそうの拡大、地球の生命均衡が疑問に付される事態を通じた、支配階級の攻撃の継続によって特徴づけられるものである。

1 国際情勢の幾つかの要素

(1a)このグローバリゼーションは、世界市場の新たな配置を描きだしている。そこでは依然として支配的であるが弱体化した米帝国主義、欧州諸国と、世界のGDPに占めるその割合が恒常的に増加している中国・インドといった新興諸国との競争が激化している。米国や欧州諸国が二%から三%という低成長率で推移しているのに対して、中国とインドは八%から一〇%、ロシアやベネズエラなど天然資源(とりわけ石油)生産諸国は六%から八%の成長率である。この社会・経済的変化は、新しい力関係と新しい国際的緊張を予示している。

(1b)この情勢は、新しい世界競争の中での自らの位置を維持しようとしている弱体化した米国と欧州諸国のブルジョアジーが、とりわけ中国、ロシアとの関係で新しい同盟システムを収斂させようとしている国際政治の分野で、幾つかの帰結をもたらしている。それはおのおののブルジョアジーが、新しい市場での分け前を攻撃的に追求することを排除するものではない――それどころではない――が、米国と欧州連合のきずなも強化される傾向にある。サルコジのフランスとブッシュの米国との新しい関係は、この屈折ないし変化の好例である。シラクはイラク戦争に反対した。サルコジは賛成している。サルコジはイランとの対決の前線に立つほどである。しかしより全般的には、フランスのNATOへの復帰計画と同盟内での欧州軍の統合は、現在進んでいる再組織化の型を明確に示している。

(1c)労働力市場の世界的構成への強力な傾向と結びついたこの国際的競争の強まりは、政府と経営者階級が利潤率のいっそうの増大のための政治的・社会経済的条件を作りだし、労働時間と搾取時間の延長、富の生産における賃金部分の抑制といっそうの圧縮をもたらしている。

(1d)こうした政策は、とりわけ資本主義ヨーロッパに一連の諸結果をもたらしてきた。そこでは主要な欧州ブルジョアジーは世界競争における自らの場を確保するために、「欧州社会モデル」に正面から攻撃をかけ、事実上、社会保障システム、労働者の社会的権利、公共サービスを攻撃している。その政策は、二〇〇五年にフランスとオランダの民衆によって否決された欧州憲法プロジェクトの広範なアウトラインを再び採用する新しい「欧州条約」に集中している。それは東欧諸国の欧州への統合によって強化されている。この統合は一連の社会的成果の解体をもたらし、その結果、これら諸国における民衆諸階級の生活・労働条件を低下させる圧力を行使するものとなっている。

(1e)米国は二〇〇八年末の選挙の直前にあり、それは米国の政策の力点の変化あるいは修正を導きうる。にもかかわらず米帝国主義はここしばらく、長期間にわたって、戦略的な政治・軍事的再配置政策を強化してきた。米国経済がますます世界的信用、中国や日本などの諸国が保持する株式、社債、国債などに依存しながら、イラクやアフガニスタンの占領、イランとの対決、程度は少ないとはいえ中国やロシアとの対決といった攻撃的軍事政策によって弱体化をある程度埋め合わせようとしている情勢の中で、この政策は疑問に付されている。
 この政策はまた、天然資源や石油などの戦略的物資への支配を維持、拡張する目的を持った、一定の諸国の「再植民地化」政策を含んでいる。


2 グローバル資本主義システムの矛盾

 資本主義システムは、この地球のすべての経済的・社会的活動を大きく支配している。この支配のコストは、社会的レベルでもエコロジーレベルでも不断に増加している。それはシステムの内部的・外部的矛盾を恒常的に培養しており、広い意味での階級闘争、社会闘争をもたらしている。そのことは新自由主義的・資本主義的秩序への民衆諸階級の拒否に表現されている。システムのこうした一連の矛盾の例証が存在している。

(2a)米国の金融と銀行システムの危機、「サブプライム」(数百万のアメリカ人を破綻に追いやり、貸付を行っていた銀行と金融機関を破産させた変動金利を伴ったローン)危機は、現在の経済成長の脆弱性を確認するものである。それは世界経済の金融化に対する北米資本主義の「超敏感性」を立証している。国際金融システムの危機は、「より金のかかるものに」なり、ローンの率と条件を重くすることを通じた、今日の資本主義的発展の構造的弱さ、とりわけ生産的投資の弱さを際立たせている。この投資の危機は、生産性の上昇率、そしてつまるところ世界経済の二つの砦である米国と欧州の成長率に好ましくない影響をもたらしている。
 現在の金融危機は今や米国の経済活動のスローダウンに直接の影響を与えており、この危機が経済不況へと転化するリスクが作りだされている。こうした要因はこれら諸国の支配階級と政府が経済的・社会的関係でマヌーバーを行う余地を少なくさせており、システム的危機へと導く可能性を持っている。

(2b)ここ数年、エコロジー的危機が新しい次元に入っている。地球温暖化のもたらす結果が姿をとって現れ始めており、それは長期的には、新たなエコロジー的・社会的・人類的破局を引き起こす可能性が大きい。資本主義システムの機能と両立させようとする政府の政治的かつメディアを通じた努力、いっそう逆上した利潤とエコロジーの両立への探究にもかかわらず、「生命は資本家の利潤よりも価値がある」という新しい意識が登場しており、システムを機能させるための費用は地球の生命均衡をますます疑問に付している。
 革命派が、エコロジー問題に関する資本主義の破壊的影響を批判し、資本家の利潤に従ってではなく社会的必要に従って持続可能な形で統制され、計画された経済の重要性を強調するために、この問題を取り上げることは、来るべき時期において決定的である。

(2c)これらの矛盾は、米帝国主義がイラクで突きあたった敗北の中に鋭く表現されている。この地域での米軍の状況を語るために米国のメディアは、通例「新たなベトナム」という用語を採用している。それはまさしく政治的沈滞であり、兵士たちはブッシュ政権が兵士たちは政治的・軍事的観点からこの地域でまさに泥沼にはまっていることを知っている。この地域の安定化や民主化という目的のすべての宣伝は、ズタズタに切り裂かれている。それは伝統的な侵略作戦であり、国と地域の再植民地化である。イスラエルの侵略と植民地化政策に対するパレスチナ民衆のレジスタンスと結びついた、米国の占領への拒否は、国際帝国主義システムの不安定化の大きな要因の一つになっている。

(2d)資本主義的グローバリゼーションの社会・経済的結果とその軍事的次元は、今や新たな緊張と社会的・政治的・軍事的衝突を引き起こしている。金融市場の要求の圧力、帝国主義、とりわれ米帝国主義の圧力、伝統的労働者運動とブルジョア民族主義の不在と後退あるいは構造的危機の下で、社会的反応はエスニック的・宗教的な組織、潮流、徒党、集団という形態、あるいはその方針が全体として反動的であるグループという形態を取りうる。これこそパキスタンとアフガニスタンで発展している情勢である。それはまた、アフリカの一連の諸国家を引き裂いている傾向にもあてはまる。

(2e)米国が中東で泥沼にはまりこんでいる事実は、国際的な影響、とりわけラテンアメリカで大きな影響をもたらしている。それは、「帝国」がつねに自らの裏庭と見なし続けている大陸で行使する圧力を過少評価するという問題ではない。しかし、この大陸に対する介入能力の弱体化を強調することが必要である。軍事的レベルでは、イラク、アフガニスタンに介入しながらラテンアメリカへの介入を準備することは困難である。「コロンビア計画」が存在する。パラグアイに軍事基地もある。「ゴルピスト」(一揆派)や「リベラル権威主義」右派への援助もつねに存在する。
 米州自由貿易協定(FTAA、スペイン語ではALCA)は失敗しているが、二国間協定は米国と一連の南米諸国との間で締結された。要するに、米国は南米を無視していないが、米帝国主義とラテンアメリカ大陸の一連の諸国との間での新しい関係が存在することは否定できない。
 二つの国家グループが存在する。第一のものはブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイによって構成されている。これら諸国の支配階級は、経済的発展の局面と、政権にある勢力――ブラジルのルラ、アルゼンチンのキルヒネル、ウルグアイのタバラ・ベスケス――の能力につけこみながら、大衆運動、より正確には大衆運動の指導部全体、とりわけブラジルにおいては労働者党(PT)と統一労働者連合(CUT)指導部、アルゼンチンでは政治的・労働組合的ペロン主義(ルラはキルヒネルより右に位置しているが)を方向づけ、支配し、組み込んで、一連の経済的目標をアメリカ帝国主義と交渉し、強制するための新たなマヌーバーの余地を獲得している。
 彼らは、「社会的援助」の次元を伴いつつ、また、とりわけ農産物輸出政策と国際金融システムとの特殊な関係を伴う世界市場への参入を行いながら、自前で、そして自らのやり方で、新自由主義政策を追求している。
 今や米帝国主義との部分的決裂という新しい経験を行っている第二の国家グループはベネズエラが主導し、ボリビアとエクアドルがそれに続き、そのすべてをキューバが支援している。これら諸国は現在、それぞれの特殊性を持ちながら、債務の万力のような圧力を緩め、天然資源への所有権と統制を取り戻し、食糧、保健、教育への社会計画を確保し、米国と欧州(とりわけスペイン)の圧力に対決して自らの国家主権を回復しようとしている。

3 ベネズエラとボリビアをめぐって

ベネズエラ――
チャベスの後退

 二〇〇七年十二月二日の国民投票における「反対」票の勝利は、ベネズエラにおける政治情勢の転換を示している。「反対」票の勝利を予測した人は僅かしかいなかった。ボリバール主義プロセスは継続しているものの、それはチャベスの敗北である。そしてそれはベネズエラとラテンアメリカの進歩的勢力にとって敗北である。一部のセクト主義的潮流が説明しているように、それはチャベスの敗北ではあるが民衆勢力にとっては勝利である、などという間違いを犯してはならない。「反対」票の勝利は、直接に右派、「ゴルピスト」(一揆派)あるいは穏健派勢力に奉仕するものである。それは彼らが回復し、再組織し、より良い条件で来るべき闘いを準備することを可能にさせる。「反対」票の勝利は、チャベスの米帝国主義との関係、さらにアルゼンチンやブラジルの政権との関係を弱める。チャベスを「穏健化」させ、彼を危険な妥協政策に導く圧力が強まるだろう。われわれが憲法のあれこれの条項に対して取りうる評価を超えて、何の保留やためらいもなく国民投票での「賛成」票の立場を取ったのは、そのためだった。

 しかしわれわれは、「反対」票の勝利をもたらした理由を綿密に調査しなければならない。全般的には、われわれは「マレア・クラシスタ・イ・ソシアリスタ」(注1)の同志たちが示した説明を共有する。どうしてチャベスは、前回の信任選挙に比して三百万票以上――それは大したことではないなどと言えるものではない――を失ったのだろうか。確かに、政府に反対するメディアの爆発的宣伝、嘘のキャンペーン、つまりベネズエラ右派のあらゆる武器が注ぎ込まれた。
 しかしチャベス指導部には自らの責任がある。この敗北は、憲法の単純なエピソード以上のより深い原因がもたらしたものだ。現在、「反対」票についての大討論を行う必要がある。その討論は、この先、数週間、数カ月の政策を定義するのに役立つだろう。われわれは、憲法の形式や一定の条項がチャベス政権の「ボナパルチスト的側面」を強化し、新憲法が富と資産の再分配の問題に取り組むことぬきには社会主義に導かない、と指摘した。しかし実際には、より実質的な現象が、ボリバール主義運動派の人びとの一部が大統領と距離を置くことになった理由を説明してくれる。第一に、住民の生活上の必要と関連した問題である。すなわち食糧、購買力、職、労働条件などである。基本的な食糧の供給問題が、力関係に大きく作用した。

 より一般的には、石油収入によって資金を確保することで、食糧、保健、教育の問題で大きな前進を実現したならば――それはボリバール主義政権の声望を高めるものだが――この国の経済・社会構造は、根本的変化を経験しなかっただろう。不平等が残存している。財政収入は四〇%以上増大した。資産構造は変更されなかった。住民の大多数――労働者、インフォーマルセクター、農民、公務員――の生活水準の改善は、このプロセスを深めるための第一の課題である。そしてもしそれが経済生活、企業、供給と取引の回路、労働者の利益のための銀行システムの統制、財産と土地の再分配への国家による介入をふくむものであれば、それがブルジョアジーや、たとえ親政府的であったとしても国家機構の諸セクターとの衝突を意味するものであっても、ためらいはないに違いない。
 民衆の一部が距離を取ることになった第二の根本的理由は、多くの観察者が注意しているように、政府に奉仕するのではなく自らの目的のために権力を行使している政府部門の官僚化のプロセスという現実である。したがって、あちこちで腐敗の現象が批判された。同様にわれわれは、とりわけ労働省において社会運動や労働組合と対決する政策が展開されているのを見ている。政府から疎外されているこうした諸部門は、しかしボリバール主義革命と決裂してはいない。今日、必要なことは、この革命プロセスを深化するために彼らを再動員し、接点を刷新することである。したがって第二の課題は、動員の深化とボリバール主義プロセスの民主化である。

 民衆により多くの権力を。革命の有機的組織、地域の住民集会、職場で選出される下部の労働組合代表、コミューンにより多くの権力を。企業の共同経営プロセスを拡大し、労働組合運動、UNTの統一した民主主義的大会を保障することが必要である。革命の社会的・民主主義的内実がこの点で何よりも重要である。このプロセスはつねに「一揆主義」的部分と衝突し、またより政治的なマヌーバーによって攻撃を受けるとしてもである。それには、「反革命の鞭は革命を前進させる」――チャベスがいつも引用するトロツキーの有名な言葉――と答えるだけではなく、革命プロセスを非活性化させ、それを最終的に破壊するために周辺化させることを狙った「前進」と「不誠実な提案」について語ることが必要なのである。このように情勢は複雑なものになりそうである。
 チャベスは岐路に立っている。彼はこのプロセスを穏健化させる圧力に屈し、社会的・政治的基盤の重要なセクターの支持を失うのか、それとも彼は前進し、再び最も戦闘的セクターに加わり、民衆の根本的な要求を満足させ、ボリバール主義革命プロセスが深化するのか。そしてそれはラテンアメリカ全体に影響を与えることになるだろう。

ボリバール主義
運動の再出発

 危機はボリビアにおいても際立っている。エボ・モラレス、住民の大多数、労働者、農民、インディオが支持する新憲法の採択を、サンタクルスと西部諸州――そこでは四つの地域がまさに自治を宣言した――に集中している右派と「豊かな白人階級」は承認していない。革命家たちはエボ・モラレスのMAS(社会主義運動)と共に、この憲法の採択とボリビアの最も貧しい住民の死活の需要を満たすことに賛成している。
 しかし鍵となる国はベネズエラである。もしボリバール主義プロセスが敗北するようなことがあれば、キューバは言うに及ばず、ボリビアとエクアドルに即時に影響を与えることになる。グローバルな力関係の悪化は、キューバにおいては「中国の道」の支持者に有利となるだろう。すなわちキューバ共産党の権力の維持と資本主義発展の結合である。しかしわれわれは、いまだそのような地点には達していない。決定的な段階は、ボリビアとエクアドルの経験の深化と結合したボリバール主義プロセスの再出発である。(つづく)

(注1)「マレア・クラシスタ・イ・ソシアリスタ」は、ベネズエラの革命的左翼活動家の再統合によって作られたグループ。そこにはUNTの労働組合指導者や、「革命と社会主義党」の建設を開始し、チャベスのイニシアティブによって出発した統一社会主義党への参加を決定した活動家などがふくまれている。「マレア・クラシスタ・イ・ソシアリスタ」の基本的見解については本紙08年1月21日号「改憲案国民投票をどう見るか」を参照。
(「インターナショナルビューポイント」08年2月号)

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