誰が彼に力を与えた

繰り返される性暴力

イェジン(変革党・社会運動委員会女性事業チーム)

性暴力はまだ、どこでも

 7月10日、パク・ウォンスン(朴元淳)ソウル市長が死亡した。8日、ソウル市職員が彼を性的虐待容疑で告訴してから、1日目のことだ。セクハラ加害者にされた後に、選択した死、多くの人々が彼の死を追悼した。葬儀はソウル特別市長葬として行われ、政界関係者が並んで遺体安置所を訪れた。加えて、民主党のイ・ヘチャン代表は朴元淳の死にセクハラ事件を取り上げるのは「礼儀のない行動だ」と怒った。

死の前で暴力が消去された。被害者に対する2次加害が飛び交った。朴元淳の死に対して、被害者の責任を問い身の上を暴いた。被害者の写真とし、誰かの写真をオンライン上で公開し、被害者の同意なしに告訴状を流布した。朴元淳性暴力告訴事実が公開された後、被害者は保護されなかった。世間は被害者と彼女を支持する女性団体などを非難し、加害者を擁護した。

 政界の性暴力告発は初めてではない。アン・ヒジョン、オ・ゴドン、最近の釜山市議員まで、男性政治家の性暴力事件が続いて暴露された。しかし、社会はまだ被害者の苦痛よりも加害者の地位と業績に耳を傾ける。「政治家への尊敬」を口実にした2次加害の中で被害者は「生存」している。

 単に政界だけだろうか。権力者による性暴力のほか、日常的に女性の性を搾取する犯罪が発生する。N部屋の事件を見てみよう。テレグラム(メッセンジャーアプリ)で児童・青少年に性搾取映像を撮るように強要し、これを取引した加害者が26万人である。性暴力を展示し、男性だけのカルテルを再び立てたこれらのほとんどが、10~30代の男性であった。火付け役数人の個人と顔が公開されて、私たちはまた、確認することができた。加害者は、悪魔ではない。これらの者たちは私達の周りの顔をしている。

 世間は性暴力を容認した性差別的社会構造と女性抑圧的な構造に直面しても変わらなかった。「バーニングサン」がくっ付いていたのは、世界最大の児童性搾取ものサイトである「ウェルカム・トゥ・ビデオ」で運営者のソン・ジョンウは放免された。成長過程、感情的・経済的困難、犯罪歴、扶養家族…司法は多数の理由を突きつけて加害者に免罪符を与える。性暴力事件は正しく処罰されず、今日もまだ性暴力は私たちの周りにある。

女性の性への抑圧、その暴力の歴史

 個人の誤りというには、加害者があまりにも多い。一体性暴行事件はなぜ発生するのか? 女性の性はなぜ抑圧の対象になったのか? その始まりを振り返りたい。

 農耕社会で余剰生産物が発生したことで、「生産する者」と「生産物を統制する者」が区分され、階級構造が明白になった。より多くの余剰生産物を得るためには、より多くの労働力が必要となり、女性の役割は、妊娠・出産などの再生領域に限定された。徐々に生産領域の統制権は男性に付与され、これは家庭での地位につながった。私有財産の概念が強化され、私有財産を「自分の子供」に譲るために、女性の体、性とセクシュアリティは統制され始めた。

 男性中心の国家は、女性だけに「貞操に関する罪」を支払わせた。子供を産んで育てる母としての、女性は「許される」が、それ以外の性を認めないということだ。このように、女性の性に二重的な物差しを押し込んで「聖女」と「売春婦」を区別した。性的に満足させてくれる女性を分離し、堕落・乱れたこととした。「伝統的家族イデオロギー」は、女性の体を統制するための良い手段になった。貞節を規範化する方式で、女性の体を抑圧し家父長中心の家族制度を維持するために活用されたのである。

 資本主義社会の中でも支配階級は、体制を維持するために家族制度という社会構造を必要とした。資本主義的産業を効果的に組織するために労働者が、個々の家庭に責任感を感じて自給自足を欲望するように飼い馴らした。女性には財産や所得の権利を与えなかった。男性中心の家族制度を強化し、ブルジョアジーの財産を保護しようとしたからである。女性の権利が剥奪された家族制度は、社会の構造を維持する核心だった。すでに女性の体は必要のために統制されていたし、このような社会で性的暴力は当たり前のことだった。

性暴力を容認する「加害者の王国」の中で、取引される女性

 資本主義社会では、性暴力が産業として発展した。性売買とポルノはもちろんのこと、エンターテイメント産業でさえ、女性の体を道具化して成長した。1年前に行われた日本製品の不買運動の過程でも、日本のポルノ消費は減らなかった。ポルノは強姦をセックスで美化し、女性の体を切断したり、両手を縛って侮辱的な苦痛を与えることを性的に消費する。男性の快楽のために、女性の肉体を対象化するセックスは、現実に再現され、女性の抑圧的な社会を再生産する。ポルノを見ることで、さらに不法撮影を行って、これを共有したりもする驚くことにも乳幼児までが、その被害者にされている。

 性売買はどうか? これは、すでに巨大な性産業の中に存在する。以前は、国家が率先して性売買を奨励して外貨稼ぎの手段として活用してもいた。基地村を計画都市のように造成し、ドルを稼せぐことが国家経済の発展に貢献するとし、愛国者だと称賛した。その中で、女性は体への統制権を失った。性病の治療を理由にして「基地村女性」を監禁し、その過程で死亡する人々も多かった。今日でも性を買う人よりも売っている人に対する烙印が激しい。男性文化の中で性買春は経験的に公然と共有される。しかし、性の売り手は、社会的非難で性暴力の被害さえ言うことが難しい。日常的に性交中にコンドームをこっそり抜く「ステシン」を経験し、性病やエイズにさらされている人々の人生は誰も保護しない。これと共に、性暴力と性売買の取り締まりの過程での人権侵害と女性の貧困問題は、隠される。

 性暴力的社会は、人々が身近に接することができるメディアでも再現される。強姦をモチーフにした映画は、文化として消費される。デート暴力を「愛」として描写し、加害者の叙事を描くドラマは数え切れなく多い。ゲームでも、女性は性的に消費される。ゲームの中の女性キャラクターは、扇情的に描かれて、いくらでも自分の「お好み」に合わせて体の大きさを調節することができるという点を前面に出した広告が堂々と掲載される。アイドル業界も同じだ。制服を着た若者のアイドルにセクシーコンセプトを探して、大人の女性アイドルに愛嬌を強要する。インターネット放送で、女性BJは、刺激的で扇情的な放送で人気を得る。このすべてのことは、女性の性が、効果的な「商品」として取引されていることを示している。

 このような社会の中で性暴力が成長した。国家は、性暴力に寛容を施し容認する。前述したバーニングサンとソン・ジョンウに加えて、多くの加害者が国家から自由を認められて、社会に出ている。加害者の「事情」を理解してくれて、被害者の声を無視して、性暴力事件に寛大な処罰をする国家が「加害者の王国」を建設した。男性中心社会を構成する悪循環が止まらなければ、明日も明後日も数多くの女性が性暴力の脅威にさらされるしかない。

性暴力的社会構造の亀裂をめざして

 性的暴力が私的に行われるとしても、これは個人の問題ではない。加害者の責任がないというわけではない。根本的に性暴行を止めるためには、加害者の個人に対する処罰と同時に構造的な変化が必要である。性暴力は、生物学的な力の違いや性欲の問題ではなく、権力によって発生する。「殴りたいから」ではなく「殴ることができて」、殴ることによって、自分の地位や性別の権力を通して相手の意思とは無関係に一方的に性的満足を得ることができると思うと、性暴力を行うものである。これを容認する社会で、女性の主体性は深刻に侵害されている。

 性暴力は、大学や職場など、あらゆる空間で日常的に発生している。そうならない、我々は、性暴力を可能にする土台をどのように崩すことができるのだろうか?

 まず、暴力を暴力だと言おう。加害者の学生時代や業績を踏まえ、「そんな人ではない」と防衛するのではなく、暴力だと言わなければならない。被害者への2次加害を停止し、加害者ではなく、被害者の声を第一に、より大きく聞こう。同時に日常的性暴力が性暴力的社会構造と連結されていることを明らかにしなければならない。私の居場所から、反性暴力運動を実践して、性暴力の規定を変えるための強姦罪改正など制度改善要求も続いて行こう。

さらに、女性の新しい性的権利を想像してみる必要がある。性を規制したり、統制せずに、保護的な観点からだけで見るのではなく、女性の性的権利をどのように具現することができるか考えてみよう。これと共に、女性の性を商品化し、それによって利益を得ることができるようにする社会構造を変えよう。錯綜することが相次いで発生している今、性暴行事件の被害者の訴えを支持することから始めることができる。沈黙せずにより積極的に、私たちが、被害者のそばにいることを明らかにしよう。日常的文化を変えて、資本が女性を活用することを拒否し、性暴力のない社会のために共に戦っていこう。(社会変革労働者党「政治と変革」第112号)

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