07年障がい者差別撤廃闘争

労働者、民衆の共通課題として共闘組織を全国に構築しよう

テント籠城闘争

 活動補助人(介助者)サービスは昨年の闘争の成果として今年4月に保健福祉部(省)が事業を施行した。だが保健福祉部は、今年1月の国家人権委員会での23日間にわたる重症障がい者当事者らによる断食闘争を通じて合意した所得基準および18歳以下の対象制限の撤廃、180時間までの特例条項を通したサービス時間の拡大などの内容さえ一方的に破棄して本事業を施行するなど、重症障がい者当事者たちの生存権的要求である活動補助サービス制度を絶えず改悪しようとしている。この時間もユ・シミン長官の家の前では4月11日から現在までテント籠城闘争が展開されている。
 今年はチェ・オンナン烈士の5周忌となる年だ。3月、チェ・オンナン烈士の5周忌の月を迎え、障がい者の貧困問題を掲げ、貧困社会連帯と闘争とを企画し組織するであろう。具体的な事業として、住居権や最低生計費の争取闘争を展開する計画だ。このために4月17日、貧困社会連帯と全国障がい者差別撤廃連帯(準)(以下、全しょう連)の共同で居住権ワークショップを行ったし、また今年は最低生計費計測の年なので実態調査を行う計画だ。これを通じて下半期には居住、労働、所得保障権など自立生活のための権利闘争を全面的に展開するだろう。

移動権闘争の始まり

 移動権闘争を通した地域闘争を組織しなければならない。2001年の烏耳島(オイド)駅での垂直型リフト墜落の惨事以後、障がい者らは安全で便利に移動する権利を闘い取るために身を賭して闘ってきた。04年12月、「交通弱者の移動便宜増進法」が制定された。
 07年1月、建設交通部(以下、建交部)イ・ヨンソプ長官は全国障がい者差別撤廃連帯(準)との面談を通して2013年までに低床バスの50%導入障がい者など交通弱者当事者が参加する交通弱者移動便宜増進委員会の設置地方の交通弱者移動便宜増進計画の樹立において、特別交通手段および移動支援センターに関する具体的な指針を準備することの努力などを約束した。
 これにしたがって建交部は07年3月に交通弱者の移動便宜増進計画を発表する予定だ。この計画にそって地方自治体も交通弱者の移動便宜増進計画を立てなければならない。今日まで移動権闘争はソウルを中心として中央闘争を展開してきたが、3月の建設交通部の告示を出発点として地域闘争を展開しなければならない。

法案闘争をめぐる現段階

 障がい者差別禁止法は6年間にわたる闘争の結果として07年3月6日、国会を通過した。だが依然として、施行令の制定や人権委法改正などの問題が残っている。先進資本主義国家において差別禁止法の制定は障がい者差別問題の分水嶺だった。だが制定以後、障がい者の大衆運動は勢いを失った。差別禁止法が制定されたからと言って、差別がなくなるわけではないだろう。単に差別をますます社会的に強制する手段を準備したにすぎない。
 つい先達っての4月4日、青互台(大統領府)の迎賓館で全しょう連(準)パク・キョンシク執行委員長と障がい女性共感のパク・キミョンヒ前代表がノ・ムヒョン大統領の前で障がい者差別の現実を知らせるゲリラ・デモを行った。「障がい者教育支援法を制定せよ!」「施設での不正一掃! 社会福祉事業法を改正せよ!」「活動補助人サービスを権利として保障せよ!」という3つのスローガンが書かれているプラカードを掲げてデモを行った。
 パク・キョンシク執行委員長は特に「大統領さんに直接、ご理解いただかなければならないようだ。きょう、この場には『幸せな障がい者! 美しい大韓民国』と掲げているが、今もなお障がい者たちは差別を受けているのが現実だ。大統領が踏み込んで直接、取りまとめをされるべきだ」と叫んだ。この場は、障がい者差別禁止ならびに権利救済法の公開署名式の場としてノ・ムヒョン大統領が公開で障がい者差別禁止ならびに権利救済等に関する法律案に署名しようとしていた。障がい者教育支援法は昨年、37日間の断食闘争を通じて国会議員299人が署名し、立法発議した。だが今年4月の臨時国会で法案を通過させるために、再び障がい児童のいる父母たちを中心に国家人権委で、断食籠城を展開している。4月20日には与野院内代表が、今回の臨時国会での障がい者教育支援法の通過を約束した。命をかけた断食闘争の結果、今回の臨時国会で通過する見通しだ。
 こうして07年の3大法案争取闘争のうち、障がい者差別禁止法と障がい者教育支援法争取の闘争は、まとまるようだ。社会福祉事業法の場合、3月26日の障がい者大会を皮切りにソウル駅でのテント籠城が始まった。宣伝戦、署名戦を展開するとともに4月18日、韓国キリスト教総連合会前で、社会福祉事業法の改正に反対しているキリスト教界を糾弾する集会を行った。現在、福祉財閥である各施設長らは非対委(臨時対策委員会)を作って活動を展開しており、社福法改正反対を声をそろえて叫んでいる。彼らは運営費や人件費を国家から全額受け取りながら、公益理事制を主張しているわれわれに対して自律権を損なうものだと語りつつ、施設を自分たちの私有財産だと認識している。
 障がい者の人権よりも障がい者たちをカネ稼ぎの手段と考える彼らがいる限り、施設生活の障がい者の人権が保証されることはありえない。第2,第3のエバダの悲劇は今も起き続けている。07年の3大立法争取闘争のうち社会福祉事業法の改正案だけが、われわれの闘争課題として残っている。

地域の労働者民衆とともに

 01年の障がい者の移動権闘争を皮切りとして現場闘争が復元した。障がい者移動権連帯という連帯機構を結成するとともに、障がい者当時者だけではなく労働・民衆運動陣営の諸団体が参加する闘争機構を作って活動した。これは障がい者運動が地域で労働者・民衆運動陣営と新たに出会い始める契機となった。エバダ共対委もまた障がい者問題について地域で労働者・民衆運動が連帯し闘争を展開したよいケースだ。
 02年度には4月20日の障がい者の日を、障がい者差別撤廃の日と決め闘争を展開してきている。この日は、政府や御用団体が主導してきた施恵や、その場限りの催しにとどまっている障がい者の日を、障がい者差別の現実を伝え続け、障がい者大衆が主体となって闘争を宣言し広める障がい者差別撤廃の日として作り出している。

全国各地で闘いが始まる

 移動権連帯が移動権という単一のイシューで連帯をしたとするならば、420障がい者差別撤廃闘争(略称、420闘争)は労働者・民衆運動陣営と障がい者らが障がい者にかかわるさまざまな懸案・課題を共有し、連帯闘争を時期に設定して展開するものだ。02年にソウルで初めて行われ、03年からは他の地域でも420闘争を展開した。
 これまで420闘争はソウルを中心に展開されてきており、昨年は420闘争と現場闘争(活動補助争取と教育支援法闘争)が別々に進められた。そして地域も忠北、慶南、光州などでのみ、行事中心に進められた。今年は420闘争を9つの地域(大邱・慶北、慶南、江原、光州、蔚山、忠北、仁川、大田、釜山)で進められ、これを全国的に意思の疎通をはかりながら進められた。そして慶南は4月12日、道庁前でテント籠城を、忠北は4月17日に道庁前で野宿闘争を、大邱は4月20日に市庁前で野宿闘争に突入した。
 420闘争を活動補助関連要求と移動権要求を中心とし地域の要求を盛り込んだ闘争を展開した。420闘争の意義は障がい者問題をもって労働者・民衆運動の諸陣営との共同闘争を作り出すことによって名実兼ね備えた地域運動としての位置を占めているということだ。これは地域の障がい者差別撤廃連帯という地域の障がい者運動体を作るうえでの重要な元肥えとなっている。実際に大田地域の場合、今年初めて420障がい者差別撤廃共同闘争団を結成し、障がい者当事者だけではなく地域の民主労働党、社会党、不安定労働撤廃連帯、民主労総などが参加し、組織を作って闘争を準備した。大田地域は420闘争の成果を受け継いで大田障がい者差別撤廃連帯準備委員会を建設する計画を持っている。
 「労働者の力」のレベルでは京畿ノヒム(ノドンジャエヒム=「労働者の力」の略)が最も模範的に障がい者運動の一主体として参加し、活動を展開している。京畿ノヒムは以前にエバダ闘争を共に闘うとともに勝利の争取に寄与した経験がある。昨年、京畿道庁前で78日間の活動補助制度化闘争に結合するとともに、京畿障がい者差別撤廃連帯に参加した。また今年の420闘争を準備する一主体として参加している。京畿ノヒムは京畿障がい者差別撤廃連帯活動を通じて労働以外の領域において政治組織として地域運動の典型を作っている。

障がい者運動と労働者解放

 かつての障がい者運動は闘争の主体を障がい者当事者だけとみなして組織を建設し、闘争を展開してきた。これはかつて民衆運動陣営が障がい者問題を部分的かつ周辺部的な問題と考え、関心を持たなかったからでもある。
 2000年以降、障がい者運動は、障がい者当事者だけの運動ではない連帯運動として自らの形を作り出している。移動権連帯の経験を通じて05年10月に全しょう連(準)が建設され、ソウルを中心として昨年は京畿、仁川、大邱が闘争を展開するとともに組織を建設した。今年は江原道が準備委員会を建設し、大田が組織を準備している。そして慶南と光州は組織を再整備している。全しょう連(準)は組織の構成を地域の労働者・民衆運動の諸団体と共に作っていく連帯体だ。
 これは障がい者問題が単に障がい者だけの問題ではなく全社会的な問題だとの認識の中で、障がい者運動を運動全体の中で部分ではなく変革運動の一つの主体として作ろうということだ。だが変革運動陣営の相当数は今なお変革の主体として労働者だけを考えつつ組合主義にとらわれて、組合主義の運動でなければ非正規闘争程度にとどまっている。もちろん資本主義社会において変革の中心勢力は資本主義の矛盾である労資間の矛盾の中の労働者であるだろう。だが労資間の矛盾は単に労働者にのみ、それも現場にいる労働者にのみ現れるものではない。

社会運動団体としての位置

 労資間の矛盾は全社会的に現れる。それは失業者にも女性にも学生にも障がい者にも現れる。特に障がい者は資本に自らの労働力を売りつつ資本の利潤追求という目的に付合する労働を提供できなかったり、制限的に提供するために差別し、排除させる。したがって障がい者問題は資本主義の一形態として、単に連帯の水準ではなく変革運動の観点から眺めなければならない。
 だが障がい者問題は、寄せられる苦悩のレベルは高いとは言えない。これは障がい者大衆運動や、その闘争が始められてから日が浅いからでもある。そして障がい者運動の主体たちの政治的水準が、あくまで自らの現場や生存権的要求のレベルにとどまっており、変革運動として自らの運動を作り出せずにいるためだ。
 韓国の政治運動のレベルから見ると、障がい者運動をそれなりに苦悩し活動している政治組織は民主労働党と社会党ぐらいだ。民主労働党は昨年、障がい者委員会を立ちあげ、障がい者割り当て制を導入した。そして民主労働党内の左派組織のうちの一つである「前進」は障がい者チームを作り、障がい者運動の取り組みを行っている。
 また社会党は今年、障がい者委員会を発足させ、積極的な活動を展開している。民主労働党と社会党は最近、活発に展開されている障がい者大衆運動や闘争に結合しつつ、障がい者当事者を積極的に組織している。だが彼らも、あくまで現場闘争についていっているレベルだ。自らの内容や原則を掲げて障がい者運動を組織するという点では力不足のようだ。
 もちろん「労働者の力」も同じことだ。「労働者の力」内には多くのチームや委員会が存在するものの、障がい者運動を苦悩する枠組みや主体は、いまだにない。これはノヒムが労働運動に対する介入力は持っているものの、社会運動に対する介入力は脆弱だということを反証することでもある。したがって「労働者の力」が階級政党を建設するためには障がい者運動を含む、労働以外の諸社会運動の領域で自らの内容と立場とをもって主体を組織しなければならないし、大衆運動と闘争を組織しなければならないだろう。「労働者の力」内で労働現場の会員同志たちが苦悩しなければならない部分でもある。もちろん、障がい者現場で活動している筆者もまた「労働者の力」の会員として、このような課題から自由ではありえない。(「労働者の力」第124・125合併号、07年4月27日付、ムン・ソンミン/会員)

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