日本革命的共産主義者同盟(JRCL)第18回全国大会アピール

かけはし1999.8.30号より

「有事対応・危機管理」強権国家体制構築と対決する政治闘争を強化しよう

 小渕政権は、第145通常国会で、自自公連立体制の力によって戦争法や国旗・国歌法、盗聴法、住基法改悪、憲法調査会設置などの一連の「有事対応・危機管理」法を成立させ、新たな強権支配の道に踏み込んでいる。以下は、この8月に開催された日本革命的共産主義者同盟(JRCL)第18回大会が発した、小渕政権に対決する秋季政治闘争への決起を呼びかけるアピールである。


 8月13日に、207日間の延長会期を終えて終了した第145通常国会は、戦後国家の質的転換を画する重大な法案=戦争遂行とそのための国民協力・動員を可能にする悪法を矢継ぎ早に成立させた。
 新ガイドラインの下で、米軍の戦争に全面的に支援・協力し、その武力行使に自ら参加する「周辺事態措置法」。天皇制国家と侵略戦争のシンボルである「日の丸・君が代」を法制化し、教育現場や地域の行事などで事実上その強制を迫る「国旗・国歌法」。憲法の改悪を日程に上せる「憲法調査会」の設置を決めた国会法改悪。「通信の秘密」を侵害し、思想・信条の自由の領域に警察権力の監視の眼を張りめぐらす治安弾圧法である盗聴法などの「組織的犯罪対策三法」。国民総背番号制などの住民管理をめざす住民基本台帳法改悪。そして国家の行政権限を一元的に集中し、危機管理の面で地方自治体への国家による統制を強化する中央省庁改革法と地方分権一括法など……。
 こうしたまさに「有事法体系」とも言うべき国家主義的法制度の確立は、1980年代の前半に中曾根内閣が打ち上げた「戦後国家の総決算」が、ソ連・東欧のスターリニスト官僚支配の崩壊と、現代資本主義の歴史的危機の中で完成の段階に入りつつあることを物語っている。

 「日本改造計画」を打ち上げて自民党を分裂させ、55年体制終焉の引き金を引いた張本人である自由党党首小沢一郎は、『正論』6月号のインタビューで、新ガイドライン関連法の性格について「今度の新ガイドライン法案は、まさに戦争に参加する法案なんです」とあからさまに語った。
 彼は、『文芸春秋』9月号に掲載された「日本国憲法改正試案」の中でも、「例えば通信傍受法案。これは国防をふくめた治安維持に欠かせない。そこの問題を国民には隠して、捜査するのに少しだけ必要などと誤魔化しながら法案を通そうとする。住民台帳をつくるのも、税金のためだけではない。有事の安全保障や緊急時の危機管理に必要だからこそ、背番号制度を導入するという形で論議されるべきではないか」と、露骨な本音を語っている。
 つまり、政府は「戦後憲法」にとらわれた言辞で問題をあいまいにすることなく、「有事」=戦時に備えた「国民」的意思確立に向けて、断固たる決意で臨むべきことを訴えているのである。ここには、国家が住民全体をおおいつくす「公共」性の唯一の主体であることがうたわれ、国家の緊急事態の際には、私的利害をなげうって国家の下に馳せ参じる「国民」の形成が主張されている。
 この小沢・自由党の路線などを突出的な推進力にしつつ、明確に国家的・体制的危機を射程に入れた権威主義的支配秩序を形成する力学が作りだされている。
 現在、支配階級の手によって進められている支配形態の転換が、国家による上からの情報操作と管理を基軸に、さまざまの形態での「危機」から国家と社会を防衛するという「国民統合」の強化と社会的抵抗者の排除をふくんでいることは間違いない。

 第145国会の冒頭で形成された自自連立政権と、国会対策上なされた公明党の与党への組み込みによる自自公の三党連合体制が、新たな強権的支配秩序の形成に向かう動きを作り出した。9月に正式に発足する自自公の三党連立政権は、基本路線もあいまいなまま政権維持・参加の利害から異なった思惑を抱えて形成されるものであり、もちろんその内部に多くの矛盾を抱えている。議会政治的に見るならば衆参両院の圧倒的多数を擁しているとはいえ、自自公連立体制は決して安定的なものではない。
 しかし、通常国会で示されたように最大野党である民主党は、自自公連合の推し進める政治路線に基本的なところで反対する内容を持ってはいない。彼らは新ガイドライン安保に賛成であり、有事法制に対しても積極的な態度を示している。「共産党を除く総与党化」体制の形成に大きな責任を有する社民党は、今回の国会で野党的姿勢を強めたとはいうものの、同時に、村山政権以来の「自社さ」体制下の安保体制を承認する路線的転換の縛りを強く受けていることも明らかになっている。
 他方、「唯一の野党」として行動している共産党も、昨年参院選後の「暫定連立政権」構想で「安保破棄」を棚上げし、「国旗・国歌」問題については法制化論議の水路を自ら作りだしたことに示されるように、民主党を意識した政策的右傾化、安保・天皇制問題などでの現状固定・追認の方向に不断に引きずられている。
 こうした今日の議会政党のあり方が、一連の反動的法案の「ベルトコンベア」式の成立を可能にしている。
 そして、今国会で見られたように、護憲・平和運動をはじめとする労働者市民の政治的抵抗運動は、大きな後退と敗北を余儀なくされている。自自公体制による時代を画する悪法の成立は、こうした大衆運動の後退状況に規定されたものであることは言うまでもない。今、われわれはこの後退の中から、あらためて自自公連立を通じた有事法制、憲法改悪に向かう新たな国家主義に対決する階級的政治闘争の再建への通路を探っていかなければならない。

 日本資本主義の深刻な経済危機、完全失業率五%を超える大失業時代の到来と不安定雇用の拡大、労働条件の悪化に示される労働者の権利のはく奪は、現代資本主義の歴史的行き詰まりの現われである。そしてグローバル化した現代資本主義にともなう新自由主義は、「優勝劣敗」の競争原理を全世界に拡大し、第三世界の飢餓と貧困、環境破壊を拡大再生産するとともに、先進資本主義国の「福祉国家」的国民統合を解体している。それは貧富の格差をかつてない規模にまで押し広げ、社会の不安定さを増幅している。
 それは現在と未来への労働者民衆の不安と絶望を発展させ、「強い国家」、「強い指導者」を求める意識を多くの人びとの中に作りだす。
 そして戦後の護憲・平和運動は、支配階級の攻勢に対決しえず、その大衆的基盤を喪失させていった。だが同時に、われわれは、地域の住民運動や国際NGOグループの運動などの中から、弱肉強食の新自由主義と権威主義的国家主義に対する抵抗の可能性が成長しつつあることも見逃してはならない。さらにわれわれは、いまだ集団的階級的抵抗という姿をとってはいない労働者階級の雇用破壊・権利はく奪に対する不満の蓄積を、具体的な闘争として表現していくための運動の陣形を長期的な視野に立って準備していかなければならない。
 そのためにも「戦争ができる国家体制づくり」に抗する新しい政治闘争の再建が急務となっている。自自公連立政権の矛盾とゆらぎをつき、「戦争法」や「国旗・国歌法」そして盗聴法や国民総背番号制導入を既成事実としない政治的反撃の力量を蓄積していくことが求められている。
 自自公路線による戦争協力体制の発動、「日の丸・君が代」の強制に対する全国的な政治的反撃を軸に、小渕政権に対決する労働者市民の共同の闘争がさまざまな形で模索されている。すでに「周辺事態措置法」による自治体・民間協力を拒否する地域・自治体からの抵抗のネットワークづくりが構想されており、また「日の丸・君が代」の「国旗・国歌」化に対しては、今年11月の「天皇即位10年記念式典」や来年春の卒業式・入学式に向けた闘いの準備が始まっている。来年の沖縄サミットを契機にした基地「県内移設」など在沖米軍基地の再編・強化に対しても、沖縄現地での「対抗サミット」の準備など新たな反撃が開始されようとしている。
 われわれはこうした闘いの一翼を主体的に担い、「有事対応・危機管理」の強権的国家体制づくりに本格的に踏み出した小渕「自自公」連立政権に反撃する政治的な共同戦線を築き上げるために全力をつくしていかなけれぱならない。
 その核心的課題は、新自由主義と新たな国家主義にたちむかうインターナショナルな運動の連携にある。NATOのユーゴ空爆に対して、政権の座にある社会民主主義諸党や緑の党が積極的に支持する立場を鮮明にしたことは、資本の新自由主義的秩序の政治的枠組みを「既成事実」として受け入れる「現実主義」の無残さを証明した。
 求められているのはラディカルな反資本主義的変革の立場である。アジアの闘う仲間たちとの共同をいっそう強め、「戦争ができる国家体制づくり」への抵抗と反撃の気運を拡大しよう。小渕「自自公」連立政権との対決へ、ともに闘おう!
1999年8月

日本革命的共産主義者同盟(JRCL)第18回全国大会