貧困と暴力に抵抗する女性たちの権利宣言
全世界の女性リレー行進に連帯
新自由主義と戦争の時代、女性たちは一層貧困になり、一層多くの暴力にさらされる。労働の「柔軟化」の中で、女性たちの大部分は低賃金や劣悪な労働条件に苦しめられながらも、基本的な権利さえ保障されない非正規職だ。
「低出産・高齢化」が生む資本の「危機」を克服するために女性たちを絞りとることが女性政策の核心となるとともに、女性は資本が要求する柔軟な労働力を提供しながら労働力を再生産し、老人扶養の責任を持つように動員されている。
女性たちの「家事と職場生活の両立」を基調とする政府の女性政策は、女性を家事労働の1次的責任者の位置に固定させつつ、2重の苦痛で苦しめられるようにしている。家事労働に類似した介護労働は女性の仕事として、それも労働者としての権利が充分に保障されない形態で拡散される。
福祉や公共サービスが縮小されたり市場化するとともに、女性貧民らは一層、貧しくなっている。その上、障害女性の独立した生活が保障されるほどに社会的支援体制が整えられるのは、さらにさらに遥かな道のりとなった。超国籍穀物企業の市場支配力を強化することを目標として推進されているWTOの農業開放と、これに呼応する政府の「農業放棄政策」によって農家の負債は急増し、農家所得が急激に減少するのに伴い、女性農民らは農作業、家事労働に加えて所得を補充するための副業まで、3重の役割に苦しめられている。新自由主義が必然的に引き起こしている生態系の破壊は、農村や漁村で体ひとつで仕事をし、生計を立ててきていた女性たちの労働権や生きる権利を脅かしている。
女性たちの貧困が全面的に深められている中で、多様な形態の性の売買に流入される女性たちが多くなっている。女性らが性の売買に流入される原因を問題にしないまま、法や制度によって性の売買を根絶しようとする試みは「性の売買に従事する女性」を社会から排除し、暴力の中に放置する。超国籍投機資本が国境を思うがままに行き来している時代だが、労働者たちだけは「人種」と「民族」という名によって分割され、移住労働者は労働権の死角地帯に追いやられている。最近の米国によるイラク侵略戦争や数々の武力紛争は女性に対する暴力を強化し、「性差別イデオロギー」を一層強化する。
●このように女性を抑圧し搾取し排除する新自由主義の世界化に立ち向かい、全世界の女性たちが地球を横断するリレー行進に乗り出した。ブラジルのサンパウロからアフリカのブルキナファソまで行進しながら、多様な人種や民族の女性たちが国境を超える連帯を実現しているのだ。われわれは、このような流れに合流し、女性を一層貧困にさせ、女性に対する暴力を加重している新自由主義の世界化を止め、戦争を中断させるために共に闘う女性だ。このように新しい社会を建設する上で女性の力は欠くことのできないものであり、女性の要求はその土台とならなければならない。労働者、農民、貧民、障害者、移住労働者、性労働者、同性愛者……。多様な名前であるが、われわれは共に闘い、声をひとつにしてわれわれの権利を主張する。
●すべての女性は自身が望んでいる労働をする権利を持っている。女性という理由によって特定の労働に接近できなくしてはならないし、特定の労働を強要されることがあってもならない。障害者であれ非障害者であれ、同性愛者であれ異性愛者であるにかかわりなく、また国籍や人種にかかわりなく、自らが望んでいる通りに労働できるようでなければならない。
●われわれはだれもが人間であり、女性として生きていくのに必要なだけの充分な所得が保障されることを望む。経済的独立は、女性が自律的に生活することにおいて欠かせない。女性の働き口の大部分を占めている契約職、派遣職、下請け、外注下請けなど、あらゆる形態の不安定な労働は、非正規職という理由によって、また女性がやっている労働という理由によって価値が切り下げられ、低賃金労働として固定されている。また現在の最低賃金制下で、最低賃金は大多数の女性たちにとっては賃金の最大値となるとともに、女性の低賃金労働を正当化する。女性労働を低賃金に閉じ込めている一切の制度や社会的認識は撤廃されなければならない。
●今もって女性は家事労働の1次的責任者であり、かつ最終責任者とみなされてきた。これは女性の雇用を不安定にさせ、低賃金を正当化した。また家事労働の延長線にある扶養・介護労働を女性の労働として固定化された。これ以上、育児、老人扶養、労働力再生産に必要なさまざまな仕事を女性の無給労働に依存してはならない。これは社会化されなければならないし、このような仕事に従事する労働者は労働者として正当な権利を享受しなければならない。そうでなければ政府が言っている「家事と職場生活の両立」は女性を2重の苦痛に陥れるだけだ。
●女性農民は「女性」であり、「農民」だ。WTO、FTAによる農業開放によって農村が崩壊させられている中で、女性農民は農事の多くの部分を担っており、家事や家計所得を補充する仕事まで受け持っている。したがって女性農民の地位を「無給家族従事者」と規定するのは、このような現実を無視するものだ。農村共同体を維持することにおいて女性農民の寄与は認められるべきであり、「女性」として、かつ「農民」としての権利を享受しなければならない。
●女性の身体は女性自身のものだ。出産や母性は女性にとって義務ではなく、権利でなければならない。女性自らが出産するかどうかを選択できるものでなければならないし、いかなる選択をするにせよ社会的支援が裏打ちされなければならない。女性は安全で健康に出産する権利、出産しないことを選択する権利を共に持たなければならない。したがって堕胎や避妊は女性たちが選択し統制できるものでなければならない。生命倫理という名によってこのような女性たちの権利が否定されてはならない。
●女性の身体は、繰り返すまでもなく女性自身のものだ。女性の身体に加えられる一切の暴力は中断されなければならない。また女性の身体やイメージを商業的に利用することは中断されなければならない。
●女性と男性の結合は独立的で自律的な女性と男性の自由な関係に基礎を置かなければならない。女性は男性の系譜を維持することに、疎外されたまま利用されてもならない。結婚を理由として女性の自律性が否定されてはならない。
●新自由主義の世界化によって女性の貧困が深まるとともに、結婚は女性を経済的に支える手段として奨励される。女性は生きていくために、あるいはだれかに頼るために結婚するのではなく、自らの欲求によって結婚する権利がある。また独身を選択する権利、いつでも結婚関係を解消する権利が保障されなければならないし、いかなる選択をしたとしても不利益が加えられてはならない。
●「健康家族基本法」は廃止されなければならない。新自由主義の世界化による福祉や公共サービスの縮小、商品化は家族内で女性の義務を一層強化している。このような状況にあって「健康家族基本法」は出産や養育、老人扶養が成り立っている家族だけを「正常家族」と規定し、このような形態の家族を築き維持することを強要する。同時に他の一切の形態の家族を国家の支援から排除している。また、これに対する責任を丸ごと女性に押しつけている。
●自然は女性をはじめとする人類の生の営みの拠り所だ。女性農民、女性漁民は長い歳月、身ひとつで労働し、自然との調和を実現し、生態系を保存する知恵を体得してきた。大地や干潟、海とともに生きてきた女性の権利が保障されなければならない。これを暮らしの基盤として維持し活用する知恵もまた、女性のものだ。だが新自由主義は効率性の論理を押し立てて、自然との調和を成して生きてきていた女性たちの生き方を無価値なものと考え、女性農民や女性漁民の労働の権利や生存の権利を破壊している。新自由主義が引きおこしている生態破壊は直ちに中断されなければならない。
●女性は各自の声を出して自ら組織化する権利がある。また自ら代表できるものでなければならない。労働組合で、学校で、地域共同体、世界の各地で独自的な活動を組織できる。
●新自由主義は女性たちを包摂と排除の戦略で分割することにより、女性の階級化を深化する。このような状況にあって女性たちの要求は一層、多様に提起できるもではなければならない。また新自由主義が排除した女性たちの要求が、普遍的な女性の要求として構成されなければならない。女性の新しい連帯は、ここから出発する。
●われわれは健康に生きる権利がある。労働力を再生産するに充分なだけの休息をとることができ、体が痛ければカネがあろうがなかろうが関係なく治療を受けられるのでなければならない。このために医療サービスを市場化し医薬品に特許を掛けて超国籍資本のカネ稼ぎの手段として利用することは中断されなければならない。女性たちの知識や知恵を土台として女性に適合した医療体系が開発されなければならないし、これをすべての女性が享受できるようにしなければならない。
●われわれすべてに住居空間が保障されなければならず、教育、医療、上水道、電気、ガスなど必需サービスが供給さけなければならない。カネがあっても、カネがなくとも、だれもがこれを享受できるのでなければならない。
●われわれは一切の形態の戦争や武力紛争のない世の中で生きる権利がある。戦争や武力紛争の時期には、女性と男性にそれぞれ異なる形態の極端な暴力が深まる。強姦など、女性に対する極端な暴力が敵の共同体を破壊することを目標として戦術として採択されたりするかと思えず、女性を共同体の「所有物」と見なしたり被抑圧者としての女性の象徴と敵を同一視することによって敵を無力化するなど、戦争は性差別イデオロギーを一層強化する。
●すべての移住者たちは市民として同等の権利を享受しなければならない。人身売買、労働搾取、性的搾取、家庭内暴力、貧困、人種差別など移住女性に加えられる一切の暴力は消え失せなければならない。特に移住者を犯罪人として取り扱い、取り締まり追放することは、移住女性がこのような暴力に抵抗することを不可能にさせる。
●外国人女性に対する性的幻想は、移住女性を性的対象と見なしやすい存在だという偏見を生んでいる。こうして女性たちは移住と同時に性的サービスを提供する仕事に主として雇用されるばかりではなく、その社会のもっとも劣悪な条件で働く。それゆえに移住女性に対するあらゆる種類の偏見は消え失せなければならず、移住女性は、女性として、労働者として完全なる権利を享受しなければならない。
●障害女性は人間であり、かつ女性として独立した生き方をする権利がある。教育を受け、労働をし、自由に移動し、自由に出産する権利があり、性的権利を享受することができる。障害女性は障害者である以前に女性であり、人間だ。障害者が人間らしく生きるための権利には障害女性が女性として生きるための権利が含まれなければならない。障害女性と非障害女性は女性の普遍的権利と障害女性の特殊な権利を闘いとるために連帯する。
●「無限の犠牲に耐えぬくオモニ(母)」、「保護を受けるべき妹」、「貞淑な女性」、「道徳的に堕落した女性」など、女性に対する歪んだ社会的規定は、女性の権利を破壊し、女性の生き方を一層抑圧的に仕立てる。すべての女性は他人によって規定されず、それ自体として完全な人間として共同体内で存在できるのでなければならない。
●どこのだれであれ、ここに収録された権利を新自由主義の世界化や戦争を持続する目的で、また女性の権利を解体し女性の連帯を破壊する目的で使用してはならない。女性の権利は、以降も無限に追加され得るだろう。
●われわれは、これら一切の権利を闘いとるためにこの場に集まった。われわれの行動はこれにとどまるものではない。2005年10月17日、全世界リレー行進が締めくくられる日、われわれは全世界的に進められる24時間連帯行動に合流するであろう。他のすべての国々と同じように正午に集い、われわれの権利を主張して世界の女性たちとの連帯を実現するであろう。
11月に釜山で開かれるAPEC首脳会談反対闘争、12月に香港で開かれるWTO第6次閣僚会議阻止闘争など、戦争と新自由主義の世界化に反対する闘いが進められる場所で、われわれは女性の声をさらに一層、高めるであろう。また3月8日の女性の日は、新しい社会を建設するための女性の連帯が実現される日となるであろう。
2005年7月3日
世界女性行進と共に貧困と暴力に抵抗する7・3女性行進参加者一同
(「労働者の力」第82号、05年7月15日付より)
The KAKEHASHI
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