性暴力伴う資本主義体制

かけはし 第2654号 2021年2月22日

性暴力被害の保護を社会化しなければならない理由

チョン・ウニ(機関紙委員会)

「愛の戦い」ではなく「暴力」である

 ひとりの女性と男性がもめごとを繰り広げ、女性が男性の頬を殴る。すると男性が拳で女性の顔を激しく殴った後、ついで足で蹴って投げ飛ばす。女性は抵抗してみたが、男性の足で蹴られて倒れた後、一方的にやられるだけだ。男性はそのような女性の上にまたがって携帯電話で数回殴りつけ起き上がり続けて蹴りを入れる。女性は意識を失ったように微動だにしておらず、男性はそのような女性を放ったまま携帯電話を見ながら悠々と消える。

 この事件は昨年11月10日、釜山のある地下街のCCTVに写ったもので、誰かがその映像をSNSに上げたことで議論が始まった。しかし、この事件のレパートリーはここで終わらなかった。メディアはこれを「双方の暴行」と報道したし、警察は、女性を殴った男性ではなく、SNSにこのビデオを掲載した人を調査すると発表した。「ソグルプゲ」(やるせない)も男性が女性を殴った理由は、携帯電話を見せてくれなくて起きた。最も奇妙なことは、被害女性が事件を申告した人に取り下げをお願いしたことだった。

 事実、このようないわゆる「愛の戦い」の展開は、新しいことではない。多く知られているように女性に対する暴力、性暴力は、最初から「暴力」として規定されなかったり、認められない場合が多い。この社会が性暴力をまだ「個人的な問題」または「愛の戦い」と同じく「愛情表現」や「嫉妬」、「愛着」、「妻の貞操を疑う」など愛情関係に原因がある恋愛行為の延長で恥部とするからである。
職場で発生する性暴行事件の場合にも、「暴力」として認定される場合が珍しい。基本的に資本主義で労働者は、自分の労働を自ら統制できずに疎外されているのと、おおよそ職場の性暴力は強い立場にある上司によって発生するために、事件化することすら難しいのが実情である。性の商品化の最も露骨な形である性売買での暴力は、まるで「当たり前のこと」のように思われるままである。

暴力の根:女性に対する統制

 しかし、性暴行は「愛の行為」の延長ではなく、それは恋愛関係でも、家族関係でも、職場でも女性に従属的地位を強要しながら統制して、その性を搾取しようとする男性の意図に主要な原因がある。
2016年「韓国女性の電話」が実施した「デート暴力被害実態調査の結果と課題」の研究によると、暴力の種類別被害経験のうち「統制被害」を経験した割合が、女性回答者の62・6%と最も高かった。
他のタイプの暴力の被害を経験したと述べた回答者のうち、制御被害を経験した割合を分析すると、すべての形態の暴力の被害がある女性回答者の90・1%が統制を経験したことが分かった。つまり、統制と他の種類の暴力の間に高い相関性があることが明らかになったのだ。

 これらの男性の統制力は、資本主義家父長制を根として成立する。女性の性は商品化されて男性に購入される一方、家庭では「良妻賢母」を強要し、今では経済力まで期待する男性が最たるもので、恋愛関係では、より年齢が高い男性により、職場では上司の男性によって統制される。
つまり、資本家階級は、労働者階級を制御するために暴力を行使するように、ジェンダー暴力を動員してジェンダー関係の優位にある男性が弱者である女性を統制するようにする。さらに資本家階級は、宗教と商業メディア、右派団体などのイデオロギー機構を動員し、このジェンダー暴力の秩序を維持する。
この時、問題の責任は常に資本主義にではなく、女性や性少数者、社会の批判者に向けられる。結局、資本主義社会はジェンダー暴力を構造的に伴っていると見ることができる。

政府は、公的責任を 民間に委託

 このような社会構造の中で、女性は家庭では、人間の生産と社会再生産の道具であり、職場では、経済的生産の道具として背負わされているだけである。資本主義と共に自由主義が生じたが、個人の性と人種、社会的関係は副次化され、さらに家父長制イデオロギーに基づいて性を位階化して性別分業を構造化しながら、家庭と社会を生産、再生産してきた結果だ。

 一方では、資本主義以降、大衆教育が普遍化して、女性の経済活動への参加も増えたが、これは男性の支配に対する女性の挑戦を加速した。
しかし、資本主義の関心事はまだ女性に対する差別、暴力、性暴力を社会的に責任を持って解決する所にない。代表的に、Facebookの最高運営責任者のシェリル・サンドバーグが掲げる「リィーンインフェミニズム(Lean In、自己啓発などの個人的な発展を重視するフェミニズム)」のように、資本主義は身分上昇だが、その裏側で依然として女性個人にその責任を帰する構造的な差別と暴力を擁護・隠蔽する。

 このように、資本主義国家から完全な性暴力の解決と予防を期待することは難しい。実際に、女性に対する暴力と性暴力に対する公的支援も劣悪である。韓国では女性家族部がこのような問題の主務省庁だが、政府内で、女性家族部の位置は、予算や支援など、すべての面でひどい水準である。
女性家族部は、予算が最も少ない部署の一つであり、コロナパンデミックが経過する中で、性暴力が急増したにもかかわらず、これに関する来年の予算増加分は58億ウォン(ほとんどは、サイバー性暴力への対処)ほどにすぎない。女性家族部の2020年予算は、1兆1264億ウォンであり、被害女性をサポートする予算は1228億ウォンにとどまっている。

 こうして見てみると、性暴力被害女性支援施設など公的に責任を負うべき領域があらまし民間に委ねられている。現在、女性家族部が運営している施設は全部で1735カ所であり、このうち女性関連施設が158カ所、青少年関連施設609カ所、家族関連施設382カ所、そして権益関連施設が586カ所を占めている。
ここで最後の「権益」部門が正にジェンダー暴力と関連した事業所を言うが、この施設は、「女性緊急電話1366」18カ所、「ひまわりセンター(家庭内暴力・性暴力・性売買被害者と家族に医療・捜査・法律サポートの提供)39カ所、性暴力相談所104カ所、家庭内暴力相談所132カ所、性売買被害相談所29カ所、青少年性文化センター58カ所、被害者保護施設(非公開施設)199カ所、暴力被害移住女性相談所など7カ所があるだけだ。

 特に女性家族部の前身である女性部は、2001年に金大中政権時代に設立され、新自由主義の小さな政府のイデオロギーの下、最初から様々な施設の民間委託を前提としていた。同時に貧困女性運動の努力で性暴力を予防する制度なども作られたが、支援施設の民間委託による運営負担は、各団体に委ねられ、これに加えて、運営も団体の性格に左右され、議論が続いた。

 例えば某宗教団体が受託して運営していた「女性緊急電話1366」蔚山センターは、2018年1月から3年になるが、民間委託団体の労組弾圧と上司のセクハラ事件、不正運用の問題で議論が続いている。1366の京畿センターでは、昨年6月に職場内いじめ事件が発生した。全国各地にある1366のセンターを見ても、女性団体とは無関係な宗教団体が運営する施設が55%に達する。

 結局、女性に対する暴力、性暴力を解決するためには、資本主義体制の変革が切実だ。さらにジェンダー暴力を「私的な関係」や個人の問題として放置するのではなく、女性の人権を保障することができるように公的介入と支援制度を拡大し、これを公共的に運営することで、女性の被害の保護を社会化する闘いが、その最初の歩みとなるだろう。もちろんこれは、女性だけではなく、資本主義の性別位階と分業に駆り出される男性など、すべての性の共同闘争を通して勝ち取ることができる課題である。
(社会変革労働者党「変革と政治」119号)

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