日本革命的共産主義者同盟(JRCL)第22回大会アピール
かけはし2013年4月22日号
討論深め、新しい任務に挑戦する
1 4年間の経過を踏まえて
四月上旬、日本革命的共産主義者同盟(JRCL)は第二二回全国大会を開催し新たな闘いに向けた討論と意志一致を勝ち取った。
二〇〇〇年代に入るとアメリカ帝国主義の力の衰退は鮮明となり、新自由主義的グローバリゼーションは完全に行き詰まり、資本主義システムの危機が全面化した。それに抗する形でヨーロッパを中心に世界社会フォーラム(WSF)運動に体現されるグローバルジャスティス運動が発展し始めた。われわれはこの闘いの先頭で闘うとともに反資本主義的左翼の結集に向けた新しいイニシアチブへの挑戦を自覚的に自らの課題として挑戦してきた。
具体的には二〇〇一年「九・一一」を契機としたアメリカ・ブッシュ政権のアフガニスタン、イラク戦争に反対し、「対テロにも戦争にも反対」を掲げ自衛隊の実質的戦争参加に反対するWORLD PEACE NOWなどの反対運動に積極的に参加した。またATTAC Japanなどのオルタ・グローバリゼーション運動にも加わり、その一翼を今日まで担ってきた。その過程で戦後革新勢力や一九六〇年代後半から七〇年代にかけた「新左翼」運動とは切断された新しい抵抗主体の登場の兆しを実感し始めた。そしてこの新しい抵抗主体・運動主体と結びつきながら、その政治強化をめざすという挑戦に経験的に踏み出した。それが「反資本主義的左翼の形成」という試みであった。
だが、この新しい試みは二〇〇九年の二一回大会で国際主義労働者全国協議会(NCIW=労働者の力)との機関紙の共同編集・発行の実現とフランスのNPAの同志を日本に招き東京と大阪で集会を開催するという段階にとどまった。
二〇〇九年総選挙での民主党への「政権交代」で開かれた新しい闘いの可能性は、労働者階級の運動や民衆運動の長期にわたる低迷という壁を突きくずすものとはならなかった。昨年末の総選挙で再び安倍政権の登場を許した政治的背景にあるのは労働者民衆の民主党政権に対する幻滅であった。「第三極」として登場した「日本維新の会」を民主党に迫る第三党へと押し上げ、公然と新自由主義路線を叫ぶみんなの党を伸長させたのも日本共産党、社民党をも含む左派勢力の立ち遅れ、弱さの結果に他ならない。
だが二〇一一年三月一一日の東日本大震災と福島第一原発事故の惨事は、多くの人々に今日の社会、政治、経済、イデオロギーの全般的危機の深さを問いかけることとなった。この最も先鋭な表現が昨年以来全国で広がっている反原発・脱原発を求める闘いである。この闘いは沖縄民衆が求める「反基地・反安保」の訴えと同様に今日のブルジョア支配体制と根本的に対立する要素を不断に拡大していくであろう。われわれはこれらの労働者民衆の闘いの最先頭を担うことを通して反資本主義的左翼の形成をめざしていく方向性を再確認した。
リーマン・ショックを契機として全面化した金融危機はギリシャ、スペイン、イタリア、ポルトガル、そして今やキプロスにまで波及しEU全体を覆い尽くしている。またチュニジアから始まった「アラブの春」はリビア、エジプト、イエメンで独裁体制を打ち破り、今日シリアのアサド体制との全面的対決に発展し、一瞬も休止することなくアラブ一帯で永続的に展開され続けている。全世界に広がっている新自由主義的グローバル化に反撃する闘いの一翼を今後ともアジアと日本で実現していくことをわれわれは全会一致で確認した。
2 反資本主義と国際主義の実践
次の文章は二二回大会で採択された決議の要旨である。
1 当面する政治課題
安倍政権は、「アベノミクス」と名付けられたインフレターゲット政策を背景に、TPP交渉への参加、「解雇自由化」など雇用政策に一層の「柔軟化」、生活保護基準の切り下げなど一連の露骨な新自由主義的戦略に大きく舵を切った。それはグローバル資本主義システムの深刻な危機の中で、労働者・民衆に犠牲を一方的に強制するむきだしの攻撃であり、また二〇一四年以後の消費税大幅値上げという大衆収奪と結びつくことで、格差・貧困をいっそう社会的に拡大することになる。この攻撃は、原発、沖縄と日米軍事同盟、憲法改悪などの問題を通じた、ブルジョア統治体制の国家主義的・強権的再編と結びついている。
① 原発政策に関して、安倍政権は資本の利害を代弁しながら、再稼働・新規建設・輸出をふくむ原発依存戦略の継続を明確にした。われわれは福島の同志たちの活動を全国的に支え、被害者への支援・全面補償、雇用と生活の保障、東電と国の責任追及、被ばく労働者の安全と権利などの問題に取り組みながら、原発再稼働阻止・原発ゼロの実現に向けた闘いを強化し、その経験を深化・蓄積していくことが必要である。
② 安倍政権は、「尖閣諸島」問題で作りだされた「領土ナショナリズム」を最大限に利用して、米国の新国防戦略に従属したグローバルな日米共同作戦態勢構築を急速に進めている。その最大の焦点はいうまでもなく沖縄・辺野古への新基地建設であり、オスプレイの普天間配備である。いまや「ヤマト」と米国に対する島ぐるみの反基地闘争の中で、沖縄において「自治」「独立」の意識が根強く発展している。われわれは、この「自治・自決」気運の高まりに注目し、論議を深めながら、日本における沖縄の闘いと連帯する反基地・反安保の闘いに取り組んでいく。この中で、「領土排外主義」に抗する東アジアの平和のための闘いを、韓国、中国・香港、台湾、フィリピンなどの同志、友人たちと共同で進めていくことが重要である。
③ 安倍政権は、現憲法の全面的廃棄・改悪に向けた攻撃に踏み切った。集団的自衛権容認への見直しから始まる動きは、憲法改悪に向けた工程表の中に位置づけられている。昨年四月に発表された自民党の改憲案は、たんに九条の改悪のみならず「国民主権・基本的人権・平和主義」という憲法の三原則、あるいは権力への規制を本質とする近代立憲主義そのものを否定する復古・反動の色彩に貫かれている。そしてこの陣営に「日本維新の会」も加わることになった。七月参院選を経て、みんなの党も加えた改憲連合は「九六条改憲」を突破口に、改憲プロセスを速めていくだろう。
われわれは、原発、沖縄、
改憲問題を結びつけながら、さらにTPP、反貧困等の課題とも連携させた政治的方針をもって、共同の戦線を築き上げることにつとめる。この中で国際的なグローバルジャスティス運動の立場からの取り組みもいっそう重要になっている。
④ 七月参院選においてわれわれは「憲法改悪阻止・沖縄米軍基地撤去・脱原発・雇用と生活を守る政党・候補への投票を」という立場からの投票を呼びかける。
具体的には、山城博治(社民党比例区)候補ならびに「緑の党」の選挙を支援する。
2 反資本主義左翼勢力への挑戦について
緑の党の七月参院選での立候補をはじめ、「戦後革新」勢力やリベラル中道勢力の衰退の中で、反・脱原発運動をベースにした左翼グループの分化と再編が広がっている。
反資本主義左派勢力の形成にむけた左翼結集を呼びかけてきたわれわれは、この間の流れの中で、その戦略について、労働運動・社会運動、さまざまな大衆運動の現状評価を含めてより具体化していく必要がある。そこでは仏NPAの危機を含めた欧州の第四インターナショナルの同志たちの経験やアジア諸国でのさまざまな試みとも突き合わせた検討も必要となる。
現にさまざまな試みが始まっている中で、われわれは拙速的にではなく、柔軟かつ原則的に「反資本主義左翼」潮流の形成に向けた討論を、現実の運動を足場にオープンな形で進めていく必要がある。
3 二三回大会に向けた準備
① 七月参院選を経て、改憲を軸にした情勢の大きな転換、新たな政党再編の可能性が浮上してくるだろう。その転換の中で、新しい情勢と任務についての論議を進めていく。
② 原発・震災がもたらした被害との福島の同志たちの闘い、被害補償・被災者支援、被ばく労働問題への取り組みを全国的に支援するために、系統的な討論・支援の体制を組まなければならない。
③ 週刊「かけはし」の内容・企画の充実、活用(「読者会」をふくめて)など、編集体制の充実が重要である。
④ IIREマニラを軸にしたアジア国際活動の重要性はますます高まっている。とりわけ中国問題をはじめとして、われわれの活動全体の中で国際活動への取り組みを強化する必要がある。